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第510話 未知との遭遇 3

 コタンから城に戻り。

急ぎ父アスラッドやカタリナさん達も集まってもらった。

こういう時、各国の王族が集まっているというのは情報が集めやすくて助かる。


「という訳です」


「にわかには信じられんが…」


「海底国家ムー…聞いた事も無いわねぇ」


「ヴェルリアでもそんな話は聞いた事がありません。ジュン、その話は本当なのか?」


「そうよね…いえ、ジュンさんの事を疑う訳じゃなく、その人達が言ってる事が本当なのか、という意味ですよ?」


「マリーダさん」


「はい。私の眼は彼らが…ハーディン陛下が言っている事に嘘は無いと判断しました。私達を騙そうという気配もありませんでした」


「姉上が言うからには間違いありませんね!」


 ハーディン陛下との会話中、マリーダさんには目線で確認していた。

ハーディン陛下は何一つ嘘を吐いていなかった。ついでに言うとレムリアさんも…


「なるほどなぁ…しっかし、お前は…珍しい存在を引き寄せる才能でもあるのか?いや、今更か…」


「ほんとっスよね~いやぁ、話に聞いてはいたっスっけど、まさか世界で初めて海底人との接触なんて果たすとは。とんでもない引きの強さっス」


「本当にね。私は正直ゴブリンの群れでお腹一杯だったんだけど…凄いですね、ジュン様」


「私もです。ゴブリンの後は流石に今日はもう何も無いだろうと本心では思っていたのですが…最後の最後にとんでもない事態に遭遇しましたね。ジュン様の引きの強さは本物です」


「貴女達、そろそろ止めないと…」


「ハッハッハッ…君達後でお仕置きね」


 遂にパパ上にまでそんな評価を…否定出来ないのが悔しい。


「それで…この中では一番海に詳しいシャンタルさんとエミリエンヌさんはどうです?」


「伝承か何かでもいいから、何か無い?」


「ん~…あたしは知らないなぁ。お姉ちゃんは何か知ってる?」


「ほんの少しだけ…セイレンの書庫にある古い本に世界の海の何処かに幻の都がある、とだけ。海底にあるとは書いていなかったですが…恐らくは」


「幻の都…」


 しかし、それだけか。人魚族でも知られて無いということは予想通り、人魚でも行けないような深海にあるんだろうな。


「それで、お前自身はどうするつもりなんだ?」


「ジュンの事だから助けるつもりなんでしょ?」


「…つもりはありますが…幾つかクリアしないといけない条件がありますね」


「条件?」


「はい。先ず深海…深い海の底まで行く方法です」


「え?そんなの…何だっけ…海で使ってたあのキラキラのゴーレムを使えばいいんじゃないの?」


「アレだと恐らく途中までしか行けないんだよ、レティシア」


「何でよ?」


「水圧で潰れちゃうからね」


「水圧?…って、何よ」


「簡単に言えば…ええと…水って重いでしょ?海の底にいると上にある海水の重みが圧し掛かって来るんだ。それは深く潜れば潜る程に重くなって行く。ムーがどの位深い場所にあるのか知らないけど…今まで発見されて無い事を考えると相当に深い場所にあると思う。あのダイアゴーレムじゃあ…途中で壊れちゃうかな、多分」


 現代地球の技術で作った潜水艦でも精々数百メートルが限界深度だと聞いた事がある。

マリアナ海溝の最も深い場所に行った人間が居る事も知っているが…特殊な潜水艇を用意しての話だし。

とてもじゃないがこちらの世界の技術で真似する事は出来ないだろう。


「だから深い海の底でも活動…もっと言えば戦闘もこなせる用意が必要になります。次に攻撃魔法の大部分が使えないって事が問題です。今のままだと殆ど武器だけで戦う事になりそうなので、攻撃手段を増やしたいですね」


「師匠の魔法なら何処で使おうが問題無いのでは?」


「水中で使うとなるとね。先ず火属性魔法はどうしても効果が弱まるし、雷属性の魔法は自分にもダメージが来る。他の魔法も威力はどうしても弱まるだろうね。あと転移魔法で地上に逃げるのも不可能になる」


「え?何故ですか?」


「水圧のせいだね。えっと…海に遊びに行った時、釣りをしたろう?その時、眼玉が飛び出て口からも何か飛び出してる魚を釣り上げたでしょ?」


「ああ…ありましたね、そんなの」


「アレは深い場所に居た魚が急速に海の上まで上げられる事で、眼やら胃袋なんかが飛び出しちゃうんだ。身体の中にある空気が水圧から解放された事で膨張し……まぁ、海の底から転移魔法で地上に戻るとあの魚みたいになって死ぬと思っていればいい」


「嫌な死に方ですね…」


 実際にやったら恐らくは弾け飛ぶんじゃないかって気がするけど。死ぬ事には変わり無いな。


「だけどまぁ…一応それらの問題を解決出来る手段はあるんです」


「ほう?その方法とはなんだ?」


「その方法とは…シャンゼ様次第ですね」


「シャンゼ様?シャンゼ・フレムリーラ様ですか?」


「ああ…アレですか。しかし、アレを借りる事が出来ても、行けるのはジュン殿一人になるのではないですか?」


 イーノさんの言う通り。

アレを使って行く事が出来るのは使用者のみ。

いつものように皆と一緒に行く事は出来ない。


「そうなりますね」


「ではダメですね」「じゃあダメだな」「ダメですぅ」「ダメですねー」


 予想通りにノエラ達は反対…と。しかし、だ。

一人、自力で行けそうな人が居る。


「というわけで、リヴァさん。リヴァさんはどの位の深さまで潜る事が出来ますか?」


「ん?Meか?そうだな~…シードラちゃんよりは深い場所まで行けるぞ?」


「シードラちゃんより?」


「うん。海に遊びに行った時、シードラちゃんと一緒に潜ったんだけどな!シードラちゃんが着いて来れないくらい深い海の底までは行けたぞ!」


「そんな事してたんですか…それってどの位の深さですか?」


「さぁ~?お日様の光は全く届かないくらい深くかな?全然苦しく無かったし、あそこよりまだまだ深い場所まで行けそうだぞ」


 なら大丈夫…か?人の姿では無理でも本来の姿に戻って貰えば行けるだろうか?


「あ!そう言えばその時さー。さっき主の話に出たイカと貝が合体したような奴と会ったぞ!」


「「「はい?」」」


「大きさは全然ちっさい奴だったけどな。精々人の顔くらいの大きさの。でも死に掛けてたからさ~Meの力を分けてやったんだ」


「力を…分けてやった?」


「うん。こんな感じ」


 リヴァさんがボクの手に触れると、何か暖かいモノが流れ込んで来る。

魔力とも違う何か…そして体中に力が漲る感覚。それはほんの少しの間だけの感覚だったが、確かに何か大きな力を感じた。


「今のは?」


「Meの…えっと生命エネルギーとか?何かよくわかんない力を主に分けてあげたんだよ。今のはほんのちょっとだけだったけど。海の底で会った奴に分けてあげたら凄い元気になってさ~ビューン!って感じで泳いで行っちゃった」


 何故でしょう。ものすっごく嫌な予感が。

非常に悪い推測が頭の中に浮かんで来てしまったのだが。


「リヴァさん。推測で構いませんが…リヴァさんの力を過剰に与えられた動物や魔獣が巨大化する可能性ってあります?」


「ん?そうだな~…Meの力の質が体質に合えば、そういう事もあるかもしれないな!」


「「「「「………」」」」」


「はい、皆さーん!今の話は絶対秘密!国家最重要機密の一つに指定しまーす!口外した者は厳罰に処されるので!」


「「「「「は、はい!」」」」」


「え?え?何でだ?」


「カミーユさん達も同様ですよ!破ったらヴォルフス魔王国とエルムバーン魔王国の関係は終ると思ってください!」


「は、はい…」


「しょ、承知致しました…」


「言っても誰も信じないと思いますけど…」


「というか、リヴァさんて何者なんスか?」


「それも秘密です!」


 まさかまさかの。海底国家ムーを襲った魔獣の正体はリヴァさんが生み出した怪物だったとは…いや、まだ確定したわけではないけども。ほぼ間違いないだろう。偶然と呼ぶには出来過ぎた話だし。


 しかし、これでハーディン陛下の要請を断る事は出来なくなったな…はぁ…

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