第266話 この姉妹もダメすぎる
会議を途中で退席し、皆が待ってる部屋へ。
部屋の中には、皆とパメラさん。ベルナデッタさんとルシールさん。そして見知らぬ女性が一人。
「ただいま」
「おかえり。お客さんが来てるよ」
「ジュン様ですね?初めまして、ベルナデッタの母、ウラリーです」
「あ、初めまして。ジュン・エルムバーンです」
この人がベルナデッタさんとルシールさんに逃げるよう指示したサンドーラ王国の正妃、ウラリー・アン・サンドーラ。何と言うか、大人になったベルナデッタさんと言う感じの人だ。
「この度はサンドーラ王国と娘のベルナデッタ、そしてルシールを救って頂き、有難う御座います」
「いえ。オーギュスト陛下にも言いましたが、ベルナデッタさんとルシールさんの御蔭で、最悪の事態にならずにすんだのですから。二人を褒めてあげてください」
「はい。ですが、エルムバーンやヴェルリアの方々にも助けて頂いたのも確かですから。それに…これからも御世話になるようですし…」
ベルナデッタさんの方を見ると…既に準備は万端。いつでも家出出来ますって感じだ。
ルシールさんも同様に。
「あの…本当によろしいのですか?」
「母が既に許可を出したようですし。ですがボクの婚約者にしようとか、そういう事は考えてませんからね?」
「え?そんな事は考えては…もしかして陛下やクラースが何か言いましたか?」
「ええ、まあ。ベルナデッタさんと婚約したいなら大歓迎ですとか、他の二人の娘も如何ですとか」
「まあ!メラニーはともかく、マルグリットまで?婚約が決まったばかりなのに何を考えて…申し訳ありません、ジュン様」
よかった、ウラリーさんはまともな人らしい。
頑張ってサンドーラを導いて欲しい。あの二人に代わって。
「あら、私は嬉しいけれど?お母様」
「私もよ、お母様」
「マルグリット、メラニー…ノックも無しに、無礼ですよ」
突然、二人の女性が入って来た。
マルグリットとメラニーという事は、この二人がベルナデッタさんの姉か。
「あら、失礼。初めまして皆様。私は第一王女のマルグリット・キャトル・サンドーラ。以後お見知り置きを」
「初めまして。第二王女のメラニー・シス・サンドーラです。以後お見知り置き」
ドレスの端を軽く上げ優雅に挨拶をする二人。
この二人は父親似らしい。ベルナデッタさんとは似ていない。
性格はどうだろうか?
「マルグリット。貴女は婚約したばかりでしょう。何を言っているのです」
「だってお母様。ジュン様とは比べるべくもない、つまらない男じゃありませんか。サンドーラにとっても、ジュン様と婚約した方が利益になるでしょう?」
「只でさえ、ジュン様には御迷惑をお掛けしているのです。これ以上無理は言えません」
「大丈夫よ、お母様。ベルなんかを引き取ってくれるんでしょう?なら、私達だって大丈夫よ。だって私達の方が美人だもの。ねぇ、姉さん?」
「ええ。ベルなんかが私達を差し置いてジュン様に嫁ぐなんて。おかしな話だわ。ベルもそう思うわよね?」
「……」
ダメだ。この二人もダメな部類だ。
いや、この二人の方が性格悪いかもしれない。
「ベルナデッタさんがエルムバーンに来るのは、パメラさんと一緒に居たいと願ったからで、ボクが気に入ったからとか、そういう事ではありませんよ」
「パメラさん?あぁ、居たんですか、パメラ義姉さん。いえ、元義姉さんでしたね」
「本当、何でいるのかしら。離婚して捨てた国なんかに」
「……」
ダメだ、本当に性格が悪い。
この二人も、ベルナデッタさんの引き籠もりの原因に違いない。
「そう言えば、パメラさんもジュン様の下にいらっしゃるとか?」
「ジュン様って懐が広いのですね。離婚した王族の娘まで引き取るなんて」
「…パメラさんは友人として招いているだけですよ。男女の関係ではありません」
「あら?そうなのですか?」
「でもアンナ様がパメラさんもジュン様と婚約する予定だとか仰っていましたよ?」
アンナさん…何でこの二人にそんな事を…
「待たせてすまない」
「皆、お待たせ~…て、なんかあった?」
丁度いいタイミングで、ユーグ陛下とアンナさんが戻って来た。ここは一つ…
「アンナさん、正座」
「え?何?ジュンちゃん、怒ってる?」
「お母様。正座」
「パメラちゃんまで!?何?私、何かした?」
「マルグリットさんとメラニーさんの二人に、ボクとパメラさんが婚約予定だって言ったんですか?」
「え?言ってないわよ?ベルナデッタちゃんには言ったけど…」
「うん。だから私もジュンちゃんと婚約すれば合理的にパメラお姉ちゃんとずっと一緒に居られるって」
「私は偶然、その会話を聞いたのです」
「あ、あの会話を聞かれちゃったのね?ごめんね、ジュンちゃん」
なるほど、マルグリットさんとメラニーさんにわざわざ言いふらしたわけじゃないのは分かった。だけど、ベルナデッタさんに言うのもダメでしょ。
「どっちにしろ、そんな事実は無いんですから。勝手な事言わないで下さい」
「う…御免なさい。やっぱりまだ機嫌悪いのね…」
「すまない、ジュン殿。余からも言っておくから、赦してやって欲しい」
「…はい」
まぁ確かにまだ機嫌は悪いけど、それとはまた別だ。機嫌が良かったら認める訳じゃ無いのだから。
「じゃ、そろそろ帰ろうか。ウラリーさん、ベルナデッタさんとルシールさんは責任を持ってお預かりします」
「はい。宜しく御願いします。ベル、エルムバーンの方々に御迷惑をかけないように。時々、連絡をするのよ。ルシール、ベルを御願いね」
「うん。ありがとう、お母さん」
「畏まりました、ウラリー様」
「パメラさん…貴女に御願いするのは違うかもしれないけど…ベルの事、御願いします」
「はい、ウラリー様。私もベルは好きですから。任せて下さい」
ウラリーさんはいい人だな。ベルナデッタさんも、本当はウラリーさんとは離れたくないんじゃないかな。少し寂しそうな顔をしてる。
「お待ち下さい、ジュン様」
「私達も準備して来ますから、連れて行って下さい」
「貴女達、まだそんな事を…」
「だって、お母様。ベルがジュン様に嫁ぐ訳じゃないのなら、なおのこと私達が嫁がないと」
「そうよ。でもまぁ、考えてみればそうよね。ベルのような能無しの子供と、離婚歴のある王女なんて相手にしないわよね」
「本当に。きっとジュン様の優しさにつけ込んだのでしょ。その点私達は…」
「「「あっ」」」
最低だな、この二人。
どうして打たれたのか、それすら解らないんだろうな。
「いきなり何をするんです!」
「あんまりです!女を打つなんて!」
「その程度で済んで、よかったじゃありませんか。これで赦せますか、ユーグ陛下」
「そうだな。二人とも、感謝するのだな」
「ごめんね、ジュンちゃん。嫌な事させて。ウラリー様、後はお任せしても?」
「はい。娘達の無礼、心より謝罪致します。二人には私からきつく言っておきますので…」
「お母様!?」
「私達が何をしたと言うんです!」
やっぱり解らないか。
ヴェルリア国王と王妃の前で、ヴェルリアの王女を貶める。
しかも勝手な想像、憶測に過ぎない内容で。
今回、只でさえサンドーラ王国の失点は大きい。
いくらサンドーラ王国も被害者とはいえ、周辺諸国への信用は落ちたのは間違いない。
それをギリギリで救ったのが、ヴェルリア王国とベルナデッタさんとルシールさんなのだ。
なのにベルナデッタさんを悪く言い、パメラさんを貶め、ヴェルリア王家の怒りを買うような発言をしてどうするのか。
「では、先ずはヴェルリアへ転移します。城に転移して構いませんか?」
「うむ。宜しく頼む、ジュン殿」
「いつもありがとうね、ジュンちゃん。それではウラリー様、失礼します」
「はい。ベルナデッタを宜しく御願いします」
「はい。では」
「待って下さい!」
「どういう事か、説明して下さい!」
まだマルグリットさんとメラニーさんの二人が何か言ってるが無視…いや、これだけは言ってやるか。
「何故、打たれたのかは自分で考えて、どうしても分からなければウラリーさんに聞いて下さい。ただ、貴女達は自分の方がパメラさんとベルナデッタさんより、ボクに相応しいとか考えているようですけど、少なくともボクはパメラさんとベルナデッタさんの方が余程魅力的に見えます。貴女達よりも、ずっと」
「な…」
「そんな…」
「では失礼」
絶句する二人を置いて転移する。
これで少しは変わってくれるといいんだけど。
でも、こういうのは嫌な気分にしかならないな…
「はぁ…」
「お疲れ、ジュン」
「大丈夫?お兄ちゃんが気にする必要も落ち込む必要も無いからね?」
「その通りだ、ジュン殿。今回は本当に最初から最後まで迷惑を掛けた」
「私も失態だったわ。ごめんね、ジュンちゃん」
「いえ…ところで、あの後会議はどうなりました?あの蛇については?」
「うむ。あの場所はサンドーラを中心に厳重に護る事になった。勿論ヴェルリアも協力する」
「放置するには危険過ぎる存在だしね。近いうちに砦を建てる事になると思うわ」
「そうですか。分かりました。では、またいずれ」
「うむ。また会おう、ジュン殿」
「もうしばらく、パメラちゃんを御願いね。パメラちゃんはジュンちゃんに御礼しといて。おっぱいを使うと喜ぶと思うわよ?」
「お母様!」
「はは…では、失礼します」
転移でエルムバーンに戻る。
何かドッと疲れた気がする。
すぐ寝てしまいたい気分だけど…
「どういう事か、説明してもらいましょうか。洗いざらい全て」
『いきなり呼び出したと思えばなんじゃい。何かあったのか?』
神様にあの蛇の事を確認しなければなるまい。
あの石碑に書かれた内容は信じていいのか。
それとも、やはり危険な存在なのか。
確かめないと、不安で仕方ない。
「という訳です。以前、危険な物は粗方引き上げたって言ってましたよね?」
『ううむ…そのはずじゃが…ちと、待っておれ』
「? はぁ」
待つ事、数分。
話しかけて来たのは別の神様だ。
『ハロハロー!初めまして!美と愛の女神アフロディーテちゃんでーす!』
「いきなりですね…初めまして」
「もっと神様らしい、厳かな感じ出せないの?」
『そんなの流行らないよ~、ねぇ、フレイヤ』
『まぁ同意じゃが、お主はもうちょっと神様らしくせい』
『かった~い。堅いのはお尻だけにしといた方がいいわよ?』
『やかましいわ!触った事も無い癖に!』
『見れば分かるわよ~。胸はそこそこあるのに。残念ねぇ』
『何を言うか!なら触ってみぃ!』
「どうでもいいからさ、あの蛇について答えてくれない?」
「ボク達の事や、聞きたい内容はフレイヤ様から聞いてますか?」
『聞いてるわよ。あの子…レヴィアタンは優しい子なんだから。無闇矢鱈に暴れたりしないわよ?』
「でもあの大きさじゃ、可愛がるとか無理でしょ。餌とか用意出来そうにありませんよ」
『ああ~大きさが問題なの?だ~いじょうぶ。あの子、大きさを自由に変えられるし、人に変化する事も出来るから。私によく似た、超美人よ』
「ならもっと穏やかなサイズで封印なさいよ。只でさえ蛇を飼うってハードル高いのに」
「うん。ウチは無理」
『え~?そう?可愛いのよ、あの子。私が他の子を可愛がると、すぐヤキモチ焼いて。すぐ甘えて来るんだから。大きさはあれぐらい大きかったら、インパクトあるでしょ?』
「ちゃんと人の視点で考えて下さい」
やっぱり人と神様の感性は違うな…
『でも、懐かしいなぁ。また会いたいなぁ』
「それなら何故封印なんてしたんです?」
『神界には下界の生物を連れて行けないのよ。例外はあるけど。だから私がその世界から去る時に眠りにつかせたの』
「眠りに?眼が開いてましたけど?」
『あら?意識があるのかしら?じゃあ封印が弱くなってるのかもしれないわね。近い内に自力で封印を解いちゃうかも』
「今すぐなんとかしてください」
あの時の視線はやっぱりあの蛇なのか?
今、アレが解き放たれたら…暴れないにしても大パニックが起きるぞ。それだけで、何人犠牲が出るか。
『大丈夫だってばぁ。心配性ねぇ』
「大きさが大きさですから。暴れなくても動くだけで被害が出る大きさですし。そこら辺の気が回るか、分からないでしょう?」
『大丈夫だってば、もう…仕方ないわねぇ。じゃあ君にこれをあげる』
突然、目の前が光ったと思ったら、空中に二つの指輪が浮かんでいる。赤い石の指輪と青い石の指輪だ。
「これは?」
『青い石の指輪をつけてあの子に命令すれば必ず聞くわ。どんな命令でもね。出来れば使って欲しくはないし、使う必要も無いと思うけど。ああ、貴方にしか使えないようにロックを掛けてあるけど、盗まれたりしちゃダメよ。赤い石の指輪はあの子にあげて。私の声が聞こえるだけの指輪だから』
「分かりました」
取りあえずは、一安心…かな?
あの蛇に意識があったのかもしれないというのが、かなり不安だが…何もおこりませんように!




