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第520話 ドワーフの夢 5

「この山ね」


「一見普通の山だよね。確かに綺麗な山だけど」


 アーマード・モスが居るという、ウィスラー魔王家の山に到着。山の入口には兵士が常駐しており、勝手に入山出来ないようになっている。

空を飛んで入る事は可能だが、もしバレた場合は重い罰が課せられる。最悪犯罪奴隷行きだ。

ボク達の事は事前に通達が行っている為、スムーズに入山。此処から探索開始だ。


「さて、此処から山頂に向かって探索を開始する訳だけど…リリー、ハティ。何か感じる?」


「特には…近くには動物と虫くらいしかいないですぅ」


「あたしもおんなじー」


「そっか。念の為に聞くけど、ウルは何か感じる?」


『いいや、何も感じないよ』


 少なくとも現在地周辺には危険な存在は居ない。

そして勇者の遺物のような神様の力が宿った物も無い。


「という事は手に入るのは最悪依頼達成の報酬のみ…って事もあるわけね」


「それは出来れば避けたいとこだけどね。ま、進もうか。クリステア」


「はい。行きます」


 クリステアを先頭に進む。

いつもなら殿はバルトハルトさんなんだが今回はアイシス達は不在なので今日の殿はルチーナだ。


「確かに綺麗な山ね。川も流れてて涼しいし」


「ですねー涼しくていいですね」


「暑いなら脱げば?あ、シャクティはもう脱いでるかー」


「やぁだーアイ様ったら。なぁんの事ですかー?」


 今から魔獣を討伐するんだ。流石に今日は履いてないなんて事はないだろう。確かめる勇気は無いが。


「…何にも無いね」


「ありませんね。リリー、ハティ。魔獣の気配はまだありませんか?」


「無いですぅ」


「まだ何にもー」


 入山して十分程。ボクも探査魔法で探してるが特に何も無い。

ボク達以外の登山者が居ないのは当然だが魔獣は居ないし、動物も鳥くらいしか見当たらない。


「ん?何か聞こえる…」


「この音は滝ですぅ」


 入山して三十分。

見えて来たのは落差二十メートルはある幅広の滝だ。

中々の迫力。


「うひゃー…ピクニックで来てたなら、水着に着替えて飛び込むのに」


「え…あの滝にですか?」


「うん!すっごい気持ち良さそうじゃない?」


「アイ様も偶にとんでもない発想が出ますよね…ダメですよ、そんな事しちゃ。危ないですよ?」


「ルチーナは真面目ねー偶にはクリステアみたいに突拍子も無い事してはっちゃけてもいいのに」


「アイ様…私、突拍子も無い事してましたか?」


「してたわよ。胸に手を当てて思い出してみなさい」


 ルチーナはクリステアのブレーキ役なんだから、此処ではっちゃけたら困る。別の機会にお願いします…それはさておき、だ。

ちょっと気になる事が。


「皆、ちょっと待ってて。直ぐ戻る」


「ジュン様?何処へ行くんだ?」


「ちょっと滝の裏に」


「滝の裏?あ!待って、ウチも行く!」


 アイもボクが何処へ行くのか察しが付いたらしい。

ボクが気付いたのは探査魔法で、だが。


「ひゃー冷たーい!」


「無理して付いて来なくて良かったのに」


「無理じゃないよ!それに燃えるじゃん!滝の裏に洞窟!王道!定番!お約束!そして奥にはお宝!」


「お宝はどうかな」


 探査魔法で調べた結果。魔獣は存在しない。

洞窟もそれ程深くない。せいぜい高さ八メートル、幅十五メートル、奥行き二十メートルくらいか。直ぐに奥に着いた。其処には勿論、宝箱なんて無いが…


「もしかして、これがそう?」


「多分ね」


 其処にあったのは繭。巨大な芋虫が作ったのであろう中身が空っぽの繭が二つ。アースワームは此処で繭を作り、羽化したらしい。


「なるほどねぇ。此処なら他の魔獣に見つかる危険性は低いし、定期的に魔獣を狩りに来る騎士達にも見つからないってわけね」


「そういう事だろうね」


「…で、これオリハルコンの繭だったり?」


「残念ながら違うね。でも銀の糸で出来てるみたいだ。折角だから回収して行こう」


「銀?やった!お宝じゃん!」


 ま、確かにお宝と言えなくもないか。

幾ら位になるのか分からないが、そこそこの金額になる筈だ。


「ただいま」


「ただいまー」


「お帰り。ずぶ濡れになった甲斐はあった?」


「うん!お宝があったよ!お宝!」


「アースワームの繭がね。銀製だったから。そこそこの金額になると思うよ」


「銀製…ですか。では目的のオリハルコンの繭は諦めるしか無いのですね」


「いや、見つけた繭の数は二つ。目撃情報によれば最低三匹いるらしいから、少なくとも後一つは何処かにある筈だよ」


「そうでしたか。あ、ジュン様、アイ様。タオルをどうぞ」


「ありがと」


「ありがとん」


 ずぶ濡れになった身体を軽く乾かしてから登山再開。

このまま山頂まで魔獣に出会わないか、とも思ったがそんな事も無く。


「ご主人様、何か来たよ」


「左から来ますぅ」


 左は木々が深く見通しがイマイチ。

少しして姿を見せたのは熊型の魔獣だ。


「アレはオブシダンベアーだな。爪が鋭く堅い。討伐難度Cの魔獣で肉は…硬くてあまり美味くない。って、何か様子が変だな?」


 セバストのウンチクを聞いてる間にもオブシダンベアーは近付いて来たのだが、どうにも様子がおかしい。フラフラしているし、此方を見ていない。

結局は此方に襲いかかる事も無く、血を吐き絶命してしまった。


「どゆこと?」


「…外傷は無い。毒にやられたんだろうな。何の毒か解るか?ノエラ」


「解りません。死体を持ち帰り詳しい調べれば解ると思います。ですがこの場で、となると」


 流石のノエラにも解らないか。

しかし、まあ十中八九…


「アーマード・モスの鱗粉には毒があるって話だったよね」


「ああ。毒で仕留めるか、毒で弱った処を仕留めるか。それがアーマード・モスの狩りのやり方だ」


「という事は?この熊は…」


「毒にやられて命からがら逃げ出して…結局は死んじゃった、と」


「そしてこれが本当にアーマード・モスの仕業なら…」


「仕留めた獲物を捕食に来る…」


 慌てて探査魔法を再使用。直ぐ近くに大きな反応。

しかも此方に向かって来る。


「ご主人様!来るよ!」


「上ですぅ!」


 ブバサァっと。

蛾の羽ばたき音としてはおかしな程によく聞こえる音を出しながら。

巨大な蛾アーマード・モスが上から襲い掛かって来た。

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