第500話 王子様?がやって来る 2
「え…レオお兄ちゃんが?」
「レオ様が…」
「うん。此処に来るんだって。どんな人か教えてくれる?」
吸血鬼ナジールによってサンドーラ王国が支配された時にも、ベルと婚約した後に挨拶に行った時にも第二王子とは会わなかった。
ベルに兄は二人いる事は聞いていたがどんな人かは今まで聞いた事が無かった。
それくらい接点が無い人が突然訪ねて来ると言う。
理由がサッパリ思いつかない。
「レオお兄ちゃんは…変な人」
「武人としての才はかなりのもので…よく修行の旅に出ているのです。丁度ナジールが来る一月前に旅に出て…恐らく最近帰って来たのではないでしょうか?」
「それって二年以上国に帰らなかったって事?」
「そうなります。国王陛下もレオ様の事はもう放任していて…好きにさせておられます」
それはそれは…とても一国の王子様とは思えない行動だな。妹のベルに変な人って評価されてるし。
「パメラさんは会った事ありますよね?パメラさんから見てどんな人です?」
「ええっと…すみません、私もあまりよく知りません…」
「ええ?何故です?」
「ルシールが言ったように城に居ない事が多かったですし…それに私の事は避けてる様子でしたから。私も変な人だとは思いますけど…」
「避けてる?パメラさんを?」
「レオお兄ちゃんは…女の人が苦手」
「え?そうだったの?」
「レオ様は二人の姉…マルグリット様とメラニー様に、その…色々と可愛がられたそうで…」
なるほど、納得。あの二人を姉に持てば女性が苦手になるのも無理はない。
「それとレオ様は幼少の頃はまるで女の子のような容姿だったらしく…それをマルグリット様とメラニー様以外の女の子からバカにされた事があったそうです。その反動で男らしくなる為に武術の訓練に明け暮れ、修行の旅に出るようになったんです」
「何だろ。その話だけですっごく親近感を感じる。友達になれそう」
ボクも苦労したしなぁ…最近は流石に女性に間違えられたりはしないが。
「どうでしょう…レオ様はジュン様とはまるでタイプが違いますし…少し男らしさを履き違えてるような…」
「というと?」
「あ、いえ…ええと…ベルナデッタ様だけはレオ様は可愛がっておられましたよ」
「うん。優しかった…でも変な人」
「優しいけど変な人なんだ…」
変な人か…でも女の子に間違えられたというエピソードと男らしくなる為に武術の訓練に明け暮れるという話だけで会ってみたいと思える。
多分仲良くなれる気がする。
それから三日後。
レオ殿下が来たらしいのだが…
「どうして門で待たせてるの?失礼じゃないか」
「さぁ…門を守ってる兵士からは兎に角来て欲しいって事だ。ベルナデッタ様も一緒に」
兵士からの伝令を伝えに来たセバストも少々困惑顔だ。話を聞いたベルとルシールさんは納得顔だが。
そして門まで行くと何やら騒がしい。
大柄の男が騒いでるようだけど…まさかアレが?
「おいおい…どーなってんだ、こら!いつまで待たせるつもりだ、ああん!?大体一国の王子を門前で待たせるたぁどういうこった!礼儀がなってねぇんじゃねぇのか!ああん!?」
「煩いぞチンピラ!」
「お前みたいな王子がいるか!」
「此処は城だぞ!場違いにも程がある!」
「闘技場にでも行け!」
「なんだとこの野郎!」
門前に居たのはチンピラ…というか…アレだ。
某世紀末救世主にやられる人だ。
ヒデブゥ!って。
「なるほどなー…あれじゃ通してもらえないわな」
「だね…で、ベル?あの人が?」
「うん。レオお兄ちゃん」
「間違いありません。レオ様です」
「あ、そう…」
どうやら間違い無いらしい。
アレがねぇ…とても昔は女の子に間違えられた人には見えない。
モヒカンで筋骨隆々の巨漢で。背中には棘のある巨大な棍棒…日本で鬼が持つ武器と言えば?という感じの棍棒だ。
いや、金棒か?
「ん?おー!ベルゥ!元気だったかぁ!」
「うん。久しぶり、レオお兄ちゃん」
「大きくなったなぁ!ハハハ!」
言葉だけ聞くと兄妹の再会なんだが…見た目はチンピラに絡まれる美少女にしか見えない。
知らなきゃ思わず助けに入ってしまいそうだ。
「あの…ジュン様?」
「あの男は…本当に?」
「うん…まぁ…そうらしいよ?」
「「「すみませんでした!」」」
「あ〜…良い良い。次から気ぃつけろよ」
見た目より寛大らしい。
一国の王子をチンピラ呼ばわりした兵士をアッサリ赦してた。
「ご無沙汰しております、レオ様」
「ん…ルシールか。ベルを守ってくれてるようだな。ありがとよ」
「はい」
ルシールさんには少しよそよそしい。
顔馴染みな筈のルシールさんも、女性だから苦手なのか?
「で…あんたが?」
「はい。初めまして、ジュン・エルムバーンです」
「ふん…レオ・ディス・サンドーラだ。あんたにはベルだけじゃなく、国も世話になったらしいな。先ずは礼を言うぜ。ありがとよ」
「いえ。それよりも、此処で立話もなんです。中で話しませんか?」
「ああ、そうだな。んじゃ、邪魔するぜ」
というわけでレオさんを連れて城内へ。
ただ客人を連れて歩いているだけなのだが…おかしな物を見る視線をレオさんは向けられていた。無理もない。ボクだって違和感を感じまくりだ。
何せ…レオさんはベルを肩車してるのだか恐ろしく似合わない。
そんな視線はボクの部屋に入るまで続いた。
「えっと…先に妹や婚約者達を紹介する前に…先程は兵士達が失礼しました」
「ああ、それは気にすんな。文句は言ったが慣れっこよ」
「有難うございます。では紹介しますね。妹の―――」
部屋に居るのはユウとアイ。ベルとルシールさん。パメラさんとカタリナさん。セバストとノエラ。リリーにシャクティだ。
「…女が多いな」
「気になるようなら席を外させますが?」
「いや、いい。…ひ、久しぶりだな、パメラさん…」
「ええ、お久しぶりです」
「…で、そっちの、あんたがパメラさんの妹か…」
「うん。初めまして、レオ殿」
カタリナさんとレティシアはクラース殿下とパメラさんの結婚式で面識があるかと思ったのだが。今日初めて会ったらしい。
何でも、レオさんはクラース殿下の結婚式に出なかったそうだ。
理由は教えてくれなかったが。
「それで今日はどのような用件で?手紙には此処に来るとしかありませんでしたが」
「…おう。あんた…ベルと婚約したらしいな。ついでにルシールも妾にするんだってな?」
「はい」
殆ど成り行きですけどね…
「で?ベルの他にも婚約者が沢山いるらしいな?この場にいる女だけじゃなく」
「はい…その通りです」
「…ふっざけんなよ!そんなんでベルを幸せに出来んのか!こらぁ!」
ごもっともな御意見だと思います。
全員を幸せに出来るか…断言は出来ない。
出来ないけど…
「断言は出来ません。ですが努力はします」
「少なくともウチらは幸せだよ。ウチは断言出来る」
「私も。お兄ちゃんのお嫁さんになれるなら間違いなく幸せ」
「レオさんに言うのはどうかと思いますが…少なくともサンドーラに居る時より幸せです。私は」
「私もだ。不幸そうに見えるか?」
「ぐっ…ベ、ベルはどうなんだ?」
「私は…此処での生活は楽しい…友達もいっぱい出来たし…」
「ベルに…友達…」
引き篭もり王女だったベルに友達が出来たというのがショックだったのか。レオさんは驚愕の表情で固まってしまった。
「えっと…レオさん?それを聞く為だけにわざわざ此処まで来たの?」
「い、一番の理由はそうだ。久しぶりに国に帰ったら兄貴とパメラさんは離婚してるし、国が滅びかねない大事件があったし、同盟国のヴェルリアは戦争してたとか…更にベルが城に居ないしエルムバーンの魔王子と婚約したって言うし…驚くのが普通だろう?だからその全てに関わってるエルムバーンの魔王子に会おうと思ったんた」
「むしろそんな大事件が耳に入らないなんて、何処でどんな生活してたのよ」
ユウの言う通りだと思います。一体何処に居たんだろう。
「お、俺の事はいいんだよ!…おい!ジュンさんよ!俺と勝負しな!」
「は?勝負?」
「お前が本当にベルに相応しい男かどうか!俺が見極めてやる!」
「はあ…」
また面倒な…だけどあのサンドーラの姉妹よりはずっとマシなようだし。
婚約者が沢山居る男に妹が嫁ぐとか普通に考えたら心配だろうし。
試したくなる気持ちは解るけど…うーん…




