第193話 やっぱり神様の仕業でした
結婚式は無事に終わり。
今はパーティの真っ最中。
話題は勿論、女神の祝福だ。
「いやぁ!まさか女神に祝福されるなんて!実に羨ましい!」
「本当ですね。私とお兄様の結婚も祝福されるといいのですが」
それは不味い気がする。
兄妹の結婚を女神が祝福したとなると…世間も兄妹の結婚に寛容になるような。
それにユウの歯止めがますます効かなくなる。
「これであの二人は女神も認める聖夫婦ですね」
「聖夫婦?」
「御存知ありませんか?女神に祝福された夫婦はそう呼ぶんです。私とジュン殿の時も女神様に祝福されたいものです」
「イーノと結婚する人が誰かは知らんが、私も結婚する時は女神様に祝福されたいな」
「カタリナ~っ」
「フフフ」
一晩、一緒に過ごした事で、カタリナさんとイーノさんは結構仲良くなったらしい。
随分と砕けた感じだ。
「私も女神様に祝福された聖夫婦になりた~い」
「相手がいないじゃない、マルちゃん」
「…結婚は一人じゃ無理…」
「うっさいわね!あんた達も同じでしょ!」
ダーバ王子達の従者も同じテーブルに着いてる。
他にはアイシスとセリアさんも。アイとユウも勿論いる。
知り合い同士を同じテーブルに纏めてくれたのだ。
傍には今はノエラとセバストだけ。
他の従者…リリーやシャクティ、親衛隊の皆は別室で待機か巡回している。
こういう時、いつも皆には悪いなぁと思ってしまう。
エスカロン・ガリアは今のとこ何もおかしな事はしてないらしい。
護衛の騎士達も別室で大人しくしてると。
フランコ君とクローディアさんは、今は各テーブルに挨拶に周っている。
かなり大勢の招待客が来ているので、全て周るのは時間が掛かるだろうからこのテーブルに来るのもまだ後だな。
「結構、豪勢なパーティーよね。国力が衰えたって話なのに」
「それでもやらなきゃいけない理由があるんだよ」
「理由?どんな?」
「衰退したと言ってもこれくらいの事は出来るんですよってね。新女王の結婚式だし貧相な式は出来ない。他国に舐められないようにね」
「それとヴェルリアは勿論、私達とも仲が良いですよって示す為ね」
「結婚にも色々思惑があるんだ…なんだか夢のない話」
「まぁそれは仕方ないんじゃないか。王族だし」
「そうだな。望んだ相手と結婚出来る王族なんて、そうそう居ないさ。その点、クローディア殿は恵まれていると言える」
「私達もですね、お兄様」
「そうだな、オリビア。ジュン殿の御蔭でな」
「くっ…ジュン殿ぉ…」
「抱きませんよ。諦めてください」
「ううぅ…」
「イーノは結婚の話は無いのか?」
「無いよ。以前何度かあったけど、全て断ったし」
「断られたの間違いじゃないか?」
「五月蠅い!断られたのもあるが、どれも断るつもりだったものばかりだ!」
「あるんだ…」
まぁ…ヤーマン王家とレンド魔王家の確執は周辺諸国は知ってるだろうし。
調べればわかるだろうからなぁ。
うちは知らなかったけど。
「でも、何時までもしないわけにはいかないでしょう?イーノさんがレンド魔王国を継ぐんでしょう?」
「え?いえ、今回は来ていませんが、弟のオーグが継ぐ事になってます」
「え?でも…イーノさんは魔王の紋章を…」
「ああ、オーグも持っているんですよ。末の弟のウーゴも持っているので、私が継ぐ必要はないんです。オーグとウーゴは既に他国の王家の娘と婚約してますし。今じゃ父も私は好きにしていいと言っています」
姉弟、全員が魔王の紋章持ちか。
これは実はかなり珍しい。
魔王の紋章は勇者の紋章に比べて所持者が多い。
だけど、兄弟で魔王の紋章持ちは少ない。
父アスラッドの姉、アリーゼお姉ちゃんは魔王の紋章を持っていないし。
「というわけで、私のジュン殿の結婚に何の障害もありません」
「ボクにその気が無いっていう最大の障害が残ってますがね」
「君は女好きなのか、ストイックなのか、よくわからんな」
「実にストイックだと思いますよ。そりゃあもう、数々の誘惑を乗り越えて来ましたから」
だから、胸に視線が行くくらい見逃して欲しい。
「私の誘惑にもなびきませんでしたしね。その御蔭でフランコと結婚出来たのですけど」
「しかし、そろそろ覚悟を決めるべきではないのか?」
「あ、フランコ君、クローディアさん」
「フランコ、もういいの?」
「フランコ、お疲れ」
「ああ。まだ挨拶周りの途中だがな」
「皆さん、改めまして、私とフランコの為に結婚式に来て頂きありがとうございます」
「こちらこそ御招待ありがとうございます。それと、改めて御結婚おめでとうございます」
にこやかに話す二人は本当に幸せそうだ。
皆、口々に二人を祝福する。
「それで、ジュン殿はいつ結婚するんだ?」
「結婚式には私達も招待してくださいね」
「さぁ…いつだろうね~、招待は勿論しますけどね」
「ウチが成人したらしようね、ジュン」
「あ~…うん、そうね」
その時にはなし崩し的にシャンゼ様とシャクティは勿論、他数人と結婚させられる気がしてならない。
下手したらユウとも。
「アイ殿は確か今、十三歳か」
「あと二年後ですか。他の人は待てるんですか?」
「他の人ってシャンゼ様ですか?」
「もっと沢山いるだろう。はぐらかすという事はまだ覚悟が出来てないんだな」
「う…」
そりゃあね。
ボクはまだ、十五歳。
アイが成人した時に結婚するとしても十七か十八。
早すぎない?十五歳と十七歳で結婚て。
「あと二年も経てば結婚を望む相手は更に増えると思うがな」
「そうです。御嫁さんを増やしたく無いなら、既に結婚が決まってる人とは結婚しちゃえばいいのに。独身のうちはまだまだ縁談は来ますよ」
「かといってあまり沢山の嫁さんもらってもですね…それに複数の御嫁さんをもらったら、それこそ縁談が増えませんか?女好きならって」
「そうでもないと思いますよ?既婚者に縁談を持ち込むより独身に持ち込んだ方がいいと普通は思うでしょうし、結婚した後、断り続ければいずれ来なくなります。独身でいる限り縁談は来るでしょうね」
「そ、そうですかね」
「ジュン殿なら何人嫁にもらっても平気だと思うがな。それじゃまた後で」
「失礼します、皆さん」
まだ、それほど話してないのに二人は行ってしまった。
やはり、この人数ではあまり一つのテーブルにはとどまれないのだろう。
「女神にもらった加護はどんな物だったのか、聞けなかったな」
「あ、そういえばそうね」
「大丈夫、私がこっそり鑑定して見たよ」
「いや、ユウ。それはどうなんだ?」
「失礼にあたるのでは?」
「堅い事言わないで。二人の指輪には【女神の加護】が付いてて、二人の愛は女神によって守られるってなってたわ」
「つまり、御義母様が言ってたように、二人の仲を裂こうとした者には神罰が降るって事?」
「そうなんじゃない?あの二人だけの話で、他人があの指輪をしても意味が無いみたいだけど」
つまり、これから先しばらくはグンタークに危険は無いという事かな。
少なくとも他国に攻められて滅びるとかは無さそうだ。
結婚式の後のパーティーも終わり。
明日にはグンタークを去る。
更に二週間後にはダーバ王子とオリビアさんの結婚式があるので、そっちにも招待されてる馬車で移動の他国の人達は大変だろう。
そしてパーティが終わった夜、ボクとアイとユウの三人だけにしてもらって神様と会話を始めた。
「で、率直に聞きますけど。今日の結婚式での女神の祝福に絡んでますよね?」
『何じゃ、その不信に満ちた声。わしは約束事は守っとるじゃろ。そりゃまだバカ神は見つける事は出来取らんが…それにその祝福はわしじゃなくてイシュタルの祝福じゃろうに』
「じゃあ、あれはボク達の友人の結婚式だから何かしたってわけじゃないんですね?」
『いや、まるで無関係では無い。わしがイシュタルに伝えたのじゃ。御礼に何かしたいと言っておったしの』
「御礼?」
「あれじゃないの?地下墳墓の」
『そうそう、それじゃ。墓守の魂に安息をくれた事に感謝しておった。それで何かお主らにしたいとな。今回の祝福はそれじゃ』
「そういえばそれもあった。この世界には神族が残した遺跡がまだ他にもあるんですか?その中には神族が造った危険な道具があったり?」
『ん~どうかのう。可能性はあると思うが。危険な道具があったとしてもお主らでどうにか出来る代物ばかりじゃと思うぞ。神から見ても危険な物は処分したか持ち帰ったしの』
「因みにフレイヤ様絡みの遺跡は?」
『無い。それは断言しておこう』
「じゃあ最後の質問です。昨日の夜、ジゼルさんの魂をボクの魔法を媒体に降霊させました?」
『おお!したぞ!あれは中々気が利いたじゃろ?何せ正真正銘本人じゃからな!さぞあの者達の心に響いたじゃろう!』
「あんた何してくれとんねん!次やったら御尻ぺんぺんしますからね!」
『ええ!何で!?』
「いやいや、ジュン…」
「あれは褒めてあげようよ…」
『じゃろ?わし、いい事したじゃろ?』
確かに、御蔭でフランコ君とエクトルさんの和解はより上手くいったかもしれない。
だけどもせめて前もって言ってくれれば、あそこまで怖く無かったのに。
だから、褒めてあげない。絶対に!




