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第264話 地下遺跡 5

 地下遺跡の奥に存在したモノ。

それは超巨大な蛇だった。

水晶の中に…封印されてるのだろうか。

見える部分は頭だけだが、胴体は水晶と共に地中にあるようだ。

頭の部分だけで20mはあるか?

ギガロドンより大きいかもしれない。


「こ、これ…生きてるの?」


「さぁね…でも、この圧迫感と存在感…生きてるんじゃないかな…」


 蛇の眼は開かれている。動く気配は無い。


「ご主人様、怖い…」


 神獣フェンリルであるハティが怯えている。

尻尾を股の間に挟み、ボクの背中にしがみついて来る。

他の皆も言葉にこそしないが恐怖を感じているようだ。


「…兎に角、少し調べよう。あの石碑とか如何にも怪しいし。でも何時でも転移で逃げれるように皆ボクからあまり離れないように」


「「「はい…」」」


 石碑に向かって歩く。

近付くほどに、蛇から感じる圧迫感。

それがどんどん強くなる。


「メーティス、感じてた何かってあの蛇?」


『いや…多分この蛇を封印してる力を感じてたんや。神様が封印した存在やで、これは』


 神様が封印した蛇…やはり、生きているという事か。


『恐らくあのヒュドラはこの蛇に惹かれて此処まで来たんやろな。そんで此処の主になった』


「こいつが主なんじゃなくて?」


『こいつの存在感や圧迫感は本物やけど…それでも封印されとる事に間違いない。主にはなれんやろ』


「そもそもどうして主が出来ると魔獣が集まって来るの?」


「仮説ならあります。強い魔獣の住処には空気中の魔素…魔力の素になるモノが多く含まれるようになるそうです。それが洞窟や遺跡のような限定された空間だと、魔素溜まりとなり魔獣にとって心地よい環境になるのだと」


「へぇ~物知りね、クリステア」


「恐縮です。あくまで仮設ですが」


 平然と会話してるように聞こえるが、皆必死で平静を装ってるだけだ。

アイとユウもボクの手にしがみついて離れないし、ハティもボクの背中から離れようとしない。


「ようやく着いた…」


「眼に見える距離だったのに凄く遠く感じたね…」


「早く調べて離れようよ…」


「そうだね。読むよ…【大陸を喰らいし蛇、レヴィアタンを此処に封じる。レヴィアタンが解き放たれし時、世界は滅びるだろう】…マジか」


 レヴィアタンって現代地球の神話にもあったな。

あの神話通りの存在だとすると…マジで世界を滅ぼす存在なのかも…


「なんでそんな存在が此処に…」


『神族が封印したんやろな。つまり、此処も以前の地下墳墓と同じで神族が残した遺跡っちゅうわけやな』


「どうせなら倒してくれればよかったのにぃ~…」


『無理やったんとちゃうか。封印するので精一杯やったんやろ、きっと』


 神族が封印するしか無かった存在か…


「…ところでメーティスは平気なの?」


『ま、わいは剣やしな。それにこいつ…不思議と悪い気は感じひんねん』


「というと?」


『邪悪な存在では無いかもしれんってこっちゃ』


「いやいやいや。大陸を喰らう蛇が邪悪じゃないって、そんなわけ…」


『そらただの食事なんちゃうか、こいつにとっては。魔獣や動物かて、生きる為に命を奪うけど、それて危険ではあっても邪悪とは言わんやろ?』


「それは…」


『ま、この巨体や。怖いんは無理ないわ』


 大陸を食べるのはこの蛇にとって食事なだけ、邪悪では無い…そうかもしれないけど…


『それよりや。石碑にはまだ続きがあるで。わざわざ下の方に』


「あ、うん…え~と…【な~んて大仰に書いたけど、この子は悪い子じゃないからぁ。此処を見つけてこの文を読んだ人が善人ならこの子の新たな主になる資格が与えられるから、封印を解いて可愛がってあげてねぇ。この石碑の近くの水晶の壁に手形のような凹みがあって、そこに資格のある人が手を当てれば封印は解けるからぁ。よろしくねぇ。美しき女神アフロディーテより】…」


「「「……」」」


 いやいや。

可愛がる?これを?


「無茶言うなっ!」


 ビシッ!と。思わず石碑に向かってツッコミを入れてしまう。

普通の蛇ですらペットにするのはボクにとってはハードルが高い。

しかし、こいつはスケールが違い過ぎる。

この蛇が本当にいい子だったとしても、封印を解くのは無理だ。


「石碑の文を読んだ人が善人なら…つまりこの場合はお兄ちゃんに?」


「ジュン様が善人なのは間違いないですしね~」


「うん。ジュン様なら確実」


「試す訳にはいかないけどね…」


 ボクを善人と言ってくれるのはうれしいけど、そんな場合じゃない。

でも善人にしか封印を解けないというのが本当なら助かるけど、善人はこの蛇を解放しようと思わないだろうなぁ。


「どうされますか、ジュン様」


「…メーティス、この封印。正規の手順以外で解く事が出来ると思う?」


『普通なら無理やろなぁ。普通なら』


「…何か方法が?」


『封印を解く事に特化した能力の持ち主とか、強力な力を持った武具を使うとかすればいけるかもしれんなぁ。…勇者の遺物とか、な』


「…このまま何もせずに放置も出来ないって事だね」


 悪人が…あのマッド爺やブラドなんかが封印を解いてしまったら。

最悪の結果しか想像出来ない。


「…アイ、タイプKを出して。ボクも出す」


「う、うん」


「どうするの?お兄ちゃん」


「此処の封印を守らせる」


 ゴーレムだけじゃ不安だし、結界を何重にも重ねて張っておこう。

洞窟の入口も結界を張って警備も置いてもらわないと。


「さ、帰ろう」


「い、いいの?これで」


「うん。他に出来る事は…ん?」


「な、何だぁ!こいつぁ!」


「や、やべぇ!ありゃやべえよ、親父!」


「あ」


 ファミリーの人達と他の冒険者達も来たか。

幾つもの修羅場をくぐり抜けて来たであろうSランクパーティーでもあの蛇…レヴィアタンには恐怖してしまうようだ。

無理も無い。


「皆さん、主は倒しました。アレについては戻ってから説明します。兎に角、此処を離れましょう」


「あ?魔王子さん達か…離れるって…アレは放って置いていいのかよ?」


「ええ。アレは封印されてます。結界も出来るだけ強力なのを重ねて張りました。あのゴーレムにも此処を守らせます」


「そ、そうかよ」


「本当に大丈夫なんでしょうね…」


「いや、でもよフローラ。アレは俺っち達にはどうしようもないぜ?多分」


「封印されてるというなら、放置するしかないだろうな」


「…そうね」


 そう、少なくとも現時点では、アレはどうする事も出来ない。

封印を解くのは持って論外だし、封印を解いたとしても倒す事も出来ない。

今は此処を守って封印が解けないようにするしかない。

…あとで神様通信でこの蛇の事を聞こう。


「ジュン様、行きましょう」


「ご主人様、早く離れようよ…」


「ああ、うん。…ん?」


「どうかした?ジュン」


「いや、何でも…」


 視線をあの蛇から視線を感じる気がする。

気のせい…だと思いたい。

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