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第142話 レヴィと魔王子様

『体の調子はどうです?レヴィ』


「うん。もう大丈夫」


追手を何とか倒してから三日目の朝。

ようやくヒーノとの合体で痛めてた体が治った。

ほんの数秒でこんなになるなんて、確かにおいそれと使えない。


「よっ!天才!もう体は大丈夫なのか?」


「あ、うん。でも天才はやめてよ~」


「ハハハ!照れるな照れるな!じゃあな!」


ハルピュイアもどきを倒してからというもの。

家を出ればこんな感じだった。

ヒーノがいたから倒せたんだし、殆どヒーノの御かげなんだけどな…


『いいのではないですか?貴女が倒したのは事実ですし。体を痛めた代償だと思えば』


「う~…でもこれからもずっとこんなんじゃ…大した実力も持ってないのに過度な期待をされても困るし」


『貴女は素敵に無敵なのでは?』


「ヒーノ…結構意地悪だね…」


レヴィのテーマは封印しよう…。

今日は久しぶりの狩。

前は追手と遭遇して結局できなかったから一週間ぶりかな?


『ところでレヴィ、体の調子はどうですか?』


「え?問題無いよ?さっきも言ったでしょ?」


『いえ、そうではなく。以前より調子が良くなっていたりはしませんか?』


「ん~?言われてみれば確かに?」


『私と合体した影響です。合体は潜在能力を引き出し能力を上げる技。無理やり引き出された事で貴女の基礎能力が僅かですが上昇したのです』


「へ~悪い事ばかりじゃないって事だね」


身体能力だけじゃなくて魔力も上がってるみたい。

ちょっとだけど。


それから更に三日。

なんだかまた村が騒がしい気がする。


「あ、レヴィ!あんたも来なさい!」


「あ、ハンナさん。どうしたの?随分おめかしして」


隣の家のお姉さん、ハンナさんが化粧までしておめかししてる。

こんな田舎の村でそんな事する機会なんて無いはずなのに。


「すっごいいい男が来たのよ!冒険者だって言ってるけど、あれはどこかいいとこの御曹司よ!だってメイドや執事、護衛の騎士を連れてる冒険者なんていないもの!見るだけでも目の保養になるわよ!」


なるほど~。

ハンナさん、いつもいい男を捕まえて玉の輿をって言ってたもんね。

でも、それで村全体が騒ぎになるもの?


「とにかく、今、村長の家にいるらしいから!あんたもちょっとはおめかししておいで!」


「う、うん」


おめかしって言われてもなぁ…。

ドレスなんて持ってないし、洗濯したての服くらいしか…。


『行くのですか?』


「うん。まあどんな人が来たのか興味はあるし」


村長さんの家に行くと凄い人だかりが出来てる。

女の人だけじゃなく、男の人もいる。

殆ど村の人全員来てるみたい。


「あ、来たのねレヴィ。な~に、そのまま来ちゃったの?」


「うん。どうせ綺麗な服なんて持ってないし…でも凄いね。男の人は何で集まってるの?」


「目的は同じよ。護衛の騎士やメイドさんが美人揃いなのよ。やっぱりどこかのお金持ちのボンボンよ。チャンスだわ!」


そんなに美人を連れてるなら、今更こんな田舎の村で女の人を見染めたりしないんじゃないかな。

ハンナさんが真剣過ぎて怖いから言わないけど。


「あ、出て来たわよ!ほら、あの人!女みたいに綺麗な顔した黒髪の!」


村長さんの家から御供を伴って出て来た、あの人は…。

見覚えがあるけど、でもまさか…


「何だか凄い人だかりだな…」


「皆、ジュン様を見に来たんですよ」


「ボクを?何で」


「そりゃあねぇ…」


「ま、お兄ちゃんだけじゃなく私達も見られてるのよ。美男美女揃いだし」


「僕は?僕も入ってる?美女に」


「うん。私も入ってる」


ジュン様?今ジュン様って言った?

じゃあ、やっぱり…。


「ジュン様、この後はどうするんだ?」


「村の人達に聞き込みをしよう。幸い集まってくれてるみたいだし。皆で手分けして聞き込みを開始して。ボクは魔獣を倒したって言うレヴィって子に話を聞いてみるよ」


「了解だ」


「畏まりました」


あの執事さんとメイドさんも見覚えが…。

やっぱり…やっぱりあの人は…。


『レヴィ、貴女に用があるみたいですよ。レヴィ?』


「ちょっと、レヴィ。貴女と話があるみたいよ!レヴィ?どうしたの?」


「ジュ…ジュ、ジュ…ジュン様ぁぁぁ!?」


間違いない!

背も伸びて髪も少し長くなってるけど、あの優しい眼、綺麗な顔!

忘れた事なんて無い!


「ちょっと、レヴィ?あの人を知ってるの?」


『知り合いなのですか?レヴィ」


「うん!あの人は私の病気を治してくれた人だよ!」


「貴女の病気を治したって…それってもしかして…エルムバーンの魔王子様!?」


「嘘!」「あの人が?」「確かに噂通りの美形!」


どうしよう、もう一度会いたいと思ってたけど…。

まさかこんな急に…。


「うん?ジュンを知ってる人がいたの?」


「お兄ちゃんの知り合い?」


「いや…ここには初めて来たんだし…」


「お忍びの意味がなくなっちゃったね」


「仕方ない。聞き込みのついでにお忍びだって伝えて。無駄だろうけど、何も言わないよりはマシだろう。じゃ、手分けして聞き込み開始で」


「「「はっ」」」


ジュン様とお付きの人達が別れて、村の皆に聞き込みを始めてる。

ジュン様は…真っ直ぐこっちに来る!?


「ど、どどど、どうしよう!どうしたらいいのかな!」


「わ、私に聞かれてもわかんないわよ。でもチャンスよ、レヴィ!」


『落ち着きなさい、レヴィ。ただ話をするだけですよ』


「でもでも!これいつもの狩に行く時の服だし…ハンナさん!服交換して!」


「え!ここで?」


「お願い!」


「落ち着きなさい!あ、ちょっと脱がさないで!」


「あ~、えっと~お取込み中の所、申し訳ありませんが…ちょっと御話しよろしいですか?」


「「あ」」


しまったぁ!もたついてる間に!


『いえ、もたついて無くてもこの場で着替えるのは無理があるでしょう』


なんか心の声にツッコミ入れられた気がするけど!

今は置いといて!


「もう!レヴィのバカ!」


「だってぇ~!」


「あ~いや…お気になさらず。えっと、レヴィさん?で、よろしかったですか?」


「は、はひ!」


「初めまして、冒険者のジュンといいます。ちょっとお聞きしたい事があるので、二人になれる場所はありますか?」


「ふ!二人ですか!?」


「はい。ああ、その胸の鳥は大丈夫ですよ。その鳥の事もお聞きしたいので」


「あ…」


『…』


ジッと見られてる…。

ヒーノが普通の鳥じゃないってバレてるのかな…。


「村長さんからレヴィさんが優秀な魔法使いで幻獣のヒノトリを使役してると聞いてます。ですので連れたままでかまいませんよ」


「あ、はい、ありがとうございます」


そっか、村長さんから…。

もう村でヒーノの事知らない人いないしね。


「それで、よろしいですか?何か用事があるのでしたら、また後で構いませんが」


「あ、いえ!大丈夫です!えっと、じゃあ私の部屋で!」


私の家にジュン様を案内する途中、畑仕事をしてたお父さんとお母さんにジュン様が来た事を伝えると、二人共ジュン様の事をちゃんと覚えてたみたいで


「ジュ!ジュン様が!?」「本当だわ、あの人はジュン様よ!」


と、まあ、大体私と同じような反応だった。

そりゃ、いきなり自分の家に外国の魔王子様が来たら驚くよね。

私もまだドキドキしてるし。


「ど、どうぞ!ここが私の部屋でしゅ!」


ああ、ドキドキしすぎて噛んじゃった。

てゆうか、初めて男の人を自分の部屋に入れちゃった!

どうしよう、なんか変じゃないかな!


「あの、そんなに緊張しないでください。話をしたいだけですから」


「は、はい…」


『深呼吸でもして落ち着きなさい、レヴィ。彼から敵意は感じませんから、心配要りませんよ』


そうだよね、ジュン様は優しい人だもんね。

スーハー、スーハー。よし!


「あ、あの!御話しとはなんでしょうか!」


「ええと、先ずはですね。レヴィさんはボクの事を知っていたようですが、どこかでお会いしましたか?すみませんが、ボクには覚えが無くて」


「あ、はい。もう七年も前の事ですし、一度会っただけなので無理もないと思います。私はジュン様に病気を治してもらいにエルムバーンまで行った事があるんです。お父さんとお母さん、それから村で病気や怪我をしてた人達とその家族で一緒に。その時に甘いお菓子も頂きました」


「あ、あ~!思い出した。あの時の…すごく痩せてた女の子!ご両親には泣きながら礼を言われて…思い出しました」


「あ、はい!そうです!改めて、ありがとうございました!御かげで今は元気で暮らしています!」


「いえ、どういたしまして。それで次の質問ですが、レヴィさんが倒したという魔獣。どんな魔獣だったか詳しく教えてもらえますか」


「はい、えっと…鳥の体に人の顔をしたハルピュイアていう魔獣らしいです」


「ふむ…ハルピュイアの討伐依頼がこの村から出ていたという話は聞いています。ですが、その魔獣は本当にハルピュイアでしたか?」


「え?」


「何処か不自然な点はありませんでしたか?通常の魔獣とは違うような。動きがおかしいとか、血が殆ど出なかった、とか」


「え…」


どうしてその事を知ってるの?

あの魔獣が造られた魔獣だとは誰にも言ってないのに…


『レヴィ、話して構いません。警戒は必要ですが、何故彼がそれを知ってるのか。興味が…いえ、知る必要があります』


「う、うん」


「……」


「えっと、はい。確かに動きは単調でしたし、血もあまり出ていませんでした。それから、これはブランタさん…街の自警団のリーダーをやってる人が言ってたんですけど、ハルピュイアはもっと獣に近い顔してるけど、あれは人そのものの顔に見えるって言ってました」


「なるほど。では次の質問です。その胸の鳥は本当に幻獣ヒノトリですか?」


「え?ど、どうしてですか?」


「その子、先ほどから魔法を使ってますね?察するに精神魔法で会話をしてるようですが、本物のヒノトリは精神魔法で会話など出来ませんし」


「そ、そうなの?ヒーノ?」


『いえ…どうでしょう。わからないというのが本音です』


「誤解が無いよう言っておきますが、ボクはその子が何であれ貴女から取り上げる気はありませんよ。もの凄く危険な存在だと言うなら話は別ですが、見る限りそうではなさそうですから」


『…レヴィ、ヒノトリではないという事は認めて構いません。ですが私がフェニックスである事は言わないでください。少なくとも、今はまだ』


「うん。えっと…この子は確かにヒノトリじゃありません。でも本当の種族が何かは聞かないでください。事情があって…決して危険な存在じゃありませんから」


「そうですか…仕方ないですね。それじゃ最後の質問です。この男を知りませんか?」


ジュン様が取り出したのは一枚の似顔絵。

誰だろう?知らないお爺さんだけど。


「私は知りません。見た事のない人です」


「そうですか…その子…ヒーノって名前なのかな?ヒーノも知りませんか?」


「え?」


『……』


どうしてヒーノに?

でもヒーノの様子もおかしい。

どうかしたの?


「ヒーノ?」


『似ています。私を捕まえていた男に。髪の色や髪型等は違うのですが…何となく眼が。あ、これはまだ言わないでください』


「えっと…し、知らないそうです」


「そう、ですか…」


「えっと…その人が何か?」


「この男はエルムバーンで重罪を犯して逃亡中の国際指名手配犯です。人族と魔族を大勢殺害し、人族と魔族を魔獣と合成する。最悪の実験に手を出した男です。この国でも指名手配するよう連絡が行ってるはずです。数年前に」


『なるほど…納得です。あの男で間違いないでしょうね。髪の色や髪型くらいどうとでも変えれますし。顔だってその気になれば変えれますからね』


「そんな…」


まさか、そこまでヤバい人だったなんて…。

どうしよう、ジュン様に全て話して協力した方がいいんじゃ…。


『レヴィ、貴女の考えてる事はわかります。ですがまだ話すのは待ってください。お願いします』


「え…でも…」


「…何か言いたい事があるけど、事情があって言えない、といったとこですか?」


「え…あ、はい、そうです…どうしてわかっちゃうんですか?ヒーノが精神魔法を使って会話してるのもわかっちゃったし…」


「これでも教師…あ、いや…まぁ色々経験してきましたし、相談も沢山受けましたから。それじゃあ、そうですね、明日また来ますから、続きはまた明日という事で。これからボク達はここから更に南で新種の魔獣が出たという噂を調べに行きますので」


「あ、はい。わかりました」


「それじゃ、今日はこれで。ありがとうございました、レヴィさん」


「いえ、とんでもないです。あ、すみません、御茶も出さずに…」


「いえいえ、お気になさらず。あ、ボク達は今回は冒険者として来てますので。エルムバーンの魔王子が来たとは広めないで下さい。もう遅いとはおもいますが」


「あ、はい。すみません、私のせいで…」


「いいえ、建前に過ぎませんから。それでは」


話を終えてジュン様は出ていった。

途中、お父さんとお母さんに捕まって何か話をしてたけど多分、魔獣の事を聞いてるんだと思う。


『レヴィ、今日はこのまま部屋に居てもらえませんか。話がしたいのですが』


「うん。いいよ」


私も話がしたいと思ってたし、しなきゃダメでしょ。

ヒーノを追ってるのがとんでもなく危険な相手だってわかったのだし。




――ジュン――



「アイシス、君達に頼みがあるんだけど」


「ん?何?」


「ボク達が新種の魔獣が出たって噂の調査に行ってる間、ここに残ってあのレヴィって子を守ってくれないかな」


「いいけど、どうして?」


「多分、あの子とあの子と一緒にいる鳥。ボク達が追ってる男と関わってる。どう関わってるのかわからないけど、狙われてるんだと思う」


「そっか。わかったよ、僕達に任せて。皆もいいよね?」


「任されましたぞ、ジュン殿」


「異存はない」


「うん。御土産はよろしく」


「いやぁ…御土産は難しいんじゃないかな…」


勇者パーティーがいればあの子も、この村も大丈夫だろう。

安心して離れられるというものだ。

最後はレヴィ視点から主人公視点に変わってます。

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