第526話 ドワーフの夢 11
「これは…また随分な量を持って来たわね」
「しかもこれもかなり純度の高い良いオリハルコンじゃないか…一体どうやってこれだけの量をこの短時間で手に入れたんだい?」
「……」
「まぁ…なんやかんやとありまして」
ウィスラー魔王国でビッグ・モスとアーマード・モスの群れを討伐した翌日。
手に入れたオリハルコンを持ってドワンドに戻って来た。
ウィスラー魔王家の墓所には予想通りに卵があった。
だが墓所の内部は想像以上に広く、卵だけでなく、ビッグ・モスの繭とまだ発見してないアーマード・モスの繭も発見。大量の金属を得る事が出来た。
特にオリハルコンの繭はビッグ・モスの繭だけあって他の繭の二倍の大きさ。
ビッグ・モスから回収したオリハルコンもあってかなりの量になった。
小さなオリハルコン鉱山なら一年分の採掘量に匹敵する量だ。
で、山での探索を終えアーマード・モスがもう生息していない事を確認をしてからマーヤさん主催の祝勝会に参加したわけだが…
予想に反して普通だった。まぁ、アレだけ普通でとお願いしたのだから普通で然るべきなのだが。
それでも何かやらかして来るのがマーヤさんだと思っていた。
真相は初回の宴でマーヤさんがやらかした内容が酷すぎて色々と監査と物言いが入ったらしい。
御蔭でごく普通の祝勝会となった。
だがそれでもマーヤさんと一部の参加者はアレだったが……何度も再会の約束とさせられ、マーヤさんはエルムバーンに遊びに行くとまで言っていた。
「……」
「はい、師匠。これだけあれば…ジュン様、新しいハンマーだけじゃなくまだ他の装備も作れるわよ。何かある?」
「え?そうですね…例えばどんな物が作れそうですか?」
「そうね…ジュン様の防具は師匠が作るから、アイ様とユウ様の防具を作り直すのはどう?丁度糸状のになってる訳だし、これを縫い込むだけでかなり違うわよ?」
「いいですね。それでお願いします。ああ、そうだ。このアダマンタイトも提供します。何かに使ってください」
「あら、いいの?これもいいアダマンタイトじゃない。ん~…盾に使う?」
「盾?貝殻を使う盾にですか?」
「そうよ。最初は貝殻とオリハルコンの二層構造の盾にしようと思ったのだけど。このアダマンタイトを使った三層構造にすれば更に衝撃吸収力に優れた、良い盾になるわよ。一つしか作れないけどね」
となると…クリステアの盾にして更にクリステアの防御力を伸ばすか。
「ならクリステアの盾を作ってください。クリステア、何か要望があればステファニアさんに言って」
「え…私の?よろしいのですか?」
「盾と言えばボクらの中じゃクリステアだよね。デザインとか付与して欲しい能力とかあれば言うんだよ」
「は、はい!有難う御座います!」
まるで指輪を貰ったユウやアイのように嬉しそうな顔だが…盾を貰ってそこまで嬉しいだろうか。
武人としての性というヤツか。
「……」
「はい。師匠。先ずはオリハルコンハンマーを作りましょう。クリステアちゃんの盾は明日から取り掛かるから、また明日来て頂戴。今日一日どんな盾にするかよく考えてね」
「はい」
そしてようやく再開されたジドさんによるボクの防具作成。
その日から連日連夜。殆ど休むことなく、ジドさんの工房からは鎚の音が聞こえ、灯りが消える事は無かった。
何度か様子を見に行ったが、ジドさんはボク達に気付く事も無く鬼気迫る表情で作業を続けていた。
それ程までに、自分が作成した物に神様の祝福を貰うというのはドワーフにとってどうしても成し遂げたい夢なのだろう。
だから…ほんの少しだけ手助けしたいと思う。
「という訳です。他の神様達にジドさんが作る姿を見守ってくださいと伝えてもらえますか」
『何じゃ?祝福を与えるように頼まんでいいのか?』
ボクの【フレイヤ】と【アトロポス】の時のように神様通信で神様にお願いだ。
但し、祝福を与えて欲しいとは頼まない。あの時はドワーフにとっての神様の祝福の意味を知らなかったから軽い気持ちで頼んだが…
「はい。見守るようにお願いするだけで構いません。祝福を与えるのは神様の眼に叶えば、で構いません」
『ふむ?何故じゃ?祝福は有った方が助かるじゃろ?』
「ドワーフにとって神様の祝福を自分が作った物に貰うというのは特別な事だそうです。だけどボクが頼んだから貰えたとなると…嬉しくないんじゃないかと」
『なるほどのぉ…お主がそう言うならそれでいいが…少し誤解しておらんか?』
「何がです?」
『お主の剣は確かに頼まれたから与えたのは間違いはないが…神の祝福を受けるに値する物でなければ与える事は出来ん。相応しくない物に祝福を与えても神の力に耐えきれずに砕けてしまう故な』
「そうなんですか?」
それなら…まぁ、良いか?
ステファニアさんに対する後ろめたさは軽くなったのは確かだ。
「それならそれでいいんですけど。それでバカ神の方はどうなってます?」
『うむ。間もなく大詰めじゃ。お主らは安心して吉報を待つがよいぞ』
「ほ~んと~?何か大失敗してウチらに尻拭いが周って来そうな気がしてならないんだけど」
「私も。大丈夫なんでしょうね」
『驚く程に辛辣じゃの…安心せい!わしだけでやっているのではないし、最悪の事態にだけはならないように何重にもセーフティーがある。大丈夫じゃ。もし万が一ダメだったら裸踊りでも何でもしてやるわい』
「ダメだった時は裸踊りなんて見ようが無いじゃないですか…」
ダメだ、ボクも心配で仕方ない。ダメなフラグをこれでもかって勢いで立ててる。
「兎に角、ジドさんの事とバカ神の事。両方お願いしますね。ほんとーに」
『うむ。任せておくがよい』
実際、任せるしかないから信じて待つしかないが。どうしても不安だな。
「間もなく大詰め、か…その前に装備が新調が間に合って良かったね」
「うん?まぁそうだけど…ユウは神様達が失敗すると思ってるの?」
「そう思って準備してた方が良いと思うよ?だからさ、お兄ちゃん。世界樹の実、配ろうよ」
「そう言えば結局誰にもあげないままだよね。親衛隊の何人かと…メリッサとかにあげちゃえば?」
「ティナ達とレヴィにあげてもいいかもね」
「でも…それをすると多分、カタリナさん達にもあげる事になるんじゃないかな」
「あー…まぁ良いんじゃない?それでも余るでしょ?」
「神様達が失敗した場合何が起こるか解らないし…出来るだけの備えとしてカタリナ達にも世界樹の実で新しい力を得て貰うのもいいと思うな。もしかしたら予想外に途轍もない力を獲得してそれが危機一髪で世界を救う事になるかも」
そんな事にならない…とは言い切れないか。
レティシアやベルのように戦う力を持たない者が食べても効果は薄いかもしれないが……もしかしたら、戦う力を持たないからこそ、強く欲しいと願ってるかもしれない。
世界樹の実が強く願ってるほど、望む力を与えてくれるのなら。
もしかしたら、本当にそういう事もあるかしれないな。
「そうだね。新装備が出来たら、皆に配ってみようか」
「うん。ウチらももう一回食べよ?」
「そうね。その方が良いと思うわ。皆に強くなってもらうに越した事は無いけど、私達自身が強くなるのが一番よね」
「…確かにね」
勿論、訓練は毎日欠かさずにやってはいるが。
事はこの星どころか次元そのものの存亡に関わるんだ。
大詰めが近いというなら、それに出来るだけの備えはしておこう。
「でも、それならお兄ちゃんの防具。確実に祝福を与えて欲しいって頼むべきなんじゃない?」
「いや…きっと大丈夫だよ。きっとね」
あんなジドさんを見たら……水を差すような真似は出来ない。
神様が見てくれさえすれば、きっと祝福は授けて貰える。きっと。
そして。ジドさんに依頼を出して二週間が過ぎた頃。
新装備が完成した。




