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第206話 何かが海からやって来る 4

セリアさんが預言で見た沈む船が、これからミズンさんが乗る船…どういう理由で沈むのか分からないけど、普通なら乗員は死ぬのだろう。

しかし、ミズンさん達は人魚。

船は沈んでもミズンさん達は無事で居られるかもしれない。

でも、魔獣による襲撃で沈むとしたら無事で居られるとは限らないだろう。

さて、どうするか…


「皆さん、どうかしましたか?」


「あ、いえ…」


セリアさんが預言者の紋章を所持している事はあまり知られて欲しく無いらしいから、預言を教える事は出来ない。

しかし、説明無しにあの船は沈む何て言われても納得出来ないだろうし…。とか考えている間に船が到着。乗員が降りて来た。


「ミズン!」


「あ、姉さん!」


姉さん?迎えに来たのはミズンさんのお姉さんなのか。

全員で五人。皆女性だ。


「無事ね?貴女の小隊が消息を絶ったと聞いて心配で心配で…一体何があったの?」


「えっと…正体不明の魔獣に襲われて…私は最初に襲われて気を失ったから、後の事は分からないの」


「そう…何にせよ、貴女が無事でよかったわ」


「ありがとう、姉さん。それで、私以外の皆は…」


「未だ消息不明のままよ。貴女の話しから推測すると、恐らくは…」


「そう…」


全滅した、という事だろう。

残酷だか…ミズンさんも覚悟していたのだろう。

涙は流さなかった。


「あ、すみません、ジュン様。姉さん、こちらが私を助けてくださったジュン・エルムバーン様です」


「これは失礼しました。ミズンの姉のミズリーと申します。この小隊の隊長を務めています。妹を助けて頂き感謝申し上げます」


「いえ…それでミズリーさん。ミズンさんを襲った魔獣について何か情報はありませんか?」


「全く無い訳では無いのですが…実はミズンがいた小隊とは別の小隊も消息不明となっているのです」


「え…」


「ミズン、貴女達はどの辺りで襲われたの?」


「セイレン近海…」


「トゥールの小隊もセイレン近海で消息を絶ったらしいの。つまり、セイレン近海に何かが居るみたいね」


「トゥールの小隊が…そんな…」


他にも襲われた小隊があったのか。

そして両方、セイレン近海で襲われた。


「ミズリーさん、船はどうなってたか聞いてますか」


「はい。残骸が漂っているのを発見したそうです。バラバラにされたものと思われます」


若しくは沈められたか。

どちらにせよ、危険な事に変わりは無いか。


「因みに、ミズリーさん達は今回その辺りを…」


「…通ります。二隻の残骸は、セイレンの北側の海で発見されてますから」


「そうですか…すみません、ちょっと時間をください」


「?はい」


見送りに来てた皆と相談する。

議題は勿論、預言の内容を回避するにはどうすればいいか、だ。


「聞いての通りだけど、どうしようか」


「ん~…預言の事を説明したとしても、他に帰る方法は無いしね。いずれは船で帰らないと駄目なんだし」


「お兄ちゃんが転移出来れば話しは早いんだけど…その為にも一度は船で行かなきゃだし」


「空を飛んでは行けないの?」


『そりゃ無茶やでマスター。なんぼ何でも魔力が保たんわ。自分の翼で飛ぶにしても体力が続かんわ』


「見捨てる訳にもいかないし。となると、ついて行くしかないんじゃない?」


「そうだなぁ…ミズリーさん、その船何人まで乗れます?」


「え?十人までですが…」


十人…ミズンさんを入れて向こうは六人。

ついて行けるのは四人までか。


「ついて行くならボクは確定として、後の三人は…」


「ジュン様が行くなら私も行きます。絶対に譲れません」


「私も行きます」


ノエラにクリステアはそう言うと思った。

だけど、今回はダメだ。


「悪いけど、今回は人数が限られてるし必要な能力を備えた人を連れて行く。というわけでリリー、頼むよ」


「リ、リリーですか?」


「うん。リリーなら海中から何か接近して来ても、いち早く気付く事が出来るだろ?腕輪の能力で飛行も出来るし、魔法弓なら海中の敵に攻撃可能だし。期待してるよ」


「は、はい!頑張ります!」


「それから…セリアさん、お願い」


「ん。任せて」


セリアさんは預言を受けた本人だし、飛行魔法も使えるし、泳げる。魔法で海中の敵に攻撃可能だし、条件は満たしてる。


「最後は…ん~…」


「私が行きます。私も飛べますし、魔法で海中の敵に攻撃可能です」


「わ、私も飛べます。私が…」


「姉さんは諦めて。お目付役の私が行けないから」


それに海中の敵に有効な攻撃手段をクリステアは持っていない。

クリステアが得意な火魔法は海中の敵には効果的じゃない。


「僕が行くよ。勇者の僕が居れば怖いモノ無しでしょ」


『マスターは海中の敵に有効な攻撃手段あらへんがな』


「魔法があるじゃない」


『わいの魔法やん…まぁええんやけど』


アイシスか…アイシスも悪くないんだけど…


「アイ、頼むよ」


「ウチ?うん、オッケー」


「ちょっと!何でアイなの!?」


「アイの先見の紋章があれば万一リリーが感知出来ない敵でも対処出来るかと思って。何せ今回は敵の正体と能力が不明だからね。倒す手段だけじゃなく、身を守る手段も用意しないと」


「う…わかった」


納得してもらえたようで何より。

それじゃ、ボク達もついて行く事をミズリーさんに許可してもらおう。


「その前に、お兄ちゃん。シャンゼ様達を迎えに行かないと」


「それに島で待ってる皆にも説明に行かなきゃ」


「あ」


そうだった…シャンゼ様達が来るんだった。

シャンゼ様達が来るのに、ほったらかしにしてセイレンに向かったら怒るかな…怒りそうだなぁ。それにセイレンまで何日かかかるだろうし…


「ミズリーさん、ここからセイレンまで何日かかります?」


「え?ええと…六日間程です」


六日間…結構かかるんだな。

風任せ波任せの帆船だから仕方ないのかな。

いや、ボクのゴーレムで牽引すれば短縮出来るか。

しかし、それでも何日か掛かるし…うーん…


「…仕方ないなぁ。ねぇミズリーさん。何日かセイレンに帰るの遅れても問題無い?」


「は?はぁ…我々は帰れば何日か休暇が貰える事になってますから。国に連絡をしておけば…数日なら問題無いかと」


「そう。ならさ、私達、南の島でバカンスの途中なの。お兄ちゃんの転移魔法で一瞬で行けるから、ミズリーさん達もどう?」


なる程。ナイスだユウ。

ミズリーさん達も南の島に連れて行けばシャンゼ様達をほったらかしにしないで済むし、もしかしたらそれだけで預言の内容は回避出来るかもしれない。


「え?よ、よろしいのですか?妹を助けて貰っただけでなく私達まで…」


「勿論。歓迎するわ。私達の他にもお偉い方達がいるから、その点は注意してね」


「やったぁ!姉さん、御言葉に甘えましょ!」


「い、いえ…しかしですね…」


「じゃあ、交換条件という形ならどうです?」


「交換条件ですか?」


「はい。ボク達、実はセイレンに行ってみたいと思ってたんです。そこで、皆さんが帰る時、船に便乗させてください。その代わりボク達と一緒にバカンスを楽しみましょう。何ならエルムバーンの街を案内しますよ」


「エルムバーンの観光が出来る…わ、分かりました。国に連絡を取って確認します」


ミズリーさんの言葉に他の小隊メンバーから歓声が沸く。

彼女達も遊びたかったらしい。


セイレンに連絡を取った結果、あっさりと休暇は認められたらしい。むしろエルムバーンの魔王子直々の誘いを断る等有り得ないと言われ、羨ましがられたとか。

セイレンに案内する時は失礼のないように、確実に守るようにとも言われたとか。


話は纏まったので、ミズリーさん達を連れて一旦島へ。

説明はアイ達に任せて、シャンゼ様達を迎えに。


「あ!ジュン君!遅かったじゃない!」


「本当よ。待ちくたびれちゃった」


「すみません。お久しぶりです、シャンゼ様。コルネリアさんにユーファさんも」


「お久しぶりです、ジュン様」


シャンゼ様は初めて会った時と見た目が変わって無い。

相変わらずの超美人だ。

コルネリアさんとユーファさんは初めて会った時に比べて大分大人っぽくなった。

もう二十歳は超えてるし当然か。


「お久しぶりです、ジュン様」


「ラーラさん、お久しぶりです」


ラーラさんも変わって無い。

それに護衛の騎士もいつもの顔ぶれだ。

何故かいつも同じ人達だ。すっかり顔馴染みになった。


シャンゼ様達を島に送り、次はダルムダットへ。

ガウル様達もすっかり準備万端で待ってたようだ。


「すみません。お待たせしたようですね」


「ああ。珍しいな、お前が時間に遅れるなんて」


「何かあったか?」


「ええ、ちょっと。向こうで説明します。と、その前に。お久しぶりジーク君」


「お久しぶりです。義兄さん」


「お久しぶりです、ジュン様」


「お久しぶりです、クオンさん」


ジーク君は今九歳。

少し背が伸びたし、体格も良くなった。


クオンさんは変わってない。

変わらず美人さんだ。

何だか凄く嬉しそうなのが気になる。


ガウル様達を連れて島へ。

シャンゼ様達を交え、初対面の人達の紹介を済ませ、ミズリーさん達を連れて来た事情を説明する。

セリアさんの預言者の紋章は教える訳にはいかないのでアイの先見の紋章の力ということにしておいた。

尚、今この場にはミズリーさん達はいない。


「なる程なぁ。海の魔獣は厄介だし、ダルムダットの海軍にとっても脅威だからな。早めに正体が判明するに越したことはない。しかし、大丈夫なのか?」


「どうでしょうね。何せ正体不明。相手の事が全く分かりませんから」


「いや、それもだがな。セイレンに行くんだろ?」


「はい。そうなりますね」


「あの国の女は男に飢えてるから、お前が行ったらどうなるか。想像もつかんぞ」


「「「「え」」」」


ナニソレ。

どゆこと?


「人魚族は特殊な種族でな。セイレン魔王国は人魚族の国だが、人魚には女しかいない。故に他の種族とのハーフになるんだが、人魚から生まれる子は全て人魚の女。故にあの国の人口比率は極端に女側に偏っているんだ」


「セイレンにいる男は人魚と結婚して移り住んだ男だけ。そして人魚族は性に関してとても奔放というか開放的というか…私達サキュバス以上かもしれん」


「マジっすか」


ミズンさんで分かってたつもりだったけど、まさかそこまでとは。ヤバいかもしんない。


「で、でもミズンさんはともかく、ミズリーさんはそんな感じじゃ…」


「港で会ったんだろ?流石に朝から港でおっぱじめたりするか。まして魔王子相手に」


「ジュン様!セイレンに行くのは止めましょう!」


「そうよ!ジュン君の貞操が危ういわ!」


出来ればそうしたいけど…そうも行かない訳で。

どうしたモノか…


「それにしても詳しいですね、ガウル様」


「ダルムダットはエルムバーンよりセイレンの方が近いしな。俺も仕事で何度か行った事があるし。いや、凄いぞ?昔の話だが国賓待遇の筈なのに至る所で誘惑されたし。果てにはセイレンの魔王家の女まで。断るのが大変だった」


何て国だ。

ある意味では男の理想郷かもしれないが…


「あ、じゃあ今、この島にいる男性は危険なんじゃ…」


父アスラッドやガウル様。

シャクティの家族に…ジーク君。

あとは…カイエンは帰ったし…ボクとセバストとセバスンか。


「いや、彼女達が狙うのは未婚の男のみ。加えて子供がいない成人男性だ。だから狙われるのはジュンとセバストだな」


「兄さん、ジュン様の為に犠牲になってください」


「おい、こら。お前には兄を助けようって気持ちは無いのか」


「兄さんには良いチャンスじゃないですか。こないだようやく初デートを済ませたばかりの兄さんには」


「大きなお世話だ!」


そうだったのか、セバスト。

まぁ流石にセバストを犠牲に逃げるつもりは無い。

無いけど…どうしよ。

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