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第141話 レヴィと追手

「い~くぞいく~ぞ~!無敵に素敵なレヴィさんが行くぞ~♪」


『…何なのです?その妙な歌は…』


ヒーノの事をお父さんとお母さんに話してからもう三日。

意外な程あっさりヒーノの事は受け入れてもらえた。

勿論、事前に相談して決めたように神獣フェニックスの雛ではなく幻獣ヒノトリの雛として紹介した。

村の皆、全員には話してないけど、村長さんと自警団のリーダーであるブランタさんには話してある。

召喚契約してあるなら、と許可を貰えた。


「レヴィのテーマだよ!作詞作曲、私!」


『貴女のセンスの無さはネーミングだけでは無かったのですね』


「ひどい!」


この三日でヒーノは自力で飛べるくらいまで成長してる。

小鳥くらいの大きさまですぐに成長しちゃった。

神獣って皆、こうなのかな。


「ねぇ、随分大きくなるのが早い気がするんだけど、神獣って皆そうなの?」


『他の神獣の事は別に詳しくはないのですが、恐らくはそれほど早くありません。他の魔獣や動物と大きくは違わないでしょう』


「貴女は特別って事?」


『私の種族は、そうかもしれませんね。ただ以前にも言いましたが、本来なら卵の状態で転生する事は無いのです。今よりもう少し大きく力もある状態で転生します。それを考えると、むしろこの成長は遅いと言えるでしょう』


「これで遅いんだ…」


やっぱり神獣って規格外なんだな~。

そんな神獣を捕らえて傷を負わせた人間って何者なんだろう。


『それで、今日も森で狩ですか?』


「うん。ヒーノが手伝ってくれるおかげで最近の狩は好調だしね」


ヒーノはまだ自力で戦える程の力は無い。

だけど空は飛べるし、他の動物の気配に敏感で獲物を見つけるのがとても早い。

でも出来るだけ人目には付きたくはないらしくて、普段は私の胸元に入って顔だけ外に出してる。

ちょっとくすぐったい。


「あと、野草とか木の実とかもあれば採ってくよ」


『わかりました』


ヒーノの手伝いもあって今日の狩も順調。

今日も食卓に並ぶ食事は豪勢になった。


「最近のレヴィは凄いな」


「本当。獲物を毎日持って帰ってくれて、助かるわ」


「えへへ~」


ヒーノの助けもあってこそだけど、褒められるってやっぱりいいな~。

食事も終わって部屋に戻る。

お父さんとお母さんは朝早くから畑仕事があるからもう寝てるはず。


「今日も追手は来なかったね。案外このまま来ないままかも」


『だといいのですが。希望的観測はやめておきましょう。あの人族は普通ではありませんし」


「そりゃあね。神獣を捕まえちゃうくらいだもんね。普通の人族には出来ないよね」


『いえ、確かに人族としては強大な力を有しているようでしたが、まともにやり合えば負ける事は無かったでしょう。私が捕まったのは不意を突かれ、私を捕縛するのに特化した魔法や魔法道具を複数使われた為です』


「じゃあ何が普通じゃないの?」


『私を捕まえようとする、その執念。そしてその根源である人格です。己の利益の為なら他人など踏み潰したアリ程度にしか思ってないような、そんな男でした』


「うあ…会いたくない」


『私もですよ。二度と会いたくないですね』


だろうね。

自分の体をいじくり回した相手なんて。


『ところでレヴィ。食事を頂けますか』


「あ、うん」


ヒーノの食事は私の魔法だ。

小さな火の玉を出してヒーノが口から吸いこむ。


「ねぇ、それって美味しいの?」


『そうですね。貴女の魔力の質はそれなりにいいようです。そこそこ美味ですよ』


「それにしても、火を食べるんだね。もっとこう別の方法で魔力を渡すんだと思ってた」


『私に手を触れて魔力を送るだけでもいいのですが、こうした方がお腹が膨れるんですよ。何となくですが』


「そうなんだ?」


まぁ本人がそう言ってるんだから、いいか。

火の魔法を食べれるとか、流石は神獣だね。


翌日。

朝食を済ませて今日も狩りに行こうと家を出たら、何だか騒がしい。

何かあったのかな?


「あ、ブランタさん。おはよう。何かあったの?」


「ああ、レヴィ。お前も今日は家から出るな」


「え?どうして?」


「アレだ」


ブランタさんが指差す方向。

村の外れ、外周にそって飛ぶ大きな鳥がいる。

ん~?鳥にしては何か変…


「何あれ。顔が…」


「ああ。人の顔してる。魔獣だな」


「人面鳥…ハルピュイアって奴か?」


「マジかよ…」


「討伐難度Cの魔獣じゃなかったか?」


自警団の人達の会話の内容からするとあれば魔獣ハルピュイアっていう人面鳥らしい。

討伐難度C…このあたりじゃ滅多にいない大物だ。

自警団総出で何とかなるかどうか…。


「ブランタさん、どうするの?」


「どういうわけか、あいつは村の中に入って来ない。様子を見る。どこかに行ってくれればそれでいいしな。だが妙な感じだ」


「え?何が?」


「あいつは本当にハルピュイアなのか?ハルピュイアはもっとこう…獣に近い顔だったはずだ。だがあいつの顔は人そのものといった感じで…とにかく、お前は家に戻れ。お前の家族にも伝えろよ」


「う、うん」


家に戻る途中、畑仕事をしてるお父さんとお母さんに魔獣が来てる事を伝えて家に戻る。

何事も無ければいいんだけど…。


『レヴィ、あれは追手です』


「え?あれが?」


追手って…魔獣が?

てっきり人を使って捜してると思ってたけど…。


「あれは召喚獣って事?」


『いえ…使役してるという点では変わりませんが。あの魔獣はあの男によって造られた魔獣です』


「造られた?人が人工的に魔獣を作ったって言うの?」


『間違いありません。私が捕らわれていた場所にはああいう歪な姿をした魔獣が多数存在しました』


「そんな…」


そんなのなんだか酷い。

私だって動物を狩って食べるけど…それとは全くの別物だもの。


「どうしよう?」


『幸い、まだ私の事に気が付いてはいない様子。恐らくはあの森で私の匂いか何かを感知してこの周辺を探っているのでしょう』


「今は大丈夫なの?」


『その辺りは対策済みです。貴女にずっとくっついてるから貴女の匂いの方が強いでしょうし』


「ちょっと…仮にも乙女に向かって匂いが強いとか…」


『臭いと言ってるわけではありません。気にしないでください』


「気にするよ!…とにかく、このまま隠れておくって事でいいの?」


『はい。戦闘になった場合、今の私では勝てないでしょう』


「私も戦うよ?」


『私と貴女が力を合わせても…いえ、方法が無いわけではありませんが…』


「あるの?勝つ方法」


『かなり危険な方法です。おいそれと試す訳にもいかないので本当に戦闘は避けられないという時にのみにするべきです。そもそも貴女の戦闘力が私には今一つ計れませんし。不安要素が多すぎます』


「う、うん」


それから約一時間。

魔獣は何処かへ飛んで行ったと自警団の人が報せに来た。

とりあえず助かったらしい。


「ふぅ~ドキドキしたねぇ」


『すみません…やはり私はここに居るべきでは…』


「だ~めだよ?出て行こうなんて考えちゃ」


『しかし…』


「せめてあれくらいの魔獣が倒せるくらいにならないとダメって事でしょ?それまではここにいなよ、ね?」


『……はい』


それから村では話し合いが行われて、念の為近くの街の冒険者ギルドに情報を流し、ハルピュイアと思しき魔獣の討伐依頼を出したらしい。


そしてそれから用心を重ねて三日間。

狩りにも行かず村の中で過ごした。

そして四日目に狩りに出たら…


「出会ってしまった…」


『最悪ですね…私とした事が接近に気が付かないなんて…』


四日前に村の周りにでたハルピュイアもどきが突然、空から降りて来た。

今、私達は森の中。周りに大人達は誰もいない。

魔獣は私達のほんの数メートル離れたところにいて睨んで来る。


「どうしてヒーノが気付けなかったの?」


『恐らく、私のように何らかの対策を取っているのかと…推測しか出来ませんが、今はそれが問題なのではありません』


「うん…戦うしかない、よね…これ」


ヒーノと相談中に、私に向かって突進してくるハルピュイアもどき。

足の鉤爪で軽く木をえぐってる。


「何か私を狙ってない!?」


『アレは私を捕らえに来た追手です。まずは邪魔者の貴女を始末するつもりなのでしょう』


「うわぁ!そりゃそっか!」


考えてみれば当然だった。

でも、それなら…


「私が囮になればヒーノは逃げれるかもしれないね」


『は?何を言っているのです?』


「だからさ、私が囮になってる間に…」


『そうではありません!貴女、自分が何を言ってるかわかっているのですか!』


「わかってるよ。危険だよね。死ぬかもしれない。でも、このままじゃどうにもならない。なら…」


『なら、私が囮になります。貴女は村に戻って助けを…』


「それはダメ。そんな事したらヒーノが捕まっちゃう。そしたら飛んで逃げる魔獣を捕まえる術が私達には無いもの」


『……』


「つまり一番いいのはあいつをやっつけちゃう事なんだけど…勝てると思う?」


『やるしかないようですね…私の指示に従ってください』


「うん!」


またハルピュイアもどきが突進してくる。

私より大きいしスピードもあるしパワーもある見たいだけど、気を付けてさえいれば避けれなくはない感じ。


『奴とは距離を保ち続けてください!命中率は低くてもいいから魔法を放ち続けて!』


私は避けながらだから上手く当てれないけど…ヒーノは的確に当ててる。

避けられた火球も軌道修正して当てる事が出来るみたい。

流石フェニックス。


「凄いじゃない、ヒーノ!」


『いえ…コントロールは出来ても威力が低い…これで致命傷になるまで何発当てればいいのか…』


確かに、もうかなりの回数当ててるはずなのにハルピュイアもどきはピンピンしてる。

それにしても痛みくらい感じてるはずなのに叫び声一つ上げない。

何だか気味が悪い。

本当に生物なのかな、あれ。


『妙です。傷は受けているのに出血が少ない。呼吸も変わってない。というより呼吸をしていない?』


「あ、やっぱり?何か変だよね」


『はい。それに先ほどから単純な攻撃ばかり…もしかしたらアレは魔獣というよりゴーレムに近い存在なのかもしれません』


「どういう事?」


『つまり、アレは極単純な行動しかとれない。簡単な命令しか聞けない存在なのかもしれません。自分で考える力を持っていないのではないか、という事です』


「つまり?」


『勝てる、という事です。以前私が言った危険な方法というのを覚えていますか?』


「あ、うん。詳しくは教えてもらってないけど…うわっとぉ!」


突進を一度避ければ少し時間をおいてまた突進してくる。

それの繰り返しなので流石に慣れてきた。


『今から説明します。簡単に言うと合体です』


「はい?どゆこと?」


全然簡単じゃない。

何、合体って。


『私は肉体を持ってはいますが、半分精霊のような存在なのです。精霊には物や人の体に宿って力を与える事が出来る存在もいます。私も同じような事が出来るのです』


「凄いじゃない!何で今までやらなかったの?」


『それは…来ます!』


「うわわ!」


また突進して来たハルピュイアもどきを避ける。

何だか全然疲れた様子も無いし、本当にゴーレムなのかも。


『今までやらなかったのは言った通り危険だからです。精霊のそれは憑依とも言う、一時的に肉体や物に宿るだけですが私のそれは合体。あるいは融合とも言うべきもの。長時間合体すると…』


「すると?」


『私と貴女は完全に一つになります。元の別々の存在には戻れません。そうなる前に合体は解除しますが…時間内に倒せなければ敗北です』


「時間内って…具体的にどれくらい?」


『貴女次第なのですが…恐らくは三十秒ほど』


「短かっ。私次第って言うのは?」


『合体していられる時間は貴女が如何に意識を保っていられるか、です。貴女が完全に意識を失った瞬間。私と貴女の存在が一気に融合し始めます』


「うう~ん。解除したら敗北確定なの?」


『私と合体する事で、貴女が持つ肉体能力・魔力等を限界以上に引き出し、更に私の力を上乗せするのです。当然反動が来ます。数日はまともに動けないでしょう。それでもやりますか?』


「やるしかないもんね。やるよ!」


『わかりました。次の突進を避けたら作戦開始です』


「うん!」


突進を避け、距離を取る。

そしてヒーノが私に向かって飛んで来る。


『目をつむり私を受け入れる気持ちでいてください!』


「う、うん!おいでヒーノ!」


私にヒーノがぶつかったと思った瞬間。

力の波が私の中で駆け巡ってる感覚。

凄い、これなら…


『いけます。レヴィ、相手の突進に合わせて魔法を!全力で!』


「うん!」


ハルピュイアもどきが突進に合わせて火球を放つ。

すると…


「きゃあ!」


ゴウッ 

と、今までとは段違いの威力の火球がハルピュイアもどきの上半身を吹き飛ばした。

後に残ったのは足と胴体の一部だけだ。


「や、やった?」


『ええ。やりました』


ハルピュイアもどきを倒したのを確認したらヒーノは直ぐに合体を解除する。

その途端にもの凄い疲労感が襲って来て立っていられなくなる。


「うわあ…ほんの数秒合体してただけなのに、これかぁ…」


『大丈夫ですか?レヴィ』


「うん、何とか…ちょっと休めば立って歩くくらいは…」


『すみません、レヴィ…』


「あはは、いいってば。気にしないで。さ、帰ろう。あ、でも周りの木が燃えてる。消さないと」


『それぐらいは容易い事です』


ヒーノがひゅいっと辺りを飛ぶと、燃えていた部分が一斉に鎮火。

あっさりと消えてしまった。


「すごーい」


『火を操る事が出来るのですから消す事ももちろん出来ます。さ、帰りましょう』


「うん!」


その後は森から村までの道中にいた自警団の人に家まで送ってもらい、無事に家まで帰れた。

どうしてこんなに体を痛めてるのか聞かれたて、上手く隠す事が出来ず、森の中にハルピュイアもどきの死体の一部がある事を伝えて、それが確認されるとちょっとした騒ぎになってしまった。

殆どヒーノの御かげって事にしておいたのに、まるで英雄扱いだった。

過剰な期待とかされても困るんだけどな。

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