第156話 ダンジョン攻略 1
「そっか、シンシアさんは無事に成仏出来たんだね」
「ああ。穏やかにな」
「ならよかった。じゃあシンシアさんの遺品はセバストが持っててあげなよ」
「あ、ああ。わかった」
遺品の回収を確認する前に成仏しちゃったか。
よっぽど満足できるデートだったのかな。
やるな、セバスト。
「それでジュン。それは確かにダンジョンなんだな?」
「はい。大きさ、潜んでる魔獣等はわかりませんが」
ダンジョンとは強い力を持った魔獣が遺跡や洞窟に住み着いた事で主となり、魔獣達の巣窟になった物だ。ダンジョンは発見次第、出来るだけ早く主を倒して攻略する事が求められる。
魔獣がどんどん集まっていずれはあふれ出すからだ。
その為の相談を父アスラッドと相談中だ。
「王都からそれほど離れてない位置にそんな物があったとはな」
「あそこは入口が塞がって居たので封印されたのかもしれません。それが地震で入口が開いて中の魔獣が出て来たって事だと思うのですが…」
「ですが?何だ?」
「長い年月封印されてたダンジョンから出て来るという事はアンデット系の魔獣の可能性が大ですので…いや魔獣のアンデットなら平気なのですが…そこはどうも地下墳墓のようですので…」
必ず人のゾンビやら幽霊やらが出て来る筈。
絶対に行きたくない!
「とゆうわけで、ボクは行きません」
「いや、しかしだな。そのダンジョンには危険な存在が居るのは明白。そしてお前以上の適任がいないのは事実だぞ」
「何故です?神聖魔法の使い手は他にもいるでしょう?」
「だが、お前以上の使い手はいない。そして転移魔法で逃げる事が出来るお前なら安全だ。相手が未知である以上、下手に人数を送っても犠牲が増える可能性が増すだけかもしれん。最高戦力を送るのが一番だ」
「最高戦力?エルムバーンの最高戦力はボクじゃないでしょう?」
「何言っとる。とっくにお前だよ」
「え?嘘でしょう?」
「実力も実績も。文句のつけようがない。ついでに言えば装備もな。誰に聞いても同じ事言うんじゃないか?」
言われてみれば…実力はともかく実績と装備はそうかもしれない。
討伐難度Sの魔獣を複数討伐。
中にはアンデットの中でも最強クラスのドラゴンゾンビも討伐。劣化版だったけど。
「いや、しかし…Sクラスの冒険者パーティーなら…」
「我が国には二つのSクラスの冒険者パーティーがある。確かに彼らならお前に、いやお前達に匹敵するかもしれんが…彼らに神聖魔法の使い手はいない。諦めろ」
「諦めろって…ボクが向かうのは確定なんですか?」
「ダンジョンは規模にもよるが冒険者だけに任せるわけにはいかない。国で対処すべき案件だからな。ダメそうなら逃げ帰って構わないが、先ずは行け」
「はぁ…わかりました…」
「お?思ったより聞き分けがいいな」
まぁ…何となくボクが行かされるんだろうな、とは思ってた。
それにまあ…シンシアさん達の敵討ちも受けたしね。
「ただし、準備に時間を下さい。出来れば一週間」
「一週間もか?」
「相手が何者かわかりませんが、対象をゾンビ化する能力を保持してるのは確実です。その対策を用意しなければならないので」
その対策が万全じゃなければ皆ゾンビになってしまうかもしれない。
その対策だけはしないと。
「なるほどな。わかった。その間は見張りを立てるとしよう。結界で塞いであるんだよな?」
「はい。しばらくは持つでしょう」
「うむ。じゃあなるべく早く準備を済ませて向かってくれ」
「はい。出来るなら行きたくないんですよ…?」
本当に、これっぽっちも行きたくない。
兎に角、皆と相談しないと。
アイシス達にも協力を要請しよう。
「というわけで。ゾンビ化に対抗するにはどうしたらいいと思いますか。各自意見を述べてください」
「ん~…まずゾンビ化ってどういう能力で出来るの?魔法?魔獣が持つ特集能力?」
「ぽっくりわからないけど…ボクが知る限り魔法にゾンビに変える魔法なんて無いね」
「ユウはわからないの?」
「二つ程知ってるけど…まずゾンビパウダーていう呪われた魔法薬。でもあれだけ大量に、虫までゾンビ化させてた事を考えたら多分違うね。もう一つは…こっちのほうがヤバいと思うな」
「というと?」
「リッチって知ってる?敵は多分リッチだよ」
「げ。マジで?」
リッチ…人がアンデットになった場合の上位存在。
ある意味であのホセと名乗った爺の目的、不老不死になる方法の一つだが…人格は邪悪に変化しがちだし、骨だけの身体になり、食事や睡眠も取れなくなる。
『ちょい待ちぃ。そのダンジョンは封印されとったんやろ?リッチは確かに強力なアンデットやけど、封印するしかないほど強いわけやないで』
「メーティス、何か知ってるの?」
『わいは以前リッチと戦った事があるけど…ランバとわいで簡単に倒せたで?わいが聖剣でランバが勇者やって事を差し引いても封印する程やとは思えんなぁ』
「じゃあ、敵はリッチじゃない、と?」
『いや、リッチはリッチやろうけど多分その上位存在ちゃうか』
「リッチの上位存在って…まさか」
『エルダーリッチやろなぁ。アレはヤバいでぇ』
エルダーリッチとは高位の魔法を使える者がリッチとなった存在で、生前の魔法はもちろん使えるし使える魔法の種類も増えて魔力も大幅に強化される。
そして、リッチの能力に自分に恐怖して心が折れた者の命を奪う事が出来る『恐怖』という能力がある。
『奴に対して恐怖し、心が折れた瞬間に奴に生殺与奪の権利を与えてまう。やからまず…護心の効果のある装備を用意する必要があるで』
「護心の護符を全員分用意しよう。後は何がいるかな」
『そやなぁ、攻撃はわいのような聖剣か神聖魔法でいけるけど…防具に神聖魔法の『聖護』を付与した物も欲しいなぁ』
『聖護』とはアンデットのような不浄な存在から身を守る神聖魔法だ。
ボクが使えるからわざわざ防具に付与する必要は無さそうだけども?
「ボクが使えるから皆に使うよ?」
『勿論、それもやってもらうけどな。安全対策は厚くしとく方がええに決まっとる。それにダンジョン内ではぐれたりしたらえらいこっちゃやしな』
「それは確かに」
皆にマーカーの魔法はかけた物は持たせてあるのではぐれても位置は特定出来るはずだが、用心に越したことは無い。
『他にも対アンデット用の装備を思いつく限り用意して持たせた方がええなぁ。最低でも聖水は必須やで』
「詳しいね、メーティス」
『ふふん。まぁブランクがあるとはいえ経験は豊富やし、聖剣やしな。アンデットとはよう戦ったもんやで』
「それは心強いね」
その後も相談を続け話を詰め。
一週間かけて対アンデット戦の準備を整え、ダンジョンに赴いた。
参加メンバーは何時ものメンツに勇者パーティーだ。
「さて…行きますか」
「あれ、アンデットがいるの分かってるのに前向きだね、お兄ちゃん」
「ふ…護心の護符は既に付けているし、他にも護心の効果のある下着まで作った。だからイヤな事は早く終わらせよう!」
「あ~…強がりなのね」
「膝は笑ってるね。まぁ強がりが出来るだけマシだね」
「ジュン殿は本当にアンデットが苦手なんだな。意外な弱点だな」
「本当に。何があったの?」
「それは秘密の中の秘密で」
「何でさ~」
前世の事だから説明出来ないだけなんだけどね。
さて、初のダンジョン攻略と行きますか。




