第501話 王子様?がやって来る 3
ベルの兄であるサンドーラ王国第二王子レオさんに勝負を挑まれてしまった。
最近似たような事あったばかり…というか、多いなぁ。
どうしてこうも勝負を挑まれるのか。
「殺し合いでは無く手合わせならお受けしますよ。それより…最初から気になっていたのですが、その大荷物は?それと此処まで御供を一人も付けずに来たのですか?」
「あ?ああ…そうだったそうだった。此処までは一人で来た。親父はもう俺をどうこうするつもりも、死んだって構わないと思ってるからな。王族に相応しくないからってな。で、この荷物だが…ほ~らベル!土産だぞ~!」
レオさんが大きなリュックから取り出したのは人形…ぬいぐるみだ。
動物の鹿やら熊やら。あるいは魔獣のスレイプニルやらマウンテンバッファローやら。
随分可愛らしくデフォルメされている。
「ありがとう、レオお兄ちゃん」
「相変わらずお見事な出来ですね」
「え?これってまさかレオさんの手作りなんですか?」
「ふっ、まぁな」
やだ、可愛い。
見た目とのギャップが激し過ぎてアレだが。
「え~?凄いじゃない!」
「ほんと!顔に似合わず、かわいい特技をもってるのね!」
「悪かったな、顔に合って無くて…」
ユウの言葉は失礼だと思うが完全に同意だ。
彼が針と布を持ってぬいぐるみを作ってる姿を想像すると笑ってしまいそうだ。
「あ、もしかしてベルの部屋にあるぬいぐるみって…」
「うん。レオお兄ちゃんの手作り」
「ベル様は昔からぬいぐるみが好きだったのですが…訓練を放棄したベル様に御怒りになったオーギュスト陛下が一度ぬいぐるみを全て処分してしまったのです。それを大変お嘆きなられたベルナデッタ様を見てレオ様がぬいぐるみを手作りなさるように」
良い話…!見た目は兎も角、実に良いお兄ちゃんじゃないか!
「しかし、ぬいぐるみを全部燃やすとか酷いな。今度一発殴ってやろうかな…あ、すみません。ベルとレオさんの前で言っていい言葉じゃ無かったですね」
「いや、良い事言うじゃねえか。是非殴ってやれ。ついでにバカ姉貴二人も」
「あ、あの二人なら以前ひっぱたきました。あの二人の為ですけど」
「おお?やるじゃねぇか。あんた、中々見所が…いや!まだだ!まだあんたを認める訳にはいかねえ。表に出やがれ!」
「…練兵場でいいですか」
という訳で練兵場へ。
例によってギャラリーで溢れる事になった。
ていうか回を追う毎にギャラリーが増えてる気がする。
飛行魔法で飛んでまで観戦せんでも。
「ジュン様ー!頑張ってー!」
「ジュン様ー!怪我だけはしないでー!」
「ちょっとあんた!ジュン様に怪我させたら生きて城から出られないと思いなさい!」
「生まれて来たことを後悔させてやるんだから!」
…ちょっと申し訳ないくらいにレオさんにとってアウェイ過ぎるな。
レオさんが見た目チンピラなせいか、かつてないくらい敵意が向けられているし。
「……随分な人気だな」
「どうも…レオさん、ちょっと泣いてます?」
「な、泣いてねーよ!」
でも、ちょっと目尻に涙が……いや、これ以上は言うまい。
「え~…じゃあ始めるとしますか。ルールは戦闘不能になるか負けを認めさせるかで良いですか?」
「おう!」
レオさんの武器は金棒。
ルシールさん曰く武の才能はかなりのモノらしいから『棍棒使いの紋章』…いや中位の『剛棍棒の紋章』くらい持ってるか?
「いっくぞ、ごらぁ!」
「! 速い!」
見た目に似合わずスピードがある!でもスピードはボクの方が上だ!
「結構速ぇじゃねぇか!だがパワーは俺のが上だ!」
「でしょうね!」
この体格差だから流石にレオさんの方がパワーは上だろう。
だが、レオさんはまともな防具を着けていない。
肩とか膝とか要所要所をガードしてるだけ。
胴体の防御力は皆無に…
「って、堅ぁ!?痛ぁ!」
「ハッハッハッー!甘ぇ!俺は『鉄血の紋章』を持ってんだ!まともな防具着てないからって甘くみたな!」
「ぐっ!」
隙だらけの胴体に蹴りを入れたのだが予想外の堅さに脚にダメージを受け、出来た隙を突かれて金棒の一撃を貰ってしまった。何とか後ろに半歩退がる事で、胴体に浅い一撃で済んだが。
「ギリギリで躱したか!だが此処で手を緩める俺じゃねぇぞ!」
「くぅっ!」
強い!本当に!
そして金棒に気が宿っているとこを見るとやはり『剛棍棒の紋章』を持って…いや、もしかしたら上位紋章の『神竜棍の紋章』を持っているのかも。
そして防具が最低限なのは『鉄血の紋章』があるから。
その練度はリディア以上。もしかしたらアダマンタイト並に堅いかもしれない。
それだけで無く…『拳闘士の紋章』も持ってる。
全身を闘気で覆い防御と強化を両立してる。だから巨躯に似合わずスピードもある。
見た目に反してバランスのいい能力を持ってる。
「あー!ジュン様に何してんだぁ!」
「予想が外れたぁ!ジュン様が一撃も受けずに圧勝する方に賭けたのにぃ!!」
「よっし!ジュン様!後はノーダメージで!圧勝しちゃってください!そしたら予想的中っス!」
そんな賭けしてたのか…いいけどさ。
「おらおらぁ!そんなもんかぁ!噂じゃもっと強ぇって聞いてんぞぉ!」
「噂なんて、そんなもんですよっ!」
「ハッ!そんなんじゃベルはやれねぇなぁ!やはりベルは国に連れ帰るぜ!」
「それは!流石に!防ぎたいですね!」
「だったら勝ってみせろや!」
「そうします!」
とは言ってみたものの。
この人、本当に強い。金棒の攻撃は避けるか剣で受けるかしないと、まともにくらえば只じゃすまないな。
『魔神王の紋章』を使えば圧倒出来るとは思うが…この人『天地剣の紋章』の見えない斬撃を受けても平気な顔してる。
闘気と『鉄血の紋章』の二重のガードの堅さは想像以上だ。
リディアとヘンリーのハイブリッドといった感じか。
「チッ!避けるのは上手いじゃねぇか!ならこれだ!」
「魔法?ファイアアローの連射!?」
しかも結構な威力と数!メーティスには僅かに及ばないもののエルムバーンの魔法兵団員には勝る!だけど!
「何ぃ!?」
「魔法ならそうそう負けませんよ!」
こちらもファイアアローで迎撃。同数以上を出して反撃も行った。
何発が直撃を受けたレオさんにようやくまともなダメージが入った。
並の相手なら今ので完全K.Oなんだが…まだまだ元気そうだ。
「チィ…魔法じゃ分が悪いようだな…それにさっきから見えない斬撃もあるし…さては『魔王の紋章』と双剣系の上位紋章を持ってやがるな。『双剣天聖の紋章』か『双剣地聖の紋章』だったか?」
「…そんな所です」
「んで、その脚の速さと妙な動き…『韋駄天の紋章』だな?上位紋章を三つ持ってるか…厄介だな」
冷静な分析…失礼だから言わないが、見た目に反して只の脳筋じゃないんですね。
「レオさんも凄いじゃないですか。『鉄血の紋章』だけじゃなく最低でも中位以上の紋章をあと二つ…いや、三つ持ってるでしょう?つまりは紋章を四つは持ってますね?」
「…フン。よく四つ持ってるって解ったな」
レオさんが持ってる四つ目の紋章は恐らく『魔導士の紋章』。
それぐらいは持って無ければあのファイアアローは説明出来ない。
「正解した御褒美に教えてやる。俺が持ってる紋章は確かに四つだ。『鉄血の紋章』に『拳闘士の紋章』。それに『魔導士の紋章』
そして…『神竜棍の紋章』だ」
「なっ…」
ちょっと予想はしてたけど…まさか本当に?
レオさんは確か二十一歳…それで上位紋章を含む紋章を四つも?
もしかしてエルリック並の天才なのか?
「…そうですか。教えて頂き有難う御座います。御返しにボクが持つ紋章も教えますよ。そうでないとフェアじゃないですし」
「ほ~う?いいだろう。言ってみな」
「はい。とは言えほぼレオさんの予想通りです。違うのは双剣系の紋章は『天地剣の紋章』で『賢者の紋章』と『魔神の紋章』も持ってます」
「五つも持ってんのかよ…それに『天地剣の紋章』?聞いた事ねえぞ」
「かなりレアな上位紋章らしいですから…それじゃ、此処からは全部の紋章を使っていきますよ!」
「おう!望むところだ!来やがれ!」
正直言うと紋章は全部使ってはいたんだけど。
だが『魔神王の紋章』を使用せずに全力で戦うのは久しぶりだな。
ちょっと熱くなってきた!




