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第213話 何かが海からやって来る 11

「で、海に出たのはいいけどさ。どうやってギガロドンを見つけるの?」


「…」


 しまった。

そこは考えてなかった。

とは言えず。


「メガロドン型ゴーレムがいるからいずれは食いつくかと…」


「つまりは出たとこ勝負なのね。目視で探すしか無いのね」


「三人で来てたら厳しかったかもね」


 そうかもしんない。

まぁ結果オーライていう事で…


「しかし、メガロドンが襲ってくるかもと思ったけど。来ないね」


「本当。メガロドンも水中で見ると怖いね…」


 確かに怖い。

むしろシードラちゃんより怖いかも。


「仲間だと思っているのでしょうか?」


「かもね。このダイアゴーレムはメガロドンより大型に作ってあるから、怖がってるのもあるかもね」


 しかし、こうやって海中から見ると、まだまだメガロドンは多いな。生息域だけある。


「ご主人様、海の中って綺麗だねっ」


「本当!泳いで見るのとはまた違うな!」


「あ、あの魚、エルムバーンでも見たの」


 ハティやティナ達は海中探索を純粋に楽しむ子供のようだ。まぁ分からなくもないけど。

ボクだって遊びで来てるなら楽しんだだろう。


「そういえばミズンさん」


「はい。何でしょう?」


「この辺りにはメガロドン以外に危険な存在は居ます?ギガロドンは勿論ですけど」


「そうですね…大ヒョウモンダコが偶に来ます」


「後はサハギンくらいですか」


「げっ。大ヒョウモンダコがいるのかぁ」


 アレに襲われても対処出来るけど、出来れば見たくない。

アレも海中で見ると怖そうだ。


「これがあればシーサーペントの討伐ももっと楽だったかな?」


「どうかな…あの時は海産物に被害を出さないって条件があったし。その点をクリア出来そうにないかな、これは」


「そっか。ジュンの剣で斬るしかないもんね」


「一応、攻撃手段は他にも用意したけどね」


「へぇ?そういえばジュンの前にある台座って何?」


「真ん中のが操縦用だとして。後の二つは?」


 ゴーレムの中は車の中のようになっている。

先頭の席が操縦席だ。

操縦と言っても台座に触れて魔力を送れば思い通りに操作出来るので特に難しくも無い。


「右の台座はライトだよ。眼が光るんだ」


 今はそれほど深く潜ってないし、昼間なので必要ない。


「で、左のが攻撃手段。魔力を送ると、氷の弾丸が発射される。真っ直ぐにしか撃てないから、敵を正面に捕らえる必要があるけどね」


「へぇ~撃ってみていい?」


「駄目。玩具じゃないぞ」


「う…ごめんなさい」


 撃てば氷の弾丸は何かを破壊する事になるんだし。

無害な動物も多いのだ。彼らに当たったら殺してしまう。


「でも、ジュン。よく三日でこんなの用意出来たね」


「ステファニアさんの協力の御蔭だよ」


「…あのオカマドワーフ、本当に凄いんだね…」


 まだ根に持ってるのね。

今度話をする機会でも作ろうか。

ドワンドにもいつか一緒に行く約束してるし、その時はアイシスも来るだろうし。


 そして進む事一時間。

特に何も無いまま探索は続いている。


「結構進んだけど…今どの辺り?」


「さぁ…海底マップなんて無いし。ミズンさん達は分かります?」


「そうですね…速度から推測するに、まだセイレンからそれほど離れていないかと」


 今は時速30kmくらいしか出してないし、直進してるから30kmしか離れて無いか。潜水艇なんだから時速で考えるのは違うと思うが。


「ねぇ、お兄ちゃん。ギガロドンと戦闘になったら剣で攻撃するつもりなんでしょ?じゃあ操縦は出来ないんじゃない?」


「あ、そうだな」


「私が操縦するよ。代わって」


「うん。頼んだ」


 ユウと席を代わってもらう。

ユウは直ぐに操縦に慣れて。問題無く動かせている。


「しかし、見つからないね」


「メガロドンゴーレムじゃ撒き餌にならないのかなぁ」


 サメは五感…嗅覚やら聴覚は優れていると聞いた事がある。

だから獲物を発見する能力に長けているのだと。

これも現代地球の知識だけど…この世界のサメも同じなら直ぐ見つけて襲って来そうなのに。いや、優れているからこそ、偽物ってわかって寄ってこないのかな。


「…何だか耳鳴りがしますぅ…」


「私もです…」


「私も…」


 リリーとミズンさん達が同時に耳鳴りを訴えて来た。

そう言えば以前、ミズンさんは襲われる直前に眩暈がしたとか言ってた。

耳鳴りも関係あるのかな?

でも、他の皆はそうでも無いみたいだし…


「あれ?急に暗く…」


「太陽が雲に入ったかな?」


「てっ!違う!ギガロドン!上だ!」


 いつの間にか上でギガロドンが泳いでいる。

同じく泳いでいた本物のメガロドンを捕食中だ。

ゴーレム型のメガロドンには喰いついて来ない。

見分ける事が出来ているのか?


「兎に角、攻撃を開始しよう。皆は座席について身体を固定して。ユウ、奴は右眼が潰れてる。奴の右側から仕掛けて」


「うん。いくよ!」


 メガロドン型ゴーレムにも攻撃を開始させる。

固まってるとまとめてやられるので散開して波状攻撃を仕掛けさせる。


「右側に回り込んだ!接近するよ、お兄ちゃん!」


「よし、行って!」


 【アトロポス】を抜いて魔力剣を最大まで伸ばす。

これで首回りを斬りながら一周すれば…首が落ちるはずだ。


「って!きゃあ!」


「回避して!」


 完全に死角から回り込んだ筈なのに、こっちに気づいて突進して来た。

サイズ差もあって、死角にいる敵を見つけるのは難しい筈なのに。

いや、よく見るとメガロドン型ゴーレムも、死角から攻撃してるのに躱されたり迎撃されたりしてる。見えているのか?それとも視覚以外の何かで…


「うう…耳鳴りが酷くなってますぅ…」


「私もです…」


 リリーとセイレン組の全員が同じ不調を訴えてる…耳鳴り…耳…音?


「もしかして、エコーロケーションか?サメが?」


 サメがエコーロケーション…超音波を発するなんて聞いた事は無いけど…イルカやシャチはエコーロケーションで仲間の位置を把握したりコミュニケーションを取るという。

ギガロドンは捕食対象や攻撃対象を見つける為に使用してるのだろうが…あの巨体で放たれた超音波なら…耳鳴りや眩暈を引き起こされても無理は無いかもしれない。

耳のいいリリーが不調を訴えるのは必然だったのかも。

恐らく人魚族も耳がいいのだろう。少なくともボク達より。


「エコーロケーションって何?ジュン」


「後でユウに説明してもらって。今はギガロドンは眼を潰されても、こちらの位置がよくわかってると思って間違いない」


 さて、どうするか。

死角に回り込んで接近しても察知されるのはわかった。

ならエコーロケーション…音波を発する器官を傷つけるか何かして潰さないとダメか。


「ユウ、一度距離を取って。奴の正面に」


「どうするの?ジュン」


「奴の額辺りを狙い打ちにする」


 イルカの場合だが、確か超音波を発する器官は額の辺りにあったはずだ。

相手はサメだが…他に参考になりそうな物を知らないし、やってみるしかない。


「ユウ、奴の顎下から上に向かって徐々に上がって行って。縦に撃ち込んで行く」


「う、うん」


「大丈夫、最悪の場合、ゴーレムごと転移して躱す。落ち着いていこう」


「そ、そんな事出来んの!?」


「消耗は激しいけど、出来なくは無い。じゃあ、ユウ。行って!氷の弾丸はボクが撃つ」


「うん!」


 ギガロドンも正面から向かってくるボク達が乗るゴーレムに気が付いたようだ。

一見、距離があるように見えるけど…。


「ユウ、上昇開始!」


「うん!」


 上昇を開始と同時に魔法を連射。氷の弾丸はギガロドンが自ら当たりに行った形で命中。

狙い通りに額にも命中したが…


「ぶつかるうぅぅぅ!」


「大丈夫!躱せる!右に少し逸れて!」


 何とかギガロドンに衝突する事無く、回避出来た。

ギガロドンのエコーロケーションはどうなった?


「あ…耳鳴りが止まりましたぁ」


「私もです」


 推測は正しかったらしい。

これで奴の右側は完全な死角になったはずだ。


「じゃあ、ユウ!今度こそ奴の右側から懐に入って!」


「OK!」


 左側からは生き残ってるゴーレムに攻撃を仕掛けさせる。

水を操る能力を使って迎撃してるが…右側は手薄だ。

いける!


「懐に入った!」


「よし!奴の首回りを一周して!皆はしっかり捕まってて!」



 【アトロポス】の魔力剣を再び最大まで伸ばし、ギガロドンに突き刺す。


「いっけえええ!」


 魔力剣を突き刺したまま、ゴーレムはギガロドンの周りを一周。

ギガロドンから血が噴き出す。


「どうだ!」


「やった!首が落ちたよ!」


 ギガロドンの討伐に成功したようだ。

首と胴体は離れ、死体は沈んでいく。


「やったか…」


「やりましたね…」


「やった…やりました!ジュン様、凄いです!これでセイレンは救われました!」


「ありがとうございます!ジュン様!皆さん!」


 歓喜に沸くミズンさん達。一緒になって騒ぐティナ達。

それはいいんだが…


「ところでさ。倒す事しか考えて無かったんだけど…ギガロドンの死体はどうしようか?」


「…どうしようって…う~ん…」


「回収は不可能に近い…というより、不可能だよね」


 先ず、あの巨体を海中から引き上げるなんて不可能だ。

大型の豪華客船をサルベージするような物だし…この世界にはそんな事を可能にする技術は無い。


「討伐証明になりそうな物の回収…も難しい…よね?」


「うう~む…」


 ミズンさん達もいるから証人にはなってくれるだろうけど。

まぁ、いいか。今回は別に依頼を受けての討伐でも無いし。


「御安心を。我々セイレンの護衛騎士団で討伐証明になる何かを回収して参ります」


「それくらいなら騎士団だけで何とでもなります。アンデット化しないように、ある程度解体もしましょう」


「それは助かります」


 水中での作業なら人魚族であるセイレンの騎士団にお願いするのが一番だろう。

特にギガロドンがアンデット化したら厄介な事になりそうだし。


「それにしても、辺り一面真っ赤だね」


「だね…見てて気持ちのいい物じゃないし、帰ろうか」


 ギガロドンの討伐を終えて、セイレンの城に戻る。

アデル様に、討伐成功の報告をした後、騎士団を派遣してもらう。

あの巨体の処理だ。さぞ時間が掛かるだろうと思っていたのだが、処理は思いの他早く終わったらしい。翌朝には騎士団は処理を完了して戻って来ていた。


「メガロドンがギガロドンの死体を捕食していまして…死体の処理は簡単に済みました」


「そうですか…じゃあ、討伐証明になる物は回収出来なかったんですね?」


「いえ。問題無く回収出来ました。こちらです」


 ミズリーさん達が運んで来た台車に乗っているのは…巨大な魔石だ。

魔石…魔獣の体内で時折発見される、魔力が結晶化した物。

これだけ巨大な魔石は初めて見る。


「これ、ギガロドンの死体から出て来た物ですか?」


「はい。運よくメガロドンに捕食されずに残っていました。これと我々の証言があれば冒険者ギルドに功績として認められるでしょう。御納めください」


「ありがとうございます、ミズリーさん」


 どこからも依頼を受けずに勝手にやった形になってるから無報酬は覚悟の上だったんだけど。

まぁ多少なりとも報酬があるなら貰っておくとしよう。

そして翌日。ギガロドンの討伐も完了したのでエルムバーンに戻る事に。


「ジュン様…本当にありがとうございました。国を救って頂いたのに大した事は出来ませんが…」


「いえ。こちらが勝手にやった事ですから。気にしないでください」


「いいえ。何もしないわけにはいきません。皆さんにはこちらを差し上げます」


「これは?」


「我がセイレン魔王家に伝わる秘伝の精力剤です。これで一日中でも子作り出来ますよ」


「「「……」」」


 この国は本当に最初から最後まで…全てそっち方面ですか。

これを受け取ってボク達はどうすりゃいい。


「それから、これはアスラッド様と魔法通信で交渉した事なのですが」


「父と?何でしょうか?」


「シャンタルとエミリエンヌ。それとシャンタル達の世話をする従者達を連れ帰ってください。治癒魔法の育成と学校という物を作る研修生です。対価に護衛騎士団二個小隊をエルムバーンに移住させます。好きに使ってください」


「え?移住ですか?つまりエルムバーンの国民になると?」


「そうです。無論、希望者を募った上で、です。僅か二個小隊分…十名の募集だったのですが、希望者は殺到しました。一日で選定するのが大変でしたよ」


 確かに、エルムバーンには人魚の騎士はいない。

たった二個小隊とはいえ、水中で活躍できる彼女達が居ればこの間のようなシーサーペント討伐にも国で対応出来るようになるだろう。


「もしかして、その二個小隊って…」


「はい。私とミズンが隊長を務めます」


「改めて、よろしくお願いします。ジュン様」


 やっぱり…。

パパ上…そりゃ人魚の騎士は戦力として魅力的だっただろうけども。

もう少し考えて欲しい。ボクの身が危険な気がする。


「ジュン様。私達も改めてよろしくお願いします」


「ユウさんとアイさんもね。せっかく友達になったんだもん。これでさよならは嫌だなって思ってたの。それにセイレンから出るのも初めてだから楽しみで」


「二人共、研修生としての仕事も忘れてはいけませんよ」


「その…よろしいんですか?魔王女である御二人を研修に出してしまって」


「いいのです。私もセイレンから出た事はありませんが…娘達まで同じ思いをさせなくてもいいでしょう。それにセイレンが発展するには王族である者が他国を見て感じる必要があると考えます。これまでと同じではいけないのです」


「…何か、理由があるのですか?王族は国から出てはいけない決まりでも?」


「はい。私達セイレン魔王家は人魚族。しかし、何代も前の魔王は海で魔獣と戦い命を落としているのです。もしくは他国に赴いた際、陸地で魔獣に襲われて。そんな事があって極力、魔王は国から出ない事になったのです。ですが…私の母もそうですが、今度は病に倒れる魔王出ました。ままならない物ですね、人生とは。魔王といえども…」


「…」


「…ふぅ。それでずっと思っていたのです。このままでは良くないと。そこでジュン様に転移で連れ出してもらえれば安全に外の世界に触れる事が出来るでしょう?どうかよろしくお願いします」


「…わかりました。友達ですしね」


 何だか、最近のエルムバーンは色んな国の王女や魔王女の集会所になりつつあるような気がするが…まぁ今更か。それに彼女達がエルムバーンで出会って仲良くなる事は、きっといい事だろう。

世界から争いが無くなる事に繋がるかもしれないのだから。


「ありがとうございます。それから以前言った通り、ジュン様は何時でも好きな時に来て子作りしてくださって構いませんから。勿論、娘達も御好きに」


「それは遠慮します」


 本当にもう。

ちょっと真面目な話をしたかと思えば。最後にまたそっちの話ですか。

いや、アデル様からしたら真面目な話なのか。

はぁ…

読んで下さり有難う御座います。

良ければ評価してやって下さい。

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