表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/604

第183話 ちょっと可哀想なイーノさん

「皆さん、どうか落ち着いて…」


「皆さん、何をそんなに怒ってるのです?」


「いや、オリビア。お前のせいだから。取り合えず黙ってなさい」


小首を傾げるオリビアさんは、本当にわかってなさそうだ。

誰だ、キスが挨拶なんて教えたのは。


「皆、席について。たかがキスじゃないか。ボクは全然気にしてないから」


「ハティもよくチューしてるよ?」


うん。まぁ狼の姿の時にはね。

人型の時にはしてないが…今は火に油だ。


兎に角、皆の殺気が凄い。

ボクに殴り掛かったアロイスさんに向けた以上の殺気だ。

オリビアさんは鈍いのか感じてないようだが…


「ジュン様」


「はい。何でしょう、クリステア君」


「たかがキスと仰るなら、キスくらい何ともないのですね?」


「あ、はい。そりゃあもう、キスなんて。ハッハッハッー初めてでもあるまいし」


そりゃあ、いきなりでビックリして、多少動揺してしまったが。

今じゃ、全然?平気ですよ?


「なら、私ともキスしてください。出来ますよね?キスくらいなんともないのなら」


「…はい…後でお願いします…」


まぁ、ね。

そう来るような気はしてましたよ。

いいよ、いいさ。キスくらい…

あ、全員ですね?

わかりました。


「…はぁ」


「あの?ジュン殿?すみません…」


「いえ…で。何故、イーノさんがオリビアさんを好きなのか、の質問の回答がキスという事は…」


「はい。御察しの通り。イーノのファーストキスを奪ったのはオリビアです」


やっぱりね。

無理やり奪われたんだろうに、それでホレるとか。

チョロすぎない?


「イーノ様だけじゃないんですよ。オリビアの被害者は」


「…私も奪われた…」


「私もよぉ。無事なのはブロちゃんくらいじゃない?」


「私、ブロイドさんは好みじゃなくて…ごめんなさい」


「……」


泣けるっ。

マルレーネさん達はダーバ王子と幼馴染。

オリビアさんとも幼馴染なのだろう。

その中で一人だけ毒牙に掛かってないというのは…逆に辛いモノが…


「んんっ…あ~、ジュン殿。バカ息子共が迷惑をかけたようで申し訳ない。そして、治癒魔法使いの育成や学校という物のノウハウまで教えてもらえるとか。感謝する」


「あ、いえ。カトリーヌさんには治癒魔法の才能があるようですし。優秀な治癒魔法使いが増えれば、その分、大勢の人が助かる。出来る限り広めるべきですから」


「うむ。ジュン殿は出来た人のようだ。噂通りの人物らしい」


また噂ですか。

というか、ヤーマンとエルムバーンはかなり離れてるのに、ここまで噂になってるの?


「…どんな噂ですか?」


「ん?心配する事は無い。殆どいい噂ばかりだ。簡単にまとめると、強く、優しく、美しい、とな。まぁ女好きだとか、治療した者の中に気に入った者がいれば連れ帰る等の噂もあったが…」


「行きがかり上、連れ帰って雇った事はありますが…好みだからと連れ帰った事はありませんよ…」


どこもかしこも同じような噂ばかり。

まさかとは思うが、ここでも魔王子様シリーズは出版されたりしてないだろうな。


「で、ジュン殿。この上更に頼み事をするのは気が引けるのだが…」


「何でしょう?」


「後で王都の中央広場で怪我人や病人を集める。治してやって欲しいのだが…」


「ええ。構いませんよ。治癒魔法使いの安全を保障して頂けるなら、グンタークのように派遣しても構いません。他国の手前、無償というわけにはいきませんが…今日、ボクが治癒する分は無償で構いませんので」


「おお。感謝します。おい、手筈を整えろ」


「御意」


「あ」


「どうかしました?ジュン殿」


「王都の中央広場なら、イーノさんと鉢合わせするかも、と思いまして。怪我人や病人に中央広場に集まるよう御触れを出せばイーノさんの耳に入るでしょうし…」


「ああ~なるほど。マズいですね」


「イーノの奴め…つくづく厄介者だな」


ヤーマン王家の人のみならず、周りにいる従者の人達も同じ顔をしている。

それだけで色々あったんだろうと、容易に察せれる。


「原因は聞いてますけど、今まで何があったんです?」


「散々な事ばかりでしたとも。奴が王宮に乗り込んできてダーバに決闘を挑み、先祖伝来の調度品の数々を粉々にされ…」


「会議の為に他国へ赴く際に待ち伏せをされ、時間を取らされ会議に遅刻、何て事もありましたね」


「オリビアを誘拐しようとした事もありましたね」


「そして奴は何一つ謝罪してこないし、弁償もしない。争いの原因はこちらにもあるので、余り強くも言えないのですが…」


「それはまた…」


よく戦争になってないな。

誘拐は未然に防げたんだろうけど、犯罪に間違いなかろうに。


「でも陛下も王子も。その都度、倍返し以上にやってるじゃないですか」


「そんな事は無い。あの程度可愛いモノだ。なぁダーバ」


「ああ。あの程度で済んだなら御の字だろう」


「…何やらかしたんです?」


「あ、またぁ。私の方が酷い事したとんだろうとか思ってません?仕返しはしましたけど、大した事してませんよぉ。アイツ個人にしか被害出してないんですから」


「そうね…調度品を壊した時は身包みはいで下着姿にして吊るしたわね」


「…待ち伏せの時も身包みはいで下着姿で木に逆さづりした…」


「誘拐未遂の時も身包みはいで下着姿にして吊るしたわねえ」


「それは酷い…」


男装してるとはいえ、女の子を下着姿にして吊るすなんて。

そんな事するから余計こじれていくんじゃ…


「他にも幾つかあるわねぇ」


「全てやられたからやり返しただけだ。それに下着は残してやったんだ。優しいだろ?」


「そうかしらぁ?イーノ様、泣いてたけどぉ…」


「あの人が男っぽいの、見た目と言動だけだもんね」


「…中身は結構純情な乙女…」


「で、まぁ何時しか一対一の勝負を挑んで来るようになったんです」


「毎回、作戦を考えて来てるけど、何時も何処かヌケてるのよね、あの人」


「…王子の全戦全勝…」


「そして何時も有り金全部奪われるか、男装を解いて女物の服を着せられるのよねぇ」


なんか、ちょっと可哀そうになってきたな。

今度会ったら優しくしてあげよう。

抱かないけど。


「ま、イーノの事はこちらに任せてください。ジュン殿に迷惑は掛けさせん。兵士に言って追い払っておきます」


「はぁ…あまり手荒にはしないであげてくださいね」


「おや、お優しい。まさかイーノにホレました?何ならキスでもしてやったらどうです?」


「ホレてませんよ。ちょっと可哀そうになって来ただけです。それにキスなんてしたらオリビアさんと同じようにホレられるかもしれないじゃないですか」


「あ~…その点に関しては手遅れかもしれませんね」


「はい?どういう事です」


「いや、ほら。ジュン殿がイーノの胸に触ったじゃないですか?」


「人聞きの悪い言い方すんな!。ダーバ王子が触らせたんでしょうが!」


「まぁ、それに加えて、私がジュン殿に抱かれて来るよう言ったもんだから。ジュン殿をかなり意識してるでしょうね。一人で舞い上がって一人で勝手にホレてるかもしれませんね」


「あんた、そこまで理解してて、よくあんな条件だしましたね」


完璧にボクに押し付ける気だよ、この人。

美人だし、悪い人じゃ無さそうだけど…


「ちゃんと躾役というか、お目付け役とかいれば、大丈夫そうだけどね」


「そうね。結構素直そうだったし。ちゃんと言い聞かせる事が出来れば…」


「そんな奴が居ればいいんですがねぇ」


現状ではいないんだろうな。

居るならもう少しまともと言うか…前回みたいなまぬけな事にはなってないだろうし。


「ま、いない奴の事はいいじゃないですか。それよりもジュン殿、白猿に会いに行くのは明日でいいですか?」


「あ、はい。王子達こそ、いいんですか?帰って来たばかりなのに、ゆっくりしなくて」


「はい。どうせ結婚式の準備には時間がかかりますしね。それにフランコ殿とクローディア殿の結婚式もありますし。用事は出来るだけ済ませた方がいいでしょう」


「そうですね。じゃあ、明日お願いします」


フランコ君とクローディアさんの結婚式に白猿の件と。

結構忙しいかもしれないな。


「お兄様。ジュン様達も結婚式に出て下さるのですか?」


「勿論だとも、妹よ!きっとお祝いに見た事も無い金銀財宝をプレゼントしてくれるぞ!」


「え?ボク達も出るんですか?初耳だなぁ」


「予定が詰まってるし、欠席でいいんじゃない?」


「そうね。王族の結婚式に立て続けに出るの、疲れそうだし」


「ちょっとおお!ジュン殿!アイ殿にユウ殿まで!」


「冗談ですよ。でも金銀財宝なんて用意しませんから。常識の範囲内に留めた物は贈らせてもらいますが」


「そうですか、よかった…ところで神獣白猿に何の用で会いに行くのか、まだ聞いてませんでしたね」


「ああ。えっとですね…エルムバーンにも白猿はいるんですが、その白猿に同族を連れて来て欲しいと頼まれまして。それで」


「へぇ~神獣に頼まれ事ですか。何の為に同族を?」


「まあ…平たく言えば、結婚したいそうです。白猿も」


「ん?それはつまり…異性の白猿を連れて行かねばならないという事では?」


「そうなりますね。因みにエルムバーンの白猿は雄なんですけど、こちらの白猿は?」


「さぁ…誰か知ってるか?」


「あたしは知らない」


「…私も…」


「私もよぉ。今まで気にした事も無いしぃ」


「…右に同じ…」


「わしは知っとるぞ。確か四人家族で夫婦に二人の子がいたはずじゃ。兄と妹らしい」


「お、流石爺さん。伊達に年は喰ってないな」


四人家族…となると、その妹さんに来てもらう事になるか。

上手く事が運べばいいけど。

というか、何か…妹ってとこに引っ掛かりを覚えるな。

何の理由も無い、ただの直感だけど。

はずれますように…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ