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第508話 未知との遭遇 1

 洞窟の中に居たのは討伐難度Aの大ヒョウモンダコが二匹。今のカミーユさん達が相手するには危険過ぎる相手だ。


「代わります。カミーユさん達は退がってください」


「い、いえ!やります!」


「か、カミーユ様!これは私達には無理です!」


「意地張ってもしょうがないっス!」


「アレは危険過ぎますよ!」


「師匠!私ならやれます!」


「いいからメリッサも退がるわよ!」


 メリッサなら一匹だけなら勝てるだろうが…二匹となれば厳しい筈だ。無理をする必要もさせる理由も無いし、此処はボクがやってしまおう。


「じゃ、皆はボクの後ろに。此処はボクの魔法で…」


「ジュン!攻撃してくるよ!」


 おっと。毒の墨を吐いたか。

風の魔法で簡単に吹き飛ばしておいた。

結果、大ヒョウモンダコは自分で吐いた墨を浴びたのだが、自分の毒を浴びた所で問題は無いようだ。当たり前だが。


「流石はジュン殿ですな。それでどうやって倒しますか?」


「毒は何とかなるにしても…あの触手の数は厄介だね」


「大丈夫。魔法で片付けるよ」


 大ヒョウモンダコは以前も倒してる。

状況もほぼ同じ。なら使うべき魔法は…


「アブソリュート・ゼロ!」


 絶対零度の極寒で凍結させる。

洞窟内なのでかなり冷えるが…


「流石、ジュン様っス!でも寒いっスー!」


「私にはまだ真似出来ないです…そして寒いー!」


「ヴォルフス出身の私達に、これは…」


「し、仕方無い事よ、我慢なさい…」


 いや、コレはボク達も寒いっス…さっさと砕いて片付けてしまおう。

ついでに凍結した地面や壁も溶かして…そしてハティに狼の姿に戻ってもらおう。


「ああ…こういう時のハティは最高の抱き心地…」


『えへへ…嬉しいけど、皆に抱きつかれたら動けないよ〜…』


 セバストもバルトハルトさんも抱き着いてるしね。

悪いけど、温まるまで我慢して…


「でも何だってこんな所に大ヒョウモンダコが?」


「此処にはエサになりそうな魔獣も居ないし…干潮で取り残されたとは考え難いし」


「ある程度なら陸上でも動けるみたいだから普通に海に戻ればいいだけだもんね」


「ふむ…カミーユ殿。この洞窟の大きさや構造等は聞いておられますかな?」


「え?あ、はい」


「では此処から奥までどの位あるので?」


「ええと確か…あの大ヒョウモンダコが出て来た曲がり角が丁度半分くらいの位置です」


「奥には何かあるの?」


「いえ…特には。この洞窟には偶にサハギンが棲み付く事があるそうですが…」


 サハギンが?なら…この大ヒョウモンダコはサハギンを捕食しようとして来たのかな?

なら奥にはサハギンの生き残りが居るかも?


「兎に角、奥まで進みましょう。カミーユさん」


「はい。調査も途中ですし…」


「ジュン様、何か来ますぅ。沢山…何かはよく解かんないですぅ!」


『潮の匂いがする何かが来るけど…何だろ?』


 奥からやって来たのは…人?

いや、違う。下半身が…タコの触手だ。

日本のゲームなんかにも出て来たモンスターで神話に出て来る怪物。確かスキュラって名前だ。武装したスキュラが数十人でやって来た。


「な、何あれ!人なの!?魔獣なの!?」


「アイシス、落ち着く」


「でもあんなの見た事も聞いた事も無いよ!メーティスは知ってる!?」


『いや…知らんわ。なんや、アレ』


「ウルさんは知ってるですぅ?」


『僕も知らない…何アレ』


「…ユウ」


「ダメ、解らない」


 ユウにも解らないとなると…新種の魔獣になるのか?

でも、上半身は何で出来てるのか解らないが鎧と槍を持ってる。どう見ても加工品だが…彼らが作ったのなら知性とそれなりの技術。それに文明がある事なるが…


「貴様ら!地上人か!」


「我らの門番はどうした!」


「喋ったっス!」


「上半身が人なんだから喋れるのは予想出来たけど…地上人?」


 ボク達を地上人呼ばわり…なら彼らは地上で暮らす者では無いと?


「すまない、質問を質問で返す事になるが君達は地上で暮らす者じゃないのか?何処から来た?」


「我らは誇り高き海底国家ムーの民!」


「そしてムーの戦士だ!」


「海底国家?ムー?」


「ならアンタ達は…海底人?」


 海底国家ムー?現代地球ではムー大陸なんて言葉があったけど…この世界では海底国家ムーなんて聞いた事も無い。

だが…彼らの姿を見る限り嘘だとも言えない。


「次は我らの質問に答えよ!」


「貴様らは何者だ!門番はどうした!」


「ボク達は…君らの言う地上人だ。それで門番というのは大ヒョウモンダコの事か?」


「大ヒョウモンダコ?」


「確かに門番はタコだが…」


「それなら、すまないが倒した。襲われたんでね」


 大ヒョウモンダコが門番?

それが事実なら彼らは大ヒョウモンダコを操る…いや、調教して従える術があるのか?


「何だと!?」


「ならば貴様らは侵略者!その尖兵か!」


「侵略者?いや、此処はエルムバーン魔王国の領土で、ボクはエルムバーン魔王国の魔王子だ。侵略者呼ばわりされる謂れは無いよ?」


「エルムバーン魔王国?魔王子?何処で…」


「よく解らんが…此処は我ら海底国家ムーの地となった!」


「即刻立ちされ!」


「は?それはつまり…」


 彼らこそが侵略者じゃないか。

どうしてこの洞窟に拠点に選んだのか解らないが…黙って引き下がる訳には行かないな。


「君達が此処を占拠し、ムーの地と宣言するという事はエルムバーン魔王国にとっては侵略行為とみなすしかない。つまりはエルムバーン魔王国と戦争をするつもりなのか?」


「ふん!地上人が勝手に決めた領土など我らムーの民には関係無い!痛い目に遭いたくなければ…」


「あ、ああ!思い出した!こいつ今、エルムバーンの魔王子と言ったぞ!」


「それがどうし…ああ!」


 何だ…?ボクを知ってるのか?


「おい、お前!お前が神から賛辞を受けたジュンと言う者なのか?」


「あー…うん。ボクです」


 まさか海底人にまで聞かせていたとは…ん?

という事は神様は海底人の存在を知ってる?

…当然か。この世界を成り立ちに関わった神なら。


「おお!これはなんと運の良い!」


「まさか探してた人物が向こうから来てくれるとは!」


「は?ボクを探してた?」


 どゆこと?全く理由が思い付かない。


「流石ジュン様…まさか存在すら認識されていない海底国家にまでその名が轟いていようとは…」


「エリザ様が聞いたら大喜びですねー」


「止めて、お願いだから。ママ上にだけは秘密にしといて」


「いや…無理だろう」


「ヴェルリアでも…いえ、世界中を揺るがす大ニュースなのは間違いありませんからな。海底国家ムーの存在は。本当にあるならばですが…」


「諦めよ、お兄ちゃん」


 諦めたくない…でも無理か…はぁ…


「…それで?ボクに何の用?」


「それは我らの主からお聞きください!」


「此方です!」


「おい!伝令を出せ!客人だ!」


「はっ!」


 最初の攻撃的な態度から打って変わって。

敵意も消えたし、武器も下げてる。

大丈夫だと思うが…


「(危険だと感じたら転移で逃げるから。ボクからあまり離れないように)」


「「「「(はい)」」」」


「? 何か?」


「いえ、何も」


 彼らムーの民の上半身は…ミズンさん達が人魚の姿の時の上半身とよく似てる。鰓があるし…ヒレもある。

下半身が魚かタコかの違いのようだ。

なら…


「あの…貴方方は人魚のように人…地上人の姿になれはしないのですか?」


「…人魚?人魚というのが何かは知りませんが、我々は姿を変えたりは出来ません」


「そうですか…」


 人魚族に近しい種族かと思ったがそうでもないのか。

それに人魚を知らないと来た。海を生息圏にする者同士、今まで一度も接触が無かったのか?

……有ったなら世界中で認識されていない訳が無いか。


「着きました」


「陛下!此方がジュン殿です!」


「うむ…よく来てくれた。我が海底国家ムーの王、ハーディンである」


 予想通りと言うべきか。

王様もやっぱり下半身がタコ。

上半身に着てる服は上等そうだ。

というか、素材はなんだろう?


「ジュン・エルムバーンです。早速ですがご用件をお聞きしても?」


「うむ…実はな…」


 さて…カミーユさん達に付き添いで来ただけの筈が…思いがけず未知との遭遇になってしまった。

果たして何の用があるのやら。

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