第111話 アーミーアント 2
「兎に角、偵察の内容をギルドマスターに報告する。ノエラ。ギルドマスターを呼んできて」
「…はい、畏まりました」
う~む、あからさまにご機嫌斜めだな。
どうしたものか…
「それからハティ、城に戻ってハティの家族皆呼んできてくれないか。力を貸して欲しいって」
「わかったー。言ってくるー」
これで戦力的にはなんとかなるだろう。
もしクイーンを倒せても、生き残ったアリが数百でもいたら、逃げた先に村でもあったなら悲惨な事になる。2万という大群を全滅させる必要があるのだ。
人手は多いほうがいい。
「ジュン様。お待たせしました」
カイエンが親衛隊を連れてくる。
だけど二十名より明らかに多い人数を連れている。
「ご苦労様。何人連れてきたの?」
「二十名との御話しでしたが、相手はアーミーアントとの事でしたので、連れて行けるだけ連れて行った方がいいと思いまして。百名連れて来ました」
「百名…」
王都から参加する冒険者の人数次第だけど、全員連れて行けなくもない、か?
「おー、親衛隊か?助かるぜ、戦力は多い方がいいからな」
「あ、ギルドマスター。王都から移送する冒険者は何人になりますか」
「お前達を含めて二百五十名ほどだ。あと、アスラッドに言って、治癒魔法使いを数人同行してもらう事になってる」
そこに親衛隊とフェンリル一家が加わって三百六十名程か。
それなら何とかなるけど片道だけだな。
「全員転移で連れて行くとなると、帰りの分の魔力は戦闘で使う事になるでしょうから、今日中に帰って来るのは無理ですけど、構いませんね?」
「ああ、問題ねえ。冒険者なんだ。野宿には慣れてる。近くの街の宿に泊まってもいいしな」
「なら、偵察してきた内容を伝えます。と言ってもあまり多くの事はわかりませんでしたけど」
偵察してわかった事をギルドマスターに伝える。
一緒に聞いてた周りの冒険者や親衛隊の中には顔を青くする者が大勢いた。
「二万のアリに羽付きのヤツもいるのか…想像以上にデカい規模の巣らしいな」
「ええ。ですがやはり、単体なら大した事ないです。それとまとまって攻撃してくるので魔法で殲滅するのがいいでしょうね」
「ああ。だが如何せん、人数が足りねえか」
「他の街の冒険者を合わせて合計何人くらいになりそうなんです?」
「王都の冒険者とお前の親衛隊を合わせて千人くらいだろう」
「千人ですか…まぁ何とかなるでしょう。ともかく転移魔法での移送を開始していきます」
「お、おう。何とかなるのか?自信があるみたいだが…」
「ええ。まぁ戦力補充のあてあるので」
正確な数はわからなかったけど、そこそこの数が揃えれるはずだ。
「戦力補充のあて?街の駐屯兵は防衛の任務があるから動かせねえぞ」
「違いますよ。お、来た」
「ご主人様~連れて来たんだよ~」
ハティとその家族、フェンリル一家の御登場だ。
「ありがとう、ハティ。皆さん、よろしくお願いします」
「なに、構わん。丁度退屈しておったしな」
「主であるジュン君の為なら~」
「アリなんていくらでも蹴散らしてあげるわ~」
神獣フェンリル一家の力があれば、それだけで何とかなる気がするけど。
念には念を入れる。
向こうについたらハティに戦力を補充してもらうつもりだ。
「そうか、フェンリル一家か。こりゃあ心強え」
「それじゃ、転移を開始します」
この二年。
お祖父ちゃん達との修行の成果で、一度に転移可能な人数は二十人までいけるようになった。
だが三百六十人以上もいるのだ。
十九回は往復しないといけないので、とっとと始めよう。
転移した先の街では冒険者ギルドに人が集まってる。
既に五百人以上はいるようだ。
転移を繰り返し王都の人員の移送を終える。
修行で魔力の総量も増えたが、それでも残り六割を切った。
全員揃ったところで今回の作戦の説明を王都のギルドマスター。
ラルクさんが作戦の説明をする。
この街のギルドマスターは今、不在らしく指揮を執る為ラルクさんも此処に来ていた。
「大雑把な作戦を説明するぞ!まず、今回の現場の指揮だが、ジュン!お前に一任する!」
「え」
ナニソレ。
聞いてない。
「聞いてませんよ、ギルドマスター」
「お前がやるしかないんだよ!親衛隊に指示を出せるのはお前だけだからな。それに現場の指揮なんて最低、作戦開始の合図と撤退の合図ができりゃいい。あまり気張らずにやれ」
「ジュン様、私がフォローしますので」
「わかった。頼むよ、カイエン」
ここで駄々をこねてもしかたないし、やるしかないか。
「それじゃ作戦だが。まず巣を包囲する。これはクイーンを失ったアリは統率を失い四方に逃げ出すためだ。逃げ出した先でアリが暴れるのを防ぐためにも一匹も逃がすな。それから攻撃は魔法をメインだ。アーミーアントは統率された動きで襲ってくるが固まって襲ってくる。範囲が広い魔法での攻撃が有効だ。戦士は魔法使いにアリを近づけさせるな。そして数が減ったら精鋭部隊が巣の中へ突入。クイーンを倒す。突入する部隊はジュン、お前のパーティーだ」
「指揮者のボクがですか?」
「その段階までいけばあとは別の誰かに任せて問題ないはずだ。それにお前なら巣の中で包囲されても転移で逃げ切れるはずだ。お前達が一番安全なんだよ」
「わかりました」
確かにその通りだけど、できれば巣の中に入るのは遠慮したかったなあ。
だって気持ち悪そうなんだもの。
「質問が無ければ各自指示したポイントに向かってくれ!」
ギルドマスターはまだあとからくる冒険者達に指示を出さなくてはならないのでここに残るらしい。
みんな移動を開始する。
「ジュン、ウチらも行こ」
「うん。でも、その前に…ハティ」
「なあに、ご主人様」
「ちょっと先に行ってこの辺りの狼達を集めて欲しいんだ。その子達にもアリ退治を手伝って貰いたい」
「うん、わかったー。いっぱいいた方がいい?」
「そうだね、できるだけ沢山がいいかな」
「わかったー。行ってくる~」
「なら、我らも行こう。構わぬな?」
「ええ、お願いします」
ハティ達フェンリル一家は、本来の姿である狼型に戻り。
先行してハティにこの辺りの狼達を集めてもらう。
これで多分、そこそこの戦力が集まるはずだ。
新装備を試すはずがなんだか大事になったけどアーミーアントは見逃すわけにはいかない。
アリ退治といこう。




