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第164話 グンターク王国

「ヤーマン王国って遠いね…いまどの辺り?」


「そうですね、半分といったとこですね」


「うわぁ…遠いね…」


アイの言う通り、遠い。

ヤーマン王国は現代地球で言えばカザフスタンとウクライナの中間辺り。

現在はカザフスタンに入った辺りか。

この世界で言えばヴェルリア王国をでて二つの国を横断し三つ目の国、グンターク王国に入ったとこか。


「今はグンターク王国の国内だけど…正直あまり…いや、殆ど何も知らないなぁ。どんな国だっけ?」


「御存知無いんですか?最近までこの国は内乱状態だったんですよ?」


「え?そうだったんですか?」


「ええ。内乱が終結したのは半年前。大分安定して来てはいますが…未だ治安は乱れてます。余り長居しない方がいいでしょうね」


「内乱の原因は何なんです?」


「ありきたりな理由ですよ。王位継承を巡って第一王子と第一王女が争いになったんです。グンターク王国は元々女王が治める国なんですが、それを不満に思った第一王子が女王と父親を謀殺…自分が王位に就いたと発表しましたが、当然第一王女派と対立。内乱に発展しました。結局、王女派が勝利を治め内乱は終結しました」


「流石は私達の情報収集役。詳しいな」


「凄いわねぇ、マルちゃん」


「あんた達には前に説明したでしょうが!」


「私は覚えてる…」


マルレーネさんがダーバ王子一行の情報収集役か。

足の速さを買われての事かな?

斥候役でもありそうだ。

しかし、第一王子と第一王女の争いか…どこかで聞いた話だな。

ヴェルリア王国でも同じような事にならなければいいけど。


「それで、今は第一王女が女王になって治安は安定に向かってるんですか?」


「一応は。新女王のクローディア・ウル・グンタークはなかなかのやり手らしくて、この半年で治安は大分安定しました。ですがそれは主要な街のみで地方の街や村なんかはまだまだ荒れてます。結果、村人が盗賊や山賊になるケースが増えているとか」


「盗賊や山賊…か」


この場合、生きる為にやむなしになったのだろうけど…それでも罪を犯したなら囚われ処刑されるか、奴隷に堕とされる。

治安を安定させるためには女王も苦渋の決断をしなきゃならないだろうな。


とまぁ…どこか他人事のように思っていたのだが。


「ジュン様、村だ」


「村?村か…あまり治安が良くないって話だから素通りしよう」


「いや、それが無理そうなんだ」


「うん?」


セバストに言われて外を見てみる。

なるほど。これは素通りは出来そうにない。


「そこで止まれ!命が惜しくばありったけの食糧と金を置いて行け!」


「おかしな真似はするな!そこかしこから弓で狙ってる!魔法使いだったいるんだからな!」


これはハッタリだろう。

探査魔法を使ったが正面にいる人達以外に馬車を狙える位置に人はいない。

それに彼らの服装や武器からして、この村の農民や狩人だろう。

それも年寄りかまだ子供ばかり。

他の女子供は後方で控えているみたいだ。

みんな酷く痩せてる。


「どうする?ジュン様」


「蹴散らすわけにもいかないでしょ?話をしてくるよ。クリステアとルチーナが一緒に来て。あとは馬車で待機」


「大丈夫?話し合いで何とかなるの?」


「どうするつもり?お兄ちゃん」


「出来るだけ穏便に済ませたい。場合によっちゃエルムバーンの魔王子だって正直に言うよ」


「危険ではありませんか?」


「大丈夫。彼らは元々罪の無い村人だろう。襲われたって無傷で無力化できるしね。じゃ、行くよ、クリステア、ルチーナ」


「「はい」」


メイドと執事であるノエラとセバストを共にするかとも思ったけど、騎士である二人の方が相手が冷静になるかと考えて、クリステアとルチーナに来てもらった。

エルムバーンより近いヤーマンの王子であるダーバ王子に頼むかとも思ったけど…説得や交渉にあまり向いてないように思えたので止めた。

食糧を援助する場合はボク達が出す事になるだろうし、その決定権はボクにあるからボクが交渉する方が話は早いだろう。


「そちらの代表と話がしたい!こちらは争いを望んでいない!穏便に済ませたい!どうか話し合いで解決出来ないだろうか!」


「に、兄ちゃん…あの人争いたく無いって…」


「黙ってろ。話し合いの余地は無い!黙って食糧を出せ!」


子供達のリーダーなのかな、あの子は。

隣の子は妹か?

他の子もあの子の陰に隠れるように不安そうにしてる。


「君達は山賊でも盗賊でも無いだろう?ただの村人に見える。人を襲うのも今回が初めてなんじゃないのか?今引いてくれれば、こちらは何もしないし、通報もしない。食糧は出来るだけあげよう。御金は渡すわけにはいかないが。それより大人達はどうしたんだい?」


「う、うるさい!黙って全部置いてけ!」


うーん。余裕が無くなって視野狭窄に陥ってるのかな。

まともに話を聞いてくれそうにないな。


「如何なされますか、ジュン様」


「一度、魔法で脅せば素直になるんじゃないですか?」


「駄目だ。小さな子供もいるんだ。それに追い詰め過ぎたらかえって暴発しかねない。兎に角、少し落ち着かせよう」


やはりここは食糧を提供するのがいいか?

まずは食べ物で釣って…ていうか大人出て来いよ…子供に相手させてんじゃない。


「わかった。こちらの言う事を信じてもらう為にまずは食糧を渡そう」


魔法の袋から出すと騒がれそうなので一旦馬車に戻って中から持って来たように装う。

そのままでも食べれる林檎を用意した。

例の美味すぎる林檎だけど…飢えている彼らは何を食べても美味いと感じるだろうし問題無いだろう。


「ほら、この林檎は美味いぞ。食べてごらん」


「に、兄ちゃん…果物…この人、林檎くれるって…」


「黙ってろ!おい、お前はとりあえずこれを持って行け」


「う、うん!」


少しは落ち着いたか?

ていうか、周りの老人達でいいから話し合いに応じて欲しい。

いつまで子供に相手させてるんだ。


「貴方達はどうして子供に相手させているんです?お年寄りとはいえ話し合いに応じるくらい出来るでしょう。こちらは貴方達に危害を加えるつもりは無いのです。困った事があるなら相談にも乗りましょう。話し合いに応じて頂きたい」


「うるさい!おれはこの村の村長の孫だ!祖父ちゃんは病で動く事も出来ないんだ!だから、おれが今はこの村の代表だ!」


「なるほど、それで…」


この子はまだ十二歳くらいだろう。

いくら村長の孫だからってこんな子供を矢面に立たせるなんて。


「君、名前は?ボクはジュン・エルムバーン」


「ダンだ…エルムバーン?」


「ダン君。君が代表だと言うのはわかった。困ってる事があるなら言ってくれないか?出来る限り力になるからさ。だから物騒な物は下げて話し合いに応じてくれないか?」


「だ、駄目だ!お前達を信用出来ない!」


「なら、君のお祖父ちゃんの所へ案内してくれないか?病気だと言っていたけどボクなら魔法で治せると思うんだ」


「な、治せる?魔法で?」


「に、兄ちゃん…診てもらおうよ…お祖父ちゃんの病気が治るなら…」


「…わかった。だけど村に入っていいのはお前達三人だけだ。あとの連中はここに居てもらうぞ!」


「わかった。それでいいよ」


この女の子のフォローの御蔭だな。

少しダン君の対応が柔軟になった。

きっとお兄ちゃんが心配でたまらないのだろう。

ずっと不安そうな顔をしてダン君の後ろについている。


「お嬢ちゃん、お名前は?」


「ら、ラン…です…」


「ランちゃんだね?お兄ちゃんに酷い事したりしないから安心して。ほら、これあげる」


「こ、これなあに?」


「中に飴玉が入ってるから、食べてごらん。甘くて美味しいよ」


「う、うん…ふわぁ~甘~い!」


ようやく笑ってくれた。

これで少しは周りの人も警戒を解いてくれればいいのだけど。


「ありがとう、お姉ちゃん」


「お、おね?あ、あのね、ランちゃん。ボクは男だから、お兄ちゃんだから…」


「え?あんた男だったのか!?」


ダン君にまで勘違いを…背も伸びて殆どの人には女性に間違えられる事も無くなっていたのに…


「ま、まぁジュン様…お気になさらず…プッ」


「大丈夫ですよ。ちゃんと男らしくなってきてますから…プッ」


「うん、フォローするならちゃんと最後までするように」


この二人は後でお仕置き決定。

決して八つ当たりではない。


「ここだ。祖母ちゃん!祖父ちゃんは?」


ここがダン君のお祖父ちゃんの家か。

村長の家だけあって他の家よりは大きい。

それにしても此処に来るまで村の中を見ていたけど大人の男性がまるでいない。

どういう事だろう?


「ダン、その方達は?お前、本当に旅人を襲ったのかい?」


「う…そ、それより祖父ちゃんは?」


「今は寝てるよ。それにしても…この人、随分立派な物を着てるけど…それに護衛の騎士さんかい?ダン、あんたまさか、貴族様に手を出したんじゃないだろうね」


「え?き、貴族?」


「大丈夫ですよ、お婆さん。ボク達は何もされていません。それよりもお爺さんの所へ案内していただけますか。病を治せると思うのですが」


よかった、このお婆さんは話が通じそうだ。

最初っからこの人に出て来て欲しかった。


「ほ、本当かい?頼むよ、あの人を助けてやっておくれ」


「ええ。任せてください」


村長さんがいる部屋に案内して貰い、村長さんの容態を見る。

大丈夫だ。治せる。


「あ…体が…楽に…」


「あ、まだ起き上らないでください。病は治りましたが、落ちた体力や弱った体までは治せていません。まだしばらくは安静にしててください」


「あ、貴方は?一体…」


「あんた、病気は治ったのかい?本当に?」


「あ、ああ…さっきまでの苦しさが嘘のように消えたわい」


「や、やったぁ!兄ちゃん、お祖父ちゃんが!」


「うん…よかった…よかった、祖父ちゃん!」


ダン君とランちゃんが泣き出してしまったので、席を外し廊下で待つ。

お婆さんが最初に落ち着いたのか、廊下に出て来た。


「本当に…なんと御礼を言えばよいのか…」


「気にしないで下さい。それより他にも病人や怪我人が居るなら治しますので、動ける人は一ヵ所に集まってもらえませんか。それと村の外の馬車に連れが居るんです。村の中に入る許可を頂きたいのですが」


「お連れの方を村に入れるのは構いません。ですが…主人だけでなく他の者を治療して頂いても…私らにはお支払いする物が何も…」


「対価は必要ありませんよ。では、お願いしますね」


馬車で待つ皆の所へ戻り、馬車を村に入れる。

先ずは…炊き出しの用意かな。


「セバスト、村の人達に何か作ってあげて。そうだな…体が弱ってるから消化しやすい物がいいな」


「了解だ」


「ノエラ、リリー、シャクティはセバストの手伝いをお願い」


「畏まりました」「はいですぅ」「はい」


「ダーバ王子達には近くで狩をして来て頂きたいのですが…よろしいですか?」


「構いませんよ。私達もこの村のために何かしたいと思っていましたし」


「そうね、黙って見てるだけなんて、気分が良くないしね」


「あっちに森がある…」


「……」


「じゃあ早速行きましょ。ほら、ゴードンさんも」


「やれやれ、仕方ないのう」


「アイとユウもダーバ王子達と一緒に行ってくれ。ハティも頼むよ」


「「「は~い」」」


「クリステアとルチーナは怪我人や病人を一ヵ所に集めるのを手伝ってあげて。ボクも手伝う」


「「はい」」


さて、と後は不足してる食糧をどうするか。

狩の成果だけじゃこの村の窮状を何とかする事は出来ないだろうな。

持って来てる食糧を全て配ったらしばらくは持つだろうけど…。

う~ん…仕方ない…【フレイヤ】の出番かなぁ。

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