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第176話 女王様は恋愛下手?

クローディアさんから、突然の婚約の申し出。

もしかしたらと、予想はしたけれど…本当に言って来るとは。


「ずばり聞きますが…政略結婚ですよね?」


「はい。内乱で私以外の王族は皆死んでしまいました。女王となった私には跡継ぎを産む事が求められています。出来るだけ早急に。それに…」


「それに、何です?」


「グンタークはかつてない程に弱っています。今、他国に攻め込まれたら一溜まりもないでしょう。そこで…」


「大国であるエルムバーンと縁を結べばそうはならないだろう、と?」


「はい。受けて戴けますか」


「お断りします」


「そうですか、ありがとうござい…って、ええ?お断り?」


「はい。お断りします」


政略結婚と堂々と言い放つという事は、恋愛感情など皆無だろう。

無論、ボクにも無いし。今までも政略結婚の類は全て断って来た。

というか、クローディアさん?

断られると予想してなかったようですけど、何で?

ダーバ王子もそうだったし。


「何故です?理由を聞いても?」


「先ず、ボクにはクローディアさんに対し恋愛感情はありません。次に、政略結婚と言うならエルムバーンにもメリットがあって然るべき。ありませんよね?エルムバーンにメリット」


エルムバーンとグンターク距離も離れている。

グンタークで産出される物でエルムバーンが欲しい物もボクには思い浮かばない。

グンタークにメリットはあってもエルムバーンには無い。


「それは…わ、私の体を好きに出来ますよ?これでも容姿には自信があります!」


「クローディアさんが美人なのは認めますが。ボクの周りには美人ばっかりですから」


誰にも手は出して無いけどね。

大事な事なのでもう一度。

誰にも手は出して無いけどね!


「そ、その美女軍団に私も混ぜて戴くわけには…あ、ハーレム!グンタークにジュンさんのハーレムを作ります!」


「ハ、ハーレム?」


ハーレムか…その言葉に惹かれるモノがまるで無いわけじゃないけど…ダメでしょ。


「女王陛下。ジュン様のハーレムはエルムバーンで作られる予定です。外国にもう一つ、ハーレムを作る必要はありません」


「え」


ちょっとノエラさん?

そんな予定ありました?少なくともボクは知らないよ?


「えって…ジュンさんがご存知ないのですか?」


「あ、いや…」


ここで否定したらクローディアさんも引き下がらない。かといって肯定したら…本当に作りかねない。


「そ、それに関しては極秘事項なので…お答え出来ません…」


「…ふ~ん…そうですか…」


流石に苦しいか?

しかし、否定も肯定もしてないから断定は出来ない筈だ。


「そ、それよりも!どうしてボクなんです?他にもいるでしょう。結婚相手に相応しい相手は。例えば…ダーバ王子なんてどうです?ヤーマン王国の王子だし、勇者ですよ?」


「私ですか?いやぁ~私は駄目ですね。妹と結婚するからとかじゃなく、女王陛下の望みを叶えるには私じゃ駄目なんです。むしろ逆効果でしょうね」


「何故です?エルムバーンは確かにヤーマン王国より強大かもしれません。ですが距離的に考えてヤーマン王国と友好を結んだ方が…」


「いやぁ~実はですね…ヤーマンとグンタークの間にある国、レンド魔王国と以前問題を起こしまして…おかげで私、すっかり嫌われてしまいましてね」


「存知てます。ヤーマンとレンドは敵対こそしていませんが、レンドの魔王家との仲は最悪だとか。グンタークとは今は友好的ですが…ダーバ王子と婚約したらどうなるかわかりませんね」


「何やらかしたんです?」


「あ、私が悪いって決め付けてません?傷付くなぁ。向こうが悪いんですよ?レンドの魔王子が妹を泣かせたから私が鉄拳制裁しただけです」


「スカート捲っただけ…ちなみに魔王子は鼻折られた…」


「…それはまた…。いつの話です?」


「私が十歳。レンドの魔王子も十歳の時ですね」


子供のイタズラじゃないか。

それで鼻折ったりしたら、そりゃあ怒るだろ。


「まあ、そういう訳で。私と結婚は止めた方が良いでしょう」


「はい。最初からダーバ王子は選択肢に入っていませんよ」


「…傷付くなぁ…」


いや、無理も無いでしょう。

今の話を知ってたなら。


「なら、ヴェルリア王国はどうです?第一王子は婚約者がいるそうですが」


「無理です。というかヴェルリア王国が一番危険かもしれません。アイシスさん達の前で言うのは気が引けますが…」


「えっ?どういう事でしょう?」


「ヴェルリア王国では、王位継承権争いが起きてますよね?」


「ご存知なんですか?」


「勿論です。そして第一王子のエルリック殿下ですが…以前私を側室に寄越せと打診して来たのです。あまりにも上から目線で、しかもヴェルリアの国王陛下には無断だったらしく、父は直ぐに断りましたが」


「あの人は…」


「知らなかった…そんな事までしてたのか」


アイシスもフランコ君も初耳だったらしい。

あの人、本当に問題児だな。


「ですので、ヴェルリアの王位継承問題が解決して、エルリック殿下以外との婚約なら考える価値がありますが…いつになるかわかりませんし。それにエルリック殿下が王位を継承した場合は…考えたくもありません」


う~む…結構考えた末の結論なのか…だからといって了承はしないが。


「という訳で!ジュンさん!結婚しましょう!今ならハーレムが付いてくる!」


「だから要りませんて。それにボクは将来エルムバーンの魔王になる身です。グンタークの女王陛下の夫になるわけには…」


「あら?その点は問題じゃありませんよ?お互いが国王になればいいだけですし。夫婦別居にはなりますが。大体、ジュンさんはフレムリーラの魔王シャンゼ様と婚約してるんですよね?」


「え?あ…」


言われてみれば。

どうすんだろ?


「今、クローディアさんが言ってたように夫婦別居でいいらしいよ。ジュンが転移魔法使えるんだから偶に来てくれればいいってさ」


「そうなの?」


それは果たして夫婦と呼べるんだろうか?

現地妻ってやつ?


「まぁ!ジュンさんは転移魔法が使えるんですか?益々問題無いじゃないですか!」


「「あ」」


しまったー…余計な事を…


「問題は無くともメリットもありませんよ。理由も無しに恋愛感情の無い結婚なんてしたくありませんし」


「う~…手強いですね…こんな可愛い子を好きに出来るのに」


何か、どんどん素が出て来てるな。

最初の女王陛下っぷりはどこいった。

そういえばカタリナさんもそうだったな。


「すみませんが、諦めてください。何も世界中探してボクしか適任がいないわけでも無いでしょう」


「そうは思えませんね、ジュンさん以上の相手なんて早々いるとは思えません。現に家臣が持ってくる縁談には碌な相手がいませんし。グンタークの現状を考えると、無理もないんですけど」


「それは過大評価ですよ。家臣の方が持って来た縁談の相手が誰かは知りませんが。ボクより良い相手なんて探せば幾らでも――」


「「「居ません」」」


「あ、ほらぁ!皆さん同じ意見ですよ!」


君ら…今は有り難くない。

ボクに追従しようよ。


「兎に角ですね、ボクにはクローディアさんと結婚するつもりはありません。友人になるくらいなら構いませんが」


「友人…私、そんなに魅力ありませんか?」


「は?」


「これでも自信があったんですよ?それにジュンさんは女好きって聞いてたのに…噂は当てになりませんねぇ」


「女の子が好きなのは間違いありませんが。女好きと呼ばれる程の事をした覚えはありませんよ」


どうして行く先々でそんな事言われるのか。

まぁ同行者の殆どが女性だからだろうけども。


「どうしてもダメですか?」


「お断りします。クローディアさんもボクに恋愛感情は無いんでしょう?国の為に好きでもない相手と結婚するというのは、立場上理解出来ますが」


「うう…クスン」


「な、泣き落としは無駄ですよ」


「あら?結構有効と見ました。婚約して下さいよぅ。泣いちゃいますよ?」


「仮にそれでボクが落ちた場合。ボクの前に嘘泣きが得意な女性が何人来るでしょうね」


「あ、私はジュンさんに妻が何人いても気にしませんよ?何なら全員ハーレムメンバーにしたって構いません」


「ですから…いえ、兎に角諦めてください。治癒魔法使いを派遣する件は前向き検討しますから」


「う~…」


「ねぇ、クローディアさんて女王として結構やり手だって聞いたけど?もっと上手い交渉の仕方があるんじゃない?いや、別に応援するわけじゃないけどさ」


うん、アイの言う通りだと思う。

ただお願いするだけじゃあね。

まぁ、どんな交換条件出されても頷くつもりは無いが。


「う…それがですね…私は幼い頃から恋愛結婚は出来ないと思えって言われて育ったので…私自身それに納得していましたし。初恋もまだなんです。ですから男性の口説き方とかわからないし…」


箱入り娘ってわけか。

まあ、王族だしね。


「でもさ、それなら尚のこと、お兄ちゃんの気持ちも解るんじゃない?国のメリットだけを見て結婚しようなんて言われても嬉しく無いでしょ?クローディアさんも」


「そう、ですね…確かにその通りです。わかりました」


「よかった。わかってもらえましたか」


ナイスだ、アイにユウ。

これ以上、婚約者を増やす気は無いからね。

諦めてもらうしか―――


「まずは私がジュンさんに恋してみせます!それからジュンさんを私に惚れさせてみせます!それなら問題ありませんよね!」


「「「いやいやいや!」」」


どうしよう、どうしたらいいかな。

何とか穏便に諦めてもらわないと…

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