第252話 家出王女 6
~~カタリナ~~
「「「すみませんでした!」」」
「ん。解ればよろしい」
アイシスにボコボコにされ、土下座させられてる男達は…二十人程か。
こんな所で用心棒してるような奴等が二十人いた所で勇者の敵ではなかったな。
「そうだ、オジサン達。この子の家が何処か知らない?」
「へ?そのガキ…いえ、お嬢さんのですかい?」
「あっしは知りませんや。お前らはどうだ?」
「いや…」
「誰かに似てる気もしやすが…」
最初から期待していなかったが、この男達は知らないようだ。地道に探すしかないか。
「そっか。知らないなら仕方ないね。行こっか」
「ああ。先ずは大通りに出て…」
「キャシー?あなたどうしたの!?」
「あ、ママぁ!」
「「ママ?」」
どうやらこの子の母親らしい。
まさかここで働く娼婦の娘だったとはな。
「よかったね、お母さんが見つかったなら、もう大丈夫だね」
「うん!ありがとう、お姉ちゃん達!」
「うむ。もう迷子にならないよう、気をつけたまえ」
「キャシー、あなたまた迷子になったの?昨日もなったのに」
「うぅ…ごめんなさい…」
「なんだ、二日続けて迷子になったのか?」
「そうなのよ、この子ったら、方向音痴でね。まぁ、あたし達がこの街に引っ越して来たばかりってのもあるんだけどね。昨日も旅人さんに助けてもらっちゃて」
「旅人さん?」
「そ。若い女の人と、十歳くらいの女の子。宿を探してるって言うから御礼代わりに泊まってもらってね。あんた達も旅人なら、うちに泊まる?」
その二人はもしかして…
「ううん、僕達には他にも連れがいて、大勢だからね、気持ちだけで大丈夫。じゃ、行こっか」
「待て、アイシス。その旅人の一人はこんな女の子じゃなかったか?」
「ん?あ、あ~そうそう。こんな子だったよ」
「え、嘘!凄い偶然!」
確かに、凄い偶然だが…アイシス、お前、全然ピンと来て無かったな?
「その二人、私達が探してる人物のようだ。今、何処にいるかわかるか?」
「えっと…多分冒険者ギルドじゃないかしら。腕の立つ、信頼出来る冒険者を紹介してくれないかって言われたけど、生憎冒険者の知り合いはいなくてねぇ。冒険者ギルドの場所だけ教えておいたよ」
「そうか。それだけ聞ければ十分だ。ありがとう。失礼する」
ジュンのいる斑が正解だったか。
上手く見つけてくれてるといいんだが。
「いやぁ、人助けはするもんだねぇ」
「本当ですね」
「それにしても、凄い偶然ですわね。偶々助けた子供から元々の目的が達成出来るなんて」
「全くだ。だがアイシスは昔からこういう事がよくあるんだ。妙に引きが強いというか…」
『そうなんか?』
「うむ。今回、迷子の子供を見つけたのもアイシスだし、歓楽街に迷い込んだのもアイシスの先導だろう?」
「そういえばそうですね」
「何故、こっちに進むのかを尋ねても『勘!』の一言でしたわね」
「ニヘヘ。皆、褒めすぎだよぉ」
『多分、あんまり褒められてないで、マスター』
ま、一見すると適当な行動が偶々上手く行ったに過ぎないからな。何回か経験しないと信じられないだろう。
「ところで、カタリナ様?」
「なんだ?」
「今サラッと仰いましたが、私達、迷い込んでここまで来たんですか?」
「え?私達迷子になってるんですの?」
あんな入り組んだ道を適当に進んだんだ。
少なくとも、私は覚えていないが…
「…どうなんだ、アイシス」
「…えへへ」
『笑ってる場合とちゃうでマスター…』
しまったな…あの親子に冒険者ギルドの場所を聞くべきだったか。しかし、迷子を送り届けに来て私達も迷子です、なんて言えんし…
「仕方ありませんね。私に付いてきてください」
「あ、ノエラさん、道覚えてるの?」
「いいえ、覚えてません。ずっとジュン様の事を考えてましたし」
「ダメじゃん…」
それで何故、自信満々に先導出来る?
「ですが、ジュン様が居る方向は解ります。私はどれだけ離れていても、ジュン様の存在を感知出来ますので」
「なにそれ。どういう能力?」
「私の愛が成せる技です。こっちです」
「本当かなぁ…」
「あ、でもあの道…」
「最初に歩いてた大通りですわね」
どうやら間違ってはいないらしい。
ノエラ…君もよくわからない特技を持ってるんだな…
~~レティシア~~
それにしても、何のつもりなのかな?
ベルナデッタ王女を探してるってだけで怪しい奴扱い。
他国にも捜索依頼が出てるのを知らない筈が無いでしょうに。
「お前達、何をしている!」
あら、増援?
五人増えたけど、まぁ問題無いでしょ。
「何って…王女を探してる怪しい奴等を尋問しようと…」
「王女は見つけた。冒険者ギルドの方面だ。我々も応援に向かうぞ」
あれま。
予想外の形で王女の手がかりを得たわね。
「しかし…王女殿下を探す奴も尋問しろとの命令だろう。侍女が手配した仲間かもしれんのだろう?」
「それも見つけた。王女殿下と一緒に逃走中だ。メイドを連れた冒険者らしい。そいつらは一人は捕まえたら、後は殺しても構わないそうだ。とにかく、行くぞ」
メイドを連れた冒険者?
冒険者ギルド方面って事はジュンとイーノさんの斑ね。
ていうか、殺しても構わない?何言って…あ。
「ちっ。運がよかったな。何処へでも行…け」
ヤバい。
アイ達がキレた。
「ねぇセバスト」
「何だ?アイ様」
「こいつら今、ジュン達を殺すって言ったのかな?」
「ああ、確かに言ったな」
「そっかそっか。じゃあカイエン。こいつらどうしたらいいと思う?」
「そうですね。殺しても問題無いかと。いえ、殺すべきですね」
「そっかそっか。じゃあ殺して…」
「待ったー!三人とも落ち着いて!」
「そうですぞ、落ち着いて下さい。まだどのような状況か、はっきりとはわからんのです。なのに、ここで騎士を殺してしまっては後々不利になる可能性があります」
そうそう。流石は元聖騎士団団長。ナイスフォロー!
「ちっ!仕方ない…虫の息殺しに留めてあげる」
「いや、虫の息殺しって何!?それ死んでるのとほぼ変わらないんじゃないの!?」
「お前達、さっきから何を言ってる!」
「さては王女殿下と一緒にいる冒険者の仲間か!ならばやはり、お前達は捕まえる!大人しく…」
「やかましい!」
「ガッ!」
あ。あ~…やっちゃった。
大丈夫かな、あれ。鎧の上から素手で殴っただけなのに、既に虫の息だけど…
「ウチの前でジュンを殺すなんて宣言するなど!殺されても文句は言えない!覚悟しろ!」
「いや、アイ。人目もあるから、殺すのは拙いってば。せめて半殺しに留めて」
「…出来る限り、そうする。セバスト!カイエン!やるよ!」
「「はっ!」」
そこからはもう圧倒的で。
騎士達は三人を相手に一分も経たずに制圧された。
聞いてはいたし、魔獣との戦いも見たけど、本当に強いのね…
「生きてるの?これ…」
「一応ね。治癒魔法か高価な魔法薬でも使わない限り、暫くはベッド上から出られないだろうけど」
「あ、そう…」
本当に半殺しにしたのね。いや、虫の息殺し?
「それよりも!こんな奴等は放っておいて、ジュン達の所へ急ごう!」
「そうだな。逃走中とか言ってたから、ジュン様達も既に襲われたんだろう」
「ええ、急ぎましょう」
よかった、冷静な判断力は残ってるのね。
あ、もしかして、ここから冒険者ギルドまで走るの?
走りきれるかな、私…




