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第185話 箱の中身

ヤーマンの神獣白猿一家に会った後、アイシス達に連絡を取って今は王都ヴェルサイユのノーヴァ家の屋敷に来ている。


「じゃあ、問題無くフランコ君の結婚は認められたんだ。よかったね」


「ああ。有難う、ジュン殿」


「ルーベルト家の方も何も?」


「ああ。兄は驚いていたがな」


「第一王子は余計な事言わなかった?」


「あの人は私の結婚なんかに興味を示さないさ。相手が自分が欲してる相手なら別だが。クローディアの事は頭から抜けたみたいだしな」


「むしろアイシスが絡まれた」


「ほんと、もう。しつこいったら」


第一王子はまだアイシスを諦めてないらしい。

一人の女性に執着するタイプじゃないのに。

まぁ勇者というブランドが欲しいだけなんだろうけど。


「それじゃ結婚式に参加するのは?」


「陛下と第一王妃と第二王妃のお二人。それとカタリナ様だ。後は私の父と兄。それから護衛や侍女達だ」


「第一王子は当然として、第二王子は?」


「マークス殿下はエルリック殿下のお目付役で残って戴くそうだ。完全な野放しには出来ないからな」


もはや全く信用されて無いんだな…話を聞く限り無理もないけど。


「じゃあ、明日の朝迎えに来るから」


「寝坊しないようにね、アイシス」


「分かってるよ、もー」


アイシス達と別れ、次はエルムバーンの神獣白猿の住む山へ。


「さて、と。今日は呼ばなくても来るかな?」


「どうだろうね」


「あ。来たよ、ご主人様」


「早いな」


まだほんの数十秒なのに。

ボク達が来るのが待ち遠しかったのかな。


『やはりお前達か。待っていたぞ』


待ってたのかー。

そんなに心待ちにしてたんですね。


「お久しぶりです」


『うむ…そ、それで?見つかったのか?見つかったのだろう?』


「はい。とりあえず会ってみたいという事なので明日、一家全員連れて来ます」


『何、明日!?そ、そうか。うむ、楽しみにしているぞ。しかし、一家全員とな?』


「はい。御両親と兄も会ってみたいそうで」


『そ、そうか。わかった』


「それでは、また明日来ます。失礼します」


『うむ、感謝する』


そして翌日。

アイシス達を迎えに行ってから、白猿一家を迎えにヤーマンの山へ。ダーバ王子達にはアイとユウが上手く言って残ってもらった。


「さて、直ぐに来てくれるかなって…おや?」


『待っていたぞ。お前達、このまま帰れ。さもないと…ぐはっ』


『何やってんの、兄ちゃん!勝手に追い返そうとするなんて!』


『朝早くにこっそり出掛けたかと思えば…』


妹が嫁に行くのを阻止するために、ボク達を追い返そうとしたのか。待ち伏せしてまで…

しっかりバレてたみたいだけど。


『な、何故バレた…』


『普段早起きしないあんたが、夜明け前に出掛けたら、そりゃ怪しむわよ』


『息子をもっと信用しろよ!』


『この状況でよく言えたね。やぁ、すいませんね。お騒がせして。さ、行きますか』


「えっと…どうなってるの?」


「妹が嫁に行くのが嫌でしょうがないお兄さんと呆れる家族の図です」


「ああ。つまり…」


「ミハイルと同類か」


あぁ、やりそうだなぁミハイルさん。

その場合、アロイスさんも混ざってそうだけど。


まだ愚図る白猿兄を無理矢理抑えつけて転移魔法で移動。

エルムバーンの白猿…長いので白猿とだけ呼ぶが、直ぐに来た。


『は、初めまして。我がこの山の主です』


ガッチガチに緊張してるな。

しかし、何あの蝶ネクタイ。

何処から用意したんだろう。


『わあ!男前!』


『うん。若い頃の私のようだ』


『貴方の方がちょっぴりカッコよかったわよ。でも男前ね』


あ、白猿は男前なんだ。

ボクには猿の男前の顔とかわかんないからな…


『そ、そうですか?あ、貴女も大変美しい…』


『けっ!何処が!兄ちゃんの方がよっぽど男前だろう?』


『うん?』


白猿妹の発言に白猿兄が噛みつく。

白猿も白猿妹も問題無さそうだし、後は白猿兄が問題か…


『ええと…彼は?』


『私の兄ちゃんですけど、無視してください』


『おい!無視は止めろよ!兄ちゃん泣いちゃうぞ!』


兄ちゃん、メンタル弱いなぁ。

既に涙目じゃないか。


『おい!お前には絶対に妹は渡さんからな!』


『…おい、彼は何なのだ?最初から敵意むき出しだったが…我が何かしたか?』


「あ~…彼は単に妹が結婚するのが嫌なんですよ」


『何故だ?妹の幸せを願うのが兄ではないのか?』


「そうなんですが…じゃあ、ちょっと想像してみて下さい。貴方がこのまま結婚して娘が出来たとします」


『うむ』


「そしてある日突然、娘が『お父さん、あたし、この人と結婚したいの』と言って男を連れて来たらどう思います?」


『確実にぶん殴るであろうな』


「彼の気持ちはそれに近いモノだと思って下さい」


『なるほど。理解した』


実際は想い人を奪われそうな男の方が近いんだが…敢えてこっちにした。


「流石は同類だな。シスコンの気持ちをよく理解してるじゃないか」


「類友?」


「あれあれ?ボクってそういう評価?」


おかしい。

特にそう思われるような事をした覚えがない。

一体、何故。


『しかし、兄君よ。妹の幸せを願うのもまた、正しい兄の姿であろう。ここは我と妹君の門出を祝っては貰えぬか』


『兄ちゃん、お願い!』


『ぬ、ぐぐぐっ…』


白猿のド正論と、妹のお願いで劣勢に追い込まれる白猿兄。

いや、元々が勝ち目の無い立場だったのだが。


『しょ…勝負だ!俺が勝ったら妹は諦めろ!俺が負けたらあんたを認めてやる!』


『ふむ…よかろう。それで兄君が納得するならば。勝負の方法は?』


『殴り合いに決まってるだろう!』


『殴り合い…それは困る。我と兄君が本気で殴り合えば山にどんな被害が出るか。山を守る者として容認出来ない。別の方法で頼む』


『ぬ…なら…ええ~と…』


「ならさ、相撲なんてどう?」


『『相撲?』』


アイが相撲を提案し、簡単にルールを説明する。

どうやら気に入って、相撲でやるらしい。


『では、行くぞ!兄君!』


『来やがれ!妹は渡さん!』


同じ神獣。

実力の拮抗した、さぞかし熱いバトルが繰り広げられる―と、思ったのだが。

結果は白猿兄の惨敗だった。

瞬殺である。


『―え?あれ?なんで?』


『なんでも何も。お前の方が圧倒的に弱いだけだ』


『あなた、普段から魔獣相手にも戦わないし、寝てばっかりじゃない。此処を一人で守っていた彼とは、経験が違うのよ』


『う、うう…』


『兄君よ、これで認めてもらえるだろうか』


『う…うわぁぁぁぁん!!』


『あ、兄ちゃん?…行っちゃった』


泣きながらどこかへ消えていく白猿兄。

ここ、地元じゃないのに何処へ行くんだろう?


『ま、大丈夫だよ。どうせあまり遠くには行ってないよ』


『ええ。ほっといて大丈夫』


泣いた息子に容赦ないな…放任主義なのか?


『それより…よかったわね、結婚おめでとう』


『おめでとう』


『ありがとう、母ちゃん、父ちゃん!』


『ありがとうございます、父君、母君』


よかった。

白猿の結婚は無事に決まったようだ。

これにて一件落着―――


「じゃないな。あの白猿様。幸せに浸っている所、申し訳ないのですが。お約束した物を頂けますか」


『ん?おお、そうであったな。ちゃんと用意してある。受け取れ』


白猿は何処から取り出したのか、わからないが…指輪ケースのような小箱を一つ投げて寄越した。

これが勇者ランバに託された物?


「これが、そうなのですか?」


『うむ、そうだ。我の力でも開けられないよう封印されている。勇者の紋章を持つ者なら開けられるそうだ。試してみよ』


「はい。アイシス」


「うん」


『あの、あれは何なのですか?』


『聞いておられぬのか?あれは…』


白猿が嫁と嫁の家族に説明する横で。

アイシスは箱を開けた。

本当に勇者なら簡単に開けられるようになってるらしい。


「これ…何?」


「石?宝玉か?」


「目玉みたい」


セリアさんの言うように、箱の中身は目玉のような飾りが施された宝玉だった。

これは何だろう?


「ユウ。判る?」


「えっと…『開眼の宝珠』って言う代物みたい。使用者の資質に沿った魔眼を与えてくれるアイテムだってさ」


魔眼を与えてくれるアイテム…それは凄いな。

しかし、そんな物をどうして自分で使わずに託したんだろ。


『ランバには必要無いアイテムやな。何せランバは千里眼を持っとったからな』


「なるほど。既に魔眼を持ってるなら、使用しても意味は無いか」


複数の魔眼を所持出来たり、魔眼の能力がUPしたりはしないんだな。


『それと、ジュンはんも使っても意味無い…とまでは言わんけど、効果は薄いやろな』


「というと?」


『ジュンはん、眼に紋章が宿ってるやろ?上位の紋章が眼に宿ってる人は、紋章の力が成長するにつれ、魔眼に近い能力を獲得する場合があるんや。心当たり無いか?』


「あ!有るね」


他人の魔力量が凡そ分かるようになったのはそういう事だったか。

なるほど。もしかしたらこの能力も先があるのかも。


「という事は、アイシスが使うのがいいかな。予定通り」


「いいの?僕で」


「いいんじゃない?勇者の遺物には違いないし。後の勇者にって託された物だし」


「うん、いいと思うよ」


「それじゃ…ってこれ、どうやって使うの?」


「ユウ?」


「ええっと…精神を集中して宝玉の眼を見つめるだけでいいみたい」


便利だなー賢者の紋章。

何でもかんでも知る事が出来るわけではないけど…アイテムの使用方法くらいなら問題無いみたいだ。


「ええと、こうかな」


アイシスが言われた通りにやると、宝玉は淡く輝き始めた。

輝きは増していき、やがて光が失われて行く。

完全に光が消えると、宝玉は砕けて散ってしまった。

完全に一回こっきりの使い捨てらしい。


「…どう?アイシス」


「うん…眼に宿った力が解る…幻術を破ったり魔法で隠蔽されたものを曝け出す力みたい」


「透視眼?かな?」


『いや、透視眼は見破るだけや。幻術や隠蔽された物を曝け出すとなると…恐らく破幻眼や。中々の魔眼とちゃうか』


つまり、これからはアイシスに幻術や幻覚、魔法で隠蔽は通じなくなったわけだ。

ますます隙が無くなったな。


「残念だったね、アイシス」


「え?何が?」


「透視眼じゃなくて。お兄ちゃんの御風呂とか着替えとか覗けなくて、ガッカリしたでしょ?」


「なー!」


「アイシスはむっつりスケベ」


「ほどほどにな、アイシス」


「勇者の名とノーヴァ伯爵家に泥を塗るような真似は控えるんだぞ」


「しないよ!もー…バカー!」


なんにせよ、これで一つの案件は片付いた。

白猿兄がちょっと可哀そうな気もしたけど、時間が解決してくれるだろう。

多分、きっと。

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