第157話 ダンジョン攻略 2
「それで、どうするの?」
「どうするとは?」
「どうやって攻略するの?未知のダンジョンに初見で正攻法で挑戦って危険だと思うんだけど」
アイの言うとおり、ゲームじゃないし、セーブポイントなんて無いしね。今回は相手が予想出来てるだけマシだろう。
「そこで、こんな魔法を創ってみました」
対アンデット用に創ったオリジナルの神聖魔法を使用する。これでケリが付けばいいんだけど、そこまで甘くないだろうなぁ。
「ジュン殿、その魔法は?」
「霧のようだが…」
「聖属性の霧です。弱いアンデットならこれだけで浄化出来ますし、浄化しなかった奴も弱体化出来るはずです」
名付けて聖霧。
霧なのでダンジョン内にも広げる事が可能だ。
「火を放つとか、崩落させるとかしないの?」
「しないよ。そんなことしたら調査出来なくなるし」
「調査?」
「この地下墳墓はね。エルムバーン魔王国建国前の代物らしい」
「え?つまり数千年以上前の代物なの?」
「少なくともエルムバーン魔王国建国以来。地下墳墓を造った記録は無いんだってさ」
「それは…歴史的な発見ですな」
「ええ。普通に考えて、権力者の墓でしょうから。何か貴重な物が眠ってるかもしれません」
「お宝ってわけだね!何か燃えて来た!」
「お宝…金銀財宝…」
「燃えてる所悪いけどね、アイシス君、セリア君。この地下墳墓で発見された物の所有権はエルムバーンにあるからね」
「「えー!」」
「いや…当然だろう、二人共。私達は依頼されてここに居るんだし」
「ブーブー!」
「文句を言うな。それに契約したのはアイシス、お前だろう。勇者の遺物を探すのに協力してもらう代わりにジュン殿達の問題にも協力すると決めたのは」
「う!」
「なのにダンジョン内で発見したお宝を寄越せなどとは言えないぞ。ダンジョンの第一発見者でもないしな」
「はい…分かりました…」
納得してもらえたようで何より。
聖霧もだいぶ流せたし、そろそろ行くか。
「行きましょうか。先頭はクリステアとルチーナ。殿はセバストとバルトハルトさん。索敵はメーティスにリリーにハティに期待してるよ」
「はいですぅ」「は~い」『アンデットなら任しときぃ』
確かメーティスはアンデットを感知する能力に長けてるとの事。
今回は非常に期待している。
因みにハティは今回は人型のままだ。
ダンジョン内は人が通るには十分な広さだが、馬よりデカくなったハティが本来の姿で入るには狭い。
「ジュン、やっぱり探査魔法で内部構造は分からないの?」
「うん。全くもって。でも探査出来ない範囲から想定してそこそこ広いはずだよ。地下三階くらいはありそうだ」
探査魔法で現在地が分からないのは辛いな。
マーカーの魔法とレーダーの魔法は正常に作動するからはぐれても大丈夫だとは思うけど。
「ユウ、マッピングを頼んでいいか?」
「うん。任せて」
今から作っておけば後で調査する時にも役立つはず。こんな所で迷子になりたくないし。
「道を曲がる度に壁に出口の方角を書いておこう。それだけでも迷子の防止になるだろう」
「では、それは私が」
「うん。頼んだよ、ノエラ」
とりあえずこんなとこか。
後は臨機応変に行こう。
「じゃ、行こうか。気を付けて行こう」
「「「はい」」」
ダンジョン内は地下墳墓だけあって暗く空気も淀んでいる。余り長いすると体を壊してしまいそうだ。
「トラップとかあるかな?」
「あると思っておいたほうがいいんじゃない?」
ふむ…となると…
「ゴーレムに先行させよう。クリステア、ゴーレムの五メートル後ろを付いて行くようにして」
「了解しました。ジュン様」
「メーティス、今の所アンデットは?」
『この階にはおらんでぇ。あんさんの魔法で大部分は浄化出来たんとちゃうか』
「ハティ、リリー。他の魔獣の気配は?」
「何にも聞こえないですぅ」
「無いよ~」
今の所問題無しか。
なら進もう。
「じゃあ進もう。クリステア」
「はい、行きま…す?」
前方を歩いてた人型ゴーレムがフッと消えた。
そして直ぐに砕ける音が。
これは…
「落とし穴ですね。ご丁寧に剣があります」
「いきなりこれか…」
まだ入口からほんの数メートル。
最初から殺しに来てる。
ゴーレムを先行させて本当によかった。
「先頭はノエラに交代。ゴーレムは壊れる度に出すから必ずゴーレムに先行させよう」
「はい。畏まりました」
二体目のゴーレムを出して進む。
最初の部屋に有ったのは棺だ。
「ここは…この墳墓を作った権力者と一緒に埋葬された人達の棺かな?」
「そのようですな。どの棺も空いているのが気になりますが」
バルトハルトさんの言うように、どの棺も蓋が空いている。
そして中身は…空っぽだ。
「既に誰かが持ち去ったって事?」
「棺の中身をか?入ってるのは死体だろ?」
「死体を持ち去ったと考えるより、アンデット化して棺から出て来たと考えるべきだろう。そして浄化されたのだろうさ」
フランコ君が正解だと思う。
封印前に浄化されたのか、ボクの魔法で浄化されたのかは分からないが。
「でもさ、この数の死体が全部アンデットになるもの?」
「ここの主…エルダーリッチなら死体をアンデットに変えるくらい簡単だ。少なくとも生者を変えるよりな」
「あ、そっか」
「という事は…」
「この墳墓に埋葬された死体は全てアンデットになったと考えるべきだろう」
嫌すぎる…この墳墓にどれだけの人が埋葬されたのかは知らないけど…聖霧で浄化されたと信じたい。
『心配せんでも、ここに埋葬された死体はもう浄化されたんやと思うで?封印される前にな。やからこそ、手駒を増やす為に先ず外に出て魔獣やら動物やらをアンデットに変えたんやろうし』
「おお!なるほど!」
何て素晴らしい!
希望が持てる見解だ!
『まぁ、その代わりに残ってるんは強力なアンデットだけやろなあ』
「おうふっ…」
上げて落とすとか…非道い。
「本当に苦手なんだね」
「神聖魔法が使えるなら、対抗出来るだろうに。恐れる必要が何処にあるんだ?」
「トラウマ?」
「トラウマか…治癒魔法でも精神の傷は治せんからな」
その通りです。
治せたらよかったのに。
「とにかく、進もう。次の部屋は…あ」
ゴーレムに扉を開けさせたら上からギロチンが。
石で出来たゴーレムが綺麗に縦に切れた。
「この墳墓を作った奴は余程大事な物を持って墓に入ったのかね。あの世までは持って行けないだろうに」
「本当にね。それにしても、この墳墓が作られたのが数千年前なら罠も数千年前の罠何でしょ?よくもまぁ、正常に作動するもね」
ユウの言う事は最もだ。
メンテナンスする奴何て…あれ?
もしかして居るの?
メンテナンスする奴が。
「もしかして、エルダーリッチが罠のメンテナンスしてるのかな。数千年前から、ずっと」
「なるほど。有り得ない話じゃないな」
「そうなの?フランコ」
「数千年前の罠が、手入れも無しに正常に作動すると考えるよりは誰かが手入れしていると考える方が合理的だろう。この墳墓の主がエルダーリッチなら可能だ。リッチは生前の知識は引き継いでいるし、新たに知識を得る事も可能だからな」
「でも、それって何の為に?」
「何の為って…そりゃあ墳墓を守る為じゃ無いのか?」
「でも他所から着たエルダーリッチが住み着いてダンジョンになったんでしょ?予想では。他所から来た奴がここを守る為に罠の手入れなんてするかなぁ。数千年も」
「む…それは確かに」
「となると…もしかして墳墓の主がエルダーリッチになったのかな」
「可能性は無いとは言わんが…墓に入る人物はアンデットに成らないように対策するはずだ。エルダーリッチに強制的にアンデット化される場合は無意味だが」
「これ以上は推測の域を出ないか…兎に角、全ての罠は正常に作動すると考えて行こう。ここから先はより慎重に行くよ」
「「「はい」」」
アンデットだけでも勘弁して欲しいのに…凶悪な罠まであるとか。
早く帰りたい。
何処のどいつが作ったのか知らないけど、本当に勘弁して欲しい。
可能なら文句言いたいくらいだ。
どうにかして言えないかな…。




