第212話 何かが海からやって来る 10
「皆様、ありがとうございました。御蔭でこの国は救われました」
「当然の事をしたまでです、アデル様。それにまだギガロドンを討伐出来た訳では無いので」
「はい。ですが自国民を救われた者として、礼を尽くさねばなりません。何か御礼出来れば良いのですが」
ギガロドンを取り敢えず撃退した後。
会議に参加するように依頼され、先ずはアデル様に礼を言われた。
報酬に関しては勝手にやった事だし、軽微とはいえ被害を出してるので辞退しておいた。
「それで、セイレンは何か打つ手は?」
「…現状ではセイレンの騎士団で総攻撃を仕掛けるしか無いかと」
「失礼ながら、それは勝率が低いですよね。勝てたとしても全滅に近い被害を受ける。違いますか?」
「しかし…セイレンの騎士団が水中では最高戦力です。それしか手段が…」
「何か別の手段を考えましょう。それに騎士団が全滅したら、どちらにせよこの国は立ち行かなくなる。そうでしょう?」
「はい…」
その後も会議を続けるが、有効な手段は浮かば無いまま、終了する。
今は皆と宛がわれた部屋に集まって会議中だ。
「ジュンの魔法で氷漬けに出来ないの?」
「無理。実はあの時、氷の壁を作るついでに氷漬けにしようとしたけど、逃げられてる。ジッとしてくれないと、あのサイズは氷漬けには出来ないな」
「精霊を呼んで手伝って貰ったら?」
「うーん…それでも浅い場所じゃないと厳しいかも」
「セイレンの人達の中にも精霊魔法が使える人は居るんじゃない?その人達全員参加してもらえば何とかならないかな?」
「ふむ…やってみるか。ミズンさん、セイレンの全騎士団の中から精霊魔法を使える人がどれだけいるか、調べて貰えますか」
「はい。お任せください」
そして始まったギガロドン氷漬け作戦。
精霊魔法を使える騎士、約五百人とボク達とで行った作戦は…結果から言えば、失敗した。
作戦の内容はこうだ。
先ず、ギガロドンを出来るだけ浅い場所へ誘導。
そこにあらかじめ部隊を展開。
精霊も呼び出した上でギガロドンが来るのを待つ。
一度目は、氷の壁が薄い箇所を狙い打ちされ逃げられた。
海水を凍らせらる速度と範囲はやはり個人差が大きい。
いくら精霊が補助してるとはいえ、ギガロドンが砕けない厚さを凍らせるのは一瞬では不可能だった。
それでも二回目は何とか氷漬けに成功。
さぁ、後は砕いて氷ごとバラバラにするだけ、となったのたが。
ギガロドンは自力で内部から氷を破砕。
逃走に成功する。
犠牲者が出なかったのが不幸中の幸いか。
「いやぁ参った。まさかあの状態から逃げ出せるとはね」
「どうする?他に何か有効な手段は…」
「惜しかったし、もう一度やれば上手くいかない?一瞬とはいえ捕らえられたんだし」
「いや…多分無駄だ。自力とはいえ氷と一緒に砕け無かった。剣で砕いても変わらないと思う」
「ん~となると…何か新兵器でも作るしかないのかな…」
新兵器か…以前、アイとユウとで話し合ったのだが、現代地球の知識を利用するのは兵器関連は除く事にしている。
この世界は火薬すら開発されていない。
だが再現は可能なのだ。
しかし、そういった物の開発は環境汚染や自然破壊だけでなく、戦争の引き金にもなり得るし、戦争の激化にもなるだろう。
だから、現代地球の兵器をそのまま再現するのは禁止だ。
あくまで魔法やこの世界にある技術で再現出来る物でなければ。
「ジュン様が超巨大ゴーレムを作るのは?」
「超巨大ゴーレム?」
「そう。ギガロドンと同じ大きさの」
「セリア…それはいくら何でも無茶じゃない?」
「でも、ジュン様は色んなゴーレム作ってるから」
ゴーレムか…あのサイズのゴーレムを作るのは不可能では無い。
しかし、ゴーレムで倒せるかと言うと…
「サイズをギガロドンに合わせて作るのは不可能じゃない。でも水中を高速で移動出来るギガロドンを捕まえるのは無理かな」
「じゃあ人魚型のゴーレムとか、サメ型のゴーレムとかは?」
「水中型ゴーレムね。もしくはブルードラゴンスピリッツみたいなのを水中戦用で作るとか」
水中戦用ゴーレムの作製か…いいかもしれない。
やられても人的被害は無いし。
ちょっとこのアイディアを詰めてみよう。
「で。試行錯誤の結果、出来上がったのがこれです」
「「「おおー」」」
会議から三日後。ボク達は今、港に集まっている。
ボクが作った水中型ゴーレムのお披露目のためだ。
「メガロドンみたい」
「ギガロドンに対しての囮役だしね。わざとメガロドンに似せて作ったんだよ」
メガロドン型ゴーレムは計八体。
鉄で出来たアイアンゴーレムだ。
「じゃあ、こっちの一際大きくてキラキラした目立つ奴は?」
「それが本命のダイアゴーレム。有人型だよ」
「有人型って…乗るの?これに?」
そう、言うなればこれは潜水艇だ。
メガロドン型ゴーレムは戦闘力は大して無い。
スピードはそこそこだが、ギガロドンに対して有効な攻撃手段が乏しいのだ。
一応、背ビレや胸ビレを鋭い刃状にしてるが、あまり期待出来ない。
そこで、ボクの【アトロポス】の出番だ。
【アトロポス】の斬る物を選択する能力で、ゴーレムの中からゴーレムを斬らずに攻撃する事が可能。
魔力剣でギガロドンは斬れるのは実証済みだし。
海水も斬る物から外せば、水の抵抗も無い。
「なるほど。ねぇ、ちょっと乗っていい?お兄ちゃん」
「ウチも!ウチも乗りたい!」
「いいけど、つまんないと思うぞ」
「何で?」
「まぁ乗ればわかるよ。ほら、ここから乗るんだ」
水中型ダイアゴーレムの背中のハッチを開けて中へ。
因みに水中型ダイアゴーレムはシャチに似せてある。
何となくメガロドン型の中に入るのが嫌だったからだ。
「何これ。何にも見えないじゃん」
「何せダイアモンドの中だからね。ガラス板なんて組み込め無いし」
「じゃあ、どうやって戦うの?外が見れないなら…」
ボクもそれに気が付いたのは中に入ってからだった。
まぁ直ぐに解決策も浮かんだけども。
「そこでこれ。テッテテレ、透視眼眼鏡~!」
「ジュン様?何です?その妙な出し方は…」
「ジュンって時々、訳分かんないね」
「ジュン様、センス無い」
某猫型ロボットのように取り出したのだが…アイとユウ以外に通じる筈もなく。
厳しい評価に終わった。
セリアさん、ジョークに厳しいっスね。
「んんっ。これで透視すれば問題無い。バッチリ見えるよ」
「わ~!見せて見せて!」
ステファニアさんの店で急遽買って来たのだが三つしか在庫が無かった。今は三人分あれば十分だが。
「わ~!いいねいいね!自分が海中に入って見るのとはまたちがうね!」
ゴーレムは今、海に浮かべているので、下を透視すれば海中が見える。中々綺麗だ。
「次、僕にも見せてね」
「いいけど、ボクを透視するのは禁止ね」
「し、しないもん!」
残念ながら前科持ちだし、アイシスは。
信用してはいけない。
「ジュン様、あの魔道具は?」
「あれは空気を作る魔道具。水中じゃ完全に密閉しないといけないから、あれが無いといずれは酸欠になっちゃうから」
二酸化炭素を取り込む機能もついてるので長時間の行動も可能だ。これで準備万端。
後は実行あるのみ。
「で、誰が乗るの?」
「眼鏡は三つまでだから三人だよね。お兄ちゃんは確定として」
「うん。アイとリリーに頼むよ。理由は前回と同じ」
「ジュン様…」
「うっ…」
ノエラが一緒に来たそうな眼をしている。
いや、ノエラだけじゃなく全員か。
でも眼鏡は三つしかないし、来てもやる事が…
「あの、ジュン様。この街にも魔道具店は在ります。透視眼眼鏡も有るかもしれませんよ?」
「それです!ミズンさん、早速案内をお願いします!」
「は、はい」
「…仕方ないなぁ」
結局、全員分の透視眼眼鏡を用意する事になり、全員が乗る事になった。
まぁ問題は無いからいいか。
「ただし、それを悪用した場合は没収するからね。分かった?アイシス。ノエラとクリステアも」
「何で名指し!?」
「わ、私は覗きが目的ではありません。あくまでジュン様を御守りするために…」
「わ、私もです」
『いや、マスターは当然やろ』
「姉さんとノエラさんも当然ね。日頃の行いが物を言うのよ」
全くです。
さ、何はともあれ、ギガロドンと決着を付けるとしますか。




