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第28話 暗殺者

 ダルムダットとフレムリーラの訓練生を受け入れてから四カ月。

学校設立に向けて動き出して半年が経った。

 

 ボクは今定期的に訪れている街での治癒に来ている。

共にノエラのセバストに護衛の騎士三人。

それから見学したいとダルムダットの訓練生クオンさんも付いて来ている。

治療も終わり、帰ろうとした時に泣きながら助けを求める女性がやって来る。


「お願いします!私のお父さんを助けて!」

 

「君、治癒は今終わったとこだ。ジュン様が治癒に来られる日は事前に知らせていたはずだ。次の機会まで待ちなさい」


 護衛の騎士がそう対応する。

こういうのを一々対応してたらキリがないし特別扱いもできないというのは解る。

だけど見捨てるのも気持ちよくない。

だから構わないと言おうとしたが


「違うの!今日、誰かに襲われたの!見つけた時には大怪我をして倒れてるお父さんしかいなかった!ここまではとても連れてこれない!お願いします!村まで来てください!」

 

 どうやら一刻を争うようだ。

ノエラとセバストに視線で確認を取る。

 

「わかりました。行きましょう。ノエラ、セバスト、この街に駐屯してる軍から馬車を借りてきて。急いで」

 

「「畏まりました」」


 涙ながらに礼を言う女性も乗せて彼女の村に向かう。

必死に走って来たのであろう彼女の足はボロボロだ。

馬車での移動中に治癒魔法をかけておく。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「どういたしまして」

 

 それから馬車で急ぎ走ること30分。

目的の村に着き彼女の家に着く。

 

「これは、ひどい…」

 

 思わず息を飲む。

何者かに襲われたという彼女のお父さんの状態は酷いものだった。

目と喉は潰され、両足は切断。体中に傷がある。

だがどれも致命傷にはならないようにしてある。

まるで死なない程度に拷問を加えたかのように。


「お願いします。お父さんを…」

 

「ええ、今、助けます」

 

 魔王の紋章も使用した上位治癒魔法を掛ける。

潰された目も喉も切断された両足も体中の傷も綺麗に治した。


しかし、今までの治療で何度も見たけど手や足が生えてくる様って見てて気持ちのいいもんじゃあないなあ。

 

「お父さん…」

 

「もう大丈夫。お父さんはもう大丈夫ですよ」

 

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 滝のように涙を流しながら御礼をいう女性に

目が覚めても数日は安静にさせておくようにと告げてから村を後にする。

 

 馬車で来たので転移魔法で帰らず街まで戻ることになる。

その帰り道、森の中の道に入った途端。

村に入ったあたりから感じていた視線の主が動き出したようだ。

魔神の紋章のおかげか日々の訓練の賜物か。

こういう視線や気配に敏感になってきた。

 

「ノエラ、セバスト」

 

「はい、ジュン様」

 

「ああ、わかってるぜジュン様」


「どうかしたんですか?」

 

 ノエラとセバストは気づいていたみたいだけど

クオンさんと護衛の騎士は気が付いてないようだ。

 

「たぶん、敵襲だよ」

 

 その言葉に慌てて武器を手に取り身構えるクオンさん達。

それから御者をしてる騎士に声をかけ馬車を止めて降りる。


「何者だ!ずっと尾行してきているのは解っている!姿を見せろ!」

 

そう叫ぶと森の中から全身黒ずくめの見るからに暗殺者風な連中が姿を見せる。

 

「何者かは、答えてくれそうにない、かな」


 そういって戦闘態勢をとる。

今から始まるのは模擬戦なんかじゃない。

本当の殺し合いだ。

誰も死なせることなく勝てるだろうか…。

 

「いいか、誰も死ぬな。大怪我しても死ななければボクが治してやる」

 

その言葉に全員が頷き戦闘が始まる。

こちらは七人。敵は十人だ。

だが森の中にまだ数人の気配がある。

油断はできない。


魔王の紋章、魔神の紋章を使用する。

重ねて補助魔法の身体強化等を自分だけでなく味方全員に掛ける。

 

剣を両手に持ち迫る敵を迎撃する。敵は武器に毒を塗っているようだ。

武器が怪しい色に光っている。

 

「敵は毒を使ってるぞ!かすり傷一つ負うな!」

 

 自分で言ってて無茶なのはわかるがそれしか言えない。

即死系の毒じゃなければ治癒魔法でなんとかなるが、ボクが毒をもらったらやばい。

クオンさんにはまだ毒を消す治癒魔法は使えない。

 

 魔神の紋章を使用したボクの動きに暗殺者達はついて来れないようだ。

一人、二人と切り伏せていく。

殺してはいないが。

ノエラとセバストも暗殺者を圧倒してる。

クオンさんも優勢。

護衛の騎士達とは互角といったとこか。

 

 騎士達の援護に入ろうと動く、そこへ森からなにか飛んでくる。

矢だ。咄嗟に剣で弾き、避ける。

そこへさらに矢が飛んでくるのを躱し続ける。

解っちゃいたけどボクが狙いのようだ。


「森の中にまだいる!弓だ!矢にも毒がある!注意しろ!」

 

言ってて無茶だと思ったので結界を張ることにする。


「ノエラ、セバスト!援護して!」

 

「「ハッ!」」

 

 ノエラとセバストに守ってもらい

補助魔法の一つで外からの攻撃を防ぐ結界魔法の一つを使用する。

 

「シールドウォール」

 

 自分を中心に半径五メートルの半円形の光の結界が生まれる。

これで森の中にいる敵の攻撃は防げるだろう。

結界内に残ってる敵はあと四名。

数の上でも有利になった。

手早く片付けることにする。


 双剣を使い、体術を使い倒していく。

最近忙しかったが訓練は続けてきて本当に良かったと思う。

いざという時に体がちゃんと付いて来てくれる。

ちなみに攻撃魔法は森の中なので控えた。

自然破壊はよくないのだ。

 

「これで、終わりっ」

 

「ごふっ」

 

 最後の一人を倒した。

みんな無事のようだ。

 

「みんな無事だね?かすり傷一つでも負ってるなら治癒するから言うように。毒を使ってくる相手だ、かすり傷でも致命傷になりかねない。念入りに確認して」

 

「ジュン様、森の中の敵はどうしますか?」

 

「大丈夫、もう逃げたよ」

 

探査魔法も使って確認した。

最後の一人が倒れたのと同時に森の中に潜んでいた敵は逃げ出したようだ。


「お見事でした、ジュン様」

 

「ああ、ほとんどジュン様が倒しちまったな」

 

「そんな事ないよ。みんながいたからこそだよ。さて、と。みんな、まだ息があるやつは縛って連行しよう。目的を吐かせなきゃ」

 

 とはいえボクが倒したやつは手加減してあるので生きてるはずだ。

十分な人数を確保できるはず。

 

「ジュン様。こいつら…みんな死んでる」


「なっ…」


「ジュン様、これを」

 

 ノエルがそう言って死体の胸を見せる。

これは…


「魔法陣?」


「いえ、これは呪いの類です。任務に失敗したら死ぬように呪いを掛けたのでしょう。口封じです」

 

 人間を使い捨てか。反吐がでる。

 

「…一応身元が分かるような物を所持してないかあらためて。毒をつかってたからうっかり触れないように注意して」

 

「「「ハッ」」」

 

 手分けして死体から情報を探す。

結局身元を示すような物はなく解ったことは

 

「全員人族、か」


「そうですね、ある程度の予想はできますが…」

 

「証拠はない、か」


 狙いはボクだろうし

何者かに襲われたあの男性もこいつらにやられたのだろう

 

「あの男性を襲ったのがこいつらでボクが来るのを待ってた。そして暗殺に失敗したら口封じ。つまりこいつらの背後にいる連中はボクが上位の治癒魔法を使えることが気に入らないんだろうな。育成していることも含めて」

 

「ジュン様、早く城に戻り魔王様に報告しましょう」

 

「そうだね。死体の後始末はボクが魔法で一気にやってしまうよ」

 

そうして後始末を終えて馬車を返した後、城に戻り父アスラッドに報告する。


「そうか…暗殺者が…」

 

「無事でよかったわ、ジュン」


「ありがとうございます。お母さん」

 

「ジュン、暗殺者はみな人族だったんだな?」


「はい、間違いなく」


「そして口封じの呪い。ということは依頼を受けたどこかの暗殺者ではなく、組織に属した暗殺者達だったいうことだな。そしてジュンが治癒魔法使いでいるのが気に入らない奴らとなると」

 

「人族の国。その中で最も怪しいのは、聖エルミネア教国 ですか…」

 

 魔族と戦い人々を救ったという聖女エルミネアを信奉する教団が作った国。

推測でしかないが魔族が上位治癒魔法を使うことに過敏な反応を示しそうなのはこの国だ。

 

「まあ証拠はないのだ。推測しかできないことで悩むのはやめておこう。学校と育成所が完成すれば狙われることもないだろう。それまでの間は護衛を増員する。訓練生達にも護衛を付けよう。ダルムダットとフレムリーラにも護衛を出すように連絡しておく」


 ボクが狙われた理由が上位治癒魔法を使い、治癒魔法使いを育成しているからならば上位治癒魔法使いを増員し育成所を完成させればボクを狙う意味もないということか。

 

「よろしくお願いします。お父さん」


「ああ、任せろ。可愛い息子に手を出す愚かさを分からせてやらねばな」


 それからどこにいくのも護衛が付くようになり

ダルムダットとフレムリーラの護衛も到着し国境付近の監視、街中の警備も増えしばらくは剣呑とした雰囲気になる。

一国の魔王子の命が狙われたのだからしょうがないとは思うけど、早く穏やかな日々に戻りたいと願うのだった。

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