第49話 インビジブルバード捕獲作戦
時は少し遡って。
今日は一ヵ月後のオークションに現れるだろう犯人達、あるいは犯人の手の者をどう出迎えてやるか。
その作戦会議中である。
「オークション会場の受付で嘘発見器を用意して全員に質問するとかどう?『貴方が犯人ですか』って」
「駄目だろ、それは」
「そもそも嘘発見器なんて便利なモノないぞ」
ないのか嘘発見器。
精神魔法を応用すれば作れるだろうか。
「オークションには他国のお偉いさんも来たりするらしいから下手すると国際問題だ。それに嘘発見器があるって広まれば犯人は来なくなるだろう」
「じゃあどうすんの?」
自分の案を完全否定されたアイがちょっと不貞腐れながら言う。
「こういうのってまず相手の目的と取りそうな手段を予想しないと駄目よ」
「じゃあまずそれを思いつく限り上げてみようか」
「まず犯人の目的が龍王の紋章だった場合。これはもうオークションに参加して情報を集めるだけでしょうね」
「それもボク達に接触してくるだろう。もしくは詳しく知ってそうなギルドマスターあたりか」
「それなら返って楽よね。犯人の目星がつけやすくなるし」
「だな。そしてこの場合の対処は、こっちも聞き込みをして怪しいと思った奴、全員に尾行を付けよう」
「全員ってなると相当な人数が必要になりそうだけど?」
「そうね。一人に付き尾行一人だけ付けるってわけにもいかないんじゃない?相手が他国から来てる奴で他国まで尾行を続けるとなると一人じゃ厳しいだろうし」
「そのあたりの解決手段はあとで考えよう。とりあえず対処としてはそんなものだろう?」
単純な手だがそれだけに有効ではあると思う。
確実ではないけど堅実ではあると思う。
「じゃあ次に。犯人の目的がドラゴンの素材だった場合かな」
「その場合は、強奪か、正当にオークションで落札かな」
「正当にオークションで落札されたら手の出しようはないね」
「そうだな。落札しただけで犯人扱いもできんしな」
「じゃあ確実に犯人じゃないってわかってる人に落札してもらうのを期待するとして。強奪のほうは?」
「それは通常より強化した警備体制を敷く事になってる。兵を置くし警備に雇う冒険者の人数も増員する。それに解体してるとはいえ相当でかいしな。オークション会場から強奪は簡単じゃないだろう。むしろ・・・」
「落札した人物を王都から出たとこで襲う、ですね」
「その場合は厄介だなあ。護衛をつけるくらいしか出来ないんじゃない?」
「事情を話して協力を取り付けるのは?」
「相手によるだろうな。それに落札した奴が犯人だと知らずに協力を要請したら間抜けもいいとこだしな」
「ガウルあたりが落札してくれたら楽なんだがな」
ガウル様が落札したら転移で安全にダルムダットに持ち帰れる。
ダルムダットは海に囲まれた別大陸の国だ。
流石に追えないだろう。
「次に、ドラゴンが治めてた土地を狙ってた場合だっけ?」
「その場合は目的は達してるからなあ。オークションに参加して確認するだけだろうし。犯人を絞り混むのは難しそうだな」
「会話で情報を集めるしかないか」
「次にドラゴンを暴れさせるのが目的だった場合かな」
「その場合はもうドラゴンいないしなあ」
「代わりにどこかで何かを暴れさせるとか」
「あるいはどこかの街を奇襲で落としてしまうとか」
「各地で警備は強化している。街の周辺も騎士団で巡回中だ。さらに王都周辺はフェンリル一家が警戒してくれるらしい。滅多なことにはならんだろう」
フェンリル一家の協力があるなら確かに大丈夫だろう。
実に頼もしい。
「じゃあ結局のとこどうすればいいの?」
「そうだな。ドラゴンの素材の警備強化。国内の警戒体制強化。怪しい奴を監視・尾行する準備かな?」
「ザックリと纏めるとそれでいいんじゃない?」
「じゃあお父さん。この中で何か問題があって出来なさそうなのはありますか?」
「監視や尾行の準備だな。そういった任務を得意とする奴らは既に各国へ情報収集に行ってる。国内に残ってるのは僅かだ」
それは不味い。
ボクは龍王の紋章が犯人の本命だったんじゃないかと思ってる。
たがら多分、今回は派手な行動はしないはず。
ドラゴン襲撃を失敗し、その犯人が誰か判らないようにしてるという事はバレたら不味い立場にあるという事。
ならこれ以上の失敗しないよう堅実にいくはず。
犯人が自棄にならなければだが。
「なら何とか増員しないと」
「簡単に言うな。そういった任務をこなせるよう育成するのは簡単な事じゃない。一ヶ月じゃ無理だ」
「一時的に各国に散ってる人達を呼び戻すのは?」
「それも駄目だ。あいつらの任務も重要なモノだ。おいそれと中断させられん」
ん~困ったな。
フェンリル一家も森の中とかなら尾行出来るだろうけど街中となると厳しいだろう。
あ、そうだ。
「尾行に向いた能力を持つ魔獣と召喚契約して使役しよう」
「あ~それはアリかも」
「ふむ、悪くない。今回だけじゃなく今後も使えそうだしな」
「そういう魔獣に心当たりあるの?お兄ちゃん」
「ない。これから調べるよ」
「それなら私が丁度いい魔獣知ってるわよ」
「なんて魔獣ですか?お母さん」
「インビジブルバードっていう鳥の魔獣よ」
母エリザから詳しい話を聞き。
確かに丁度いい能力を持った魔獣なので捕獲する事にした。
ただ捕獲は非常に困難だろうという話なのでボクだけじゃなく皆にも手伝ってもらう。
ユウにアイ。ノエラにセバスト。リリーにハティだ。
場所はフレムリーラ南方にある森だ。
「というわけで来ました。突然すいません」
「構わないわ。いつでも来ていいって言ったでしょ。皆もよく来てくれたわ。歓迎するわね」
「有難う御座います」
アイが代表して礼をいい皆が頭を下げる。
ハティも頭を下げてる。
とても可愛いらしい。
「その子がもしかしてフェンリルの子?」
「はい、ハティです」
「わふ」
「可愛い!抱かせて、抱かせて!」
ハティに駆け寄り抱きしめるシャンゼ様。
胸が窮屈そうに形を変えている。
「どこ見てるのよ、あんた」
「お久しぶりです。ジュン様」
「お久しぶりです。コルネリアさん。ユーファさん」
コルネリアさんとユーファさんもやって来た。
今回の目的を二人にも説明する。
「ふ~ん。インビジブルバードねぇ。そんな人数で捕まえられるの?」
「やっぱり難しいんですかね」
「当然よ。只でさえ空を飛ぶ鳥なのに姿を消せるんだもの。警戒心も強いし勘も鋭いらしいし。何日か掛かるでしょうね」
「その分、私達を襲う事はありませんけど」
「でも森には他の魔獣がいるもの。中には難度Aの魔獣もいるわ。大丈夫なの?」
難度Aの魔獣か。
それは聞いてなかったな。
「安全第一で行きますよ。インビジブルバードは森の全域にいるらしいですし。浅いとこで狙います」
「て、手伝ってあげても、いいわよ?」
「え、いいんですか?病院や学校の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。後は下の者達だけで。私はずっと働くわけじゃないし。いなくなる者がいつまでも上にいちゃ下が育たないしね」
結構考えてるんだな。
最初の出会いでの印象がいまいちな為、正直意外だな。
しかしまあ、ここは御礼を言う所だろう。
「有難う御座いますコルネリアさん」
「べ、別にあんたの為じゃないんだからね!」
おお、これはもしかして俗に言うアレか。
「ツンデレ?」
「ツンデレだね」
「ツンデレね」
「何よ、ツンデレって・・・」
さぁ和んだ所で。
南方の森へ向かうとしよう。




