第517話 ドワーフの夢 2
新装備作成依頼を出しにステファニアさんの店を訪れた結果。ドワンドのジドさんにお願いする事に。
あれから一度も会ってないし、丁度良かったかもしれない。
「ところで…さっきから気になってたんだけど」
「何です?」
「あんた達、何かすんごい装備が増えてない?リリーちゃんの弓とかクリステアちゃんの鎧とかルチーナちゃんの斧とか!」
「私も気になってた!よく見せて!」
「私にも見せてくれ」
「あ、はいですぅ」
「わ、分かりました。見せます、というか脱ぎますから、無理矢理脱がせないで下さい」
「はい、どうぞ」
そういえばステファニアさん達には見せてなかったか。流石に目聡い。ドワンドに行く時には隠さないと。
「ふぅ…満足したわ。ありがとうね」
『…流石の僕もオカマドワーフに触られたのは初めてだよ…』
「あはは…」
ウルが何かショックを受けてる風だが…弓に触覚とかあるのだろうか?
ステファニアさん達の準備を待ってドワンドへ。
この街は相変わらずで、どこの工房も絶讃フル稼働中。
やっぱりちょっと煙たい。
「という訳です、師匠。受けてみませんか?」
「……」
「ええ。ジュン様、例の武具とインゴットを師匠にも見せてくれるかしら?」
「あ、はい」
ジドさんと再会して挨拶も程々に。
早速本題へと移った。聖女の遺産とインゴットを受け取ったジドさんの眼は鋭く。ステファニアさん以上に熟考してるようだ。
「どうです?これ程の仕事です、受けてみませんか?」
「……」
「はい、材料は揃ってます。師匠さえその気なら今すぐにでも…」
「……」
「え?いや、それは…」
「……」
「はあ、それなら…」
「相変わらずウチには二人の会話が解らないわ」
「うん。私も」
勿論ボクも解らない。
何故あれで会話が成立してるんだろう?
「あのね、ジュン様。ジュン様の防具一式、今ある?」
「はい?ありますが?」
「出してくれる?」
言われるままにだしてジドさんに渡す。
それをジッと見てジドさんはまた熟考する。
「……」
「え?ええと…」
「ああ…あのね、ジュン様。師匠はこのインゴットを使ってジュン様の防具を作り直させて欲しいって言ってるの」
「え?」
「……」
「勿論依頼の光の盾を出す能力は付与する。今付いてる能力も消したりしない。魔法布で作られてる部分にも手を加えて新たな能力も付けて最高の物に仕上げてみせるって言ってるわ」
つまりはボクの防具一式を強化してくれると。
ん〜…ボクは腕輪とか作って貰って人数分作って貰いたかったんだが…
「……」
「それと依頼通りに人数分の腕輪も作る。足りない素材は自前で用意するからって言ってるわ」
「え?しかし…」
「……」
「頼む。これ程のオリハルコンで防具一式作れば神様の祝福を頂けるかもしれない。同じ物を沢山作る前提の物では神様の祝福は頂けない。だから頼む。って師匠は言ってるわ。私からもお願い、ジュン様」
量産品を作るのでは無く完全なワンオフを作りたいという事か。その方が神様の祝福を貰えやすいと。
「分かりました。お願いします」
「……!」
「ありがとう、ジュン様」
「……」
「はい。盾と腕輪の方は私とステンナでやります。師匠はジュン様の防具に集中してください」
「師匠!私もやるよ!」
それから依頼の詳細を詰め。
ステファニアさん達はそのままジドさんの家に残り、ボク達はエルムバーンに戻った。
そして三日後。一度様子を見にジドさんの家に行くと…
「全く進んでない?」
「そうなのよ…参ったわ…まさかこんな問題が出るなんて」
「……」
「ですね…どうしたら…」
依頼を出して三日。盾と腕輪の製作は順調なのだがボクの防具一式…ジドさんの仕事が全く進んでいないらしい。原因は…
「硬すぎるのよ。加工するために溶かす事は何とか出来ても、普通のハンマーじゃ直ぐにダメになる。アダマンタイト製のハンマーですらダメだったの」
ジドさんの工房には砕けたハンマーが沢山打ち捨てられてる。
アダマンタイト製のハンマーでもダメとなると…
「アダマンタイトとオリハルコンの合金でハンマーを作るしか無いわ。炉の出力も上げて」
「何だ、一応解決策はあるんじゃない」
「それがね…あるにはあるんだけど…」
新しいハンマーを作るの必要な素材が足りないそうだ。
腕輪や盾を作るのに必要なオリハルコンはジドさんが少しずつ貯めた分で何とかなった。
だが新しいハンマーを作るとなると、オリハルコンが絶対的に足りないという。
「……」
「ですね…オリハルコンは希少な金属…産地は何処も予約でいっぱいでしょう。簡単には手に入りませんね…」
「此処の鉱山からは?出ないの?」
「此処の鉱山からも昔は採れたんだけどね。今じゃオリハルコンの鉱脈は完全に枯渇…新しい鉱脈も発見されて…ませんよね、師匠?」
「……」
コクコクと、頷くジドさん。
そしてボクをジッと見てくる。申し訳なさそうな顔で。
「急いでませんから気にしないでください。兎に角、オリハルコンをどうにかして手に入れるしか無いという事ですね?」
「……」
「そうなるわね…」
「わかりました。何とかします」
「何とか出来るの?」
「これでも魔王子ですから。幾つかのオリハルコン産出国とも繋がりがあります。交渉してみますよ」
「……」
「ごめんなさいね…」
オリハルコン産出国…先ずはヴォルフス魔王国に打診してみるか。
「という事なんですが…どうにか都合がつきますか?」
「ジュン殿の頼みであれば何とかしたいのは山々なんですが…もう既にオリハルコンに関しては三年先まで契約済でして…申し訳無い」
「産出された鉱山物資についてはエルムバーン魔王国に優先契約権がある筈では?父様」
ヴォルフス魔王国でシブリアン様との交渉なのでカミーユさん達にも来てもらったのだが…どうやら無理らしい。
「確かにそうなのだが…エルムバーンとの契約にはオリハルコンは含まれていなかった。我が国で少しずつでも蓄えておこうか、とも考えたのだが…」
財政立て直しを優先した、と。
ヴォルフス魔王国の鉱脈は開発が始まったばかりだから余裕があるかと思ったが…甘かった。
そうなると次は…
「うむ…他ならぬジュン殿の頼みだ。何とか都合をつけたい所だが…今すぐに、となると難しいな…」
「そうですか…」
オリハルコン産出量世界第一位のアレクサンドリス王国に来てベルナルドゥ陛下と交渉中だが…やはり無理なようだ。
「契約相手の国や大商会の会長と直接交渉するしかなかろう。だが相手がジュン殿だと解ると恐らくは…」
「「「婚約を迫られるのは間違いありませんね」」」
「出た、三つ子」
「やっぱり誰が誰なのか見分けがつかない…」
交渉中、アレクサンドリス王家の三つ子。
イザベラさん、イザベリさん、イザベルさんの三人がやって来た。
相変わらず服装も髪型も同じで、ボクも魔力の違いを見なければ判別出来ない。
そういえば三つ子からオリハルコンの鉱石を貰ったけど、今は無いのだろうか?
「アレはあのクイズをやる為にお父様に無理を言って頂いた物で…」
「あの三つしか私達は持ってなかったのです」
「ジュン様に正解されて以後、あのクイズはしておりませんし…」
「「「御期待に添えず申し訳ありません」」」
「いえ、そんな」
相変わらず打ち合わせ無しでユニゾン出来るんだな。
ユニゾンで謝られると本気で謝ってなかったとしても本気だと受け止めてしまいそうだ。
「ですが…多少無茶な方法で宜しければ御教え出来ます」
「無茶な方法?」
「はい。アースワームという魔獣は御存知ですか?」
「はい。ミスリルを好んで食べる魔獣ですよね?」
「お前達、その話は…」
「お話しするだけですよ、お父様」
「それにジュン様ならきっと大丈夫です」
「…続けてください」
察するに危険が伴う方法なんだろう。
実際にやるかどうかは別として、先ずは話を聞こう。
「アースワームは成虫になるとアーマード・モスという蛾の魔獣になるのですが…」
「「「アレって幼虫だったの!?」」」
思わずアイとユウとでユニゾンしてしまった。
しかし、あの大きさで幼虫…どんだけデカい蛾になるんだ。
「その様子ではアースワームを倒した事があるのですね?」
「はい、一度…それで、そのアーマード・モスという魔獣が何か?」
「はい。アースワームが成虫になる時、普通の蛾と同じように繭を作り蛹となるのですが」
「銀をたっぷり食べたアースワームが作る繭は銀製。鉄をたっぷり食べたら鉄製の繭になります」
「ですがミスリルをたっぷりと食べたアースワームが作る繭はオリハルコンの糸なのです」
「つまり…アーマード・モスが発見された場所へ行き、残った繭を探せ、と?」
「はい。その通りです」
「ですが、当然アーマード・モスと遭遇する可能性が高いです」
「アースワームは発見、即排除が推奨されてる魔獣。故にアーマード・モスの発見例は少なく、更にミスリルをたっぷり食べた個体となるとかなり希少な存在と言えます」
「「「そしてアーマード・モスは討伐難度Sの危険な魔獣。充分にお気をつけください」」」
まるでもう探しに行く事が決定してるかのような物言いですけども。
…でも、実際それしか無いのか…新しい武具を作って貰うだけの筈が、レアな大物魔獣を探す事になろうとは。
ハァ…都合良く見つかるだろうか…




