第514話 未知との遭遇 7
海底国家ムーを襲った魔獣、巨大アンモナイトは倒した。
暫く様子を見たが再生し、復活する様子は無し。
リヴァさんと周辺を探索したが新たな巨大アンモナイトは発見出来なかった。
二匹の巨大アンモナイトは番だったらしく、城の内部にはやはり卵を産み付けていた。
本来のアンモナイトの生態等知らないから、これが普通のアンモナイトと同じ繁殖行動なのか魔獣になったから変化した結果なのかは解らないが、数える気にならない数の卵があった。
卵からして巨大なのでちょっと気持ち悪い。
これだけの数の巨大アンモナイトが生まれる事を考えたら、やはり倒しに来たのは間違いじゃなかったと思う。増え続けたらいつかはセイレンの人魚族の領域にも入り込んで来ただろうから。
城という名の岩山は焼け焦げが出来ただけで、内部は無事だった。
折角なので見学させてもらったが…灯りのある洞窟を歩いてる気分だった。
調度品というのも、巨大な貝殻だったりクジラの骨だったり。
地上にあるような絵だったり陶器だったり木製の家具等は一切存在しなかった。
代わりに光る植物が飾られてはいたが。
「ジュン様、リヴァイアサン様。こちらを御納めください」
「これは?金属のインゴットのようですが」
「我らムーの民が深海で集めた鉱石から作られた物。深海の水圧により圧縮され一つ一つの鉱石からはほんの僅かしか採れない非常に貴重な物です。ムーの民の間では神の鉱石として伝わっており、長年に渡って集めて来た物です」
「宜しいのですか?そんな貴重な物を」
「良いのです。元々、我らにはこれを加工する技術はありません。それにいつか現れる救世主様に御渡しするように集められて来た物。ならばジュン様に御渡しするのが正しい。どうぞ、御納めください」
…貰うべきなんだろうか?
今回の巨大アンモナイトの襲撃はリヴァさんが原因で間違いないと思っていたが今では疑問だ。
…拒否すると疑われる、か。
「分かりました。有難く頂きます」
「はい。それから此方も」
「うわ…何ですか、それ。真珠?」
「綺麗だな!」
「あの魔獣の体内から出て来た物です。魔石もあります。それと貝殻も。アレだけ堅ければ加工出来れば何かの役に立つでしょう」
それは確かに。クリステアの盾とかアイとユウの防具とか作るのに良さそうだ。
真珠は人の頭くらいありそうなくらいデカい。淡いピンク色の真珠だ。
これは…どうしようかな。飾るくらいしか使い道無さそうだけど…アイとかユウとか、案外宝石の類好きだし。
貰っておくか。
「分かりました、有難く頂きます」
「はい。御二人が倒された魔獣ですから。遠慮なく…おお!?」
魔法の袋にしまったのを驚かれてしまった。
後は…外にある貝殻と巨大魔石を回収して帰るか。
「それじゃボク達はこれで。また会う事は…難しいですかね」
「お、お待ちください。今、宴の準備をさせていますので」
「最高の魚や貝を用意させます。各地に散った民達も此方に向ってますし…」
「いや、そう言われても…」
魚や貝ってまた生で丸齧りでしょ?
しかも今はもうリヴァさんの作った海水の無いフィールドは解除されて海中。
そこで生魚とか丸齧りしたら色々と酷い事になる。
それに何より、そろそろ魔力は兎も角体力が限界だ。
何しろ此処にいるだけで魔力と体力を消耗するし…
「皆も心配してるでしょうから。兎に角一度戻ります」
「しかし…」
「じゃあMeが残ろうか?主は帰っていいぞ?Meなら一人で帰れるしな!」
「……」
此処にリヴァさんを一人残して…ダメだ。
めんどくさい未来が待ってる予感しかしない。
「ダメですよ。リヴァさんが帰らなくても皆が心配しますから」
「う…そうだな…でもぉ~…」
ん~…ハーディン陛下達の気持ちを無碍にするのも悪いというリヴァさんの気持ちも分かる。
しかし…申し訳ないが本当にそろそろヤバい。もう数時間は潜りっぱなしなのだ。
「……じゃあ折衷案で。明日…いや、三日後に海上でクジラに乗って待っててください。その時なら各地に散ってるっていう他のムーの民もある程度戻ってるでしょう?ボクの父や母に婚約者達も連れて来ますから」
「なるほど…わかりました!では明後日に海上で!」
「皆と宴か…そっちの方がいいな!」
リヴァさんも納得してくれたようだし、帰ろう。
なんかどんどん生魚持って集まって来るムーの人が増えてるし。
ていうか、アレなに?ゴブリンシャークとかリュウグウノツカイみたいな魚持って来てるけど、それ丸齧りすんの?
いや、ボクに丸齧りさせようと?冗談でしょ?ボクは絶対に嫌ですよ?
「それじゃリヴァさん、帰りましょう」
「うん」
これ以上此処に居てはいけない。色んな意味で。
「ただいま…」
「ただいま!」
「あ!お帰り、お兄ちゃん!」
「お帰り、ジュン。リヴァさんも。無事に終わった?」
「うん…終わった。問題もあるけど…兎に角疲れた。御風呂に入って寝るとするよ」
「問題?って何があったの?」
「後で話すよ…取り合えず御風呂に入らせて。ノエラ」
「はい。御入浴の準備も私の準備も完璧です」
「……一人で入らせてね」
「ああ…ジュン様の事が心配で心配で…御無事にお帰りになるのを願い寝ずに過ごした三日間。とても疲れてしまいました。そんな私には癒しが必要だと思うのですが…ジュン様はどう思われますか?」
「ぐっ……」
強引に出発した事を根に持ってるな…しかも今までのように強引に進めようとするのではなく、弱点を突いて来た。仕方ない…
「わかった…いいよ、一緒に入ろう」
「え?よ、よろしいのですか?そんなあっさり…」
「そういう事ならウチも一緒に」
「私もいいよね、お兄ちゃん」
「……予想してたよ」
下手に事態を回避しようとするより、受け入れて早く寝てしまおう。大丈夫、御風呂に入るだけだ。無心だ、無心で入るのだ。
「という事は私もいいですよねー。リリーさんも行きましょー」
「リ、リリーもですか?は、はいですぅ…あ、リヴァさんも一緒ですぅ」
「え…Meもか?…主?」
「……想定の範囲内ですよ」
大丈夫だ。この場に居るんだからシャクティ達も乗っかって来るのは想定の範囲内。だからもう早く風呂に入って寝かせて…
「ちょっとお待ちください!そういう事なら私も御一緒します!」
「あ、ちょっと!パメラ姉さん!」
「パメラさん?聞いてたの?」
「ジュンさんが戻られたと聞きましたので!無事の御帰りを祝福しようと思いまして!それで部屋まで来ましたら聞き捨てならない会話が聞こえて来ましたので!」
「……盗み聞きじゃないですか」
結局。婚約者全員どころか…ママ上まで一緒に入る事になり。
ママ上に連行されたカミーユさん達まで一緒の御風呂に入る事になった。
王族用の御風呂ではちょっと狭いくらいの大人数になってしまったので、大人数で入れる使用人用の御風呂を一時貸切で。
眼の前はパラダイスが広がっている筈…ボクの理性は最後までもつだろうか。
「え?二匹居たの?」
「うん…どういう事だと思う?」
「ん~…分裂したとか?」
「普通に考えたらリヴァさんが力を分け与えた個体が繁殖したのではないか?」
「もしそうなら…二匹だけじゃなく、他にも居るかもしれませんね」
本当にそうなら…何処かで繁殖に成功してる番が何処かにいるかもしれないな。
何か対策を立てる必要があるな。しかし相手は深海…どうしたものか。
「ところでジュンさん、何でタオルで顔隠してるの?」
「……気にしないでください、エミリエンヌさん」
「ジュン~?タオルを巻いて湯舟に浸かるのはマナー違反よ?」
「……見逃してください、お母様」
「タオルを巻いて湯舟に浸かるのはマナー違反だってさ、レヴィ」
「とっととタオルを外すのー!」
「や、やめてください、ティナさん!いやー!」
「イーノも大人しくタオルを取ったらどうだ?」
「い、いやだよ…どうしてそんなに堂々としてるの、カタリナは…」
「私達は既に一度見られてるしな」
「え?どういう事それ」
ありましたね、そんな事。すっかり忘れて…ませんけどね。心の想い出フォルダは健在です。
「そんな事よりさ。もしカタリナの言うように繁殖に成功してるなら何か対策を立てないと拙いんじゃない?」
「アイシス殿が至極真っ当な意見を…珍しいですね」
「クリステアさん酷い!」
「ほんと、珍しい」
「セリアも酷い!」
「アイシスの事は置いておいて。対策を立てる必要があるのはボクも同意見。ぜひ皆の意見を聞きたいとこだけど…兎に角疲れたのでもう寝たいのですが。もうあがりません?」
「あ、その事なら心配するな主!Meに任せておけ!」
「え?何か策があるんですか?」
「ああ!何も心配は…って、見るなー!」
おっと…驚いてタオルを外してしまった。一瞬だけ見えた世界は楽園だった。
今回も心の想い出フォルダにしっかりと保存しよう。
「い、今、私も見られた?見られたわよね?」
「計画通りですね、カミーユ様」
「これでジュン様に責任を取ってもらえますね」
「これでアタシらも成人後にはジュン様の妾っスね!」
「わ、私は妾じゃ困るわよ!?」
「その前にこの状況で裸見られたからって責任を取れと言うのは理不尽極まりないですよー」
しかし、リヴァさん…本当に何とか出来るのか?経緯を考えると不安なんだが…信用していいものかどうか…ああ、ダメだ。
疲労がピークで眠気が酷い。考えが纏まらない…
「ところでジュン~?こんな素晴らしい光景を眼にして何か言う事は無いの?」
「見てないので何とも言えません、お母様」
「じゃあ見なさい」
「勘弁してください…」
「…んっもう!どうして私の息子で御義父様の孫なのにそんなに初心なの?男ならこの状況で何もしないとかありえないわよ?ルシールの方がよっぽど男らしいわ」
「婚約者だけしかいないのなら兎も角、母親と婚約者以外の女性までいるのにどうしろと」
「エリザ様…私は女ですが…」
「でしたら、その緩み切った顔をどうにかした方がいいと思いますわよ…」
「全くですわ」
「ルシールさんの事はもう諦めて、皆先に上がってください。御願いしますから」
「私の何を諦めろと…」
いいからもう上がってください…早く寝たいです…いっそこのまま此処で…寝たらどうなるか解らないな。
無事に乗り切れ、ボク!




