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第506話 棲み付くモノ 4

「此処がそうなの?」


「はい。此処が目的地の遺跡です」


「要塞の跡地のようですね。要塞だっただけあって頑丈に造られているのでしょう。大昔の物でも綺麗に残ってますから、僅かな補修だけで十二分に使えそうです」


 クリステアの見立てではそうらしい。

三番目の目的地の遺跡は森の中にある大昔の要塞だ。

所々に穴が開いてるようだが、確かに綺麗に残ってるし、使えそうだ。


「それにしても…何故こんな場所に要塞を?西に行けばヴェルリア王国があるけど、国境まで距離があるし…南は海だし。要塞を作るにしてもわざわざ森の中に作らなくても…」


「さぁね。でも、此処は大昔は森なんて無かったらしいわよ」


「そうなんですか?」


「ユウ様は博識なんですねー」


「フフン。まぁね」


 そうだとしても此処に要塞を作る理由って何だろう?

此処に要塞を作る理由なんて海から来る何かを迎撃するくらいしか思いつかないが…この世界じゃ海戦なんて殆ど無いし…


「それじゃ、調査を開始するっスよ」


「そうね。結構大きな遺跡だし、二手に別れるのがいいかしら?」


「いえ、止めておきましょう。何か危険な存在が居た場合、私達では単独で相手をするのは危険です」


「特に私なんて魔法しか使えませんから…急に接近戦となれば危ないですし」


「そ、そうね。じゃあ皆で行動しましょ」


「私は大丈夫ですから、私と姉上はあっちを―――」


「はいはい。勝手な事言わないで。皆で行きましょう」


 確かに彼女達はまだ単独行動は危険だ。それに彼女達に危険だと思えば助けるが、基本的にはボク達は居ないものとして行動してもらわないと。


「(皆、備えて)」


「(何?何か居るの?)」


「(うん。探査魔法で反応があった)」


「(リリーの耳にも何か聞こえたですぅ。要塞の中から…金属音と何かの声が)」


「(この匂いは多分ゴブリンだよ)」


「(ゴブリンかぁ…数は?)」


「(探査魔法に引っ掛かったのは三十ほど。これで全部かどうかは解らない)」


「(なら大した事ないね)」


「(ん。三十ならまだ大した規模じゃない。今の内に潰すべき)」


 ゴブリンは直ぐに増えるしね。

三十なら一斉に襲って来ない限り、カミーユさん達でも対処出来るだろうけど、いつでもフォロー出来るようにしないと。


「それで、何処から調査するっスか?カミーユ様」


「そうね…一階から順に調べて行きましょう」


「では私とオルカが先頭ですね」


 要塞の入口は開いている。

門は鉄製のようだが長い間放置されて流石に朽ちている。

誰でも簡単に入れてしまう。


「それで、此処はどうして取り壊さないんスか?爆破しようがフッ飛ばそうが、此処なら周りに影響出ないっスよね?」


「確かに。しかし、強大な魔法を使える魔法使いを雇うにしても軍を派遣するにしても御金が掛かりますし」


「それもあるけど、国も何かの際には此処を利用するつもりなのよ。多分」


「ユウ様がそう仰るなら、そうなんでしょうね」


 まぁ、その考えを否定する事は出来ないけど…使い道無さそうだけどなぁ。


「シッ…何か聞こえたっス…」


「ど、何処から聞こえたの?」


「あの部屋っス…探査魔法で調べたっスっけど、数は五…何が居るかはわかんないっス…」


「五…兎に角行ってみるしかなさそうね…メーテル」


「はい。行きます!」


「私も行きます!」


 メーテルとメリッサが飛び込んだ先に居たのは予想通りにゴブリン。

見た所、只のゴブリンだ。


「ゴブリン!」


「蹴散らします!」


 メリッサには只のゴブリンなんて相手にならない。

瞬時に三匹倒した。残り二匹はカミーユさんとメーテルさんで倒した。


「ゴブリンですか…」


「群れで棲み付いているなら、五匹だけとは思えません。引き続き調査しましょう」


「そうね…此処からはより慎重に行きましょう」


「大丈夫です!ゴブリン如き、私があっという間に―――」


「そういう事じゃないのよ、メリッサ」


 今倒したゴブリンは全て只のゴブリン。

最低でも三十は居る群れなら、統率する者としてホブゴブリンくらいは居るはずだ。


「っと、早速何匹か向って来てるっスよ。ええっと…今度は三匹。もうすぐあの曲がり角から姿を見せるっス」


 うん。オルカさんは中々斥候役として成長してるようだ。

冷静だし、注意深く進んでいる。カミーユさん達も落ち着いている。

まだ冒険者になって一年経ってないが、依頼はそれなりにこなしてるようだし…最初のダメっぷりを思えばかなりの成長だろう。


「私の魔法とオルカの弓で仕留めます!」


「やるっス!」


「私も魔法で―――」


「全部に出しゃばらなくてもいいから…任せられる処は任せなさい」


 向かって来たゴブリンは姿を見せて直ぐ、ラナさんの魔法とオルカさんの弓で倒された。

ラナさんの魔法もオルカさんの弓も命中精度は上がってる。

ラナさんは下位の魔法でゴブリンを仕留めていたし、魔力も上がってる。

このまま成長すれば『魔法使いの紋章』を獲得する日も近いかも。


「…ふぅ。調査を再開しますよ」


「はい。進みます」


 一階の調査の間はそれ以後はゴブリンに遭遇する事無く、二階、三階へと調査を続け。

倒したゴブリンの数は三十を既に超えた。


「(最初の想定より多くない?ジュン)」


「(結構大きな要塞だから探査魔法の範囲内に入ってない奴が居たんだろうな。それに流石にもう侵入者が居る事に奴らも気が付いただろうし…多分、群れのボスの下に集まってるんじゃないかな)」


「(その方が楽でいいけどね。私達にとっては)」


「(ですがカミーユ様達にとっては危険です。私達が手を貸す必要があるかもしれませんね)」


「(数と群れのボス次第で変わってくるだろうが…ジュン様、此処なら探査魔法で残りの数が解るんじゃないのか?)」


「(そうだね…やってみるよ)」


 残りの数は…百ちょい?思ったより多いな。最上階に集まってるようだ。


「(結構居るね。残りの数は百ちょい)」


「(百…ちょい厳しいかもね。カミーユ達だけじゃ)」


「(だね。僕らもやろっか)」


 メリッサが居れば彼女達だけで何とかなりそうだが…それじゃメリッサに頼りすぎに思える。

何か作戦を考えて、自力で何とかして欲しいが…


「オルカ、どう?」


「ちょっと待つっスよ…丁度、この真上の部屋に集まってるみたいっス。でも数が…すげえ多いっス!」


「多いって…どの位?」


「えっと…五十は居るっス!」


「五十…一部屋に集まってるという事はそこで迎え撃つつもりでしょうか」


「五十程度なら私一人でどうとでも出来ます!行きましょう!」


「ダメよ。迎え撃つ為に集まってるなら部屋に入った途端に攻撃されるわよ。メリッサは何とか出来ても私や他の人には危険よ。何か作戦を考えましょう」


「そうね…この部屋の真上…」


 うん。まだオルカさんの探査魔法じゃゴブリンの数を正確に把握する事は出来ないようだが…ちゃんと事前に気付けた。

なら後はどうするか考えるだけ。作戦を考えて攻撃するもよし、撤退して応援を呼ぶのも有りだ。


「……ジュン様。この遺跡…多少破壊しても問題ありませんか?」


「え?…ええ、まぁ。問題は無いかと」


「でしたら…皆さん、部屋の入口まで下がってください」


 カミーユさんは何か作戦を思いついたらしい。

言われた通りに部屋の入口まで下がる事に。


「よし…ラナ、メリッサ。二人の魔法で天井を破壊して」


「え?天井を破壊?」


「い、いいんですか?そんな事して…師匠?」


「ボクに判断を求めちゃダメだよ。決めるのは君達のリーダーのカミーユさんだよ」


「は、はい。じゃあ…」


 とはいえ。

中々大胆な作戦を考える。

天井を落とすという事はつまり…


「じゃあ、いきます!メリッサ様!」


「いつでもいいですよ、ラナ殿!」


 二人の魔法で天井を破壊。

真上の部屋に居たゴブリン達は当然落ちて来る。

突然足下が崩れ、階下に落下したゴブリン達は陣形を崩し落下の衝撃で立ち上がれずにいる。

落下時に怪我をしたり瓦礫の下敷きになったりして死んだ者もいる。


「今よ!攻撃開始!」


「狙いたい放題っス!」


 大きく態勢を崩したゴブリン達はカミーユさん達の攻撃に対応出来ずに数を減らしていく。

ゴブリンメイジやホブゴブリンもいるがあっけなく倒されていた。


「へぇ~…やるじゃん」


「はい。中々良い作戦です」


「ん。流石私の弟子」


「いつセリアの弟子になったの…」


「そんな事より…流石にアレはカミーユ殿達には厳しいのではないですかな?」


 このゴブリンの群れを率いていたのはゴブリン・ジェネラル。

取り巻きにゴブリンナイトが五体。確かにカミーユさん達には厳しいかもしれないが…


「何かボスっぽいのが居るっスよ!」


「つ、強そう…」


「カミーユ様…」


「…や、やるわよ!メーテルはゴーレムを出して!」


「は、はい!」


「私も一体ならゴーレムを出せます」


「ならマリーダも御願い!それから…メリッサ!出番よ!貴女はボスを御願い!」


「任せてください!」


 うん。怯んでいたように見えたけど、思ったより冷静だ。

それに普段はメリッサとマリーダさんに反発してるカミーユさんも内心ではその力を認めているらしい。

そうじゃないと咄嗟にあんな指示は出さない。


「私達は周りに居る奴らを倒すわよ!」


「はい!」


「わ、わかりました!」


「やってやるっスよ!」


「私も魔法で攻撃します!」


「それじゃ!行きますよー!あ、師匠!見ててくださいねー!」


 ゴブリン・ジェネラル達とカミーユさん達の戦闘が始まった。

ゴーレム三体でゴブリンナイト三体と戦闘。

残り二体をカミーユさん達で仕留め、終われば残りのゴブリンナイトを仕留める。

ゴブリンナイトを抑えてる間にメリッサがゴブリン・ジェネラルを仕留める、と。

戦いは…カミーユさん達の優勢。

しかも圧倒的に。


「よっしゃあ!取り巻きは終わったっスよ!」


「後は…メリッサ!」


「もう終わってますよー!」


 バルトハルトさんの心配は杞憂に終わったか。

ゴブリンナイトをあっさりと仕留める事が出来るくらい成長してたとは。

ちょっと見誤ってたかな。


「こ、これで全部かしら?」


「流石にそうだと思いますけど…念の為調査する必要がありますね…」


「私…結構疲れました…」


「アタシも…少し休憩しませんか?」


「駄目ですよ!残ったゴブリンが逃げ出しては厄介ですから!」


「……私も休憩したいとこですけど…今回はメリッサの言う事が正しいかと」


「そうね…仕方ないわ。調査を続けるわよ」


「「「は~い…」」」


 その後の調査の結果。

遺跡内にはもうゴブリンは居ないようだ。

ゴブリンが集めてたと思われる食糧を発見したのはちょっとした収穫だった。


「はぁ~やっと調査終了っス…」


「まだよ、オルカ…」


「まだ次がありますよ…」


「そうだったっス…」


「仕方ないわ…馬車では休めるから頑張りましょ」


「はいっス…」


「それで、次の場所は何処です?」


「えっと…此処から東の海沿いにある洞窟です」


「北東、北北西、南と進んで最後は東…コタンの周辺を一周するのね」


「そうなりますね」


 最後は海沿いの洞窟か。

大ヒョウモンダコとか遭遇しないだろうな…

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