第194話 大海蛇
結婚式が無事終わった翌日。
皆、それぞれの国に帰る事に。
「アイシス、セリア。長い間世話になった。バルトハルトさんも、御世話になりました」
「うん。でもさ、これで最後じゃないんだから」
「ん。フランコは大袈裟」
「うむ。違いない」
「そうかもな。しかし…一緒に旅はもう出来ない」
「うん…」
「…仕方ない」
「うむ…」
グンタークの女王の夫になったフランコ君は、これからグンターク王国復興に向けて忙しい日々が待っている。これまでのように旅は続けられないのだ。
「しかし、これからは今の立場でしか出来ない事で協力するつもりだ。差し当たっては情報収集だな」
「うん。ありがとう、フランコ」
「頑張って、フランコ」
「期待している」
「ああ。任せてくれ」
「私も協力しますから」
勇者の遺物の件はクローディアさんには話したのだろう。
彼女も勇者の遺物の捜索に協力してくれるらしい。
「ジュン殿。貴方には始めは何かと突っかかったりしたが…決して嫌ってたわけではない」
「分かってるよ、フランコ君。大丈夫」
「そうか…それから、父との和解出来たのも貴方の御蔭だ。感謝する」
「え?ボクは何も…」
「隠さなくていい。あの時、あの場所で父と私が和解するための話し合いの場を設けようとしてくれたのだろう?カタリナ様から聞いたよ」
「あ…でも」
「分かっている。あの時の母は所謂幽霊と呼ばれる存在だろう。幽霊が苦手な貴方が用意したはずもない。あれはジュン殿にとっても計算外だったのだろう?」
「あ、うん…」
バラしたのか…カタリナさん。
確かに秘密にしてとは言わなかったけどさ。
でも、何故。
「本当に、ジュンさんには頭が上がりません。治癒魔法使いを派遣して頂いた御蔭で人材の不足もある程度解消出来ました。何よりフランコと結婚出来ましたし…御礼にジュンさんのハーレムを作りましょう」
「要りません。そんな事に人員を割く余裕は無いでしょう」
「クスッ、やっぱりそう仰ると思いました。人員に関しては何とかなりますので、気が変わったら仰ってください」
気が変わる事は無いと思います。
そうでなくても出来そうな気配を感じるのに。
「じゃあね、フランコ」
「次はヤーマンで」
「また会おう、フランコ」
「ああ。またな」
「またお会いしましょう、皆さん」
「じゃあね、フランコ君、クローディアさん」
二人に別れを告げ、グンタークを後にする。
次に会うのは二週間後のダーバ王子とオリビアさんの結婚式だ。
色々あったが…グンタークの一連の出来事はこれにて終了と見ていいだろう。
因みに豚侯爵の処分についてだが、侯爵位を弟の子に譲渡。
当主の座を強制引退となり、今後は侯爵家監視の下、静かに自由の無い余生を送る事になる。
アイやユウに言わせれば甘い判決らしいが、処刑した所で何にもならないし処分は任せたのだ。
何も言うまい。
一度、ダン君とランちゃんの村にも様子を見に行った。
領主代行の騎士団長は侯爵よりもよほど上手くやっているらしく、南部の村は復興に向かっている。
治安はまだ悪いままだが、以前よりはマシになったらしい。
ヴェルリア王国組は既に送ってある。
ヤーマン王国に行く時も転移で連れて行く事を約束させられたが、特に不満は無い。
エクトルさんとロラン君が最初より少し明るくなったように見えたのが印象的だった。
ヤーマン王国組はマルちゃん、ターニャさん、カトリーヌさんは先行してエルムバーンで研修に来ている。結婚式にヤーマン王国に行った時、後続の研修生を連れて来る予定だ。
レンド魔王国のイーノさんは…まだ諦めていないらしく、ボクに付いてエルムバーンに来るつもるだったが、ヴァルターさんに強制連行されて国に帰っていった。
去り際に
「ジュン殿!私は諦めませんからねー!」
と、叫んでいた。
諦めて欲しい、早々に。
でも、また会う事になるんだろうなぁ。
そして、ボク達はエルムバーンに帰って来て数日はお休みモードに。グンタークに入ってからは働き詰めだったのでノエラ達にも休んで貰った。といってもノエラ達はボク達の傍に居たが。
しかし、お休みなのは確かなのでその間は他の執事や、メイド。
ティナ達や侯爵の下から連れ帰った新人の子供達がメインで働いてくれた。
四人の子供達の内、女の子二人はティナ達が率先して面倒を見ている。男の子二人はセバストの部下の執事に任せる事に。
子供達の名前は
リタ 十四歳。 ポリー 十二歳。
カイル 十三歳。 キース 十一歳。
そして、これはノエラからの情報だけど…
四人共に処女と童貞らしい。
侯爵の部屋での光景を見た者としては信じられないが、確からしい。何でも、成人するまでは最後まではせずに仕込むだけだったとか。
何を仕込んでいたのかは敢えて口にしないが…連れ帰って本当によかった。
特にリタはもうすぐ成人だとか。かなりギリギリだったわけだ。
即決でエルムバーンに行くと決めるはずだ。
最後にエスカロン・ガリアとその従者達は結局何もせずに帰っていったらしい。女神の祝福の御蔭…では無いだろう、流石に。
それから、エルムバーンに戻って五日後。
アイシスがゴネだした。
「出掛けよう!」
「え~?何処に?」
「勇者の遺物の情報でも挙がったの?」
「ううん!でも帰って来てからずっと城に閉じ籠もってるじゃない。そろそろ外に出ようよ」
「何処に行くの?」
「何処でも!あっ、冒険者ギルドで依頼受けようよ!」
依頼ねぇ。まぁ久々にそれも悪く無いか。
「じゃあ、行きますか」
「そうね。最近、実戦をしてないし」
「お金も要るしね」
「お金?何か買うの?」
「内緒」
はて?何かお金が必要な案件があったかな。
う~ん…思い付かない。
「まぁ、いいけど。それじゃ冒険者ギルドに行こうか」
「ノエラ達はどうする?」
「勿論、お供します」「勿論、行くぞ」
「行きますぅ」「行きまーす」
やっぱり全員参加。
クリステアとルチーナは勿論、ハティも付いてきた。
ティナ達は後輩の面倒を見るらしい。
「久々の冒険者ギルドだな」
「特に大きな問題は無かったと聞いています。指名依頼も無かったですし」
まぁ去年はアーミーアントクイーンの変異種なんて現れたし。
毎年のように大物が現れても困る。
「こんにちは、ウーシュさん」
「あ、ジュン様。こんにちは~。何だかお久しぶりですねぇ」
「ええ、お久しぶりです。ああ、そうだ。ウーシュさんに聞きたい事があったんですよ」
「私に?何でしょー?あ、独身で彼氏募集中です!」
「そんな事じゃなくてですね。あなた、以前ボクがどんな人物か聞かれた時、女好きだの胸を触られただの言ったでしょ」
「え?な、何の事でしょう?」
「惚けても無駄です。ネタは挙がってるんです。キリキリ白状なさい。さもないとアイとユウも泣いて謝る悶絶擽り地獄の刑です」
「言いました!ごめんなさい!」
やっぱりね。
まぁ冒険者ギルドの人でボクに胸を触られたなんて言うのはウーシュさんだけだし。
「素直に白状したし、今回は目を瞑りますが…次に同じ事したら…」
「し、したら?何です?」
「ノエラとシャクテイ、二人のサキュバスによる擽り地獄の刑です。サキュバスだけあってテクニシャンですよ。ギブアップしなかった者は居ません」
「わっかりましたー!」
まぁ、そんな事を二人にさせた事は無いが。
二人は空気を読んで黙ってくれている。
「ジュン、二人にそんな事させてたの…」
「(嘘に決まってるでしょ。ただの脅しだよ)」
「本当かなぁ…」
勿論、アイシスは分かっていなかったが。
「ま、適当な依頼を探そうよ」
「うん。やっぱり討伐系?」
「もうすぐダーバ王子達の結婚式だし、長期戦になりそうなのは除外ね」
「と、なると…」
「適当なの無さそう」
「マウンテンバッファローの討伐は…無いかぁ」
「アイ、好きだね、それ」
「だって魅力的じゃん。焼き肉食べ放題」
「あ、わかるぅ。僕もよく分かるよ、それ」
「ハティも!」
まあ美味しいからね、マウンテンバッファロー。
で、肝心の依頼は…
「ん~討伐系で最高なのは難度Cまでかぁ」
「しかも虫系。ウチは嫌だよ」
「私も…無理にここで受けなくてもヴェルリアに行ってもいいんじゃない?」
「お!お前ら!いやぁいつもいい時に来るなぁ!いい依頼があるぞ!指名依頼だ!」
「そうする?アストラバン辺りに行こうか?」
「そう言えばベヒモスの落札どうなったのかな」
「あぁ~すっかり忘れてた。取りに行かなきゃね」
「おい、こら!無視は止めろ!傷付くだろ!俺はこれでもデリケートなんだぞ!」
ギルドマスターが怒りだした。
仕方ない…
「ギルドマスターが持って来る指名依頼って碌な依頼が無いんですもん。今回もアンデット系ならギルドマスターとの付き合いは考え直させてもらいますからね」
「それなら大丈夫だ!ダイランの冒険者ギルドから緊急応援の要請だ。腕の立つ冒険者を送って欲しいってよ」
「ダイランの?何があったんです?」
「シーサーペントの群れを確認したらしい。被害が出る前に片付けたいとさ」
シーサーペント…大海蛇かぁ。
ちょっと苦手だなぁ。




