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第511話 未知との遭遇 4

「という訳でして…【クラミツハ】を貸して頂けませんか?」


「ん~…ジュン君の御願いなら聞いてあげたいんだけど…アレはフレムリーラ魔王家の宝で国宝だから。いくらジュン君の御願いでも、はいそうですかと簡単には貸し出せないのよねぇ」


 リヴァさんの衝撃の自供により。

何としてもボク達で海底国家ムーを襲った魔獣を倒さなければならなくなった。

そしてボクが深海まで行く手段として、シャンゼ様から【クラミツハ】を借り受けなければならない。

何としても。

その為に、ボクは今フレムリーラでシャンゼ様の私室に居るのだが…やはり簡単には貸してくれそうにはない。


「そこをなんとか…御願い出来ませんか?」


「ん~…あ、何だったら私が行くわよ?私が倒してもいいんでしょ?」


「それはダメです。シャンゼ様を危険な目に会わせるわけにはいきませんから」


「んまっ。嬉しい事言ってくれるけど…やっぱり貸せないわ。だって貸したらジュン君が危険な場所に行くって事だもの。ジュン君を危険な目に会わせるわけにはいかないわ」


「そう来ますか…」


「ジュン君がどうしてそうまでしてその…ムーの民?…を助けたいのか知らないけど、私としてはジュン君の方がよっぽど大事なの。解ってくれるわよね?」


「そりゃ…理解は出来ますが…」


 人それぞれに優先順位がある。

シャンゼ様にとって見た事も聞いた事も無い国家と民より大事な物がある。

それは理解出来る。出来るが、此処で引き下がる訳には行かない。


「どうしてもダメですか?」


「ダ~メ」


「お父さんは、国として一つ借りとしてもいいと言っていましたが」


「アスラッド様も自分の子供には甘いわね~…でもダメ。私は別にタダで貸すのが嫌な訳じゃないのよ?さっきはああ言ったけど…対価が必要って言いたいんじゃないの」


「…仕方ない。この手だけは使いたく無かった…」


「え?何?ジュン君?ちょっと?」


「…ふ~」


「あふぅ!、ちょっ、ちょっと!ジュン君!そこは!ああっ!」


 ママ上の言う通りだった。

ママ上から聞いたシャンゼ様の弱い所…「そこを攻めればシャンゼちゃんはイチコロよ!」の言葉通り、イチコロだった。

耳に息を吹きかけ甘噛みして…いや、詳細を言葉にするのは止めよう。

ボクの精神がもたない。


「ふ…うふふ…さ、流石エリザ様の息子ね…まさかサキュバスの私をこんな手段で説得するなんて…」


「すみません。ほんとすみません。色々ごめんなさい!」


「うふふ…いいのよ。ちゃんとジュン君が返しに来てね」


「はい。それは必ず」


 我ながら最低な手段ではあったが…何とか【クラミツハ】は借り受ける事が出来た。

これで明日、ムーに向かう事が出来る。

だがその前に神様通信で一応確認だ。


「という訳です。リヴァさんの力を分け与えられた動物や魔獣は巨大化する可能性があるのは間違いないのでしょうか?」


『そうね。その子が言った通り、体質に合えばそういう事もあるでしょうね。まぁその魔獣はよっぽど相性が良かったんでしょうけと』


『全く…迂闊な事をしたのう』


「うう…ごめんなさい…」


 神様のお墨付きが出ちゃったか…やはりボク達で何とかしなければならないようだ。


「それで、アフロディーテ様。リヴァさんは深海何mまで潜る事が出来るか、解ります?」


『何処までも潜れるわよ。レヴィアは水中でも地上と同じように、本領を発揮出来る筈よ』


「え?そうだったの?」


「何で本人が知らないのよ」


「だって聞いた事無いし。海に潜ったのだって、去年が初めてだし」


『そう言えば教えた事無かったかしらねぇ。本能で解るかと思ったのだけど。じゃあ今から誰も居ない海へ行きなさい。教えてあげる』


「うん!分かった!じゃあ行って来る!」


「あ…ちょっと!…もう行っちゃった」


「明日出発するんで、あまり遅くならないように言ってくださいねアフロディーテ様」


『わかったわ。じゃあね』


『話は終わったようじゃの。それじゃあの』


「あ、待った。バカ神の方はどうなったのよ」


『ん?心配するな!その世界に居ると分かって世界の要にも目星が付いた!奴に吠え面かかせる準備は順調じゃい!ワハハハハ!どうしてくれようかのう!散々手間かけさせてくれたからのう!』


「…どうしてかなぁ。ウチの不安は増す一方だよ?」


「右に同じ…」


「私も」


『じゃから心配するなって言うとるじゃろ…」


 信用と信頼は実績の積み重ねですから。過去の経験上どうしても不安になるな。


「…でさ。本当に明日はジュンとリヴァさんの二人だけで行くの?」


「うん。仕方ないだろ?」


「う~…神様に深海に行ける神器でも貰えば良かったかな…」


「流石にこんな短時間でそんな都合のいい物用意したら怪しまれるよ」


「私も行きたいけど…気を付けてね、お兄ちゃん」


「分かってるよ」


 そして翌日。

反対するノエラ達を何とか説き伏せ。

ボクとリヴァさんの二人で洞窟へ。


「おぉ、来てくれたかジュン殿。して、相談の結果は?」


「はい。魔獣の討伐、お引受け致します」


「おお!感謝する!して、いつ出発する?此方はいつでも構わないが」


「では今から向かいましょう」


「そうか、では…な、何?今から?」


「はい。今から」


「いや、しかし…そなたらはたった二人ではないか。二人だけであの魔獣を倒すと言うのか?」


「そちらの女性は昨日はお会いしませんでしたが…お強いのですか?」


「はい。彼女は恐らくは世界最強です。ボクが行かなくても彼女一人で何とかなるかもしれません。それに地上人は本来、海の底まで行く術を持ちません。軍を連れて行くのは不可能ですね」


「む、むう…」


「海の底に行けないなんて…不便な生き物ですこと…」


 海底人からすればそう感じるモノなのかもしれないな。

…そう言えば海底人は地上で問題無く活動出来るのか?

見た所、出来てはいるようだが。


「あの、逆に皆さんは地上での活動が出来るのですか?見た所平気そうですが」


「一応…であるがな。こういう湿り気の強い場所かすぐ水中に戻れる場所でなければ無理だ。エラが完全に乾いてしまったら危険だ」


 つまり、あまり内陸には行けない、と。

それも十日間もの間何も出来ずにいた理由か。


「何にせよ、此処から離れる事が出来るなら何よりです。私、こんな所で生活するのはもううんざりです。早く帰りましょう」


「待て、話はまだ終わっておらん。ジュン殿、本当に貴殿ら二人で大丈夫なのか?相手は厶ーの戦士団を壊滅させた化け物なのだぞ?それをたった二人で倒すなと…」


「Meが居れば大丈夫だ!新しい力も身につけたしな!全て任せておけ!」


「……」


「御疑いになるのは分かりますが…彼女の本当の姿を見たら納得出来ると思います」


「本当の姿?」


「はい。水中で御見せしますから、厶ーへ向かいましょう。ただ、彼女の本当の姿については他言無用でお願いしますね」


「うむ…」


 未だ半信半疑といったハーディン陛下ら厶ーの民御一行と共に。

海底国家ムーへ移動を開始した。


 そして移動に掛かる時間を聞いて無かったのが失敗だったと直ぐに気付く事になるのだった。

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