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第509話 未知との遭遇 2

誤字脱字報告有難う御座います。

 洞窟の奥に居る海底国家ムーの民とやらは凡そ五十名弱。わざわざ持って来たのか此処で作ったのか知らないが王は玉座に座ってる。王の見た目…上半身の外見は四十代の男性。その王の隣には…娘だろうか?王女らしき人物が座っている。


「我が国、海底国家ムーを救って欲しい」


「…というと?」


「今、海底国家ムーはかつてない危機を迎えているのだ。未知の魔獣に襲われてな」


「未知の魔獣…それはどのような?」


「超巨大な…イカのような貝のような。貝とイカが合体したような化け物だ」


 貝とイカが合体?

元々イカは貝の仲間…いや、今はそんな事はどうでもいい。


「何故ボクに?」


「その化け物にはムーの民では歯が立たず…我々は逃げるしか無かったのだ。民の多くは奴に捕食され、残った者はチリヂリに散った。もはや我らでは奴を倒せぬ。其処で思い出したのが神から直々に賛辞を受けたそなたの事を思い出したのだ」


 あのバカ神め…本当に余計な事をしてくれたな。


「此処を占拠した訳は?」


「我らは此処が何処で何処の国に属するかなど知らぬ。地上の事は全く知らず、関わりを持たずにいたからな。だが、よもやそなたの国だったとはな。知らぬ事とはいえ、無礼な事をしたな。無礼を侘び、謝罪しよう。すまない」


「いえ…此処にはいつから?」


「十日ほど前からだ」


「十日…なら何故今までに誰とも接触しなかったんです?」


「我らムーの民と地上人の姿が異なる事は知っていた。だがそれ以外は地上人の事など全く知らぬ。どう接触したものか悩んでる内に十日も経ってしまった。何せ初めての地上人との接触だ。慎重にもなろうというものだ」


 ふむ…事情は解った。だがもう一つ気になる事が。


「あの…貝殻が沢山山積みになってますけど、もしかして近くの浜辺で貝を獲ってました?」


「そうだが…何か問題があっただろうか?」


 やっぱりか…彼らが来たから貝が獲れる量がへった、と。


「…?おお!そう言えばまだ何のもてなしもしていなかったな!勝手に居を構えているとはいえ、そなたらは客人。もてなしをせぬのは無礼であったな。おい」


「はっ」


 王様の側に控えていた…執事さんぽい人と戦士達からボク達全員に手渡しされる。これは…


「あの…?」


「ん?お気に召さなかったか?」


 いや、お気に召すも召さないも。

生きた魚を手渡しされて、どうしろと?

しかも他の皆は鯛やらスズキやらだがボクに至ってはサメなんだが?


「もしかして地上人は魚を食さぬのか?」


「いえ…食べますけど…どう食べれば?」


「食べ方か?そんなもの丸かじりに決まっておろう」


 そう言うと王様はサメを手に取り腹からガブっといった。

生で、生きたサメをそのまんま。何の調理もせず。


「あの…ハーディン陛下。折角の御厚意ですが、我々には生きた魚をそのまま囓って食す事はしないのです」


「何と。そうなのか?ではどうやって食すのだ?」


「それは…焼いたり煮たり…色々です」


「焼く…煮たり?何だ、それは?」


 どうも海底人のムーの民には調理という概念が無いらしい。

海中での生活なのだから当然なのか?


「と、兎に角、お気持ちは有り難く。折角なのでこの魚はお土産として頂戴致します」


「未知との遭遇…ファーストコンタクトの証は生魚…」


「新しいわね…」


 いや全く。

予想外過ぎるでしょ…


「…それでどうであろう?頼まれてくれるか?」


「あ、もう少し確認したいことが。ええと…海底国家ムーというのはどの辺りにあるのですか?」


「此処からずっと東に行った場所だ。見渡す限り海上には何も無い。海底にもムー以外何も無い」


 太平洋のど真ん中くらいか?

ミズンさん達の話によると、あの辺りの海域は大型の魔獣が多く。

セイレンの護衛騎士団もあまり通らないそうだ。

それも今まで海底人の存在が認知されなかった原因か?

いや…


「海底国家というのはムー以外にも存在するのですか?」


「いいや。我ら以外に海底国家は存在しない。少なくとも我らは知らぬ」


「では次に…海底国家ムーの戦力と人口は如何程だったのですか?」


「…戦力は周りに居る戦士達…ムー戦士団が五万。それからそなたらが倒したような調教し、飼いならした魔獣が数百匹。人口は二十万程。だが…戦士団はほぼ壊滅、人口は十五万人にまで減った。生き残った戦士は避難した民達の護衛に付かせた」


「避難とは…何処に?」


「わからぬ。ムー以外に海底に街と言える物は無い。何処か魔獣の襲撃に怯えずに済む場所を探して移動を続けている筈だ。定期的に来る連絡ではまだ無事なようだ」


 つまり援軍は期待出来ない。

尚且つ国家と言えどムーにあるのは街一つ。

都市国家と言った所か。


「…それほど強大な魔獣からどうやって逃げおおせたのです?」


「奴はムーを襲い、民を食い散らかした後は街の真ん中に居座った。どうやらあそこを自分の住処に決めたようだ」


「なるほど…」


 なら…やはりその魔獣を討つとなれば海中に行く必要がある。

しかも恐らくは相当な深海。どの位深い海の底なのかは解らないけど…人魚族でも行けないような深い海の底の筈だ。

そうでなければ今まで海底国家ムーの存在が知られていない筈が無い。

実は知っていて秘匿してる国家はあるのかもしれないが…地上の事を殆ど何も知らないと言うハーディン陛下の言を信じるなら、少なくとも交流のある国は無い。


「どうか引受けて貰えぬか?無論、我らも手を貸すし…討伐の暁には出来る限りの褒賞も出そう。望むのであれば我が娘レムリアを嫁にやっても良い」


「いえ、それは御断りします」


 流石に無理だ。下半身タコな女性を妻にするのは…メスゴリラだったサンジェラさんとの婚約話並に無理がある。

で、隣にいる女性はやはりハーディン陛下の娘か。

さっきから黙っていて話を聞いてるだけで、一言も喋っていないが…


「あら。それは良かったです。私も地上人の妻になるなど御免ですから」


「おい、レムリア…」


「だってお父様!見て下さい地上人を!二本しか脚が無いんですよ?まるでサハギンでは無いですか」


「「「「……」」」」


 初めて口を開いたと思えば…まさかサハギンと同列にされるとは。だけど無理も無いのか?

ボク達から見ても彼らは異形なのだし。

彼らからすればボク達の姿は異形となるのだろう。


「よさぬか!すまない、ジュン殿。娘が無礼な事を…」


「いえ、構いません。それで魔獣討伐の件ですが…一度皆と相談させてください。明日、また此方に伺いますので」


「そうか…うむ、解った」


「では、それまで他の人…他の地上人には見つからないようにお願いします。騒ぎになってしまいますから」


「うむ。承知している」


「では、失礼します」


 洞窟を出てから城へ転移…する前に。

一度コタンの街へ転移し、カミーユさん達の依頼遂行完了を報告しに冒険者ギルドへ。

ギルドへは海底国家ムーの民の事は報告せずにいてもらった。

どう考えても騒ぎになるだけだし。

妙な事を考える輩が出て来るかもしれないし。


「お待たせしました」


「無事、報告は終わりました。しかし、宜しいんですか?その…彼らの事は何も言わなくて」


「もし他の冒険者や巡回中の騎士なんかが発見すれば争いになるかもっス」


「こう言っちゃなんですけど…魔獣に見えなくもないですもんね…」


 確かに。今日まで大丈夫だったとはいえ何もせずにいる訳にも行かないか。

問題の解決まで何日掛かるか解らないし。


「兵を出してあの洞窟の周辺を封鎖させる?」


「そうなると…領主オットー・コタンに命じて見張らせますか」


「そうね。私達親衛隊が出張ると目立つしね」


「じゃあ領主に会いに行こっか」


「あ。その必要は無さそうですねー」


「何か来たよ、ジュン」


 アレは…領主のオットーさんか。何だか物凄い形相で走って来る。


「ジュン様ぁぁぁぁぁ!ご無沙汰しております!この度はリンクがとんだ御無礼を!」


「ああ…はいはい。もう気にしなくていいですよ」


「そう言えばそうだったね。ジュンがリンク君を殴ったんだった」


「どうでもよくて、また直ぐに忘れちゃってたね」


 ボクも忘却の彼方。リンク君の事なんてどうでもよくなる事件があったばかりだし。


「一度ならず二度までも…!我が息子が犯した罪、本来ならば許されるものでは無い事は重々承知しておりますが、何卒寛大な御処置を!」


「ですから、リンク君の事はもういいんです。ですが、この領地でとても重大な案件が出来ました。周りに人が居ない場所で話がしたいのですが」


「…は?あ、はっ!では私の屋敷へ!ご案内します!おい、お前!屋敷に使いを出せ!ジュン様御一行をお迎えする準備をせよと!大急ぎでな!」


「はっ!」


 なんか大変そうだな…領主というのも。

オットーさん…数年前に会った時はフサフサだったのに今はてっぺんの辺りが薄くなってるし。

領主だからってだけじゃなく、息子の事でも苦労してるんだろうけども。


「それで、重大な案件とは?」


「ええ。実はですね…」


 屋敷に着いて、人払いを済ませた後。

オットーさんに事情を説明。問題が解決するまで、コタンの兵であの洞窟周辺を封鎖。

事情を知るのは最低限の者に限らせ、洞窟に人が近づかないようにしてもらった。

後は城に帰って皆と相談だが…皆はボクが行くって言っても反対するんだろうな。


 さて…どうしたものやら。

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