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第155話 幽霊とセバスト 3

セバスト視点です

「いい御話しでしたね!特に魔王子様が女騎士を奪いに行くシーンが最高でした!」


「そうか。確かに熱くなるシーンだったな」


オレとシンシアは歩きながらさっき見た劇「魔王子様と女騎士」の感想を述べあってる。

クリステアが言ってた本の話だよな、あれ。

いや、ルチーナだったか?

確かにジュン様がモデルの話のようだったな。

行動はジュン様っぽくはないが。


「知ってますか?魔王子様シリーズの主人公はジュン様がモデルだって噂」


「ああ、そうらしいな。オレは読んだ事無いんだが…」


「そうなんですか?面白いですよ?魔王子様シリーズ」


確かに面白くて人気らしいが…ジュン様が嫌がってるからなぁ。

未だに作者も見つけられないし。


「主人公がジュン様なら執事のモデルはセバストさんですよ、きっと」


「え?オレ?」


「はい。魔王子様の傍には青年執事が居るんですけど、セバストさんっぽい感じですよ?」


それは知らなかったな。

ん?オレの事もモデルにして書いてるなら作者は身近な人物か?

ジュン様は国民に人気で有名だから広く知られてるがオレはそうじゃないよな?

正しくオレがモデルなら、だが。

一度読んでみるか。


「セバストさん?」


「あ、ああ、すまない。あ~次はどこに行く?どこか行きたい場所はあるか?」


「ええと…あ、もしよかったらですけど…お城に行ってみたいです」


「ん…城か…」


問題無い…か?

幽霊とはいえ害は無いし。

無いよな?


「ダメですか?」


「いや、行くか」


「はい!」


城内を見て周るくらいなら問題無いだろう。

案内も出来るしな。


「じゃあ、案内するから。一人でウロウロすると追い出されるからはぐれるなよ」


「はい!」


さて、先ずはどこから行くか。

一階から順に行くか。


「え~と、ここは練兵場だな。騎士団も利用するし、ジュン様もよく訓練してる」


「ジュン様って噂通り強いんですか?」


「ああ。武闘会の特別戦は見て無かったのか?」


「あ、はい…丁度その時長期の依頼に入ってしまいまして」


「そうか。ジュン様は今やエルムバーンで最強の一角だろうさ。他には無い発想の持ち主でもあるし。色んな事を知ってる。だがたま~に常識を知らなくてやらかす事もあるんだがな」


「あ、知ってます!ヴェルリア王国の王女様に突然求婚したってやつですよね!」


知ってたか。

まぁ、そうだろうな。しばらく国中で噂になったんだし。


「あの噂ってやっぱり真実だったんですか?」


「ああ、まぁな。ただ本当にジュン様は求婚したつもりは無く、挨拶のつもりだったらしい。どうしてそんな勘違いをしたのか知らないが」


「え~?魔王子様でもそんな勘違いするんですねぇ」


「まぁ、ジュン様だって万能ってわけじゃないって事だ。さて次は…」


それから城を順に案内して、最上階の見張り台についた。

仕事中の兵士がいたので邪魔して済まないと謝っておいた。

いや、ほんと、すまん。

仕事中にデート中の男女が来るとか、嫌がらせに近い気がするな。


「いい景色ですね~」


「そうだろ?オレもガキの頃からのお気に入りの場所だ。まぁ兵士の見張り台だから、ガキの頃はここに来ると怒られたんだがな」


「セバストさんて、ずっとお城に住んでるんですか?」


「ああ。うちは代々、エルムバーン魔王家に仕える執事の家系なんだ」


「あ~それでジュン様に仕える事になったんですね。ジュン様が生まれた頃から知ってるんですか?」


「ああ。ジュン様が生まれた時から知ってる。だがジュン様に仕える事を決めたのオレの意思だし、執事の家系だからってだけじゃないぞ」


「え?何か理由があるんですか?」


「ああ。オレがまだ…十一歳。ノエラが九歳の頃か。母親が事故で死んじまってな」


「え?」


「その時、オレもノエラもただ泣くだけの子供で…オレは妹のノエラを気遣ってやる余裕も無かったんだ。兄貴なのにな」


「それは…しょうがないですよ!だって子供にそんな事…」


「オレもそう思うよ。大人でも難しいと思うさ。で、その時まだ二歳のジュン様がな。泣いてるオレとノエラを抱きしめて来たんだ。慰めるように」


「二歳の子供が?ですか?」


「そう、まだたった二歳の子供が、だ。だけど、その暖かさ…何だか親に…親父に抱きしめられてるようでさ。今でも不思議なんだ。二歳の子供の小さな小さな腕に抱きしめられて頭を撫でられただけなのに。その時、オレは…きっとノエラもジュン様に生涯使える事を誓ったのさ」


「優しい人なんですね…ジュン様は」


「ああ。おっと、すまない。つまらない話をしたな」


「いえ!そんな事無いです!聞けてよかったです」


「そうか?さ、次の場所へ行くか。…ん?」


「どうかしました?」


「いや、何でもない」


階段の下に誰かいたような…。

また、ティナ達か?

どうもフォローしてくれてるみたいだが…さっきの話聞かれちまったかな?

とゆうか、そもそもなんでオレはあんな話を…初デートでおかしな事になってんな。


「あ、あ~ここはパーティー会場だな。舞踏会を開いたりもする」


「わ~…凄い…セバストさんはダンス出来るんですか?」


「ああ。一応な。上手いわけじゃないが」


「素敵ですね。私も一度でいいから、こんな所で踊ってみたかったなあ」


「…それは…ん?」


「え?え?」


あれは音楽隊の連中じゃないか。

今日はここを使う予定は無いはずだが…。

演奏を始めやがった。

一体なんだ?ダンスの曲じゃないか。


「シンシアさん、こちらを」


「え?手袋?」


「ノエラ?」


「魔法布製の手袋です。それがあれば手を繋げる事も出来るでしょう」


「あ…」


あー…つまりオレに彼女とダンスをしろ、と。


「さぁ、兄さん。女性をエスコートするのは男性の役目ですよ」


「わかったよ…」


他の誰も踊ってない中、二人だけで踊るのはちょっと恥ずかしいが…


「んんっ。私と一曲踊って頂けますか?お嬢さん」


「は、はい!喜んで!」


ダンスなんて久しぶりだが…ここはオレがリードしなきゃな。


「失敗しても大丈夫だ。誰も笑ったりしないから楽しんで踊ってみな。優雅に踊ろうとか、上手に踊ろうなんてしなくていい」


「はい…夢のようです…」


それから一曲だけじゃなく、二曲三曲と踊り続けた。

何曲踊ったかわからないが、やがて曲の終わりと共に足を止め…いつの間にか集まって来てた他の使用人達から拍手をもらう。ティナ達もいるな。


「えっと…楽しんでもらえたか?」


「はい…ありがとうございます。もう何も思い残す事はありません」


「そうか…あ、泣くなよ…おい?」


シンシアの身体が透けていく。

もしかして成仏するのか?


「あ、おい!まだもう一つの心残り…お前の仲間達の遺品の回収がまだだろ!」


「大丈夫ですよ。セバストさんの主のジュン様が回収に行ってくれたんですから。私は何にも心配していません」


「そりゃ…ジュン様なら間違いないだろうけどよ…」


「でしょう?大丈夫、信じてますから」


「そうか…えっと…じゃあ…げ、元気でな」


「うふふ…私、これから成仏するんですよ?…セバストさんもお元気で…さよなら」


シンシアは消えて…後に残ったのは手袋とマント。

それからマントに刺さった薔薇の花だけ。


「お疲れ様でした、兄さん」


「ああ。あ~その…ありがとうな。フォローしてくれてよ。ティナ達も。助かった」


「いえいえ~ですの」「気にしないでください」「大した事じゃないぜ!」「セバストさんには御世話になってますし」


「音楽隊の連中にも礼を言わなきゃな。行ってくるぜ」


「ええ。…兄さん」


「何だ?」


「私も覚えてますよ。あの時のジュン様の優しさと暖かさ」


「うっ…聞いてたのかよ…」


あの時、階段の下に居たのはノエラか…。

全く…。

出来た妹だ。

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