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第271話 フラワー 3

「それで、勝負方法はどのように?」


「一対一の模擬戦です。相手を戦闘不能にするか、負けを認めさせるかで勝負です」


「怪我をしてもナズナが癒しの力を持ってますので、御安心を」


「とはいえ、ジュン様も持ってるらしいけどねー」


 結局、『フラワー』の人達と、模擬戦をする事になってしまった。

場所を練兵場に移し、準備する。

例によって、練兵場には兵や騎士、使用人達が見学に来てる。

勿論、パパ上やママ上。話を聞きつけたアイシス達。パメラさんやイーノさん達も。

あとマルちゃん達ヤーマン王国組まで。


「仕事は大丈夫なんですか?マルちゃん」


「う…いや~何だか面白い事が始まるって聞きまして」


「偶には娯楽に興じるのもいいわよね~」


「…息抜き…」


 ま、他にも仕事サボって来てる人、いっぱいいるし、いいけどね。


「それでは、そちらは誰が戦うのか、五人選んでください」


「じゃあ、えっと…」


「その前にさ、一つ質問したいんだけど」


「はい、何でしょう?アイ様」


「察するに、貴女達は自分達より強い人を探してるんでしょ?今まで貴女達より強い人はいなかったの?」


「はい。あ、いえ。個人で負けはしてもパーティーとしては負けた事はありません」


「なら、ただ強いだけじゃダメって事?パーティーとしても貴女達より強くないとダメなの?なら個人戦じゃダメなんじゃない?」


「それもそうなのですが…私達が探しているのは私達より圧倒的に強い人です。私達より、ほんの少し強い程度ではダメなのです」


「…ふ~ん」


 Sランク冒険者より圧倒的に強い人、ねぇ。そんな人いるのかね。

もし居るとしたら、同じSランク冒険者の可能性が高い。

だからSランク冒険者に戦いを挑んでいたのだろうけど…何故、強い人を探してるのか、までは教えてくれないらしい。


「じゃ、五人選ぼっか。ウチとジュンは確定として、あと三人だね」


「僕!僕もやる!」


「アイシスは却下」


「え!何で!?」


『何でも何も…マスターは『マスター』のメンバーちゃうやん。…なんか言っててややこしいけども』


「アイシスは別パーティー」


「そうだった…」


 ま、ずっと一緒に行動してるしね。

同じパーティーと言っても違和感ないけど。


「順当にランクで選ぶなら…セバストとノエラとリリーかな?」


「オレは遠慮させてくれ。女相手はやり辛い」


「リリーも…ここじゃ弓は使いにくいですぅ」


 セバストの理由は…まぁ解るからなぁ、無理強いは出来ない。

リリーの言い分も解る。リリーの弓の威力はかなり高くなってるから外れた矢がギャラリーに向かったら大変だし。


「私は大丈夫です、ジュン様」


「じゃあ、後の二人は…」


「はいはーい!ご主人様!あたしもやるー!」


 ハティか…確かにハティは強いんだけど…


「ごめんね、ハティ。今回は冒険者登録をしてる人から選ぶよ」


「えー…」


「後でお菓子作ってあげるから、機嫌直して。ね」


「うん…」


 それに、流石に神獣フェンリルを相手にさせるのは可哀想だろう。

『フラワー』の人達がどれだけ強いのかわからないけど。


「じゃあ後は…ユウは?」


「私は遠慮しとく」


「シャクティ?」


「私も遠慮しときますね」


「…シャクティ?もしかして今…」


「な、何ですか?ジュン様。穿いてますよ?でも、ちょおっとお手洗いに行って来ますねっ」


 逃げたな…まだノーパン主義は治ってないのか。


「なら、クリステアとルチーナで決まりかな?」


「はい。お任せください」


「頑張ります!」


 決定か。

ボク・アイ・ノエラ・クリステア・ルチーナ。

この五人だな。


「決まりましたよ」


「はい。では始めましょう。あ、それとどちらかが途中で三勝したとしても全員戦ってください」


「…いいでしょう。そう言えば、そちらが勝った場合は何か要求があるのですか?」


「ありません。ですが圧倒的にこちらが負けた場合は、御願いしたい事があります」


 普通、逆だと思うんだけどな。

まぁいいけど。

だんだん強い人を探してる理由も気になって来たし、真面目にやるとしよう。


「じゃあ、始めましょう」


「はい。先ずはこちらからは…ナズナ」


「うん。私から」


 向こうからはナズナさんからか。

確か癒しの力を持ってるとか。

なら、魔法使い系か?

見た感じ戦士系ではないし…武器も持ってない。


「ジュン様、私が」


「ノエラか…うん、御願い」


「はい。…勝ったら御褒美を頂けますか?」


「……珍しいね。ノエラが御褒美を強請るなんて」


「だ、ダメですか?」


「……考えときます」


「はい。では」


 練兵場の中央に向かうノエラとナズナさんの二人。

体格の差で、ノエラが若干有利かな?

そしてナズナさんが魔法使い系なら、ノエラの勝利は堅い。


「御褒美かぁ…何がいいかな」


「もう勝った気なのかしら?ナズナを甘く見過ぎなのではなくて?」


 気品漂うダリアさんは気位も高いらしい。

ノエラが勝つと決めつけたようなボクの発言が気に入らなかったみたいだ。


「ああ、いえ。そういうわけでは。…アイから見てどう?ナズナさんは」


「そだね…ノエラと同じタイプなんじゃないかな。ちょっと苦戦するかもね」


「同じタイプ?」


「うん。あ、始まったよ」


 アイの言う二人は同じタイプだと言う意味は直ぐに分かった。

なるほど、同じタイプだ。


「ナズナさんも暗器使いか」


「だね」


 メイン武器は二人共に短剣二刀流。

そして魔法に投げナイフや吹き矢、使い捨ての魔法道具。

ここまでは互角かな。


「互角だよね?」


「今のところはね」


「装備にも差は無いみたいだね」


 ならば次は紋章の優劣で決まるかな。

ノエラが持ってる紋章は二つ。

魔封じの紋章と愛の紋章。

どちらもナズナさん相手には有効だと思うが。


「あっ」


「ナズナさんが先に動いたね」


 ナズナさんの額にある紋章は…魔道士の紋章か。

ここからは魔法合戦にするつもりらしい。

アレだけ近接戦が出来るのに、魔法の方が得意なのか。


「ここからがナズナの本領ですわ」


「それはどうでしょう」


「え?」


 魔法を発動しようとしたナズナさんだが、上手く発動出来ず動揺してしまう。

ノエラの魔封じの紋章だ。


「シッ!」


「くっ!」


 ナズナさんが動揺した隙を上手く突いたと思ったのだが、すぐに立ち直ったナズナさんはギリギリで躱してしまう。

ほんの少し短剣が腕を掠めただけだ。 

そしてまた、先ほどまでと同じ接近戦に。


「何故、ナズナの魔法が?」


「恐らく『魔封じの紋章』でしょう」


「『魔封じの紋章』?でも『魔道士の紋章』を使ったナズナの魔法を完全に封じるなんて…」


「過去にも『魔封じの紋章』持ちの相手はした事あるけど、そんな事無かったよね」


「彼女…ノエラさんでしたか。ノエラさんの『魔封じの紋章』を扱う能力は今までの中で最高という事でしょう」


 ノエラはあのマッド爺に敗れて以来、訓練の時間を増やしている。『魔封じの紋章』も、より強力に使えるようになった。

訓練の成果が出て来たな。


 このまま行けば、魔法を封じられたナズナさんが不利。

ノエラが勝てるだろう。

…が、やはりそうはすんなりとは行かないようだ。


「あ。お兄ちゃん、見て。腕の傷」


「もう、傷が塞がってる?」


 魔法を封じられてるから治癒魔法じゃない。

となると、紋章の力か。


「『治癒者の紋章』…いや、『癒しの紋章』かな?」


 『癒しの紋章』の能力は、所持者に常時回復効果を与え、紋章の力で他者を癒す事も出来る。

『治癒者の紋章』と似た能力だが、治癒魔法適性が与えられない分、他の能力は『癒しの紋章』の方が強力だ。


「『癒しの紋章』で正解ですわ」


「流石ですね、直ぐに見抜くとは」


「そちらも、『魔封じの紋章』だと直ぐに見抜いたじゃないですか」


 さてさて。このまま行けば、ノエラの勝ちだろうけど。

相手は数々のSランク冒険者を撃ち破って来た猛者。

このまま終わるとも思えないけど…


「あ?」


「武器を捨てた?」


 武器を捨てたナズナさんの拳は闘気で覆われている。

ナズナさんの手にある紋章は…『拳闘士の紋章』か。


「ナズナが本気になりましたわ」


「本来なら格闘と魔法を組み合わせた戦いが、ナズナの最も得意な戦法なのですが…」


「魔法を封じられたのは辛いね」


 しかし、体術が最も得意なのは確からしい。

闘気を纏った攻撃をノエラは躱しきれず、脇腹を掠めてしまった。それだけでも結構なダメージだったようだ。

ノエラの顔が苦痛に歪んだ。


「頑丈なメイド服ですね。破けると思ったのに」


「ジュン様に頂いた自慢の服です。丈夫さは折り紙付きです。ですが痛かったので、今後は攻撃を受ける事はしません」


 ノエラも全力を出すらしい。

『愛の紋章』を使用したようだ。

動きが先ほどまでとは違う。


「アレは?急に動きが変わりましたわ」


「全能力が向上した?」


「アネモネ、解る?」


「いえ…解りません。幾つか思い浮かびましたが、確信出来るモノは…」


 やはり、『愛の紋章』はかなり珍しい紋章らしい。

身内以外、知らない事だし黙っておこう。


「再び五分五分になったね」


「でも…ノエラが何か消極的だね」


「逃げに徹してる感じですねー」


「あ、シャクティ。お帰り。ちゃんと下着穿いて来た?」


「やだぁ、もぅジュン様ったらぁ。当たり前じゃないですかぁー」


 そうなんですけどね。

君の場合はそうじゃないから。


「って、あれ?」


「ナズナさんが倒れたよ?」


「ナズナ!」


「どうしたの!?」


 急に力尽きたかのように、ナズナさんは前のめりに倒れた。

そしてノエラが帰って来る。


「勝ちました、ジュン様」


「あ、うん…よくやった。でも、どうやって?」


「短剣に超強力な麻痺毒を塗っておきました。それがようやく効いただけです」


 なんと…あのかすり傷を負わせた時、既に勝負は決まっていたのか。『癒しの紋章』でも毒までは消せなかったらしい。


「そんな…私達は毒耐性の装備をしていますのに」


「並の毒ではありませんから。ああ、命に関わる事はありませんから、御安心を」


 とはいえ、放置するわけにもいかないので治癒魔法で治しておく。


「うう…不覚…まさか毒で敗北するなんて…」


「そちらも吹き矢に毒を仕込んでいるのでしょう?問題は無いはずですね?」


 何気に怖い二人だな。

毒を平気で使う者同士の戦いか…兎に角、先ずはこちらの一勝。

ノエラの勝利だ。

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