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第233話 ドワンドにて

 あの異形の騎士達の捕縛に失敗してから数日。

ボク達はドワンドに到着した。


「建築物は今までのグリムモアの街と変わり無いけど…」


「やっぱり鍛冶工房が多いね」


「どこも絶賛フル稼働中って感じで…」


「ちょっと煙たい」


 セリアさんの言うように、ちょっと煙たい。

そして熱気がある。

昼間っから酒盛りをしてるドワーフ達も多いし。

此処が鍛冶と魔法道具の本場、ドワーフの街ドワンド。

ステファニアさんとドミニーさんの故郷か。


「懐かしいわぁ。旅立った頃と殆ど変わってないわねぇ」


「私は小さかったからあんまり覚えてないですねー」


 勿論、以前約束した通りにステファニアさんも同行している。

ドミニーさんも折角だからと、付いて来た。


「御二人はドワンドを離れる時から一緒だったんですか?」


「え?ああ、話して無かったかしらね。ドミニーは私の弟の娘でもあるのよ」


「え?そうだったんですか。じゃあ伯父と姪の関係だったんですね」


「まぁね。でも私の両親は鉱山の事故で死んじゃって。それからは師匠が面倒みてくれたんだよ」


「弟が死ぬ前から、この子は私の弟子として面倒見ていたしね。ところで二人とも、伯父と姪の関係じゃなく、伯母と姪の関係よ。間違えないように」


「はは…それで、これから何処へ?」


「私の師匠の家よ。手紙でやり取りだけはしてたけど、実際に会うのは…百五十年振りかしらね」


「私達がドワンドを出た時以来だから、それくらいだね」


 百五十年とか。

いくら長寿の種族、ドワーフ族とはいえ長いな。

百五十年も会わないでいたら顔とか忘れそう。


「私の師匠、ジドは今じゃ鍛冶屋は引退してこの街の代表をしてるらしいわ」


「それって全ドワーフの代表って事ですか?」


「そういう事になるかしらね?師匠も昔は鍛冶の腕は全ドワーフ一と言われてたの。いつか勇者の武具を作って神様に祝福してもらうのが夢だって言ってたけど、終ぞ叶わなかったわね」


「勇者の武具ですか」


「そう言えば、師匠の師匠、ジドさんの父親が勇者の武具を作って神様の祝福を頂いたんだっけ」


「ええ。確かそんな事言ってたわね」


「「「え」」」


 そうか…考えてみれば勇者の武具とはいえ誰かが作った物。

そしてその誰か、とはドワーフで間違い無いだろう。

長寿であるドワーフなら当時の生き証人だっているかもしれない。


「もしかしたら、メーティスを造ったドワーフが此処に居たりしてね」


『いや~、流石にないやろ。わいが造られたんは千年以上は前やし。ドワーフの寿命も確かそんくらいやろ?』


「メーティスを造ったドワーフの名前とか覚えてないの?」


『ん?つまりはわいの生みの親か?ん~知らんなぁ。顔も知らんわ。覚えてないんやないで?』


「どういう事?」


「もしかしたら、貴方はドワーフの手によって造られた存在じゃないのかもしれないわねぇ」


「というと?」


「神様の祝福を受けた武具って二種類あるのよ。一つはジュン様の剣のように私達ドワーフや人族が造った武具に祝福が与えられた物。もう一つは神様が造った武具。神様が造った武具だから勿論、強力だし、祝福も授かってる。それを人に与える事が稀にあるの。神様は」


「そうなんですか…」


 メーティスは確かに強力な剣だし、神様が造った武具って言われた方が納得出来るかも。


「フフン。まぁ僕の相棒だしね!」


「神様が造ったかもしれない剣かぁ。ねぇもう一度見せてよ」


「外では止めなさい、ドミニー。他のドワーフも見せろって言って集まって来るわよ。そうなったら収拾がつかなくなるから。師匠の家まで我慢しなさい」


「そんな事になるんですか?」


「なるわね。間違い無いわ。進めなくなるから絶対ダメよ」


「は~い…」


 ドワンドの街に入る前に、ボク達の武具は袋に仕舞ってある。

今、身に着けているのは予備の武具だ。

何時もの武具だと注目を集めて集まって来るかもしれないから、と。


「ドワーフは研究熱心だからね。ジュン様達の武具は私じゃ思いつかないようなアイディアが詰まってる。新しい発想の塊だもの。見る者が見れば普通の武具じゃないって一発でわかるから。そうなったらめんどくさいわよ」


 との事だった。

メーティスもアイシスのアイテムボックスに入れておくかとなったのだけど


『わい、あの中嫌やねん。真っ暗やし、声も出しても誰にも聞こえへんし。外の様子も全くわからんしなぁ。ずっとあの中に居ったら気がおかしなってまうわ』


 との事なので、メーティスには布を巻くだけに留めてある。

確かにそんなとこに閉じ込められたらボクだって嫌だ。


 ドワンドの街を歩いていると、ステファニアさんの顔見知りに何人か会った。

仲のいい友人らしき人もいればただの顔見知りな人もいたりで。

百五十年も離れてた割りには普通というか。

ちょっと長期の旅行に行って帰って来ましたって感じの対応だった。


「着いたわ、此処よ」


「ああ~こんな家だった気がする!」


 ステファニアさんの師匠、ジドさんの家は他の家に比べると一回り大きく立派に見える。

鍛冶工房と隣接して作ってあるようだ。


「ジドさんにはステファニアさん以外にも弟子が?」


「勿論居るわよ。でも確かもう全員自立してる筈だけどね」


「でも、鍛冶工房の方から音がしますし、煙も出てますよ?」


「あら、ほんと。まだ鍛冶やってるのかしら?引退したって話だったのに」


「兎に角、ノックしようよ師匠。奥さんはいるでしょ」


「そうね」


 ステファニアさんがドアをノックする。

少しするとドワーフの女性がやって来た。


「はいはい、どちらさん?」


「お久しぶりです、ネネさん。私です、わかりますか?」


「あらあら!まぁまぁ!スティーブじゃないの!」


「「「スティーブ?」」」


「師匠の本名だよ。あ、ネネさん。ドミニーです。お久しぶりです」


「あらあら!ドミニーちゃんまで?すっかり大人の女になっちゃって!」


 と、ジドさんの奥さんらしい女性、ネネさんは言うが。

背が低いドワーフの女性であるドミニーさんは少女のようにしか見えない。

でもドミニーさんも少なくとも百五十歳以上なんだよね、話からすると。


「突然どうしたんだい、スティーブ。急に里心でも付いて帰って来たのかい?」


「はは、そうじゃないんです。夢が叶ったので師匠や皆に自慢したくて。あとネネさん、私はステファニアですから…」


「アッハッハッ!そういやそうだったね!ところで今、夢が叶ったとか言ったけど…もしかして?」


「はい。神様の祝福を頂けました」


「何だって!?そりゃ大事じゃないかい!ジドなら工房にいるから早く行きな!」


「はい。あと後ろの子達は私のツレなんです。一緒にいいですか?」


「おやまぁ!随分と大勢だね!構わないさ、入った入った!」


「ありがとうございます。失礼します」


「あ、ネネさん。これお土産です。エルムバーンのお酒とお菓子です」


「おやおや!あんたも気が利くようになったんだねぇ!」


「いやぁ、これくらい前から出来てましたよぉ」


 何だか肝っ玉母さんって感じで豪快な女性だな。

ステファニアさんも師匠の奥さん相手だからか、口調も物腰も丁寧だし。


「師匠、ステファニアです。失礼します」


「……」


 ジドさんが居るという工房の方に行くとジドさんが鍛冶の最中だったようだ。

だけどステファニアさんに気が付くと手を止め、無言で立ち上がった。


「……」


「師匠、ステファニアです。只今戻りました」


 ジドさんは無言でステファニアさんの手を握り肩をバンバンと叩いた後ステファニアさんをギュッとハグ。ずっと無言だけど、顔は嬉しそうだ。


「……」


「はい。実は師匠に見せたい物があるんです。私の最高傑作です。ジュン様、御願い」


「あ、はい」


 なんか、ジドさんはずっと無言なのに会話が成立してる?

以心伝心ってやつだろうか?


「これです。ボクがステファニアさんに御願いして造ってもらった剣です」


「……」


 【フレイヤ】と【アトロポス】を受け取って鞘から抜いたジドさんの眼は大きく見開かれた。

両方の剣をジックリと見たあと、ステファニアさんを見るジドさんの眼には涙が浮かんでいた。


「……」


「ありがとうございます、師匠。私の夢が叶いました…」


「うう……」


 ジドさんだけでなく、ステファニアさんも泣いているし、ドミニーさんも涙を流している。

しかし、ボク達は取り残されてしまった感じがする。

いや、どうして泣いてるのかはわかる。

でもジドさんの言葉が無いから今一つ話に入っていけないというか。

ていうかなんで会話が成立してるの?


「……」


「ええ。私も皆に自慢したいですし。久しぶりに師匠と飲みたいと思ってました」


「今日は宴会だね、師匠!」


 感動の師匠と弟子の対面は終わり、宴会に突入するらしい。

ネネさんも予想してたらしく、既に宴会の段取りに入っていた。

そしてあっという間にステファニアさんの友人達が集まり宴会が始まった。

酒好きのドワーフの宴会だけあって、もの凄い酒の量だった。

ドワーフの宴会で酒を飲まないのはマナー違反らしく、ボク達もたらふく飲まされた。

明日には大勢二日酔いになってる事だろう。


 アイシスは酔うと脱ぎだすそうなので早めに隔離しておいた。

まぁそれでもいつの間にかベッドで寝ていて自分で裸になっていたので翌朝大騒ぎしていたが。

守ってあげたのにボクが何かしたと疑うのはやめて欲しい。

冤罪もいいとこである。

読んで頂きありがとうございます。

よければ評価してやってください。

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