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第186話 結婚式 前日

「それじゃ、ボク達は一旦、ヤーマンに戻るよ。アイシス達はどうする?」


「私はグンタークに送ってくれ。ヴェルリアですべき事は終ったし、何よりクローディアに会いたい」


「変わったね、フランコ君…」


此処迄ストレートに愛情表現出来る子だったかな。

愛が人を変えるのか…


「僕達もヤーマンに連れてってもらおうかな。観光してみたいし」


「うん。料理が楽しみ」


「私もヤーマンの酒を飲みに行こう」


「じゃあ、白猿様方は?もう帰ります?」


『そうだね。新婚さんの邪魔をする事も無いし』


『そうね。頑張んなさい』


『やだ、もう…あ、でも私も一旦帰る。私の物取って来たいから』


「そうですか。じゃあ、まずフランコ君をグンタークに…」


『おおおい!待て待て!俺を忘れるな!それに誰か一人くらい追いかけてこいよ!』


『ああ、戻って来たか』


『やっぱり近くに居たねぇ。ほら、帰るよ』


白猿兄がますます可哀そうになって来たな…泣いてるし。


「それじゃ、白猿様。ありがとうございました。御嫁さんは荷作りが終わったら直ぐにまた連れて来ますので」


『いや、礼を言うのはこちらだ。世話になったな。そうだ、お前にはこれをやろう』


また、何処から出したのかわからないが…白猿が出したのは鉱石?


「これは?」


『わからぬか?オリハルコンの原石だ。少量だが何かを作る時、足しにはなるだろう』


何と。

これがオリハルコンの原石か。

原石の状態で見たのは初めてだな。


「ありがとうございます。それではまた直ぐに」


『うむ。ここで待っておるぞ』


そうして、フランコ君をグンタークへ。

白猿一家をヤーマンの山へ送り。

荷作りの済んだ白猿妹を再び送った。

白猿兄は白猿妹の荷作りを涙ながらに見ていたが、白猿妹のこの一言で振り切れたようだ。


『兄ちゃんも御嫁さんを探せば?』


というわけで、白猿兄は嫁探しの旅に出てしまった。

世界にどれだけ神獣白猿が居るのかは知らないが…彼に海を渡る術はあるのだろうか。

この大陸に居なければ海を渡る他無いのだけど…ヤーマンより東には情報は無かった。

あくまで情報が無かっただけなので、探せばいるかもしれないが、望みは薄いだろう。


そしてフランコ君とクローディアさんの結婚式の準備は進み。

いよいよ、明日が結婚式となった。

明日の結婚式に参加する為、ヴェルリア王国の国王達を迎えに王城に来ている。

大勢送り迎えしなくてはならないので、アイシスとバルトハルトさんのみ一緒に来てもらっている。

ノエラとセバストが渋ったが何とか納得してもらった。


「ヴェルリア王国の王城に入るのはこれが初めてだなぁ」


「そうでしたな。正式な訪問ですので、本来なら盛大にお迎えする所なのですが…」


転移魔法でお迎えに来てるので王都の住民達には気付かれてないし、何より第一王子に余計な事をさせないように、こっそりと来ている。

今いるのは王城の応接室だ。


「陛下はもう間もなく来られますので、今しばしお待ちください」


「はい。そんな申し訳なさそうにしなくて大丈夫ですよ」


客人をコソコソとさせて、待たせているのが申し訳ないのか、執事さんが色々気を使ってくれる。

そんなに気にしなくていいのに。


「お待たせした」


出された紅茶を飲み終わる頃に、ヴェルリア国王達はやって来た。

王妃にカタリナさんも一緒だ。

それともう一人、中年の男性とその子供と思しき青年。

彼らがフランコ君の家族だろう。


「初めましてですな。余がヴェルリア王国国王、ユーグ・アンリ・ヴェルリア。ジュン殿には我が家臣や娘、国民も世話になったようだ。感謝する」


少々、尊大な物言いに感じるがバルトハルトさんからは気さくな人だと聞いている。

年齢は四十代前半くらいか。

少しくすんだ金髪で長い髪に髭がある。若い頃はさぞイケメンだったろう。


「御初に御目にかかります、国王陛下。ジュン・エルムバーンです。アイシス殿達には御世話になっております」


「いや、世話になっておるのはアイシス達であろう?何せよく喰うであろう?アイシスは。バルトの奴はよく飲むし。飲食代がバカにならんのではないか?」


「へ、陛下…」


「その分、騎士や兵士の訓練を見てもらっていますから。ボク…いえ、私の訓練相手にもなってもらっていますし」


「そうか?ならばよいのだが。おっと紹介が遅れたな。我が妻と息子だ。おい」


「はい。カタリナとマークスの母、アニエス・オベール・ヴェルリアです」


この人がカタリナさんの母親。国王と同じく四十代前半だろうか。

茶色の髪に緑の瞳。少々痩せ型か。

カタリナさんは父親似らしい。


「エヴァリーヌ・バルバラ・ヴェルリア。エルリックの母です」


問題児、エルリック殿下の母親。

ふくよか…いや、はっきりと肥満体と言ってしまおうか。

金髪で派手に着飾った衣装。強欲さが前面で出て来てる気がする。

何と言うか、エルリック殿下の母親といった感じだ。


「第二王子のマークス・オレール・ヴェルリアです。姉と同様、友人になって頂けると幸いです」


彼がカタリナさんの弟で第二王子。

父親は体育会系といった感じだが、彼は文学少年と言った感じだ。

茶髪で緑の瞳、痩せ型。母親に似たのだろう。

彼にエルリック殿下のお目付け役をさせるとの事だったけど、大丈夫かな。

気弱そうに見えるけど。


「後の者は余達の護衛と世話をする者達だ。よろしく頼む」


従者の人達は護衛が十名。侍女が十名。

二度に分けて転移しないとダメだな。


「それから、もう一人の妻と二人の子がいるのだが…ヤーマンのダーバ王子の結婚式で紹介しよう」


ヴェルリアにはもう一人の王妃、第三王妃とその子供の第三王子、第四王女が居る。

第二王女も第三王妃の子供らしい。

三人の妻に七人の子供か。

大家族だなあ。


「久しぶりだな、ジュン。元気そうで何よりだ」


「お久しぶりです、カタリナさん。カタリナさんもお元気そうで」


「うん。しかし、君より先にフランコが結婚するとはな。先を越された気分はどうだ?」


「それを言ったらカタリナさんも同じなんじゃないですか?」


「う…言うじゃないか…」


「失礼、王女殿下。私どもにもジュン殿に挨拶をさせて頂きたく」


「おっと、そうだったな。すまない」


「いえ。御初に御目にかかります。フランコの父、エクトル・ルーベルトです。息子が大変お世話になっております」


この人がフランコ君の父親でヴェルリア王国の財務大臣。

髪の色はフランコ君と同じアッシュグレー。

長髪で細身。いかにも文系な感じで、少々暗いイメージだ。


「フランコの兄、ロラン・ルーベルトです。弟が御世話になってます」


フランコ君の兄、ロラン君。

彼もアッシュグレーの髪。父親と同じく長髪だ。

彼も文系な感じだし、ルーベルト家は文系一家なのかな。

そういえばフランコ君の母親らしき人はいないな。


「さて、自己紹介はこれくらいでいいだろう。行くとしようか、ジュン殿」


「お待ちを、父上。私にも自己紹介させて頂きたい」


「エルリックか…」


ノックも無しに入って来たのは問題児、エルリック殿下だ。

取り巻きの騎士も一緒だ。


「何の用だ?お前は今回の結婚式には連れて行けないと言ったはずだ」


「はい。ですがジュン殿に紹介して頂くくらい、構わないでしょう?」


エルリック殿下は以前、クローディアさんを側室に寄越せと、国王に無断で打診している。

そんな経緯があるから連れて行けないのだろう。


「…いいだろう。だが、手短にな」


国王陛下が一瞬、こちらに申し訳なさそうな視線を向ける。

以前、王都を変装して観光してた時の一件は陛下も知ってるらしいから、こちらが不快な思いをしないか心配なのだろう。


「ええ。初めまして、第一王子のエルリック・ヤン・ヴェルリアです」


「…初めまして、ジュン・エルムバーンです」


初めまして、ね。

やはり、あの時の人物がボクだと気づいてはいないか。

いや、女性しか見て無かったなら最初からボクの事は眼に入ってなかったかな。


「ジュン殿のお噂はかねがね。以前からお会いしたいと願ってました。私と気が合いそうだと思いましてね」


「そうですかね?」


こちらはとてもそんな気はしませんが?

何をもってそんな気になったのか。


「ジュン殿の従者は美人揃いだとか。妹君のユウ殿と婚約者のアイ殿も大変お美しいと。今日は一緒ではないので?」


「ええ。先にグンタークの城で待ってます」


「そうですか、それは残念。機会があればお会いしたいですね。その時には私の従者も紹介しましょう。私の従者も美人揃いなんですよ?」


あ~…気が合いそうだと思ったのはその点かな?

ボクは噂で女好きになってるらしいし、お互いの女を自慢しあいましょうって事かね。

あんた、アイシスを口説いてるんでしょ?よく目の前でそんな提案出来るな…


「兄上、そろそろいいでしょう。ジュン殿はお忙しいのです。あまり引き留めるべきではありません。控えてください」


「何だ、マークス。兄のする事に口出しするな」


「いいや、エルリック、マークスの言う通りだ。控えろ」


「…わかりました。それではジュン殿、またいずれ」


「私も失礼します」


エルリック殿下が部屋を出たのを確認して、マークス殿下も退室する。

気弱そうに見えたけど、ビシッと言える人なんだな、マークス殿下は。


「ふう…すまないな、ジュン殿」


「いえ。では行きましょう」


「うむ。よろしく頼む」


転移魔法でグンタークの城へ。

そこにはクローディアさんとフランコ君が待機していた。


「ようこそグンタークへ。ヴェルリア国王、ユーグ陛下」


「御足労頂き、感謝申し上げます、陛下」


「うむ。式は明日だが、まずはおめでとう、クローディア殿。フランコも…いやフランコ殿もおめでとう」


「ありがとうございます、陛下」


「ありがとうございます。後ほど、歓待の宴を開きますので先ずは部屋でお寛ぎください。案内させましょう」


事務的なやり取りな気もするけど…互いに挨拶も済ませてヴェルリア国王一家は部屋へ。

護衛と侍女の人達も一緒だ。


「フランコ…」


「来たのか、父さん。どうせまた仕事で来ないかと思った」


「息子の結婚式にくらい出るさ…」


「ふん。どうだかな。今回の結婚式に何か甘い汁でもあると思ってるんじゃないのか?」


「フランコ!」


「ふん…兄さんも一緒か。相変わらず父さんと仲がよさそうで何よりだ。宴まで時間がある。部屋でゆっくりするといい」


父と兄を残して、フランコ君はクローディアさんと行ってしまった。

義理とはいえ家族になる二人に挨拶したかったのだろう、クローディアさんは複雑な顔をしている。


「お恥ずかしい所をお見せしました。申し訳ない」


「いえ…あの、フランコ君とは仲が良くないと聞いてはいましたが、何か理由が?」


「ええ…部屋で御話ししましょう。あまり楽しい話ではありませんが…」


確かに、立ち話でする話でもないだろう。

部屋にはユウ達だけでなく、結婚式に参加する為に来ていた父アスラッドと母エリザも居た。

ハティは今回は御留守番だ。

ハティはまだ、テーブルマナーを覚えていないし、結婚式で長時間大人しくジッとしてられないからだ。

簡単に自己紹介を済ませ、話の続きを聞く。


「十年ほど前の事です。妻が…フランコの母が死んだのは」


十年前…まだボクが上位治癒魔法を覚える前だな。


「まだフランコが四歳の頃…妻のジゼルは重い病に掛かってしまいました。ジゼルの治療には高価な薬が必要で…私はがむしゃらに働きました。おかげで大臣にまでなれはしましたが…殆ど屋敷に帰る事も無く…妻の死に目に立ち会う事も出来ず。妻には寂しい思いをさせたと思います。妻が死んだのはフランコが六歳の時。幼いフランコには私が妻を見捨てたと思えたのでしょう。それ以来、ずっとあんな感じです」


「それは…ちゃんと話合えばフランコ君もわかってくれるのではないですか?」


「何度となく、そうしようとしましたが…私が大臣になったのが妬ましい連中が流した噂を鵜呑みにしているらしく…話を聞いてもらえないのです」


「噂、ですか」


「ええ。曰く、私が国の資金を着服してるだの、妻を見捨てたのは愛人がいるからだのと。全て根も葉もない噂で。潔白は証明できたのですが…」


「ああ、わしが聞いた噂もそんな感じだった」


父アスラッドが以前言っていた噂ってこれか。

ボクの噂も間違ったモノはあるし、噂って怖い。


「全く…フランコの奴は。自分の父親が信じられないなど…」


「その…明日は結婚式です。それまでに一度話をされた方が…」


「お気遣い感謝します、ジュン殿。しかし結婚式の前に波風を立てる事も無いでしょう。ゆっくり解決するとします。それでは失礼します。また後ほど」


ゆっくりと解決と言っても…これからはグンタークとヴェルリア。

お互いに別々の国で暮らす事になるんだし、難しいだろう。

何とか出来ないかな…

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