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第280話 妖精女王 4

 やはり、安全に【フレイヤ】でマンドラゴラを引き離す作戦で行くか。


 ドラゴンとマンドラゴラは今は一心同体。

マンドラゴラだけを斬っても、ドラゴンにもダメージが行くかもしれない。

もしかしたら、この魔獣と同調する事で封印している妖精女王にも。


「それにしても…変な封印。ウチ、封印て言うから、もっとこう…建物か何かに閉じ込めてるようなのを想像してたけど」


「確かに。随分、中途半端な封印だと言わざるを得ませんね」


「だからこそ常時、妖精が結界を張って守ってたのでしょうけど」


「仕方ないんじゃない?神獣のドラゴンを封印するなんて、簡単じゃないだろうし。私には出来そうにないかなぁ。お兄ちゃんなら出来る?」


「どうかな…でも、もしかしたらこの状態は女王様の狙い通りなのかも」


「どういう事?」


「ドラゴンを救うには、ドラゴンに干渉出来る状態じゃないと無理だし。もし、こういう状態じゃなく、アイが言ったような形で封印されてたら。封印を解いてから、魔獣を殺すのは間違いだった事に気が付いただろうし」


 もっと言えば、気付いた時にはドラゴンを殺すしかない状況になっていたと思う。

そうなれば、さぞかし後味の悪い結果になっていただろう。


「それじゃ、【フレイヤ】で操作してみる」


「うん。フォローは僕達に任せて!」


 このマンドラゴラの変異種か新種は…恐らく、本来は睡眠を必要としない魔獣だ。

だが、ドラゴンに寄生した為、ドラゴンと同じように深い眠りにつく事で封印されいる。

起きていたら、マザーマンイーターのように、【フレイヤ】の能力に抵抗出来たかもしれないけど…


「今なら操作可能だな。ゆっくりとドラゴンから離してく。上手く分離出来たら…シャクティが宝玉を使って女王様に封印を解くように言って。封印が解けたらマンドラゴラに攻撃。一応、ドラゴンにも注意して」


「「「はい」」」


「わ、私が女王様と話すんですか?」


「シャクティの綺麗な声なら、女王様の目覚めもバッチリでしょ?」


「え?エヘヘ、そうですかぁ?ジュン様はお世辞がお上手ですねー。わっかりました!任せて下さい!」


「「「……」」」


 皆が不満そうな顔してるけど…声を褒めたくらいでそんな顔しなくても。


「あ…足の方。ドラゴンの鱗になってる」


「背中が何か盛り上がってきたね」


 足の方はドラゴンの青い鱗が見えてきた。

そして背中から丸い物が出て来た。

こっちは木のままだ。


「あの背中から出て来てるのがマンドラゴラなんだよね?ならアレを斬っちゃえば良いんじゃ無いの?」


『まだあかんで、マスター。今はまだドラゴンと同化してるようなもんやから、今斬ったらドラゴンも斬る事になる。だからジュンはんも一気に離すんやのうてゆっくり離してるんや。ドラゴンに影響が出えへんように』


「そうなんだ…」


 その通りなので、大人しくしててくれたまへ。


「胴体部分も、ドラゴンの鱗に戻って来たね」


「背中の出っ張りも大きくなって…首と肩?が見えてきたね」


「ねぇ、普通のマンドラゴラはどんな形してるの?誰か知ってる?」


「植物の根が人の形みたいになった姿で頭に花が咲いてるらしいぞ、アイ様」


「花?でも、花が無いじゃん」


「新種だから無いとか?若しくは完全に離れたら出て来るんじゃないか?」


「ふ~ん…」


「てゆーか、やっぱり知ってるんじゃないですか、セバストさん」


「偶々だ、偶々」


「じゃあ、どんな攻撃してくるとかも知ってる?」


「そうだな…魔獣だけじゃなく、魔族や人族にも寄生しようとするから素手で触ったり、触られたりするのはダメだ。あと、足がすげー早いらしい」


「まぁ普通のマンドラゴラは、ですが。アレはそれ以上の何かがあると考えておくべきでしょうね」


「ノエラも知ってたんだ?」


「マンドラゴラは毒物にも使えますので」


「あ、そう…」


 怖いなーノエラ。

サラッとマンドラゴラの毒を扱ってると明言しちゃったよ。


「ま、まぁ、このままジュンに支配して貰ったまま倒せばいいだけだし、大丈夫でしょ」


「そう出来ればいいけどね。…もう少しだ」


 ドラゴンの胴体も首も青い鱗になった。

後は背中の部分だけだ。

そして背中の出っ張りは…


「手と足も出て来たですぅ」


「やっぱり普通のマンドラゴラじゃないな。普通のマンドラゴラはゴブリンよりも小さいが、アレはどう見てもオレかジュン様と同じくらいのデカさだ」


「ねぇ、もういいんじゃない?もう分離出来たでしょ?」


 マンドラゴラを完全にドラゴンと分離出来た。

よし…


「アイシス、封印が解けたと同時にマンドラゴラを斬って。ボクは続けて【フレイヤ】で操作するけど…【フレイヤ】の支配から脱する可能性もあるから、あまり当てにしないで」


「うん!任せて!」


「じゃ…シャクティ、女王様を」


「はい!…んんっ女王様~ドラゴンに寄生した魔獣を分離しましたー封印を解除してしてくださいー」


『…か…した。解……願……ます』


 一瞬、ドラゴンとマンドラゴラが光った。

そして、ドラゴンが眼を開けた。


「アイシス!」


「うん!」


 瞬間、アイシスが攻撃を仕掛ける。

が、マンドラゴラはアイシスの攻撃を回避。

ドラゴンの背から降りて、地面に降り立った。


「嘘…躱されちゃった」


「寝起きはいいみたいね…ジュン、【フレイヤ】の能力は?」


「ダメだね。通じなくなった。つまり、あいつにはある程度の自我がある」


「マザーマンイーターと同じかぁ…ん?」


「なんか、姿が…」


 マンドラゴラの姿が変わった。

まず、頭部に花が咲いた。

そして顔が…


「…ハニワ?」


「ハニワ…だよねぇ?」


「ハニワ…だね?」


 マンドラゴラの顔は日本で博物館などで見る事が出来たあのハニワの顔だった。

ハニワに人の手足がちゃんと付いた、植物の魔獣。それがこのマンドラゴラの姿だ。


「ジュン様…ハニワとは?」


「気にしないで。ユウ、改めて、アレが何か分かる?」


「ううん。やっぱり新種みたい」


 予想出来てたけど、また新種か。

つくづく縁があるなぁ…


「さっきの動き…とんでもなく早かったね」


「うん。ジュンと同じ…ううん、ハティ並かも」


 狼の姿となったハティは『韋駄天の紋章』を使ったボクよりも早い。

そのハティ並というのは…


『そいつは儂からかなり力を吸いよったからのぅ。魔獣としてはかなり強くなっとるじゃろうな』


「え?この声は…ドラゴンから?」


「ファフニール様…ですか?」


『そうじゃ。お主らが助けてくれたようじゃのう。礼を言うぞ』


『私からも礼を言わせてください。ありがとうございます』


「女王様も御目覚めですか」


 これで、一応は目的は達成出来た。

あとは…このマンドラゴラを退治して終わりだ。


「なに、こいつ…」


「まるで武闘家みたいな構えを…」


 右の拳を前にだし、左の拳を腰に添え、リズムをとるかのように上下に揺れている。

クリステアの言うように、まるで武闘家だ。


『フオォォォォ!』


「「「……」」」


 まるでブルー〇・リー。

ハニワの顔でそんな声あげられてもな…


「動いた!」


「ハティ!逃げろ!」


『うん!』


 あのマンドラゴラの狙いはハティのようだ。

ハティの攻撃は牙や爪がメイン。あのマンドラゴラ相手にするには相性が悪い。


 マンドラゴラは狼の姿に戻ったハティの動きに付いて行ってる。

追いつける程ではないようだが、かなり早い。


『あのお嬢ちゃんはフェンリルか。弱った儂ではあの動きに対応出来んのう。何とか出来んかタイタニア』


『私も、ずっと貴方を封じてたのです。いま少しの間はまともに動けません……』


…仕方ないか。

魔神王の紋章を使えば、何とか出来るはずだ。

アレを使うと人格が多少変わるのが、不安なのだけど…


「女王様!ファフニール様!」


「ご無事で!?」


『アネモネ、ローズ。他の者達も、苦労を掛けました。貴女達の働きに感謝します』


『すまんのぅ。迷惑をかけて』


「いえ…御二人がご無事なら、それで…」


 アネモネさん達が、マンドラゴラを分離出来たのを確認して、傍までやって来た。

でも、アイツには数で優位に立ってもあまり意味が無い。

やはり、ボクが…


「ジュン様、どうされますか」


「ハティなら、捕まらないとは思うが…」


「うん。でもボクが何とか…」


「私に任せたまえ!」


「ダンテ殿?」


「あの狼を追ってる魔獣を倒せばいいのだろう?容易い事だ!」


「あのスピードで動く奴を、何とか出来るのですか?」


「うむ!私と、この【アレス】の力があればな!」


 どうやら、バルーク帝国の勇者ダンテと【アレス】の力を見る事が出来るらしい。

勇者の力はアイシスやダーバ王子で知ってるけど…【アレス】の力は見てみたい。


「…わかりました。ダンテ殿、御願いします」


「うむ!」


 槍の勇者のお手並み拝見と行くとしよう。

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