第516話 ドワーフの夢 1
「へぇ~それがハーディン陛下から貰った金属?」
「そ。で、これが魔獣から出て来た真珠」
「デカいわね…」
巨大アンモナイトを討伐した礼として貰ったインゴット。
これと以前にアレクサンドリス王国の三つ子から貰ったオリハルコンの鉱石。
これらを使って何か新装備を作ろうと、皆で相談する事に。
「はい!師匠!私も新装備が欲しいです!」
「悪いけど、今回は『マスター』のメンバーの装備を作るから」
「えー…そんなぁ~…」
「仕方ないわ、諦めなさい。それにメリッサは何かと装備を強請って買って貰ってるじゃない」
「という事はアタシらもダメっスね~」
「私達も別パーティーだもんね」
「そもそも現在の装備も頂いた物ですし」
「これ以上を求めるなんてダメよ。冒険者なら、これ以上は自分で装備を整えなくては。私のパーティーメンバーになった以上、そのつもりで居て貰うわよ、メリッサ」
「で、でも~…師匠と同じ装備したいじゃないですか!」
「同じ装備をするのは構わないわ。ただ、するなら自分の力で用意しなさいって事よ」
「うう…」
カミーユさん達とメリッサとマリーダさんは結局パーティーを組んだ。
パーティー名は『ヘキサグラム』…六芒星の事だ。
ずっとあーだこーだと談義し、長時間決まらないままだったのでユウが決めていた。
六人だから六芒星…安直ではあるが、悪くはないと思う。無難で。
どうして自分のパーティー名を決める時には発揮されなかったのだろう。
因みに彼女達は無事にEランクにランクアップした。
「真珠は飾るか宝物庫に入れておくしか無いとして…貝殻も何かに使うんだよね?」
「うん。貝殻は盾なんかいいんじゃないかなって思ってる」
「ああ~いいかもしれませんねー大量にあるみたいですし…親衛隊で盾使ってる人、全員に配れるんじゃないですかー?」
親衛隊で盾を使ってる人…何人居たっけ。
結構多いように思うが…ユリアは使ってたな。
「貝殻はそれでいいとして…このインゴットはどうするの?」
「ん~…皆は何かある?こんな装備が欲しい、とか」
「ん~…ウチは特に。今の装備で満足してるし」
「私も特にございません」
「オレもだ。というかだな、ジュン様。この金属はどの程度のモノなんだ?」
「さぁ…ユウ?」
「はいはい、久々の鑑定眼眼鏡の出番ね。えっと…ハイオリハルコニュウムって出るよ」
「なにそれ?」
「簡単に言えば…超上品質なオリハルコン、かな。上品質なオリハルコンを更に圧縮して固められた物。普通のオリハルコンと比べて段違い品質だってさ」
それはそれは…また何か凄そうな物をサラっとくれたのね…しかしそんな物を使って作る物となると慎重に決めたいな。
「なら凄い武具が作れそうだね。でも…ウチらはもう充分な装備してるし、新装備となると…リリーは何かある?」
「えっとぉ…特には?シャクティはどうですぅ?」
「無いですねー。何か思い付くまでとって置くのも手だと思いますけどー」
「しかし、眠らせておくのも少々勿体無いですね」
確かに。結局世界樹の実もまだ残ったままだし。
今決めないと、これもいつまでも使わずにいて倉庫の肥やしになりそうだ。
「あのさ、僕は防具を充実させたらどうかなって思うけど」
「というと?」
「だってさ、武器は勇者の遺物で充実してるし。クリステアさんの鎧くらいでしょ?勇者の遺物で防具なのは」
「ん。あとアイシスの腕輪と服」
「あ。そうだった」
その服は返して貰わなきゃダメなんだから忘れないでよ…しかしアイシスの言いたい事は解った。確かに新装備を作るなら防具が良いかもしれない。
そして一つ思い出した事がある。
「だったらさ、聖女エルミネアの遺産。アレの能力を再現出来たらって、以前思ったんだけど…どうかな?」
「ああ〜…アレね」
「神族が作った武具の事ですね。確かにアレは高い能力を持っていましたから再現出来れば大きな力になるでしょうが…再現出来るのですか?」
「それはステファニアさんの腕次第かな」
他に意見も無かったので再現出来るなら作って貰おうという話に。
早速、ステファニアさんに依頼に行ったのだが、アッサリと無理だと言われてしまった。だが断られたのでは無く、話を聞いただけで再現は無理。実物を見せてもらえない事には…という話だった。
「という訳で。聖女エルミネアの遺産、貸して」
「挨拶もそこそこに唐突ですね…ジュン様」
「愛する者同士の再会に相応しい言葉がもっと他にあるだろう…」
いつ来ても良いと言われて居たので早速エルミネア教国へ。
エルとミネアの二人は以前に比べたらかなり仲が良くなったようだ。
「ま、サッサと改革を終わらせてエルムバーンに行きたいからな。その為に協力してるだけだ」
「枢機卿が五名も死んでしまった穴は大きく…まだまだ改革には時間が掛かりそうですね」
「だが来年には必ず行くから。待っていてくれ」
「遊びに来るのは構わないけどね。で、貸して貰える?聖女エルミネアの遺産」
「そうですね…他の人には絶対に貸しませんが、ジュン様なら良いでしょう。必ずジュン様が返しに来て下さいね」
「ありがと。助かるよ」
無事に聖女エルミネアの遺産を借り。
暫く雑談に興じた後、エルムバーンに戻った。
そして再びステファニアさんの店へ。
聖女エルミネアの遺産を見た途端ステファニアさんの眼つきが変わり、一緒に見てるドミニーさんとステンナさんの眼も同様だ。
真剣そのものである。
「…ふう。凄いわね…流石は神族が作った武具ね…」
「全くな…これ程とは…」
「どうやって作ったのかな…」
武具を見終えた三人の意見は同じらしい。やはりドワーフから見ても凄い物のようだ。
「どうですか?再現は可能ですか?」
「…全く同じ物を作るのは不可能だわ。能力だけを再現するなら…一部を除いて不可能ではないと思うけど…どうかしら、ステンナ?」
「そうだな…能力だけならなんとかなるだろう。多分な」
「能力だけって…それが再現出来るなら同じ物作れるって事じゃないの?」
「そんな簡単な事じゃないのよ、アイ様」
「これが一番解りやすいかな」
ステンナさんが示したのは聖衣。これの何が解りやすいんだろう?
「ええと?」
「解らないか?よく見てみるんだ」
「布地の部分と金属の部分。その境目を見て」
「布地と金属の部分の境目?」
聖衣は聖職者が着る法衣に肩当てや胸当てを付けたような物。
その胸当てや肩当てと法衣の部分の境目を見ろって事か。
「…繋ぎ目が無い?」
「その通りよ、ユウ様」
「え?」
言われてみれば確かに…まるで布地と金属が一体化してるかのような?
それに法衣の裏地を見ても縫い目も無い。これは?
「不思議よね。まるで金属を途中から布に変えたような。或いは布を金属に変えたのか」
「こっちの盾と武器もな。複数の金属が使われて緻密な紋様が刻まれてるのに繋ぎ目が無い。鋳造でもこうはいかんな」
「私にはどうやって作ったのかサッパリだよ」
流石は神族が作った武具という事か。まさかドワーフで最高峰の腕を持つステファニアさんでもお手上げとは。しかし、此方としては能力だけの再現で充分なわけで。
「盾の能力…光の盾が出る能力だけでも再現出来ますか?」
「可能だよ。材料さえ揃えばね」
「何か特殊な物が必要なんですか?」
「世界樹の枝。これは必須だね。後は…出来るだけ純度の高い魔石。後は出来るならオリハルコン。ミスリルでも代用は効くけど、完成度の高い品が欲しいならオリハルコンだね」
「そうね。そんな所ね」
全部あるなぁ。世界樹の枝は以前貰った物がまだあるし。
純度の高い魔石は『暴風の谷』で拾った天然魔石でいけるはず。
足りなければ貰いに行けばいいし。
オリハルコンは…
「オリハルコンはこれでいいですか?」
「ん?…こ、これは!」
「な、なんだいこれ!とんでもない上物じゃないか!」
「ハイオリハルコニュウムという物で…最高のオリハルコンだと思って貰えれば」
流石はドワーフ。一目見ただけで只のオリハルコンでは無いと見抜いたらしい。聖女の遺産を見た時よりも興味をそそられてるようだ。
「これは…これなら充分よ。最高の物が作れるわよ」
「よかった。それともう一つ注文があって。これを」
「これは?貝殻かしら?」
「ふむ…確かに貝殻だな。だがかなりの硬さだ。アダマンタイト並…だが段違いに軽いな。魔獣素材か?」
「はい。それを使って盾を作って貰えますか。このオリハルコンの鉱石も追加で提供しますし」
「……」
「スティーブ?どうした?」
「師匠?」
何やらステファニアさんが考え込んでしまった。何か問題があっただろうか?
「これ程の仕事なら……ねぇ、ジュン様。この仕事、よかったら私の師匠に回して貰えないかしら」
「師匠?ドワンドのジドさんにですか?」
「ええ。師匠はまだ夢を諦めて無いの。まだ鍛冶を続けてるって手紙に書いてあったしね。これ程の仕事ならもしかするかもしれない。だから…」
ジドさんの夢…神様の祝福を受けた武具を作る事、か。
その夢を叶える手助けがしたい、と。
「分かりました。ステファニアさんがそれでいいなら」
「ありがとう、ジュン様。ドワンドには私も一緒に行くわ」
という訳で。ドワンドに行ってジドさんに作って貰う事に。
転移で行けるし、武具を作って貰うだけだ。面倒な事にはならないだろう。
そう思っていた時期がボクにもありました。




