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第173話 村を救おう 9

「しっかし、どうしてこうなるかな…」


「………」


ボクは今、侯爵が率いる五百の兵の前方で、謎の仮面美少女剣士のスタイルになったアイシスと対峙している。

何故、こうなったかというと。

どう時間稼ぎをするかを話し合った結果なのだが…遡る事数時間前…





「というわけで、ダーバ王子達が戻るまで二時間程時間を稼がないといけなくなったわけだけど…何かアイディアのある人は?」


「女王の使者が向かってるって侯爵に教えちゃえば?大人しくならない?」


「それで大人しくなる奴なら、こんな事態になってないと思う」


「そう?女王からの使者だよ?女王の言葉を無視して突っ走る程の度胸がある?あの侯爵に」


「恐らく、侯爵は自分が罰せられる事は無いと、高を括っているのだろう」


「というと?フランコ君」


「この国は内乱で疲弊している。人材も物資も何もかも不足している。そんな中で女王に味方した自分が多少好き勝手にしたところで問題無いと思ってるんだろう。仕事はやってたのなら尚更な」


なるほど。ありそうな話だ。

とはいえ、領内の治安や村の状況を考えるに、領主になってからはちゃんと仕事をしていたのかは疑問だが。


「じゃあ、林檎を山ほどくれてやるとか」


「う~ん…多少の時間稼ぎにはなるだろうけど…それだけじゃ足りないな…」


「それに山ほどの林檎を【フレイヤ】で用意したらお兄ちゃんがまた疲労が溜まっちゃうしね。普段ならともかく今は不味いでしょ?」


「確かに。せっかく疲労から回復したんだしね」


林檎も却下か。

となると…他にあいつが食いつきそうなモノ…


「美少女と美少年を集めたら、あの豚侯爵は食いつくだろうけど…だめだな。犠牲となる子が可哀そうすぎる」


「美女と美少女ならここに沢山いるのにね」


「ウン。ソウダネ。勿論アイシスモ、ソノ一人サー」


「…全然本気で言ってないでしょ、ジュン」


「ジュン様、私は?」


「セリアさんも勿論美少女だよ」


「うん、ならいい」


「セリアと僕とで対応が違う!」


「そんな事ないよ。さ、次の案は何かない?」


「ぐぬぬぬ…!」


最近のアイシスは妙に絡んでくるなあ。

着替え中に乱入はしたけど、もう許してくれたんだし。

…許してくれたよね?


「ん~ユウ参謀。何か作戦は無いかね」


「…参謀…まぁいいけど。そうね、時間を稼ぐか兵を足止め出来ればいいんだよね?」


「そうだね」


「じゃあさ、この街に未曽有の危機が迫ってるってなれば兵は留まるしかないんじゃない?」


「未曽有の危機?」


「例えば魔獣の大群が迫ってるとか。難度Sの超大物の魔獣が近くにいるとか。どこかの国が攻めて来たとか」


「成程。それを信じたら流石に引き籠るだろう。だがあまりやりすぎるとパニックか暴動が起こるぞ」


フランコ君の言う通り、あまり騒ぎになりすぎるとマズい。

それに本物の魔獣を用意するわけにもいかないし軍なんてもっとダメだ。

そこに知恵のある(インテリジェンス)(ソード)【メーティス】が案を出して来た。


『それなら、マスターとジュンはんが街を出た兵の前で派手な戦闘を繰り広げるってのはどないや?』


「え?ボクとアイシスが?」


「僕とジュンが?」


『せや。この中で人外の戦いを繰り広げられるんは二人だけやろ?他の皆も強いけど…派手で思わず足を止めてまう程の戦いが出来そうなんは二人だけや。どや?』


「それならウチだって…」


「私も出来ると思うが…」


『いやいや、アイはんもマスターの祖父ちゃんも確かに強いけど。魔法で派手な戦いが出来んやろ?今回は時間稼ぎが目的やし、玄人好みの戦いは出番やない。見た目でわかりやすい人外の戦いが出来る者が適任なんや』


「でも、いきなり街を出たとこで戦ってるってどういう状況だ?不自然じゃないか?」


『そこはある程度の演技が必要やな~そやなぁ。マスターがこの街を滅ぼしにやって来た謎の仮面剣士でジュンはんは実は仮面剣士を追ってこの国に来てたーとかどうや?』


どっかで聞いたような話だが…気のせいだろうか。


「え~僕が悪役なの?」


『立場が逆やと、両方正体を隠さなあかんやろ?その場合は誰が兵に説明するんや?マスターの仮面は喋れなくなる魔法が付与されとるんやろ?確か』


「う…い、いや…僕が悪役を追ってやって来たー、なら正体を隠さなくても…ねぇ?」


『ん~確かにいけるかもしれんけど…マスターはそこら辺の演技とか誤魔化しとか苦手なんちゃうか?それに勇者アイシスがこの国に来てるのは知られてへんけど、ジュンはんは一応は広まっとるやろ。侯爵が信じてへんだけで。ジュンはんが正体を隠さずにいる方が自然やと思うでぇ』


「むぅぅ…わかったよ、もう…」


納得はしたようだが不満なようだ。

顔にそう書いてある。


「あ~…アイシス?嫌な役をさせる事になるけど…引き受けてもらえる?」


「…いいよ。仕方ないもん」


「ごめんね。何かお詫びはするからさ」


「何かって何?」


「そうだな…たこ焼きを作ってあげる」


「たこ焼き?たこってあのタコ?あれを食べるの?」


「食べれるのか?あれ…」


「私、あれ嫌い…気持ち悪くて…」


「私もこの歳まで生きてタコを食した事は無いですな。食べたいとも思わないですが…」


そうか、勇者パーティーの面々はまだたこ焼きを食べた事が無かったか。

これは是非食べてもらわねばなるまい。


「きっと美味しくて吃驚しますよ。さて、作戦は決まったけど、もう少し詳細を詰めましょうか」




と、いう話があって今、ボクとアイシスは兵の前で対峙してるわけだ。

兵達にはもう説明してある。

アイシスを幾つもの村や街を滅ぼした極悪非道の仮面剣士という設定にしてボクはそれを追って来た事になっている。

これでまだこの国に残っていた一応の理由にもなるわけだ。

多少、不自然な部分もあったとは思うが、そこは騎士団長が上手く合わせてくれた。

最初はボクを見て捕らえろと騒いでいた侯爵も戦いが終わるまで大人しくするよう言い聞かせていた。

これで、あとは兵士を巻き込まないようにせいぜい派手な立ち回りをするだけ…なんだけど


「(ちょっと?アイシスさんや?まさか本気で戦おうとか思ってないよね?)」


「………」


兵士達に聞こえないように小声で聞くけど反応が無い。

だけど、さっきから漏れ出ている闘志。

凄いやる気を感じる…

とにかく、いつまでも睨み合ってるだけじゃダメだ。

戦わないと。


「じゃあ…行くよ!」


「!」


先ずは剣で。

アイシスは勇者の紋章を使いすぎると長時間の戦闘は無理だ。

故に紋章の力はお互いにナシでって…あれえ!?


「あぶっな!」


『(ちょ、ちょっとマスター?何してんのや?)』


「………」


アイシスは一瞬だけ勇者の紋章の力を使い、剣に宿した気を飛ばすあの技。

オーラフラッシュで先制してきた。

なんとか避けれたけど…直撃してたら不味かったぞ。

外れたオーラフラッシュは地面を割いて兵士を何人か吹き飛ばした。

怪我はしてないようだけど…最初っから飛ばし過ぎ…というかやりすぎじゃない?

打ち合わせと違うんですけど?

ていうか、もしかして怒ってるの?何で?


「…」


『(ちょ、ちょっとマスター?作戦わかってるか?おーい)』


【メーティス】が小声で話かけてるがアイシスは反応を示さない。

いや、まぁ仮面のせいで喋れないのはわかってるんだけども。

仕方ない、兵士から距離を取ってアイシスに接近しないと。


アイシスに近づき、剣戟を繰り広げる。

そして兵士達からある程度の距離がとれた所で鍔迫り合いの状態になった。

これで小声なら会話が出来るだろう。


「(ここなら小声で会話すれば、兵士には聞こえないよ。どういうつもりなのアイシス。打ち合わせと違うんだけども?)」


『(せや。紋章の力は使わん予定やったやろ?最初のうちは。一体どうしたんや?)』


ボクと【メーティス】の質問にアイシスが仮面を少しずらして答える。


「(胸が無くて悪かったね…)」


「『はい?』」


「(黙って聞いてれば言いたい放題…胸が無いだの、仮面してても粗暴さがにじみ出てるだの…そりゃ悪役だから悪く言われるのは仕方ないかもしれないけど…胸は関係ない!)」


あ、さっきの兵士達への説明聞こえてた?

で、話かけてきた兵士達があれは女なのか聞いてきたからその辺りの答えに適当な事言ったんだった。

アレが全部聞こえてたわけですか。

で、さっきのオーラフラッシュで吹き飛ばした兵士は会話してた兵士か…なるほど、狙ってたんですね?


「(いや、本心じゃないよ?演技!それにアイシスの可愛らしい胸には夢と希望が詰まってるから!)」


『(ジュンはん、それ火に油やで…)』


「(もーう怒った!懲らしめてやるぅ!)」


あ、本気でやるの?

勇者の紋章を全開じゃない?それ。

時間稼ぎ出来るかな…

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