第223話 マザー討伐 1
ゴーレムで足止めしてる間に、なんとか撤退出来た。
転移で簡単に出来たのだけど、それでは他の冒険者を見捨てる事になるので止めておいた。
「さて、どうするか」
「もう火を使うしかないんじゃない?」
「それはダメだな」
行ってみて分かったけど、あの場所は穀倉地帯…大麦畑だけでなく森にも近い。
草原を燃やす事になれば森にも延焼するだろう。そうなれば大災害だ。
自然を愛するエルフが認めるとも思えない。
「ん~…前回のマザーマンイーターはどうやって討伐したの?セバスト」
「火を使うしか無かったそうだな。その時は幸い、近くに畑は無かったらしい。森はあったがマザーマンイーターのせいで枯れてしまったし…火を使うのに遠慮する必要は無かったそうだ」
「今回とは状況が違う…いや、放っておけばいずれ同じ状況になるのか」
「そうね…そしていずれはユニコーンがいる北の森にまで被害が及ぶ…それは避けなきゃね」
それはダメだな。
北の森まで飲み込むということはフレムリーラにまで被害が及ぶという事。
ノルドの街も全滅だろうし…なんとかするしかない。
「ジュン様、ギルドマスター、ディジィ様がジュン様にも会議に参加して欲しいとの事ですが」
「ん?ボクにもか…バルトハルトさんも付き合ってもらえますか」
「承りましたぞ、ジュン殿」
「ノエラ、セバスト」
「おう」
「お供します、ジュン様」
四人で会議に参加する。
と言っても、ノエラとセバストは後ろで控えてるだけになるだろうけど。
バルトハルトさんは、こういう会議には慣れているだろうからお願いした。
「揃ったようですね。では会議を始めます」
ギルドマスター・ディジィさんの宣言により会議が始まる。
参加してるのは各冒険者パーティーのリーダーとサブリーダー達だ。
「さて…既に全員聞き及んでいるかと思いますが…敵はマザーマンイーターとマンイーター数十体。一刻も早く討伐せねば、マンイーターの数は増え、この辺りの植物は全滅するでしょう。何か妙案がある方は?」
「すみません、その前に一つ伺いたいのですが」
「貴方は…ジュンさんでしたね。何でしょう?」
「マザーマンイーターは…あ~長いのでマザーと略しますが、マザーは何故あの場所に陣取ったのでしょう?森や麦畑が傍にあるのに。あの場所で繁殖する理由がわかりません」
「それは…恐らくはあの下に世界樹様の根があるのです」
「世界樹の根?」
「はい。世界樹様の根はこの街を超えて北の森にまで及んでいます。そしてあの位置が一番浅い処に世界樹様の根があったのでしょう。マザーはそこから世界樹様の生命力を吸収してると思われます。だから、これほどの短期間にあれだけのマンイーターを生み出せたのだと思います」
なるほど、あれだけ巨大な世界樹だ。
さぞ根も遠くまで伸びているだろうとは思っていたけど、まさかこんな所にまで。
「なら、尚更早く討伐しないと、世界樹にも影響が出るという事ですね?」
「いえ…長期間になればわかりませんが…短期間であればマザー一体でどうにかなる世界樹様ではありません。しかし、下賤な魔獣に世界樹様の力が吸われている事は看過出来ません。一刻も早く倒さねばならないのは変わりませんね」
「そうですか。では、魔法であの辺りを吹き飛ばす訳には…」
「いきませんね。世界樹様の根を傷つける事になりかねません」
制限が一つ増えたか。
土系最上位魔法「アースクエイク」でマザーだけでも吹き飛ばす事が出来れば、と思ったのだが。
「それから…こちらでマザーに関する追加情報を集められるだけ集めました。先ず、マンイーターが持つ能力は全て持っています。但し、強化された形で。冷気に対する耐性はほぼ完璧だと思ってください。次に花粉にはマヒだけでなく、催眠効果のある物と心肺機能を低下させる毒の花粉と、三種類を使用出来るようです。それから鉄をも溶かす酸を触手から出す事が出来て、触手の数もマンイーターの倍はあるとか。パワーも桁違いだと思ってください」
なんだそりゃ。
同じ討伐難度Sのロックバードやベヒモスが可愛く思えるな。
しかも、再生能力と種子を飛ばす能力もあるとなると…どこかからかドラゴンを連れて来てドラゴンブレスで一掃してもらうくらいしかなさそうな…まぁそんなわけにはいかないんだけど。
「この件でグリムモア魔道国の騎士団や魔法兵団は派兵されないのですか?」
「無論報告済みですが…マザーを倒せる程の規模となると集まるのにどれくらい掛かるか…騎士団が来ても倒すのに火が使えないのは変わりませんし」
それもそうか。
それに数で攻めても花粉攻撃を防げないと犠牲が増えるだけ。
やはり火を使うしかないような…
「火を使うしかないのでは無いですか?」
と、考えてたら、バルトハルトさんが提案する。
バルトハルトさんも同じ考えだったようだ。
「ダメです。麦畑と森が近すぎます。飛び火すればどんな被害が出るか…」
「この際、多少の被害は覚悟すべきです。森と麦畑の前に人員を配置。延焼を防ぐしかないでしょう。どの道、このままでは森も麦畑も、全て枯れ果ててしまうのでしょう?」
「……」
バルトハルトさんのの提案は尤もだ。
エルフの人達も、頭では理解してるのだろう。
だが、感情が邪魔して決断出来ないでいるってとこか。
「今日と同じゴーレムと精霊による攻撃はどうなのです?あれを続ければ…」
「残念ながら、効果は薄いと言わざるを得ないでしょう。マザーがいなければ有効な作戦でしたが…」
マザーは最初、地中に隠れていた。
それが戦術的な意味で隠れていたのかはわからないが、次からはマザーも参戦するだろう。
マザーの前にはロックゴーレムやアイアンゴーレム程度では意味が無い。
ギガントゴーレムを多数用意しなければ効果は無い。
「やはり火を使うしか…」
「いや、しかし…」
結局、結論は出ないまま会議は休憩を挟む事に。
このままズルズルと長引くのは良くないな。
「お疲れ、みんな」
「お兄ちゃん、どうだった?」
「ダメだった。何にも決まってない」
「そっか…」
「あんまり時間は無いと思うけどね。決断が遅くなる程、被害が増すだけだと思うんだけど」
皆、もう火を使うしかないと思ってるようだ。
まぁ、ボクもぶっちゃけそう思ってるけど。
「でも、この雨が止むまではどっちにしろ火は使えないかな」
「そうですね。結構激しく降ってますし。嵐になりそうですね」
いつの間にか夜になり、雨が降っていたようだ。
会議室に籠っていたから気が付かなかった。
しかし、雨か。雨…
「……」
「ジュン様。遅くなりましたが夕食にしましょう」
「城に戻るか?それともどこかの店に…ジュン様?」
「悪いけど、夕食はお預け。マザーの討伐に行くよ。今から」
「「「え」」」
多分、いける。
これなら森や麦畑に大きな被害を出す事無く、討伐出来るだろう。
雨が降ってる、今がチャンスだ。




