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第115話 ヴェルリア王国へ

ユウが十二歳になった。これで皆冒険者登録出来る。

アイも数ヵ月前に十二歳になっていたのだがユウの誕生日を待って登録する事になっていた。


そして王都の冒険者ギルドで登録したのだが、二人は最初からⅮランクからのスタートだ。

何でもギルドマスター権限でⅮランクまでなら即時ランクアップ出来るらしい。

アイとユウはボク達と一緒にずっと依頼に参加してきたのをギルドマスターは知ってるし、その功績は充分だと判断されたらしい。


因みにセバストとノエラはAランクのままだが、この二年でボクとリリーもAランクになった。

お祖父ちゃんとお祖母ちゃんと一緒にエルムバーン国内の危険な魔獣の討伐を率先して受けて周った結果だ。

お祖父ちゃんに言われた経験不足を解消するためでもあるが、結構怖い目にあったものだ。


ティナ達メイド四人組は去年登録してある。

現在のランクはE。

学校もメイドの仕事も休みの時は偶に四人で冒険者として依頼を受けたり、学校の友達と依頼を受けたりしてた。

心配だったのでこっそりノエラとセバストに尾行させたりしたのは秘密だ。

今回は学校があるのでお留守番だ。


そして今日はヴェルリア王国の街、アストラバンに来ている。

ここはエルムバーン魔王国との国境に位置するヴェルリア側の街だ。

エルムバーンの街ボロスまで転移して、馬車で国境を越えて来た。


「ここはどういう街なの?」


「エルムバーンの街とそう違いはないよ。ここも人族と魔族が暮らす街だ。ただエルムバーンの街よりも人族の方が多い。それはヴェルリア王国全ての街でそうらしい」


人族の治める国だからね。

魔族が治める国とは逆になるのは自然な事だろう。


「まずは何処にいくの?」


「丁度昼時だし、まずは昼食を摂ろう。どの店がいいかな」


「ジュン様、こっちの店が空いてますよ」


シャクティが見つけた店に入る。

シャクティも島からでて二年以上たって、都会での生活にもすっかり慣れたようだ。

冒険者登録もして今はDランク。アーミーアント討伐でランクが上がったばかりだ。


食事を摂りながらこの後の予定を話す。

といっても簡潔な内容なのだけど。


「この後は冒険者ギルドに行って情報と、何か依頼を探して受けよう」


「え~。まずは観光しない?」


「観光って言っても。特に見るべき物は無さそうだけど」


事前に調べた限りでは特に珍しい物もない、エルムバーンと大して違わない街並みだ。


「でも初めて来た街だし、まずは観て周ろうよ。ね?」


「わかったよ」


昼食を終えて、街を歩く。

やはりエルムバーンの街と大きな違いは無いように見える。

酒屋が多いように見えるくらいか。


「あ、服屋さん。お兄ちゃん、ちょっと見ていい?」


「…三十分くらいなら」


「は~い」


わかってる。

女性が複数いて服屋に入り三十分で済むはずがないと。

出来ればスルーしたかったけど、反発が強そうなので諦めた。


しかし予想に反して女性陣は直ぐに出て来た。

まだ三十分も経っていない。


「どうかした?やけに早かったけど」


「だって、シルヴィさんの店の方が圧倒的に上なんだもの」


「うん。服の種類というか系統というか。エルムバーンの店と変わらない服ばかりだったし。だったらここで無理に買う必要もないしね」


「なるほど」


確かに、道を歩く人達を見る限りファッション性はエルムバーンと変わりないようだ。


「あ、でもシルヴィさんが作った服も少し並んでたよ。私達がデザインした服も」


「人気商品らしいよ」


それはいい事だ。

シルヴィさんの服はワールドワイドになったか。


それから街の観光を続け。

非常に気になる看板を発見する。


「あ、あれは…」


「お兄ちゃん?どしたの」


本屋の前に非常に気になる看板が。

これを見過ごす事は出来ない。

本屋の前には『魔王子様と村娘 本日発売』と書かれた看板が。


「ああ。魔王子様シリーズの最新刊ですね。王都では先月発売されていましたよ」


「他国でも売られてたんだ、魔王子様シリーズ」


何てこった。

まさかこれもワールドワイドに展開されてるとは…

早くなんとかしないと…


「セバスト、ノエラ。この本の作者はまだ見つからないの?」


「はい。捜査は続けているのですが、何も分かった事はありません」


一体どうなっているのか。

言うなれば国家権力を用いて探しているというのに数年掛けてまだ見つからないとか。

一体何者なんだ。


「いい加減に諦めてもいいと思うけどね。別に害があるわけでなし」


「いや、あるだろう」


これ以上クリステアのような人物を生まない為にも。

クリステア以上の人物が出て来る可能性だってあるのだから。


「そういう人は本の有無に関係なく出て来ると思うけどね。さ、それよりそろそろ冒険者ギルドにいきましょ」


「わかったよ…」


とりあえず今出来る事はないし、冒険者ギルドに向かうとする。

アストラバンの冒険者ギルドは他の街の冒険者ギルドと変わりない。

依頼を張り出した掲示板があって、受付嬢がいて、冒険者がいる。

いや受付は女性だけじゃなくて男性の受付もいるようだ。

とりあえず掲示板を見るとしよう。


「どう?何か変わったのある?」


「いや、特には。強いて言うなら商人の護衛依頼の数が多いかな」


「どれどれ。本当だ、多いね。半分くらいは護衛の依頼なんじゃない?行先はエルムバーンだったり南の小国群だったり王国の中央だったりと、バラバラだけど。なんでだろ?」


「なんでだろって、そりゃあ国境の街だからじゃないの?」


「あんた達、この街は初めてかい?」


アイとユウと掲示板の前で話してると、人族の気のよさそうなおじさんの冒険者が話かけてくる。


「ええ、そうです」


「そうかい。この街に護衛の依頼が多いのはあんたの言った通り国境にある街だからさ。ここまで来るのに雇う冒険者とここから先に行くのに別の冒険者を雇う事が多いのさ。そうでないと拘束期間が長くなりすぎちまう。あんまり長すぎると受けたがらない冒険者も多いからな」


「なるほどぉ」


「まぁ、商人のお抱えになったりすると、そんな事も言ってられないんだがな。おっとそうだ、オレはグレイグってんだ。よろしくな」


「グレイグさんですか。ボクはジュンです。よろしくお願いします」


「ジュン?どっかで聞いた気がするが…まぁいいや。じゃあな」


「はい。ありがとうございました」


他国なのでエルムバーンとは名乗らないで置く。

しかしバレるのは時間の問題だと思う。

何せ…


「どうかしたか?ジュン様」


「私達が何か?」


セバストは執事服。ノエラにリリーとシャクティはメイド服だもの。

クリステアとルチーナは護衛の騎士にも見えるけど鎧姿だからいい。

ハティも人型なら軽鎧を着た冒険者に見える。

でも君達は冒険者に見えないんだよね。

お忍びにならない…


「前も言ったけど、服装は変えられない?どうしても目立つんだけど」


違和感が半端ない。

冒険者パーティーに執事とメイドは。

エルムバーンだと知れ渡ってたからいいけどさ。


「申し訳ありません、ジュン様。それは出来ません」


「これがオレ達の戦闘服だしな。そこら辺の鎧よりは頑丈だし、見逃してくれ」


「リリーは別の服は無くも無いんですけど…このメイド服の方がずっと凄いですし」


「私は持ってませんし…」


「ああ、そう…」


やはり結果は変わらなかった。

その服が丈夫なのは知ってるよ。

魔法布製だし、ロックバードの羽毛使ってるし。

体温調整の魔法も付与してあるから、夏場でも冬場でも大丈夫だもんね。


「はぁ…まぁいいや。ちょっと受付さんと話してくるよ」


「はい。行ってらっしゃいませ」


目の前なんですけどね。

ほんと、すぐバレそうだなあ。


丁度男性の受付が空いていたので、そこで少し話を聞く。


「こんにちは。ちょっとよろしいですか?」


「はい。なんでしょうか?」


受付の男性は中々のイケメンだ。

やはり男でも受け付けは見た目がいい方が問題は起こり難いのだろうか。


「ボク達はこの街は初めてなのですが、この辺りで危険な場所や魔獣。知っておいたほうがいい情報等があれば教えて頂けませんか」


「そうですね…南の小国群との境にある山々には近づかない方がいいですよ。ドラゴンがいますから。ここから小国群に向かう時は南東にぐるっと大回りで行く方が安全です。それと最近大きな山賊団が南の山にやって来たそうです。注意してください」


「ドラゴンがいる山に山賊団ですか?」


「ああ、いえ。その山にはドラゴンはいません。ドラゴンが出るのはもう少し南の山です。他の魔獣に関しては行先が決まったら聞いてください。沢山あって全ては説明しきれませんし」


「わかりました。後ついでにお聞きしますが、最近この辺りで何か変わった事はありませんか?」


「変わった事ですか?」


「はい。例えば新種の魔獣が出たとか、原因が全く不明の何らかの出来事が多発してるとか」


「いえ、そういった事は…ああ、そうだ。事件というわけではありませんが、面白いニュースが一つ」


「面白いニュース?」


「ええ。何でも勇者様御一行がこの街に来てるとか。今朝聞いた話なので、まだ広まってはいないようですが」


「「「え」」」


勇者って…あの子がここに?


「ちょっと、勇者って…」


「あの子だよね…」


アイとユウが言う通りのあの子だろう。

そう、ボク達は勇者の名前を知っている。

ヴェルリア王国の重要人物、いや世界の重要人物として聞いていたのだ。

そして武闘会の時のあの子。


「だからぁ、ここだよ、きっと」


「だから、そう思う理由は何んだって聞いてるんだよ」


「勘!」


「これだ…いくら君の勘が当たるからって…」


「まぁ、いいではないか。他にあてがあるわけではないし。のぉ?」


「うん。フランコは細かすぎ」


「君達が大雑把過ぎるんだよ…」


ちょっと騒がしい四人組がやって来た。

聞き覚えのある声の持ち主だ。


「あ」


目が合った。

向こうはこちらを知ってるらしい。

素顔を見たのは初めてだが、間違いないだろう。


「どうした?あ。あいつは…」


「ん?おお!彼か」


「イケメン発見」


他の三人も気が付いたらしい。

初老の男性は聞き覚えのある声だ。

もう一人の男とは会話もしてないので声も聞いた事がなかった。

女の子は武闘会の時も一言声を聴いただけだけど、あの子で間違いないだろう。


「あー!久しぶり!元気してた?」


「はい。元気でしたよ。お久しぶりです、アイシスさん」


彼女の名前はアイシス・ノーヴァ。武闘会で優勝したあの子。

世界的に見ても希少な勇者の紋章の持ち主。

アイシス・ノーヴァだ。

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