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第243話 御礼

 それじゃ、問題も解決した事だし、皆を呼んで…っと、その前に。


「えっと…世界樹様?さっきまでの会話の内容も秘密でお願いしますね」


「うん。わかってる。それじゃ…これは御礼」


 どこから取り出したのかは分からないが世界樹様の手には葉っぱや枝、花なんかが沢山乗っていた。


「これは?もしかして…」


「うん。私の葉や枝。高値で売れるらしいし、魔法道具を作るのにも使えるらしいから受け取って」


「ありがとうございます。…これは実ですか?」


 一際目立つ、その実。

黄金のリンゴのような実が一つある。


「うん。私の実。食べた者には何か力が目覚める事がある。そうでなくても、美容と健康、若さと長寿の効果がある」


 何ですか、その世界中の権力者が欲しくてたまらなさそうな万能果実。

下手すれば戦争が起こりそう。


「その果実は秘密にしておいて。テレサとか五月蠅いから。絶対」


「でしょうね」


 世界樹様の貴重な実を余所者にー!とか言いそう。

そしたらまた面倒くさい事になるんだろうな。


「それでは、失礼します」


「うん。また来てね。貴方達三人はいつでも来ていいから。テレサには言い聞かせておくし、お仕置きもしておくから」


「はは…わかりました」


 それからテレサ様を神殿に残し、場所を宮殿に移す。

転移魔法を封じる手段を教えてもらう交渉をする為だ。

だけど…


「それについては無論、差し上げます。他にも何かあれば仰ってください」


「よろしいんですか?最新の技術でしょう?」


「勿論です。世界樹様を御救い頂きましたし。そうでなくても、セラフィーナや民を救って頂いた方に御迷惑をお掛けしましたし…シルヴィエッタやフィーリアも御世話になってるようですしね」


 そう言えば…この人、フィーリアさんのお祖母さんで、シルヴィさんのお母さんなんだよな。

とてもそうは見えないけども。


「他の要求…そうね…とりあえず金銀財宝?」


「あと他の最新技術もかな?」


「あと珍しい魔法道具とかー」


「こらこらこら」


 対価としてはもう十分な物を貰ってる。

世界樹の枝や葉も貰ったし、転移魔法を封じる術を教えて貰えるなら目的は果たせるのだし。


「冗談だってば。転移魔法を封じる術を貰って帰ろうよ」


「うん。よろしいですか、エヴァ様」


「はい、今呼んでいますのでお待ちください」


「呼んで?」


「ええ。あ、来ましたね」


 部屋にやって来たのは、一人のエルフの女性。

深い緑の髪をポニーテールにしてメガネをかけ白衣を着た、如何にも研究者といった装いの人だ。


「呼んだ?姉さん」


 姉さん?って事はこの人も王族か。


「ええ。貴女が開発した転移魔法を封じる魔法道具。その作り方と技術をジュン殿達に伝えて頂戴」


「嫌よ」


「そう、ありがとう。じゃあエルムバーンまで付いて行って…嫌?」


「そう、嫌。面倒くさいもの。理由も無いし」


「そ、そんな事言わないで。ジュン殿達は世界樹様を救ってくれたの。セフィも人攫いから助け出してくれたし、危険な魔獣を倒してもくれた。恩があるの。だから、ね?」


「そう。ありがとう。これで最低限の礼は尽くしたわ。じゃ、私は帰るわ。早く研究の続きがしたいの」


 うう~む。

研究バカって奴か。

取り付く島もない感じだが…


「まぁ、待てティータ。私からも頼む」


「嫌」


「ティータさん?」


 確か、ステンナさんのが紹介してくれた人の名前もティータさんだ。

偶然…じゃなさそうだな。


「あの、ティータさん。ステンナさんを御存知ですか?ドワーフの」


「ん?知ってるわ。以前、魔法道具作りで世話になった」


「ならこれを。ステンナさんに書いて頂いた紹介状です」


「ステンナから?」


 ステンナさんからの手紙を読んだティータさんは深々と溜息を吐いた。


「仕方ない…嫌だけど。引き受けるわ」


「ありがとうございます」


「ティータ、お前な…姉や女王の御願いは断るくせに。研究仲間の御願いは聞くのか?はぁ…まぁいい」


「ただし、条件があるわ」


「条件?」


「ちょっと、ティータ」


「断るなら、私も断るわ。どうする?」


「…とりあえず条件を聞かせてもらえますか」


「私の研究についてはステンナから聞いてる?」


「はい。魔封じの紋章と同じ効果を魔法で再現する事、ですよね」


「そう。転移魔法を封じる魔法道具が出来たのはその副産物。ただの偶然。これ以上はやっぱり実験体…もとい、助手が必要になる」


 今、実験体って言ったか。

マッドじゃないだろうな、この人。


「だから、魔封じの紋章を持った助手が欲しいの。用意出来る?」


「それは…」


 ノエラが魔封じの紋章を持っている。持ってはいるが…


「……」


 ノエラは眼を瞑って沈黙してる。

だというのに「嫌です。私が仕えるのはジュン様ですから。研究助手など出来ません」

と、語ってるようだ。

でも…つい最近にも魔封じの紋章を持った人がいたような…


「お兄ちゃん、悩む事ないよ。いるじゃない丁度いいのが」


「うん?いや、ボクもさっきから丁度いいのがいた気がするんだけどね。思い出せなくて」


「ほら、あいつだよ。セラフィーナ殿下を攫った盗賊団の頭」


「あ、あ~。そっかそっか。居たね、そんな奴」


「ああ、あいつか。ノルドの街の冒険者ギルドに引き渡したんだったか?」


「でしたら、こちらで手配して移送させます。ティータ、それでいいでしょ?」


「う~ん…盗賊団の頭って事は男か。男が助手なのはイマイチだけど、犯罪奴隷なら多少無茶な扱いしても問題無いだろう。わかった、それでいい」


 うう~む…やはりマッドな気がする。

犯罪奴隷ならって線引きがあるだけまだあの爺よりはマシかもしれないが…


「まぁ、あの男なら大丈夫だろう。あの男は胸の大きな女が好みらしいからな。私より胸の小さいお前なら襲われたりしないだろうさ」


「うっさい。私と大して変わらないくせに」


「何を言うか。よく見ろ。ほれほれ」


 まぁ胸の大きさに関わらず、襲う事など出来ないだろう。

奴隷には『奴隷の首輪』という魔法道具が着けられる。

これを着けている限り、主には逆らえないし、危害を加える事は出来ない。

無理に外そうとしたり、主に背くような真似をすると首がしまり、命を落とす。


「なぁ、ジュン殿。私の胸の方がティータよりずっと大きいだろう?」


「見た事無いのでわかりませんね。というか、ボクにそんなこと聞かないでください」


「何?よし、ならば見せてやろう。ティータ、お前も脱げ」


「嫌」


 やっぱりセラフィーナ殿下も変な人だな。

女王様は変わり者って言ってたけど、今までに会ったグリムモアの王族の中じゃ一番普通…


「胸の大きさなら姉妹の中じゃ私が一番よね。伊達に子供は産んでないわよ。オホホホ」


「何?子供を産めば胸が大きくなるのか?」


「そんな研究結果が有った?」


 いや、そうでもないかもしれない。

というか、子供を産んで胸が大きくなるのは一時的なモノです。


「王族ってどこも変わり者ばっかりなのかなぁ」


「他人事みたいに言ってるけど、ジュンも相当な変わり者だからね?」


「そんなバカな」


「まぁ…否定は出来ないな」


「私もアイシスに同意ですな」


「そうですね。私も同意です」


「うん。でもジュン様は良い人だから、大丈夫」


 まさかの全員同意?

おかしい…セリアたんのフォローが救いではあるけど。セリアたんも同意なんですね?

おかしいなあ。心当たりが無いぞ?

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