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第503話 棲み付くモノ 1

「お金が無いんです…」


「はあ」


 レオさんが城に泊まるようになってから三日。

カミーユさん達から相談があると言われ話を聞く事に。


「あのチンピラ…失礼しました。レオ様が来てからというもの…私達が受ける事が出来る依頼は根こそぎ奪われてしまって…」


「あの人、あんなに強いのにまだEランクらしいんです」


 故に、報酬が安い依頼しかレオさんも受けれない為、レオさんは王都の冒険者ギルドに出されてる依頼で受けれる依頼は全て受け、全て一人でこなしてしまったのだとか。しかも薬草採取なんかは必要数の数倍は集めてしまい、暫くは薬草採取の依頼は出す必要が無いそうだ。


「だから暫くは私達が受けれる依頼は出ないかもって話で…」


「私達はまだ訓練が中心だから依頼はそれほど受けて無かったので…蓄えがあまり…」


「あたしはジュン様の御蔭で結構ホクホクっスけどねー」


 オルカさんはボクとレオさんの模擬戦で行われた賭けで勝ち、相当稼いだらしい。

だがラナさんは負けたので、かなり懐が厳しいらしい。


「ねぇ、天然魔石の販売と鉱脈の開発でヴォルフス魔王国はかなり儲かってるんでしょ?なら仕送りくらいあるんじゃないの?」


「ありません。確かに以前に比べれば潤っていますが…」


「鉱脈の開発にもお金は必要ですし、財政の立て直しが最優先ですから」


 だから自分達で稼ぐしか無いけど、その依頼が無いと。


「それで、ボクに何を?」


「転移魔法で何処かの街へ送ってもらえませんか?別の街なら私達が受けれる依頼がある筈ですから」


「私達ももうすぐEランクになれるので頑張りたくて」


「わかりました。いいですよ」


 というわけで。暇だからとユウとアイが来る事になったので、いつものメンバーも一緒に行く事に。

そして暑くなってきたので涼しい地域へ行こうとアイシスの希望で北の街、コタンへ。

考えてみればボクもこの街で冒険者として依頼を受けた事無いな。


「此処は涼しいですね」


「王都に比べれば、そうですね」


「それはいいのですが…何故また貴女達が一緒なんです?」


「いいじゃないですか!カミーユ殿!」


「わたくし達も受ける事が出来る依頼が無くで困ってたんです。折角だから一緒に依頼受けましょ?」


 話を聞きつけたメリッサとマリーダさんも、便乗してついて来ていた。二人もまだFランクで、そろそろランクアップ出来るらしい。


「嫌です。お断り…」


「別にいいっスよ!」


「ちょっとオルカ!」


「宜しいのではないですか?」


「私もいいと思います」


「メーテル…ラナ…貴女達まで…」


「カミーユ様。小国同盟はクアドラ魔王国とは歩み寄りを始めています」


「なのに、いつまでもカミーユ様がメリッサ様達を拒絶するのは良くないっスよ」


「あちらは仲良くしようとしてくれてるじゃないですか」


「うっ…わ、わかったわ…」


 頭で解ってはいても、感情が邪魔して歩み寄る事が出来ずにいたカミーユさんもようやく折れた。

これからは仲良くしてくれるといいのだけど。


「そうだ!いっその事パーティーを組みましょう!」


「何でよ!歩み寄るのはいいけど、其処まで一気に仲良くなる必要は無いでしょ!」


「いや、いい話だと思うっスよ?カミーユ様」


「メリッサ様はお強いですし…マリーダ様が居れば交渉事は上手く行くでしょうし…」


「パーティーの大きな戦力になるのは間違い無いと思います」


「う、うぅ……か、考えておきます」


 確かにメリッサの実力は確かだし、マリーダさんの魔眼は役に立つ。

それにマリーダさんの得意な魔法は闇属性。

カミーユさん達の中には闇属性の魔法が得意な人が居ないので、これも利点だろう。


「ところでジュン。コタンって何か名産とかあるの?」


「コタンに限らずこの辺りは野菜が沢山作られてる。後は…やっぱりシャケ?」


「今は旬じゃないから食べれないけどね」


「な〜んだ。残念」


 アイシスはやっぱり食い気が優先か。

でもボクも食べたいなぁ…北海道ならではの、あの海鮮丼。


「ジュン殿、コタンには領主が居ると聞いてますが挨拶に行かれるのですかな?」


「いや…構わないでしょう。今回はカミーユさん達の付き添いに過ぎませんから」


「そう言えばさ、あいつはどうなったのかな」


「あいつ?」


「ほら、コタン家の問題児。三男坊のリンク君」


「あぁー…」


 いたな、そんな奴。

結構前に無理矢理騎士団に入れられて鍛え直され、大分マシになったと聞いて…それっきりだな。


「まだ騎士団に所属してるらしいぞ」


「何でも小隊の隊長になるくらいには成長したとか」


「へぇ?二人はよく知ってたね」


「あいつは一度ジュン様に歯向かってるしな」


「またジュン様に牙を剥く可能性がある人物の情報は定期的に仕入れるようにしています」


「私は知らないですねー何をしでかした人なんですか?」


 リンク君はセバストとノエラのブラックリストに載ってしまっているのか…また何かしでかしたらヤバい事になるんだろうな。

そしてリンク君との関わりはシャクティと出会う前だったか。


「そろそろ冒険者ギルドへ行きましょう?」


「えっと…あ、アレっスね!」


 この街の冒険者ギルドは王都の冒険者ギルドには劣るものの、そこそこ大きく、活気もある。まだ朝九時だがギルド内は大勢の冒険者で溢れていた。


「人が多いですね…私達が受けれる依頼が残ってるといいのですが」


「取り敢えず掲示板を見てみましょう」


 掲示板に張り出されてる依頼の多くはD〜Cランクの物。

ちらほらとBランクの依頼がある。

EやFランクの依頼は一つ二つしか無さそうだ。


「浜辺に行って貝を獲って来て欲しい。数次第で報酬増加…」


「もう一つは定期的にある依頼みたいですね。この辺りにある洞窟や遺跡を周って魔獣が住み着いてないか調査する。Eランクの依頼ですね」


 依頼は自分のランクより一つ上のランクの依頼ならパーティーを組んでる場合のみ、受ける事が出来る。

Fランクしかいないカミーユさん達のパーティーでも問題無く受けれる筈だ。


「なら、こっちにしましょ。浜辺で貝を獲るくらい自分で行けばいいのに…」


 周辺の調査をする依頼にするらしい。

何も無ければ移動するだけで金貨三枚。割の良い仕事な気がするが、一日で周れる範囲内にあるとはいえ、結構な距離を歩く事になるのでいまいち人気が無いらしい。


「馬車に乗っていけば楽じゃない。どうしてそうしないの?」


「カミーユ様…恐らくEやFランクの冒険者パーティーで自前の馬車を持ってるパーティーなんて…皆無かと」


「アタシらだって自前の馬車は持って無いっス」


「ジュン様の馬車に便乗させてもらってるだけですし…」


「う…そ、それもそうね。周辺の情報を聞いてから出発しましょ」


 という事で、コタンの街周辺を馬車で周る事に。

偶にはこんなノンビリした依頼に付き合うのも良いかな、と。

この時はそんな暢気な事を考えていた。

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