第235話 アースワーム討伐 1
ステンナさんの家からジドさんの家に戻る。
皆はテープルに着いて御茶を楽しんでいたようだ。
「ただいま」
「おかえり。出掛けるなら声くらい掛けてよ」
「おかえり、お兄ちゃん。どうだったの?」
「うん、説明するけど…その前に…アイシス?大丈夫?」
「ジュン…僕はもうダメ…穢されちゃった…」
「大袈裟な」
「皆でくすぐられただけじゃない」
アイシスは疲れ切った様子で椅子に座っている。
服も髪も乱れてる。心なしかやつれてるような。
「服まで脱がす事ないじゃない!」
「下着は残してあげたじゃない」
「アイシスは軽いお仕置きじゃ、すぐに忘れちゃいそうだしねー」
「うう…」
まぁ、これでアイシスも反省した事だろう。多分。
「それで?ステンナさんの所で問題の解決は出来そうなの?」
「あ~いや。協力してくれそうな人を紹介してもらったけど、解決はまだだな。王都エルドにいかなきゃだめだね、結局は」
「そうなんだ。じゃあ今からすぐ行くの?」
「いや…ステファニアさん、例の魔法道具、作ってみるんですよね?どれくらい掛かる物なんですか?」
「え~と…師匠、どれくらいです?」
「……」
「三~四時間ですか。じゃあ早速始めますか?準備は終ってるんですよね?」
「……」
「あ、はい。相変わらず食いしん坊ですね」
「……」
「え?あ、あぁまあ仲直りは出来ましたよ。何故かステンナがエルムバーンの私の家に引っ越す事になりましたけど」
「……」
「いや…何言ってるんです、師匠。そんな訳ないじゃないですか」
「ステファニアさーん!ウチらにもわかるように会話してー!」
全くだ。
魔法道具を作るのに三~四時間掛かるのとステンナさんと仲直り出来たのか尋ねたのはわかったけど、後の会話はよくわからない。
「ああ、ごめんなさいね。魔法道具を今から作り始めると昼食に間に合わないから、昼食が終わってからだってさ」
「つまり…魔法道具が出来上がるのは夕方かぁ。それまでどうする?ジュン」
「のんびりしてていいんじゃない?ドワンドの街を見学して周ってもいいし」
「そうする?まだ二日酔いでダウンしてる人がいるしねー」
「クリステアとルチーナはまだ起きてこないの?」
「ハティとバルトハルトさんもまだだよ。バルトハルトさんもお酒強いけど、流石に昨日は飲みすぎだよね~」
ボクと飲み比べした時も相当飲んだけど、今回はそれ以上に飲んでたしね。
ハティも甘いお酒が気に入ったようで、ガブガブ飲んでたし。
クリステアとルチーナはドワーフの女性陣に捕まって付き合わされてた。
二人もお酒は別に弱くはないけど、強くも無いし。
「ま、今は急ぐ理由も無いし、今日はゆっくりと…」
「すまねぇ!ジドさんはいるかい!?」
と、思ってたら一人のドワーフの男性が血相を変えて飛び込んで来た。
「……」
「す、すまねぇ。でも一大事なんだ!第一ミスリル鉱山にアースワームが出やがったんだよ!」
「……!」
「アースワームですって?それは不味いわね…」
「ステファニアさん、アースワームとは?」
「大型の芋虫型の魔獣よ。金属を含んだ鉱石なんかを食べる魔獣で、特にミスリルが好物なの。人も勿論襲うわ。放っておけばこの街の鉱脈は全て喰われてしまうわね」
それは不味い。
そうなればボクらの目的にも支障が出るかも。
魔法道具にはミスリルを使う物だってあるし、鉄や銅を使う物だってあるんだし。
「兎に角、集会所に来てくれ!急いでな!」
それだけ伝えると男性は飛び出して行った。
他にも伝える人が居るのだろう。
「……」
「ええ、仕方ありません。私も行きます。ジュン様達も来てもらえるかしら?」
「集会所にですか?ボク達が出てもいいんですか?」
「構わないわ。どうせジュン様に依頼する事になるでしょうし」
「というと?」
「ドワンドにも冒険者ギルドはあるにはあるけど、弱い魔獣がしかこの辺りには居ないから。当然、強い冒険者は居ないわ。自警団はあるけれど、普段は狩なんてしないし。戦力としては当てにできないわねぇ。私でマシな方よ、多分」
ステファニアさんは十分な戦力になると思うけど…武道会の試合を見た限り。
「アースワームの討伐難度は御存知ですか?」
「ええ。アースワームの討伐難度はA。この街の冒険者じゃ勝てないわね、間違いなく」
討伐難度Aか。
なら何とかなるかな?
ていうかもう、討伐難度Aなら全然平気になってしまったな。
慣れって怖い。
油断しないように、気を引き締めなきゃ。
「まぁ、考えようによっちゃジュン様達が居る時でよかったわ。じゃなきゃどうなってた事やら」
「……」
「あ、話してませんでしたか?ジュン様はエルムバーンの魔王子であると同時にSランクの冒険者なんですよ。ユウ様やアイ様も、Sランクではないですが腕のいい冒険者なんです」
「……」
「確かに、子供ですけど…腕が立つのは確かですし。ここは…」
「……」
「い、いえ、しかしですね…」
何やらステファニアさんとジドさんが揉めている。
ボク達の事を問題にしているようだけども?
「あの、ステファニアさん?どうかしましたか?」
「あ、えっと…師匠がね、ジュン様達はまだ子供なんだから、いくら冒険者とはいえ危険な目に合わせられない。大人で何とかするべきだって…」
「そりゃあ、あんたの言う通りだけど…強いんだろう?意地張って犠牲が出ても仕方ないしさ。ここは…」
「……」
「う、う~ん…でもさ、ほら、確か魔王子様は転移魔法が使えるんだよね?ならいざという時は簡単に逃げれるんじゃないのかい?」
「え?ええまぁ」
「なら、大丈夫さ。やってくれるんだよね、魔王子様?」
「ええ。ボクとしてもこの街の鉱脈が無くなると困った事になるかもしれませんし。詳しい話を聞いたらボク達で討伐に行きますよ」
「……」
言葉は無いが、今回は何を言いたいのかわかった。
本当に申し訳なさそうな顔を、ジドさんはしている。
「気にしないでください。じゃあ集会所に行きましょう」
「……」
集会所で聞いた話によると。
アースワームは一匹ではなく、最低でも三匹。
現在はミスリル鉱脈の最深部にいるらしい。
「アースワームがミスリルを含んだ鉱石を食べても直ぐには消火出来ないわ。三日以内に倒せば体内からミスリルを取り出せるはずよ」
「なるほど。他に何か特徴はありませんか?」
「そうね…アースワームは芋虫とミミズのを合わせたような魔獣で地中を移動するの。だから地面から急に出て来る事があるわ。後は粘着性の糸を吐いて捕らえようとするわね」
「…それだけですか?それで討伐難度Aの魔獣に?」
「いえ、まだあるわ。アースワームは金属を食べるだけあって外皮がとても硬いのよ。安物の武具じゃ掠り傷一つ負わない。その点に置いてもジュン様に頼るしかないわね。それと大きさ。太さ1m長さ8mってとこね。パワーもあるから体当たりを受けたら大怪我するわよ」
「わかりました。それじゃ行って来ます」
「気を付けてね。帰って来るまでには魔法道具を完成させておくわ」
「……」
「はい、お願いします。それじゃ」
ドワーフの集会所で話を聞き、一応、冒険者ギルドで指名依頼を出してもらい手続きをしてから鉱山へ。
「クリステア達はどうする?声掛ける?」
「ん~…体調不良のまま戦わせるのも可哀そうだし。今回は休ませてあげよう」
「そだね。どれぐらい時間かかるかな」
「さぁてね。最深部までは結構時間掛かりそうだし。討伐に時間が掛かれば日付は変わるかもね」
「いいの?ジュン様」
「何が?セリアさん」
「明日、ジュン様とシャクティの誕生日」
「「あ」」
「「「あー!」」」
そう言えばそうだ。
明日はボクとシャクティ、十六歳の誕生日だ。
「そう言えばそうだ。明日はボクとシャクティの誕生日だね」
「ここの所バタバタしてましたからね…」
本当に。
マザーマンイーターの討伐。盗賊団の捕縛。セラフィーナ殿下の求婚と。
短い期間に色々ありすぎた。
「でもまぁ、ちゃんとシャクティには何かあげるから、心配しないで」
「はい。私も一応、用意してます」
「この件が終わったら、一旦城に戻らなきゃね」
多分、パパ上とママ上が例年通りにパーティーの準備をしてるだろうから。
成人しても誕生日は毎年祝ってくれるそうだから。
「不味い…不味いわ…」
「ええ…不味いわね…」
「不味いですね…」
「不味いですぅ…」
「不味いかもしんない…」
「オレは問題無いな。用意は出来ている」
アイ達の顔色が悪い。
ボクとシャクティの誕生日を忘れてたみたいだけど、本人も忘れてたし、気にしなくていいのに。
「ジュン!ダッシュで行ってダッシュで終わらせよ!虫は苦手だけど、そんな事も言ってらんない!」
「そうね!ノエラ、リリー!クリステア達を叩き起こして来て!」
「はい!」
「はいですぅ!」
「僕もお祖父ちゃんを叩き起こして来る!」
「い、いや、さっき休ませようって…」
「「「それどころじゃないの!」」」
いや、一大事なのはドワンドの鉱山であって…
まぁいいや…やる気に火が付いたようだし。
クリステア達には気の毒だけど…




