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第528話 戦いに備えて

御感想有難う御座います。とても励みになります。

 【ヘパイストス】と【アテナ】を受け取った三日後。

練兵場で新装備を使っての模擬戦をしてる。

親衛隊達も新しい盾と腕輪の具合を確かめている。

何故三日後かと言うと、ボク以外の全員が二日酔いでダウンしてたからだ。

アレだけ呑んで死人が出なかったのは奇跡かもしれない。

因みにバルトハルトさんはまだダウンしてる。


「う~ん…凄いね、それ」


「だね…まぁ打撃系の攻撃で受ける衝撃までは完全には防げないけどね」


「でもウチの打撃でも殆ど通ってないでしょ?防御面はもうほぼ完璧じゃん」


 とは言え絶対に何でも防げるわけじゃない。

素肌の部分…顔や首は勿論だし、アイの『拳聖の紋章』の能力による内部の破壊までは防げないだろうし、エルリックの『剣聖の紋章』の能力、絶対切断も防げないと思った方が良いだろう。

まぁアイともエルリックとも戦う事は無いだろうが。


「はぁぁぁぁ!」


「ぐっ!【ヴァーユ】の力も通じないなんて!」


 クリステアとルチーナも模擬戦中だ。

考えてみればクリステアは【ガイア】も装備して神様の祝福を受けた武具を二つも装備してる。

鎧と盾…クリステアの防御力に匹敵するのは、ボクが知る限り『金剛盾の紋章』を持つミカエルさんくらいだろう。


「ジュンは三つ装備してるじゃない。防御力もクリステアに匹敵するんじゃないの?」


「言われて見れば確かに…」


 確かに【ヘパイストス】も防御面では完璧なんだった。

それに光の盾が出せる腕輪を装備したリディアも匹敵するかもしれない。


「ところで。何であの人まで腕輪を装備してるの?」


「というか、まだ居たんだ。あの人」


「うん…何でだろうね」


 あの人とはレオさんだ。

お金が貯まるまで泊めて欲しいと頼まれ許可したのだが…此処が気に入ったらしい。

出て行く気配が無い。


「オラオラァ!どうしたぁ!道具に頼りっぱなしか、こらぁ!」


 とまぁ、こんな調子でボクの親衛隊を相手によく訓練をしてる。

男連中とはよく飲みにも行ってるようだ。

レオさんが居るとベルも嬉しいみたいだし、問題は無いが。


「それで、今日配るの?アレ」


「いや、今日は説明だけ。実際に配るのは明日」


「何で明日?」


「考える時間が必要かと思ってね」


「…ああ、そっか。そだね」


 アイの言うアレ。世界樹の実だ。

まだ六十個以上残ってるし、バカ神の捕縛に神様が失敗したら何が起こるか解らない。

備えとして皆に配ってもいいだろう。

それでもまだ残るし。


「という訳で。この世界樹の実の事は絶対に秘密です。勿論、親兄弟にも。この場に居る人のみの秘密です」


「そんな凄い物持ってたのか…私達にも秘密だったのも当然だな」


「戦争の引き金になりかねないわね…今のエルムバーンに戦争を仕掛ける国があるとは思えないけど」


「以前のエルミネア教国くらいでしょうね。ま、あんたが秘密にしてた理由は解ったわ」


 ボクの部屋に集まったのはいつものメンバーとカタリナさん達婚約者全員。

それと親衛隊隊長カイエン。フィービー、ライリー、ヘンリー、ネス、ナターシャ、ミースの六人の新人親衛隊員。そしてカミーユさん達だ。


「あの…ジュン様?カイエン隊長やリディアさん達は兎も角…私達新人にまでそんな貴重な物を頂いて宜しいのですか?」


「そ、そうですよ…私なんかが…新装備も頂いたばかりなのに…」


 そう質問するのはフィービーとミース。

二人は新人六人の中でも真面目だし、そう言うと思った。


「いいんだよ。この場の全員に配ってもまだ残ってるしね。それに皆に強くなって欲しい理由もあって…」


「私達に強くなって欲しい理由、ですか?」


「ま、まさかまた戦争になるんですか?」


「あ、いや。そうじゃないよ。ただ今のボク達じゃ対応出来ないような未曽有の危機に備えて欲しいってだけだよ」


「はぁ…今のジュン様に対応出来ない危機、ですか…」


「そんなの世界が滅亡するしか無いんじゃ…」


「そんなオーバーな…」


 二人はボクの事を過大評価し過ぎじゃなかろうか。神様じゃないんだから。


「あの…ジュンさん?私は『魔王の紋章』を持ってはいますが、戦う力は殆どありませんし…そんな貴重な物を頂いても…」


「シャンタルさん、戦う力だけが人を救う力という訳じゃないですよ。ベルの『解呪の紋章』のように戦う力じゃなくても人を救う事が出来ます」


「そだよ、お姉ちゃん!あたしなんて『魔王の紋章』も持ってないけど、ジュンさんの力にはなりたいし!それが手に入るかもしれないなら、世界樹の実は欲しくてたまんないよ!」


「エミリ…そうね。そうかもしれない」


 むしろシャンタルさんのように戦う力を持たない人の方が欲する想いは強いだろう。

そういう人の方が世界樹の実で力を得やすいかもしれない。


「あの…ジュン様?私達は何故…」


「この間国家最重要機密を聞かされたばかりなのに、更に重たい話を聞いてしまったっス」


「あー…カミーユさん達はほら、一応弟子ですから。師匠から弟子への贈り物と思って頂ければ」


「ですが…私達も腕輪や盾も頂いたばかりですし…」


「もう話は聞いちゃったっんだから。貰っておきなさい。でないと重い秘密を背負うだけになっちゃうわよ」


「う…」


「それはそれで辛いっス…」


 最初はカミーユさん達にまで配る気は無かったのだが。

メリッサやマリーダさんに配るとなると…同じ冒険者パーティーに所属するカミーユさん達は何か感付くかもしれないし。弟子だから師匠してってのも勿論本音だが。


「それじゃ実を配るのは明日です。今日一日、自分がどんな力を欲してるか、どんな力が必要なのか。よく考えてください。多分、その方が力を得やすいので。間違っても!背を伸ばしたいとか胸を大きくしたいとか願わないように!ね!アイシス!」


「何で僕!?そこはセリアじゃないの!?」


「私はもう大きくしたし」


 アイシスは前回心底セリアさんを羨ましがってたからな。不安だ。

ルチーナも羨ましがってたが、名指しで注意しなくても大丈夫だろう。


「ああ…そうか。セリアの胸が急に大きくなった理由はそれか」


「なるほどね~言えないわけだわ。納得」


「ん。秘密の中の秘密」


「アンナお母様には絶対に言えないわね…」


 そう言えばレティシアやカタリナさんも知りたがってたか。

そしてパメラさんが言うようにアンナさんに知られたら…どうなる事やら。

めんどくさい事になるのは必至だな。


「胸…胸が大きくなる…」


「フィービー?止めた方がいいよ。そんなつまらない事願うのは」


「お、お前には解るものか!そんな立派なモノを持つお前には!」


「泣く事ないじゃない…」


 フィービーも胸を大きくしたいのか…そして確かにその気持ちはナターシャには解らないだろう。

ナターシャのそれは立派なモノだし。


「……」


「おい、ネス…まさかお前まで胸を大きくしたいとか言うんじゃないだろうな」


「う…だ、だって!ヘンリーだって婚約者の胸は大きい方がいいでしょ!?」


「ば、バッカお前!こんなとこでそんな事聞くな!」


「全くですよ。いい加減痴話喧嘩は見えないとこでするよう学習してくださいね」


「う、うるせぇ!お前も見たくないなら見えないとこへ行きやがれ!」


 ネスも胸を大きくしたいのか…多いなぁ。胸の悩みを持った人。


「…新しい力…イーノお姉ちゃんはどんな力が欲しいの?」


「え?えっと私は…ジュン殿の役に立てるような…私にしか出来ないような。そんな力が欲しい、かな?」


「わたしにしか出来ない…ルシールは?」


「私は…解りません。騎士だった時は力を欲してはいましたが…」


 ベルとルシールさんは考える時間が必要なようだ。

ちゃんと考えが纏まってないと、多分ノエラとハティが一度目は貰えなかったように、失敗する。


「あたいはどうしようかな~欲しい力が多すぎて絞れないぜ!」


「わたしもなのー」


「私も…ルーちゃんは?」


「私もだよ。レヴィは?」


「私は…解りません…」


 ティナ達とレヴィさんは考えが纏まらないらしい。

ちょっと意外だ。

彼女達はすんなり決めそうな気がしてたんだけど。


「…」


「姉上はとうしたんです?難しい顔して」


「悩んでるのよ…メリッサはもう決まったの?」


「はい!私は師匠が持ってる紋章が全て欲しいです!」


「単純でいいわね…貴女らしいけど」


 メリッサがボクが持ってる紋章を全て…流石にそれは無理だろう。

上位紋章を一度に複数も得るなんて…幾ら世界樹の実でも不可能な筈。

でも単純で思い込みの激しいメリッサなら有り得る気も…


「私も悩んでしまいますわ…ユリアさんは決まりまして?」


「私もまだです。カイエン隊長はどうですの?」


「私もまだだ。だが…やはりジュン様の親衛隊の隊長として必要な能力を求めるべきだろう」


「ですわよね…」


 カイエン達もまだか…皆真面目だなぁ。考える時間を与えた事が逆効果にならなきゃいいけど。


「なぁなぁ、主」


「何ですか?リヴァさん」


「Meはそれ、食べない方がいいんじゃないか?Meの分は他の誰かにあげた方が…」


「え?何故です?」


「だってMeはもう充分強いし!それにそれ、力が欲しいって強く願ってないとダメなんだろ?Meは力が欲しいって思った事ないしな」


 世界樹の実を食べても無意味に終わる可能性が高いって事か。

確かに、リヴァさんは力が欲しいなんて考えないだろうし。


「わかりました。もし気が変わったら教えて下さい」


「うん!」


「ま、リヴァさんは確かに現時点で無敵だしね。ウチは…切り札になるような力が欲しいかな」


「私は…私の持ち味が活きるような力かなぁ」


 切り札になるような力、か…アイらしい発想だな。

ユウの持ち味が活きる力、となると…知力だろうか?

でもユウは既に『賢者の紋章』を持ってるし…更に伸ばすとなると…どんな力があるんだろう?


「私は更に防御力を伸ばしたいですね」


「なら私は姉さんの防御力を突破出来るような攻撃力が欲しいわね」


「ルチーナ…何故そこで張り合うのです?」


「なら私はクリステア姉さんを超える防御力とルチーナ姉さんを超える攻撃力手に入れて見せるわ」


「ナターシャ…貴女もですか」


 攻防バランスのとれた能力を持ち、堅実な戦い方がウリだったクリステアとルチーナは新装備を手に入れた事で対極に進んでる。

クリステアは防御力。ルチーナは攻撃力。

それを更に伸ばす、か。悪く無いと思う。


「リリーは…どんな力がいいと思うですぅ?ウルさん」


『そうだねぇ…マスターは接近戦は苦手なんだし、接近戦を避ける事が出来る能力があるといいんじゃないかい?』


「あ、私にもアドバイス下さい、ウルさん」


『シャクティ君は…『歌姫の紋章』と併用出来る能力なんかいいんじゃないかい?』


「なるほどー支援要員として更なる支援が出来るようになれ、と!流石ですねー」


 リリーへのアドバイスはいいとして…シャクティへのアドバイスはいいんだろうか?『歌姫の紋章』は歌う必要があって歌ってる間は無防備。

そうなると紋章を使うだけで仲間を強化出来る能力を持った紋章とかになるけど…そんな都合のいい紋章があるんだろうか?


「セバストとノエラは?何か考えが浮かんでる?」


「はい。私はジュン様をお守りする為の力が欲しいです」


「オレも同じだ。ジュン様が一人で無茶しなくてもよくなる、そんな力が欲しいな」


「あ、うん…」


 迷いなく真っ直ぐに言われると照れてしまうな。

セバストは遠回しに釘を刺す意味もあるんだろうけど。


「んんっ…話は以上です。くれぐれも他言しないように。今日一日じっくり考えてね。それじゃ解散で」


「「「「は〜い」」」」


「因みにお兄ちゃんは考えが纏まってるの?」


「一応ね。アイと同じだよ」


 バカ神の捕縛を神様達が失敗した時。

ボク達が何とかしなけれぱならないのなら。

それは神様を相手にするという事。

なら最悪、神様を殺す必要が出てくるかもしれない。

だとしたら神をも殺す力が要る。

そもそも神様を殺すなんて不可能なのかもしれないが…備えておくに越した事はない。


 神様達が上手くやってくれるのが一番いいんだけど…

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