第179話 女王様とフランコ君 2
クローディアさん達と飲み比べをした翌朝。
朝食を食べに食堂に行くと、アイシスとセリアさんが既にいた。
「おはよう」
「おはよ。ジュン、平気なの?」
「おはよう、ジュン様。全然平気そう」
「二日酔いの事なら心配ないよ」
昨日、かなりの量を飲んだが…うん、至って普通だ。
「本当にお祖父ちゃんより強いんだ…」
「バルトハルトさんはまだ寝てるのに」
バルトハルトさんとゴードンさんも二日酔いだろうな。でもまぁ、あの二人は自業自得だろう。
「二人は早いね。セリアさんは何時もだけど、アイシスは何時もお寝坊さんなのに」
「う…昨日あんまり食べれなかったから…」
お腹が減って目が覚めたんですね。
という事はダーバ王子も…
「お早う御座います!いゃ~お腹が減って早く目が覚めてしまいましたよ!」
あ、やっぱり。
ダーバ王子に続いてマルレーネさん達も入ってくる。ゴードンさんはやはりいない。
「お早う御座います。ジュン様、大丈夫ですか?」
「見た目平気そう…」
「凄いわねぇ。ゴードンさんより強いなんて」
「…」
ゴードンさん以外のダーバ王子一行も揃った。
あとは…
「おはよ」
「おはよ、お兄ちゃん」
アイとユウも来た。
バルトハルトさんとゴードンさんは来ないとして、あとはフランコ君と、クローディアさんか?
「フランコ君は?様子見て来た?」
「ううん。フランコは寝坊してるだけだと思うよ」
「う~ん。仕方ない。起こしに行って来るよ」
「ジュン様、私が行く」
「いや、朝起こすのは女の子が良いとは限らないから」
生理現象だから、どうしようもないし。
十代だしねぇ。
「ああ、うん。そうかもね。フランコ君の場合は特に」
「私はお兄ちゃんで見慣れてるけど」
「何の話?」
「アイシスは知らなくていい話」
フランコ君の為にもアイシスは知らなくていい。
というか、ボクで見慣れたとかどういう事だ妹よ。
「む~!何それ!気になる!教えてよ!」
「ボクは教えない。じゃフランコ君を起こしに…」
『きゃあああああ!』『うわあああああ!』
突然、女性と男性の叫び声が聞こえてくる。
この声は…
「クローディアさんとフランコ君?」
「ただならぬ声だったよ!」
「こっちから聞こえて来た!」
声がした方へ向かうと…既に人集りが。
ノエラ達も既に来ている。
「何があったの?」
「ここ、フランコの部屋だよね」
「はい。大した事ではありません」
「いや、大した事だろ。見てみな、ジュン様」
セバストに言われて部屋の中を見ると…部屋の壁際に昨日の服装のままのフランコ君が青い顔で座ってて…ベッドにはクローディアさんがシーツに包まって…しかも裸?
これはつまり…
「あ~フランコ君?もしかして…ヤっちゃった?」
「な!ななななな!何をだ!私は何にもやってない!」
「そ!そそそそそ!そうです!私はまだ処女です!血も出てないし!」
「でも…その赤いシミ…」
「これはフランコさんの鼻血です!」
ふむ…確かにフランコ君は鼻血を出した跡がある。
でもなぁ…それだけじゃ…
「ジュン様。恐らくお二人は一緒に寝ただけだと思われます」
「何でわかるの?」
「お二人は童貞と処女のままですから」
「何でわかるの!?」
いくらノエラが優秀だからって、見ただけで判る事じゃないだろう。
「私達、サキュバスは見ただけで処女か童貞か判別出来ますので」
見ただけで判る事だったのか…じゃあユウとシャクティにも?
「私も、勿論判るよ」
「私もです。ちなみにジュン様はーーー」
「余計な事は言わなくていいからね、シャクティ」
「あ、いえ…判らないんです」
「判らない?」
「ジュン様にはサキュバスの力が効かないみたいで…童貞かどうか見て判らないんです。催淫も効かないかも知れませんね」
ふむ…どういう事だろう。
サキュバスの種族特性まで防ぐような装備はしてないし、魔法も無い。
理由が思い付かないな…って今はそんな事よりも、だ。
「フランコ君。よかったって言っていいのかわかんないけど、二人は一緒に寝ただけみたいだよ」
「あ、ああ…」
「それよりも皆さん外へ出て下さい!服が着れないじゃないですか!」
アニータさんとエッダさんによって廊下に出されてしまった。
とりあえず、危険な事があったわけじゃなさそうだし、食堂に戻るとしよう。
「それで?どうしてクローディアさんがフランコ君のベッドに?しかも裸で」
「知らん!私が聞きたいくらいだ!」
「どこまで覚えてるの?寝る前の最後の記憶は?」
「えっと…飲み比べを始めた所までだ…」
「で、目が覚めたら隣に裸のクローディアさんが居たと?」
「そ、そうだ」
で、鼻血はその時に出したと。
エロいの見て鼻血出す人って本当に居るんだな。
「フランコのスケベ」
「フランコの変態」
「な!何故そうなる!」
まあフランコ君が部屋に連れ込んだわけじゃないだろうし。
今回の件でフランコ君を攻めるのは酷かなぁ。
とは思うけど相手がなぁ…
「まぁまぁ。物は考えようだって。これでもうクローディアさんはフランコ君を意識せざるを得なくなったわけだし」
「そうね。初めてベッドを共にした男性。初めて裸を見られた相手。恋愛経験の無いクローディアさんにはさぞかし強烈なインパクトを与えたでしょうね」
「それはフランコ君も同じなんじゃない?」
「尚のこといいじゃない」
「婚約までとんとん拍子に行きそうね」
「ま!待ってくれ!本当に婚約させる気なのか!?」
「こうなっちゃったらねぇ」
「男らしく責任は取らないと」
「こ、婚約を解消したい時は協力してくれるはずだな?」
「確かにそう言ったけど…」
「既に状況がねー。それが許される状況じゃないっていうか…」
そんな事言ってたのか。
やはり二人が悪魔のように見える…
「ま、仕方ないでしょう。諦めましょうフランコ殿」
「よりにもよって女王様の裸を見ちゃったんだしね」
「…ちょっと気の毒だけど…」
「そうねぇ。こんな形で婚約が決まるなんて不本意かもしれないけど、そこから始まる恋だって有るかも知れないわねぇ」
「…健闘を祈る…」
「諦めるように言うんじゃなくて…何か打開策を提示して下さい…」
ダーバ王子一行にも追い打ちを掛けられて涙目のフランコ君。
打開策は…思い付かないな。
同じ男として何とかしてあげたいけど…
「女王陛下が何にも無かった事にしてくれるのを期待するしか無いんじゃないですか?」
「期待薄ね」
「そうねぇ。普通ならそんな事しないわねぇ」
「若しくは…ジュン様が婚約するしか…」
「それだ!頼むジュン殿!女王陛下と婚約してくれ!」
「ん…う~む…」
ここで振り出しに戻るのか。
助けたい気持ちはあるけれど…
「だが断る!」
「ジュン殿ー!」
「まあ落ち着いて。想像とは違うけど、元々フランコ君を奨める予定だったんだし。それに案外無かった事にしてくれるかもしれないし」
「そんな事あるとは…」
「いやいやぁ。裸を見た見られたで婚約が決まるならボクもう二、三人は婚約者が増える事になっちゃうし」
「そんなに女性の裸を見てるのか…?」
「ノエラがお風呂に乱入してきた事があるし、最近ではセリアさんの裸見ちゃったし。ねぇ?」
「うん。完全な事故だったけど」
「ね?兎に角、クローディアさんの出方を見よう」
「あ、ああ…」
少し落ち着いたかな?
裁判を待つ囚人のような暗い顔は変わってないけど。
「ところでお兄ちゃん」
「何かな妹よ」
「何時、セリアの裸を?」
「…ん?何時でもいいだろ?事故だってセリアさんも言ってるんだし」
「ウチも気になるなぁ。いつ見たの?」
「…侯爵の屋敷にノエラと侵入して転移で戻った時」
「あ~なるほど」
「転移で戻ったら着替えの真っ最中だったと」
「そうです。事故なんです」
「何で黙ってたの?」
「わざわざ言いふらす事でもないだろ?ないよね?」
「ふ~ん…」「へぇ~…」
何かな、その目は…やましいことは無いぞ。
でも話題は変えよう、うん。
「クローディアさん、遅いね。ボクもお腹減ってきたんだけどな」
「そうですね。私もそろそろ我慢が…お?来たみたいですね」
「お待たせして申し訳ありません。さ、食事にしましょう」
着替えを済ませ、身なりを整えて来たクローディアさんは昨日まで見せていた年相応の女の子の顔では無く、女王陛下の顔に戻っていた。
食事の間はずっと黙ってるし…返って不気味だな。
「えっと…クローディアさん?」
「何でしょうか」
「体調の方は大丈夫ですか?二日酔いとか…」
「問題ありません。私はそれ程飲んでませんから」
「そう、ですか…」
やっぱり口調が女王陛下の顔の時だ。
ツンとお清まししてる。
でもチラチラとフランコ君を見ている事から察するに…意識してるのを隠そうとしてるのか。
「女王陛下?無理しなくていいですよ?」
「む、無理なんてしてません」
「ちょっと王子」
ダーバ王子が何か言おうとするのをマルレーネさんが窘めるがお構いなしにダーバ王子は続ける。
「フランコ殿が気になるんでしょ?さっきからチラチラ見て」
「み、見てません!」
「別に隠さなくても。気になって当たり前なんですし」
「でも…だって…」
だんだん女王陛下の顔から素に戻ってきたな。
年相応の女の子の顔に。
「昨日までジュンさんに婚約を迫ってたのに翌日には別の男性を意識するなんて…」
「ですが、それは断られてますし。ここは新しい恋に意識を向けるのがいいかと」
「新しい恋…」
「はい。何にせよ、フランコ殿と一度話し合う必要があるんじゃないですか?結論はそれからでもいいでしょう」
「そう、ですね…フランコさん。今日の馬車は私と一緒でお願いします」
「わかりました…」
まさかダーバ王子が上手くまとめるとは…少々意外。
「ダバちゃんには珍しく上手くまとめたわねぇ」
「奇跡…」
「本当。雪が降る処か天変地異が起きるんじゃないかしら」
「お前らな…」
やっぱりそういう評価ですよね。
さて…フランコ君とクローディアさん。
二人は果たしてどういう結論を出すのやら。




