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第236話 アースワーム討伐 2

「ようやく着いた!さぁサクサク行こう!」


「瞬殺するわよ!」


「はい、急ぎましょう」


 アースワーム討伐を引き受けたボク達は、問題の鉱山の入口に到着する。

アイとユウが…いや、何人か焦ってるが別にそれほど急がねばならないわけじゃない。

勿論、早いに越したことは無いのだが。


「クリステア、ルチーナ。大丈夫?バルトハルトさんも」


「はい、何とか…」


「薬が効いて来ました。何とかなりそうです」


「私もです。足手纏いにはなりませんぞ」


 二日酔いで苦しんでいたクリステア達も参加している。無理矢理叩き起こされたクリステア達はフラフラで歩くのも辛そうだったのだが、二日酔いに効く薬をネネさんに分けて貰い、何とか回復したようだ。

何でも大酒飲みが多いドワーフ特性の薬らしい。

ただ、ハティはどうしても薬が飲めず今回はお休みだ。薬の匂いがどうしても無理らしい。


「ジュン、探査魔法は使った?」


「うん。探査範囲には魔獣はいない。それと結構大きい鉱山みたいだ。入り口から全体を把握するのは無理だな」


 と言っても、鉱山の平均的な大きさとか知らないんだけど。


「じゃあアースワームが居る最深部までの道も分かんないの?」


「一応、地図を貰ってあるから、大丈夫」


「お兄ちゃん、地図は私が見るよ」


 結構分かれ道の多い鉱山なのだが、ユウは地図を見て即座に最短ルートを構築したようだ。

相変わらず多才な妹だ。


「ん、完璧。道案内は私がするね」


「頼んだ。先頭は…セバスト、お願い」


「了解だ」


 いつもなら、こういう罠の無い場所なら先頭はクリステアが適任なんだけど、まだ体調が万全じゃないみたいなので今回は中央にいてもらう。

最後尾を任せる事が多いバルトハルトさんも今回は同様だ。

アイシスに代わりを務めてもらう。


「それにしても、鉱石を食べちゃう魔獣ねぇ」


「聞いた事無いよね」


「鉱石が好物とはいえ、他の魔獣と同様、魔力を持った存在も捕食する必要があるからな。普段は森や草原の地中にある鉄分を捕食してるらしい。今回、ここに、来たのはミスリルがあるからだろうな」


 ミスリルは微量ながら魔力を持った金属。

アースワームにとっては魔力を満たせるし、美味しい餌になるわけだ。


「それにしても詳しいね、セバスト。…ん?まさか…」


 セバストが詳しいという事はもしかして…


「ああ、何でもアースワームの肉は珍味らしい。一度食べてみたいと…」


「ボクは絶対に食べないからね!」


「ウチも!」


「私も!絶対やだ!」


「お、おう。でも、タコは食べようって思うのに何でだ?タコの方が気持ち悪くないか?」


「言い分は分かるけど、虫は無理だから」


「まぁ無理矢理食べさせたりはしないが…おっと、分かれ道だ」


「そこは左ね、セバスト」


「了解だ」


 鉱山に入ってまだ数百メートルだが、今のところ魔獣の…アースワームの気配は無い。


「今のところボクの探査魔法では何も感知出来ないけど…リリーとメーティスはどう?」


「魔獣っぽい音は聞こえないですぅ」


『わいも、敵意を向けてくる存在は感知出来んなぁ』


「最深部にいるんでしょ?まだ入口付近だし、そんな直ぐには…」


「あ、何か来るね」


「何か来ますぅ。地中では無く歩いて来ますぅ」


「「「え」」」


 リリーの言うように人型の何かが歩いて来る。

数は…四。向こうはこちらに気が付いてなさそうだ。


「歩いて来るって事は?」


「アースワームじゃなさそうだね。何だろう?」


「まだ鉱山夫が残ってたのかな?」


「逃げ遅れた人が居るとは聞いてないけど…」


「来ますぅ。もう直ぐその曲がり角から姿を見せますぅ」


 そして姿を見せたのは予想外の存在。


「ゴブリン?」


「それも一体はホブゴブリンだね」


「ギギィ!」


 ゴブリン達はボク達を認識した途端、一斉に襲って…来なかった。それどころか、瞬時に逃げ出した。

普通のゴブリンには無い判断。


「何でゴブリンがここに?」


「多分だけど、私達が入った入口とは別に、塞がれて今は使われてない入口があるの。そこから侵入したんじゃないかな。ちょうど逃げた方にあるし、その入口」


「人の気配が無いのと入口が塞がれてるのを見て、廃坑だと思って入って来たのかな?」


「そうかもしれませんが、問題は…ジュン殿」


「ええ。奴らが直ぐに逃げ出した事ですね」


「それの何が問題なの?こっちの方が人数が多いからにげたんじゃないの?」


「それは合ってると思うよ。でも普通のゴブリンはそんな賢く無い。多分、指揮する者が居るな」


「げげっ。それって…」


「ゴブリンキングが居る可能性が高い。ちょうど住処を探していてここに辿り着いたんじゃないか?」


 ゴブリンキングが率いる群れは以前にも潰してる。

その時の数は約二千だったけど、そこは参考程度に留めるか。


「つまり…ゴブリンキングが率いる群れと、アースワームの両方とやり合う必要があるって事ですか。誕生日はここで迎える事になるかもですね」


「それだけはさせないわ!何としても!」


「急ぎましょう、ジュン様」


「まぁ待ちなさい。慌てて進んだらアースワームとやり合ってる時に後ろからゴブリン達に襲われる。何て事になりかねないよ」


「ですが…」


「まぁ、聞きなさい。ユウ、もう一つの入り口はゴブリンが来た方向で間違いない?」


「うん。間違いないよ」


「なら、新型ゴーレムを披露しましょう」


「お?いつの間にそんなの用意してたの?」


 何かと役に立つゴーレム。

新しいゴーレムを考えて試行錯誤してたのだか…遂に完成した。


 先ず、人型のゴーレムを改良した。

関節部分を球体関節にして、より人に近い動きと素早さを獲得。

次に安物だが鉄製の武具を装着させる。

一見、騎士のようなゴーレムの完成だ。


「名付けて、ナイトゴーレム。技術は無いけど、ゴーレムのパワーと頑丈さ。そして疲労しない無慈悲な騎士の完成だ」


「「「おおー」」」


 普通のゴーレムよりは間違いなく強いが、それ程強くない。

精々、討伐難度Cの魔獣といい勝負出来るくらいか。

勿論、ゴーレムをロックゴーレムからアイアンゴーレムに変えたり武具を安物から高級品に変えれば、もっと強くなるが。

しかし、ゴブリン相手ならこれで十分な強さだ。


「これは…どの程度の戦闘力なのですかな?」


「ゴブリン相手なら蹂躙出来るでしょうね。まともにやり合えば並の騎士相手なら勝てるかもしれません。でも頭を使われたら並の兵士でも勝てると思います」


「それは…戦争になったら怖ろしい戦力になりそうですな」


 元聖騎士団団長という立場からか。バルトハルトさんは、もし戦場でこのナイトゴーレムに出合ったら。その脅威を感じ取ったらしい。だけど…


「現状じゃ、戦争にはこのゴーレムは使えませんね」


「何で?僕も凄い戦力になると思うんだけど…」


「知っての通り、複雑な命令を出したらゴーレムは余り数を出せない。だけど単純な命令だと、問題が出てくるから。人と違ってゴーレムには柔軟な対応と判断が出来ないからね」


「んん?どゆこと」


「例えば…『あの兵士達を倒せ』と命令したとする」


「うんうん」


「で、その命令だと例え敵兵が降伏して投降したとしても、ゴーレムは敵兵を倒すのを止めない。戦い続けるんだよ」


「それは…でも命令に『降伏した兵士は殺すな』て命令して置けばいいんじゃないの?」


「降伏や降参の仕方って結構パターンがあるでしょ?武器を捨てたり白旗を上げたり。それら全てを事前に出す命令で何とかするのは難しい。それに…」


「それに?」


「一度降伏した兵は攻撃対象から外す。でもその兵士がもう一度武器を持って攻撃してきても、ゴーレムはその兵士を攻撃しない。その場合にすら対応出来るようにするのは無理があるんだ」


「なるほどぉ」


 尤も、その点の解決策はある。

ゴーレムには自立型と操作型がある。

自立型が事前に与えた命令に従って自動で動くタイプ。

操作型が術者が目視出来る範囲にいるゴーレムを思念で操作するタイプ。

どちらのタイプも目視出来るなら、途中で切り替えが出来る。

操作型は一体なら複雑な動きをさせる事も可能。

 

 もし、エルムバーンにいる魔法兵が全員、このナイトゴーレムを出せるようになったら?

死を怖れない騎士並の戦闘力を持ったゴーレム軍団の完成だ。

今のところ、そんな物を作る気は無いが。

それにその気になれば簡単に敵も真似出来るだろうし。


「ま、ゴブリンの相手はこのナイトゴーレムにさせます。三体はこの道を守らせて、後は坑道を巡回させてゴブリン退治に向かわせます」


 出したナイトゴーレムの数は十体。

足りなければ後十体出せるし、まだとっておきがある。


「少ないんじゃない?ゴブリンキングが居るなら沢山いるんでしょ?」


「うん。でも今はゴブリンキングが居るかは確証は無いし、規模も分からない。アースワームと戦ってる時に後ろからゴブリンに襲われなければいい。ゴブリンキングが居たとしても、そっちは後回しだな」


「そっか。しかし、厭なタイミングで来るねぇ。時間が無いってのに」


「本当になぁ」


 本当に厭な偶然だな。


 と、この時は考えていたのだか…

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