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第147話 レヴィとノエラ

ーージュンーー


「早速別れ道か」


「それではジュン様。手筈通りに」


「うん。ボク達は右に」


「では私達は左ですね。お気をつけて」


「カイエンもね」


研究所の中は洞窟の中に造ったにしてはしっかりとした建物で、魔法で灯りも点けてあり暗くもない。


「ねぇ、ジュン。探査魔法で誰がどこにいるか分からないの?」


「やってみたけどね。対策が施されてるみたい」


「対策?」


「壁一面に微量な魔力が流されてるのかな?ほら、勇者の遺物を探しに行った時の谷に罹ってた霧。あの時も探査魔法で探れなかったけど、今回も同じ感じ」


「なるほどぉ」


「それじゃ、ガンガン進むしかないか」


「只ね…」


「何?」


「外から探査魔法で調べた時、調べられない空白地帯がやけに広いんだよ」


「広いってどのくらい?」


「そうだなぁ…学校の校舎くらい?」


「それは広すぎだね」


確かに広すぎる。

奴の研究所は過去に二ヵ所見つけた。

その中でも断トツに広い。



「ねぇ、お兄ちゃん」


「ん?何?」


「そんな大きな建物、あいつ一人で作ったのかな?今までのは在る物を利用してって感じだったけど、ここは違うよね」


「確かに。ユウ様の言う通りだな。ここはまだ作られてほんの数年だろう」


「ということは、つまり…」


「奴は単独犯じゃないかもしれない。少なくとも協力者が居るのは間違いなさそうだ」


研究者に協力…資金や設備の提供。見返りは研究成果の提供か?

奴の研究成果ってろくな物無いんだけど…まともな使い道じゃないのは確かだろうなぁ。


「まぁ、奴を捕らえれば判る事だ。手筈通りに行こう。ノエラ、頼んだよ」


「はい。お任せください」


そう答えて姿を消すノエラ。もう向かったみたいだ。

気を付けて、ノエラ。




ーーレヴィーー



「ここは…」


壁を壊して進んで行き、見張りから逃げる事には成功。

廊下に出て騒がしい音がする方へ向かってたら見廻りっぽい魔獣が、見えたから近くの部屋に入ってやり過ごそうとした。

そしたら、その部屋に在ったのは…


「魔獣、だよね。私が知ってるのもいるし…」


そこに在ったのは魔獣が入った…容器?

何かの液体に浸かった魔獣が入った容器が並んでる。

これは多分、あのお爺さんが実験に使う魔獣達かな?

そっか、考えてみれば当たり前か。

魔獣と人を使って新しい魔獣を造ってるなら、素体になる魔獣が要るよね。

あ、ということは…


「これと同じように、何処かに捕まってる人達がいるのかな…」


「いいや、今はおらんぞ。確かに人もわしの研究には必要不可欠じゃが、人族でも魔族でも誘拐なぞすると騒ぎが大きくなって静かに研究できんのでな。人の素体を用意するのが一番大変なんじゃよ」


「ひっ」


誰も居ないと思ってのに、いつの間にか背後にいるし!

ていうか一番見つかっちゃ駄目な相手に見つかっちゃったし!


「いつの間に…」


「転移で移動して来たんじゃよ。侵入者がいるのにノンビリと歩いて移動などしておれん。ここはそれなりに広いのでな。むしろお嬢ちゃんはどうやって此処まで来た?見張りはどうしたんじゃ?」


正直に答えた方がいいかな…。

このお爺さんに優しさとか期待出来そうにないし。


「あの見張りには扉から出たら捕まえろって命令してたんでしょ?だから壁に穴を開けて出るなら、何もしてこないんじゃないかと思って」


「なるほどのぉ。よく思いついたの、お嬢ちゃん。いや、思い付くだけならまだしも、よく実行できたの」


「前回のハルピュイアもどきと戦った経験があるからだよ」


「それでも大した物じゃ。それにわしの魔獣の欠点まで教えてくれるとはな。礼を言うぞ」


「いえいえ、どう致しまして。それじゃ私はこれで…」


「すまんがそうはいかん。侵入者はかなりの手練れじゃ。残念じゃがここは放棄する。お嬢ちゃんには一緒に来て貰うぞ」


「放棄って…それなら何でこの部屋に?私がここに居たのは偶然でしょ?」


「ここの魔獣を解放する。大した強さでは無いが時間稼ぎくらいにはなるじゃろ」


「お爺さんも襲われるんじゃないの?」


「わしは転移で逃げればいいだけじゃ」


「あ、やっぱり襲われるんだ?」


「無論じゃ。仮死状態から目覚めた魔獣はまず腹を満たそうとする。わしやお嬢ちゃんなぞ、餌にしか見えんじゃろうな」


「ふ~ん。解放ってどうやるの?」


「容器を壊すだけで…お嬢ちゃん、おかしな真似は…」


あ、感付かれたかな?

でも、やっちゃう!


「ごめんね、お爺さん!」


魔獣が入った容器を魔法で壊しまくる!

邪魔されないように、お爺さんも狙って。


「くっ!優しくしてやればつけ上がりおって!」


「ごめんね!バイバイ!」


魔獣が目覚めて襲ってくる前に部屋を出なきゃ!


「て、うわぁ!」


部屋を出た途端、爆発が!

何?お爺さんがやったの?


「あまり舐めないで貰いたいの。この程度の魔獣に手こずると思うたか?」


そういえば、このお爺さんは神獣フェニックスを捕まえてた人だった。

やっぱり逃げるしかない。

でも…


「これ以上、手間を掛けさせるなら足の一本くらいは覚悟してもらうぞ。さぁ、大人しく一緒に来て貰うぞ」


『レヴィ、三秒後に伏せなさい。いいですね?』


「え?」


ヒーノ?近くに居るの?


『静かに声を出さないで。3…2…』


「どうした?何を…」


『1…0!』


言われたように伏せる。

その瞬間に


「ぬおお!?」


お爺さん目掛けて特大の火球が飛んでいって命中した。

これは…


『お待たせしましたね、レヴィ。迎えに来ましたよ』


「ヒーノ!」


ヒーノが来たって事はやっぱりジュン様が来てくれたんだ!

あれ?でもヒーノしか居ない?


「今のは驚いたぞ。余り年寄りを驚かせんでくれ」


「て、嘘!?無傷なの!?」


『今のは殆ど虚仮威しに過ぎませんから。本命は次です』


次?まだ何かあるの?


「それにしても、まさかお主が自分から戻って来るとはの。しかし、今ここに居るということは村に居たのは偽物…うおお!」


「おや?躱されましたか」


「え?いつの間に?」


何も無いとこからメイドさんが出て来た!

この人は確かジュン様の…


「レヴィさん、お怪我はありませんか?私はノエラともうします。ジュン様の命により、お迎えに参りました」


やっぱりジュン様のメイドさんだ!

侵入者はやっぱりジュン様なんだ!


「お主、見た事がある顔じゃの…それにジュン様じゃと?あの時の奴らじゃな?全く…嫌なタイミングで来てくれるのぉ」


「覚えていましたか。お年寄りにしては良い記憶力ですね。それに勘もよろしいようで」


「ふん!これでも修羅場は潜っておるんでな。それにせっかく姿を消して奇襲を掛けるなら最後まで殺気を消さんか」


「殺気が漏れてましたか。私もまだ未熟ですね。では、直接対決と行きましょう。ルーとクーには悪いですが、貴方は私が殺します。御覚悟を」


「わしを殺す?ふんっ、舐められたもんじゃな」


メイドさんが戦えるのかな…いや、ジュン様が命令してここに居るって事は戦えるんだろうけど。


「だ、大丈夫かな、ヒーノ」


『少なくとも今の私達よりは強いです。任せるしかないでしょう。それよりも、巻き込まれないように少し離れておきましょう。また転移で捕まえに来る事も警戒して下さい』


「う、うん」


が、頑張って!ノエラさん!

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