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第256話 家出王女 10

御感想ありがとうございます。


「あ!おい居たぞ!こっちだ!」


「ベルナデッタ様!お戻りください!」


 タリスに一度戻り、ベルナデッタさんとルシールさんをわざと騎士達に見つけさせる。

これで、二人はまだタリスの街に居ると考える筈だ。


「では御二人とも、戻りますよ」


「はい」


「…」


 転移する所を騎士達に見られないよう注意しながら、王都ヴェルサイユのノーヴァ伯爵家の屋敷に戻り、暫く待機する。アンナさんとバルトハルトさんが城に戻り、各地の情報をもう一度集める事になっており、二人が戻って来るのを待って行動する事に。


「だからね、私がサンドーラを出た事にジュンさんには責任が無いのよ」


「…でも…」


 待機中にベルナデッタさんをパメラさんが説明中だが、中々納得してくれない。

よっぽどパメラさんが好きなようだ。


「ベルナデッタさんはどうしてあんなにパメラさんを?」


「ベルナデッタ様には御兄弟が四人居られますが…皆、歳が離れていて皆様働いていましたので相手をしてもらえず、寂しい思いをされておりました。そこへパメラ様がベルナデッタ様がよく相手をしてくださるようになったのです。元々、引っ込み思案で人見知りなベルナデッタ様ですが、パメラ様はすぐベルナデッタ様と仲良くなられて…」


「ルシールさんも随分ベルナデッタさんに信頼されてるみたいですね」


「私は…新人騎士の時にベルナデッタ様に命を救われて…それから恩をお返しする為に、ベルナデッタ様の護衛兼侍女になったのです」


「ん?幼馴染なのでは?」


「あ…私の父はサンドーラの大臣で、子供の頃に父に連れられて城に行った時にベルナデッタ様の御相手をした事がありました。侍女になる前はそのくらいの接点しか無かったのですが…ベルナデッタ様は覚えていてくださったのです」


「それってベルナデッタさんが何歳の時の話です?」


「初めて会ったのが三歳の頃。侍女になったのが六歳の頃です」


 三歳の頃の事を覚えていた?

子供の頃なら覚えているモノなんだろうか。


「ただいま~戻ったわよ~」


「お帰りなさい、お母様」


「まぁ、ここはノーヴァ家の屋敷なんだが…」


「細かい事はいいじゃない、カタリナ姉さん」


「そうそう。じゃ、新たに集めた情報を伝えるわよ」


 アンナさんが集めた情報を纏めると、まず現時点では怪しい動きをしてる国はサンドーラのみ。

少なくとも軍を動かしてる周辺国家は、今回の魔獣討伐に関連した国のみ。

そして、派遣したヴェルリアの軍を襲う役目はサンドーラの精鋭、天馬騎士団らしい。


「天馬騎士団はヴェルリア軍から見て森の反対側で待機中だそうよ。魔獣を上手くぶつける事が出来たら、頃合いを見て空から急襲するつもりなんでしょうね」


「なるほど。厄介ですね。数はどの程度です?」


「五千。天馬騎士団の半数ね」


「精鋭戦力の半分をぶつけるつもりって事ですか」


「それしか無いのよ。サンドーラの中でヴェルリアとまともに戦える騎士団は天馬騎士団くらいだもの。あっ、ごめんね、ベルナデッタちゃんやルシールちゃんの前で悪いけど…」


「…いい」


「気になさらないでください」


 精鋭か。正面からまともにぶつかっても分が悪いという事か。


「ま、ぶつからないけど。アンナさん、派遣した軍にはボク達が行くって事は連絡してますか?」


「ええ。担当地帯の出来るだけ端に配置するよう、現地の指揮官には連絡してるわ。指揮官にのみ、サンドーラから攻撃が来る可能性も伝えてる」


「そうですか。他の国に動きは本当に無いんですね?」


「無いわ。そこが不思議なのよね。サンドーラ単独でヴェルリアを潰せるなんて本気で思ってるのか。それともまだ何か隠し玉があるのか。それとも…」


「それとも?何です?」


「サンドーラは捨て駒かもしれない。ですか?」


「え…」


「捨て駒?それってどういう事?ユウ」


「ナジールって男がどこかの工作員で、今回はヴェルリア王国の力を削ぐ事が出来れば十分だと考えてるのかもしれないって事」


「そんな…」


「……」


 その可能性は十分にあるだろう。

サンドーラがヴェルリアに勝つのは今回の作戦が成功したとしても単独ではほぼ不可能。

だが、それでも一国と戦争となればヴェルリアは大きく消耗する。

少なくともヴェルリアの味方をする国が一つ無くなるのだ。


「まぁ、そんな事にはならないけどね。敵の初手が魔獣をぶつけ、ヴェルリアの軍を潰す事ならだけど」


「本当に凄い自信ねぇ。私と初めて会った時はボクなんて大した事ないって言ってたのに。何かあったの?」


「え?ああそう言えばそうですね。特に何かあった訳じゃないんですけどね」


 確かに、魔神王の紋章を試してから、どこか自信過剰になってたかもしれないな。

いかんいかん。戒めねば。

…今回はもうやるしかないが。


「じゃあ、明日の朝。タリスの街から現地に向けて出発します」


「御願いね。無理だと思ったらすぐ逃げるのよ?」


「はい。えっと…ボク達はエルムバーンに一度戻りますけど、パメラさんはどうします?」


「どうしましょう…ベルを放って帰るわけにも行きませんけど、王城に連れ帰るわけにもいきませんし」


「うちの城だと、余計な事考える人がいるもんね。エルリック兄さんとか」


「いや、今回は兄さんだけじゃなく家臣達からも二人を人質にしようと唱える者が出て来るだろう。サンドーラの動きがおかしい事は、城内の家臣達には知れ渡ってるでしょう?アンナお母様」


「隠せないしね。ルシールちゃんは美人だし。別の意味でも危険ね」


「じゃあ、ベルナデッタさんとルシールさんもエルムバーンに来ますか?」


「…パメラお姉ちゃんも一緒?」


「あ、うん。パメラさんも一緒ですよ」


「…なら行く」


「ベルナデッタ様がそれでよろしいなら」


「ごめんね、ジュンちゃん。御願いするわ」


 うちなら歳の近い子供がいるからね。

ティナ達やリタ達に相手をしてもらおう。


 そして翌日。何時ものメンバーにカイエン・リディア・ユリアの三人を加えた面子で魔獣討伐に現地到着。その日は現地で過ごし、ヴェルリアの軍が到着するのを待った。


「来ましたな。ヴェルリアの魔獣討伐派遣軍です」


「来ましたか。一応挨拶をしときましょうか」


「そうですな。指揮官のオーバンは私の元部下で、信頼の出来るヤツです」


 指揮官は先頭の他の騎士より装飾が派手な鎧を着た人物だろう。

髭を伸ばした渋みのあるおじさんだ。


「お久しぶりです、バルトハルト殿」


「うむ。久しぶりだな、オーバン。こちらはエルムバーンの魔王子、ジュン・エルムバーン殿だ」


「初めまして、ジュン・エルムバーンです」


「オーバン・アングラード男爵です。ジュン殿の御高名はかねがね。今回は我が軍を手助けしていただけるとか」


「はい。オーバンさんの出番を奪う事になってしまうと思いますが」


「事情は聞いております。…しかし、本当に大丈夫なのですか?」


「はい。ダメだったとしてもボク達は転移魔法ですぐ逃げる事が出来ますから、心配しないでください。それでは、ボク達は前で陣取りますので」


「わかりました。お気をつけて」


 ヴェルリア軍の前方に戻る。

作戦開始時間までもう少しだ。


「ねぇ、ジュン。ヴェルリア軍が魔獣をおびき寄せる手段を使うだけで、相手の思惑通りに魔獣の大群が来るのかな」


「魔獣をおびき寄せる手段があるのなら、魔獣を追い払う手段もあると考えていいんじゃないかな?魔獣が嫌う匂いがでる香を炊くとか。ヴェルリアは魔獣をおびき寄せる。サンドーラは追い払い、ヴェルリアの方におびき寄せる。そんな所じゃないか?」


「あるにはあるね、そういう物。そこそこ高価らしいけど」


「あるんだ…」


「ジュン様、作戦開始の時間です」


「そうか、わかった」


 準備はもう完了している。

アンナさんに用意してもらったヴェルリアの紋章が入った武具を身に纏い、いつでも魔法を撃てるよう魔力を高めておく。

そして普段は使わない、魔法使い用の杖を装備する。

今回は手加減をする必要も無いし、最高威力を出して構わない。

そしてシャクティの歌姫の紋章の力もあればいける筈だ。


「ジュン様!来たですぅ!」


「ご主人様!すっごい沢山来たよ!」


 来たか。

此処から森まではまだまだ距離があるが…


「おおー…これはこれは」


「ねぇ、ジュン。凄い数だけど…」


「お兄ちゃん、これ本当に大丈夫?」


「ジュ、ジュン様!撤退しましょう!」


「いくら何でもアレは無理です!ドラゴンまでいますよ!」


 ルチーナの言う通り、ドラゴンの姿が見える。

恐らくはレッサードラゴン、下位のドラゴンだが。

魔獣の数は数千。

確かに多いけど、アーミーアントよりは少ないな、流石に。

一匹一匹の強さは段違いだが。


「カイエン、どう?森から全部でたかな?」


「はい。ほぼ出たようです。それから後方に天馬騎士団が見えます」


 やはり、天馬騎士団が来るか。

まぁ無駄だけど。


「じゃ、シャクティ。歌って」


「はい。♪~♪~」


 あとはボクが全力で魔法を放つだけ。

魔神王の紋章と賢者の紋章を使用する。

本当の意味で魔神王の紋章を全力で使用するのは初めてかな。


「じゃあ行くぞ!眼を痛める事のないように注意!」


 サンダーストームを全力で放つ。

見える範囲、全てが雷で染まる。

今までの比では無い、威力と範囲、そして照射時間。極太の雷が落ちていく。


「ハハ…アハハハ…アーハッハッハッ!どうだぁ!アーハッハッハッハッハッ!」


 サンダーストームが消えた後に残っていたのは焼けた大地と魔獣の死体だけ。

動いている魔獣は一匹も居ない。


「す、凄い…」


『これは…わいの魔法ですら霞んでまうな…」


「まさか、本当に一発の魔法で全部…」


「ハハハ!三発も必要無かったなぁ!アーハッハッハッ!」


「ジュ、ジュン?どうしたの?」


「お兄ちゃん?何だかお兄ちゃんらしくないよ?」


「ハーハッハッ…あ?」


 な、何だ?

確かに今…何時ものボクじゃなかったな。

全力全開で魔法を撃ってハイになったのか?

それとも魔神王の紋章を使用した影響だろうか?

前回はそんな事は無かったが…


「ご、ごめん。もう大丈夫。カイエン、天馬騎士団はどう?」


「まだ動きは…あ、いえ、今動き出しました。撤退するようです」


「ま、そうよね…」


「あんなの見せられたらね…」


「ヴェルリアの軍も驚いて動けないようですね」


「あー…バルトハルトさん。もう動いて大丈夫だから、魔獣の死体の処理を頼んで来てもらえますか」


「は?…あ、はい。行って来ましょう」


 人格が少し変わった件については後で考えよう。

兎に角、サンドーラとヴェルリアがぶつかるのは回避出来た。

次はサンドーラの城にいるナジールという男をどうにかしないとな。

読んで頂きありがとうございます。

よければ評価してやってください。

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