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第530話 神の島 2

「よく来てくれたな、ジュン殿」


「申し訳ありません、セラフィーナ様のワガママの為に…」


「このお詫びは必ず…何なら身体でお返しする事も」


「セラフィーナ様を含め四人纒めてでも…あのジュン様?どうかなさいましたか?」


「ああ、いや…」


「「「……」」」


 島に上陸して出迎えに現れた四人。

間違い無くセラフィーナさんと侍女の三人なのだが。


「真っ黒ですね…」


「よく焼けてるわね~…」


「遠目で見た時、ダークエルフが居るって思っちゃった」


「ああ、うむ。確かにな。だが仕方無い事だ」


「この島に辿り着いてもう十日ですし」


「日焼け止めは持って来てはいましたが、使い切ってしまいました」


「天気もずっと快晴でしたしね…こんなに日焼けしたのは生まれて初めてです」


 セラフィーナさん達はそれはもうコンガリと。

ラテン系の人みたいになってた。

白い肌のエルフは白人のように日に焼けても赤くなるだけかと思ったのだが。


「それと…その格好は何です?随分とワイルドですが」


「これか。ドレスを破いたんだ。こんな暑い島であんなヒラヒラしたドレスなんて着てられないだろう?」


「森の中に入る必要もありましたしね」


「すぐ枝に引っ掛かって破れてしまいましたし」


 セラフィーナさん達の服装は…ドレスや侍女服を破いただけのタンクトップとミニスカートだ。

へそ出しルックで、森の中に入るには向いてなさそうだが…それにしてもだ。


「十日間も無人島でサバイバル生活をしてたわりには元気そうですね。服装はともかく、小綺麗ですし」


「ああ、うむ。食糧と荷物の殆どは船と一緒に沈んでしまったが森の中では果実が豊富に採れてな」


「水は魔法で事足りましたし」


「食べ物には困りませんでしたね」


「それとこの島、温泉があるんですよ。丁度良い湯加減の」


「あ、それはウチも入りたい」


 無人島の天然露天風呂か…いいな、それ。ボクも入りたい。だがその前に…


「温泉の前に、先に遺跡に案内してもらえますか」


「うむ。だが一つ約束して欲しい。案内が終わった後、グリムモアに強制送還しないと」


「私達からもお願いします」


「此処まで来て無人島で十日間のサバイバルの後は強制送還というのはあまりにも…」


「どうかお願いします…」


 ううむ…本当はセラフィーナさんの目的を考えると連れ帰りたくは無いのだが…エヴァ様にも頼まれてるし、仕方無いか。


「わかりました。ですがおかしな真似したら即強制送還ですからね?」


「うむ。わかっている。だがジュン殿が私におかしな事をするのは構わないぞ?」


「そんな少し服をめくったくらいで何かすると思わないでくださいね。あと、そういうのもおかしな真似に含まれますからね。次に何かしたら強制送還です」


「そ、それは厳しくないか?」


「予定がある中、炎天下の下長い船旅を強制された身にもなってください。じゃあ案内を御願いします」


「う、うむ……そんなに怒る事ないじゃないか…」


 少し厳しいかもしれないが…マーヤさんの事があったばかりだしな。

まぁマーヤさんの過激なアピールの御蔭でセラフィーナさん程度のアピールでは動じなくなったな。

慣れって怖い。


「仕方ありませんよ、セラフィーナ様」


「暫くは大人しくしましょう」


「魔道船も失ってしまいましたし…帰ったらエヴァ様からも大目玉なのは間違いありませんし。此処でジュン様を怒らせるのは得策ではありません」


「う…やはり怒られるのか…」


「怒られる程度で済むならいいじゃない。ほらほら、早く案内して」


「遺跡が巨大で、探索に時間が掛かったら困るんだし」


「何だ?何か予定があるのか?」


「近々友人の結婚式があるんですよ」


 結婚式は三日後。明後日にはヴェルリア王国に滞在する事になってる。

で、ボクは明後日には各方面の招待客を転移魔法で迎えに行く事になってるので、実質今日と明日で遺跡の探索を終えないといけない。別に結婚式が終わって、その後のバカンスが終わってからでも問題は無いとは思うが。


「ほう、結婚式?どこぞの王族のか?」


「ええ。ヴェルリア王国の次期国王、マークスさんの結婚式です」


「ヴェルリアの?ふむ…なら私もグリムモアを代表して参列するとしようか」


「…急に参加すると言われてもヴェルリア側も困るでしょうに…まぁ、それは何とかなるとしても、です。セラフィーナさん、祝いの品やら何やら。用意出来るんですか?」


「ドレスも御金も。船と一緒に沈んだんじゃないの?」


「あ」


 自分から結婚式に参列すると連絡しておいて祝いの品も祝い金もナシ。加えてドレスも無いとなれば…最初から参列を諦めた方が賢明だ。


「…ジュン殿?御金を借りても?」


「いいですけど。トイチですよ」


「トイチ?」


「十日で一割の利子が付きます」


「十日で一割……それって妥当な利率なのか?解かるか?ピエラ」


「はっきり言って暴利です。セラフィーナ様」


「暴利?それは酷いじゃないか、ジュン殿。何故そんなに意地悪なのだ」


「じゃあドレスや御金とか、身の回りの物を取りに帰ります?グリムモアへ。それは転移魔法で一瞬ですから、無料でいいですよ」


「……そのまま置いて帰るつもりだったりしないか?それ」


「あ、わかります?」


「それくらいわかる!何でだ!?私が何かしたか!?」


「だってセラフィーナさんの目的を考えれば当然の対応じゃないです?」


 セラフィーナさんの目的…ボクの婚約者になって一番の寵愛を受ける。

略奪愛が彼女の目的。そんな不和しか呼ばない目的の人に優しくするのは…


「う、うぅ…」


「え、ええと…そ、そう!御土産!御土産があるんですよ。ね、ペトラ」


「あ、そ、そう!これだけは船が沈もうと死守しました!世界樹様からの贈り物です!」


「世界樹様から?」


 お土産の中身は…世界樹の枝や葉。流石に実は無いがつい最近魔法道具作成で使い切ったので有難い。


「ありがとうございます、ペトラさん」


「いえ、私からではなく世界樹様からですから」


「そうだぞ。ところで何故ペトラだけ愛称呼びなんだ。私の事もセフィと呼んでくれてもいいじゃないか」


「え?ペトラって愛称だったんですか?」


 以前エルムバーンに来てた時に、三人の侍女さんはパルヴィ、ピエラ、ペトラだと呼び合っていたのだが。


「あ…そう言えば私達、ちゃんと自己紹介をしていませんでしたね。改めまして、私はパルヴィです」


「ピエラです」


「ペートロニッラです。少々長いので、皆ペトラと呼びます。御好きな方で呼んでください」


 ペートロニッラ?そんな名前だったのか…確かにちょっと長い。


「一番巨乳なのがパルヴィさんで、一番腰が細いのがピエラさんで、一番脚が長いのがペトラさんね」


「あの…アイ様?もう少し別の覚え方でお願い出来ませんか?」


「アイ…おっさんくさいわよ…」


 間違ってないけどね。アイの分析には完全に同意だ。


「そして一番美人な私がセラフィーナ・シグネ・ラ・グリムモア。セフィと呼んで構わないぞ」


「はいはい。一番美人なのがセラフィーナさんね。さ、案内を再開して」


「アイ殿までそんな態度なのか!?仲良くしようじゃないか!な!?」


「無理ね。貴女の目指す所がジュンの婚約者ってだけならまだしもさ。ジュンの寵愛を受けて妻の中で一番になろうなんて野望はウチらの中で不和を生むだけ。それは赦されないのよ」


「お兄ちゃんの婚約者は全員、仲良くする事が絶対条件なの。それが出来そうにない貴女とは仲良く出来そうにないわね」


「因みに。此処に居る女性の内、人魚族の彼女達を除いた者全員ジュン様の女です。アイ様とユウ様の御言葉は私達の意思でもあります」


「私達もいつでもジュン様の女になる覚悟は出来てますけど」


 …ミズンさん達まで婚約者にしたら…シャンタルさんの父親のようにボクも死んでしまうんじゃなかろうか。

うん、多分そうなるな。婚約者にはサキュバスが四人も居るんだし。

サキュバスじゃなくても凄そうな人も多いが。


「な、何?婚約者を増やしたのか?ジュン殿」


「あ、はい。知らなかったんですか?この間エヴァ様に会った時、エヴァ様は御存知でしたが」


「姉さん…私には秘密にしてたな…何故だ…」


「そりゃ貴女が暴走しないようにでしょ。間違いなく」


 エヴァ様は一応はボクの味方らしい。同時に妹の事も応援したいという気持ちもあるようだが。


「だ、だが!婚約者を増やしたというなら私だっていいじゃないか。何故ダメなんだ?」


「望めば誰でもなれる訳じゃないくらいわかるでしょ?ほら、案内を続けて」


「エルムバーンには遊びに行けるんだから。先ず友達になって、そこからじっくりと婚約者になれるようにしなさいよ」


「う、うむ………いや、待て!私達はまだ友達じゃないのか!?」


「「つ~ん!」」


「お-い!」


「あ~はいはい。友達ですよ、ボク達は友達。だから泣かないで案内してください」


「う、うん…」


「あんまりいじめないであげてくださいね。多少ならいいですけど」


「セラフィーナ様は意外と打たれ弱いので。雑な性格してる癖に落ち込みやすいですし」


「イジけると立ち直らせるのに時間が掛かる上にめんどくさいので。それはもう幼児のように」


「貴女達も結構酷いですね」


 でも確かに。セラフィーナさんは背中越しでも解るほどに落ち込んでいる。そこまで落ち込まれると…うう~む…仕方ないなぁ。


「あ~ほら、セフィさん。手に擦り傷が出来てますよ。はい、治った」


「あ、うむ…ありがと…う?い、今セフィと呼んだか?」


「嫌なら止めますが?」


「いや!そのままで!何なら呼び捨てでも構わない!」


「はいはい。じゃあセフィさん、早く遺跡に行きましょう」


「うむ!」


 なんだ、案外簡単に立ち直るじゃないか。つい仏心をだしちゃったけど…これなら何もしなくても良かったんじゃないかな。


「…結局こうなるのよね。全く甘いんだから。ジュンらしいけど」


「ですねー結局は非情になりきれないのがジュン様ですよねー」


「ご主人様は優しい!」


 …呆れつつも認めてくれてるかな。セラフィーナ…いや、セフィさんに諦めてもらう為にも冷たくあしらう必要があるんだが…やはり性に合わない。泣かれたり落ち込まれたりすると、どうにもね…


「…凄いですね、ジュン様」


「セラフィーナ様をあっという間に立ち直らせるなんて」


「ジュン様だから、でしょうけど。案外セラフィーナ様も乙女ですね」


「おお~い!何を喋ってる?見えて来たぞ、アレがそうだ!」


 どうやらアレがこの島でセフィさん達が見つけた遺跡らしい。

はてさて…この遺跡には果たして何が眠っているのやら。

読んでくださり有難う御座います。

よければ感想と評価のほど、よろしくお願いします。

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