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第108話 フレイヤとアトロポス

「フレイヤにアトロポス…」


アトロポスは確か現代地球の神話に出てくる運命の三女神の一柱だったか。

女神フレイヤが頼んだ相手は女神アトロポスだったらしい。


「ステファニアさん、この剣の名前はって、うおうっ」


神様が祝福を与える事を事前に知ってるのは不自然なので、名前の件をステファニアさんに尋ねようとすると。ステファニアさんが号泣している。

正直、ちょっと引いてしまった。


「あの~ステファニアさん?この剣の名前を付けたのはステファニアさんですか?」


「あ、ああ。ごめんなさいね。その剣の名前はね、祝福を与えてくれた神様の名前なのよ。鑑定してみれば解るわ。ううっ、ふぐううっ」


説明が終わった途端に嗚咽と共に泣き出すステファニアさん。

どうしてそこまで…


「ごめんね。ドワーフにとって自分が打った武具が神様に祝福される程名誉な事は無いの。まさしく全ドワーフの夢。それが叶ったのよ。それも二本も。凄いよ、師匠は…」


そういうドミニーさんの眼にも涙が。

それほどの事だったのか。

祝福が与えられるまでの経緯を知ってるので、何だか後ろめたさが…


「しかも与えてくれた神様も凄いしね。フレイヤ様は農民が豊作を祈願する、農業の神様だけど慈愛の神様でもある。有名な神様だし、アトロポス様は選択の神様だ。きっと凄い能力を授かってるよ」


女神フレイヤはこの世界でも豊穣に近い豊作に関する女神だったらしい。

それはいいけど慈愛?はちょっと疑問が。

現代地球でも愛の女神だったけども。


女神アトロポスの選択の神様ってのはどういう神様何だろう。

ドミニーさんに聞いていいものか。


「選択の神様って?」


「知らない?そこそこ有名な神様なんだけど。えっとね、一世一代の選択とか、運命の選択とかあるでしょ?そういう時に、正しい選択を選べますようにって祈るのがアトロポス様よ」


聞いていいものか逡巡してるとアイが聞いてくれた。

なるほど、運命の女神様っぽい。


「それにしても、神様の祝福を貰えたっていうのに驚かないね」


「いや、驚いてますよ?驚いてますけど、ステファニアさんを見てると…」


「ああ、うん。まぁね」


本当の理由は事前に知ってたからだけど。

でもステファニアさんの感動ぷりの方が驚きなのも本当だ。


「いえ、本当に凄い事ですよ。素晴らしい」


「はい。これ程見事な剣は見たことがありません」 


ノエラとクリステアも絶賛する。

リリーとルチーナも同意らしい。


「えっと…兎に角、試し斬りをさせてもらっても?」


「そうだね。さぁ師匠!何時までも泣いてないで!」


「ええ、そうね、ごめんなさい。直ぐに用意するわ。ドミニーも手伝って」


そして用意されたのは丸太と木の人形に鋼鉄製の鎧を着せた物が2体。


「説明するわね。まずジュン様の要望は全て叶える事が出来たわ。そして神様の祝福がどんな能力かは、剣を持って意識すれば解るはずよ。さぁ試してみて」


「はい」


長剣の方が【フレイヤ】。

小剣の方が【アトロポス】。


【フレイヤ】の見た目は男心をくすぐる、実にかっこいい剣だ。

一見、無駄な装飾が施された、およそ実用的じゃない剣に見えるかもしれないが、そうではない。

これらの装飾は魔法的な意味があるので必要な装飾なのだ。

正に某ゲームで勇者や主人公が持ってますと言わんばかりのかっこよさ。


【アトロポス】の方も魔法的な装飾が施された剣で刃が少々独特な形をしている。

矢印をもっと鋭角にして伸ばした感じと言えば伝わるだろうか?

鍔は無く、柄頭に刀身と形は同じで小さくした物が付いている。

【アトロポス】のデザインはボクがした物でステファニアさんの修正が多少入っている。


「先ずは普通に試し斬りを」


丸太に向かって剣を振る。

右手に【フレイヤ】を。左手に【アトロポス】を持つ。


「ふっ!」


「「「おー」」」


それほど力は込めていないのだが、丸太は綺麗にカットされた。

流石オリハルコン製と言うべきか。凄い切れ味だ。


「良さそうね。じゃあ次に、オーダーした能力が使えるか、試してみて」


「はい」


先ずは長剣【フレイヤ】にオーダーした能力。

現代地球では、空想上の武器でしか無かった物。


「皆、もう少し離れて」


「「は~い」」


皆に離れてもらい、ボクも丸太から少し距離を取る。

そして【フレイヤ】を変形させる。


「あ!」


「剣がバラバラになった!」


オーダーメイドの内容を知らないクリステアとルチーナの二人が驚く。

勿論本当にバラバラになったわけではない。

ばらけた刀身は魔力で出来たロープで繋がり鞭のようになっている。

そう所謂、蛇腹剣というやつだ。


「ふっ!」


蛇腹剣を振るう。

この二年間に鞭の使い方はお祖母ちゃんと母エリザから学んである。厳密には蛇腹剣は鞭ではないかもしれないが。


「おー。丸太がズタズタに」「痛そー」


蛇腹剣に巻きつかれた丸太はズタズタに引き裂かれる。

次に剣先を丸太に突き刺し、蛇腹剣が元の剣に戻る力を利用して丸太を手元に引き寄せる。

逆に剣を持ったボクを刺さった場所に引き寄せる事も可能だ。


「「おー」」


一通りの動作を試すと皆から感嘆の声があがる。

【フレイヤ】の出来に問題はなさそうだ。


「【フレイヤ】は問題無さそうね。じゃあ【アトロポス】も試してみて」


「はい」


【アトロポス】の能力は魔力で形成された伸縮自在の刃を刀身の延長線上に出せる事だ。

柄頭の部分からも魔力の刀身を出す事が可能で、ツインブレード形態にする事が可能だ。


「ふっ!」


魔力で出来た刃はおよそ5m先の丸太を貫く。

そして【フレイヤ】の蛇腹剣と同じく、手元に引き寄せたり、ボクを引っ張ったりする事が可能だ。


「【アトロポス】も問題無さそうね…うん、うん」


「師匠、泣かないでよ。まだ神様から頂いた能力を試してないんだし」


「そうね、そうだったわ。じゃあジュン様、お願い」


「はい。じゃあまず【フレイヤ】から」


【フレイヤ】に意識を集中して能力を知る。

その能力は植物を支配する力。

植物を成長させたり、逆に枯らせたり。

木の枝や根を伸ばして操作したり出来るようだ。

物は試しにやってみる。

先ずは先ほどの丸太に意識を向け能力を行使する。


「あ。丸太から芽が出た」


「キノコも生えたよ」


うむ。成功だ。

もう少し試すとしよう。


「クリステア、ちょっとジッとしててね」


「?はい」


今度は庭に生えてた木に能力を行使。

枝を伸ばしてクリステアの体を掴み、持ち上げる。


「「おー」」


「もっと複雑な操作も出来そうだな」


もう一本、枝を伸ばして空中でクリステアを投げてパスしたり、両手両足を縛って空中に固定したり、亀甲縛りをしたり…


「あ」


「お兄ちゃん…」


「ジュン、それは流石に…」


いかん、調子に乗りすぎた。

直ぐに解いてクリステアを地面に下ろす。


「ごめん、クリステア、大丈夫?」


「ああ…ジュン様…素敵です…まさかここでいきなり初めての調教をして戴けるなんて…」


「あ、うん。大丈夫そうだね。ルチーナ、頼んだ」


「はい…迂闊ですよ、ジュン様」


はい、ごめんなさい。

気を取り直して、次は【アトロポス】の能力を試そう。

【アトロポス】に意識を向けて能力を知る。

その能力は選択。

鎧を着た人形に剣を振り能力を行使する。


「あれ?」


「鎧は斬れてないのに人形が斬れてるよ?」


もう一体の鎧を着た人形にも剣を振り能力を行使。


「今度は鎧は斬れて人形は斬れてないね」


「ジュン、これは?」


「どうやら斬る対象を選択出来るみたいだ。斬る物と斬らない物、どちらも複数対象に出来る」


「あれ?でも今、【アトロポス】じゃなく【フレイヤ】で斬ってなかった?」


「うん。【アトロポス】も【フレイヤ】も、どちらの能力も所持しているだけで行使可能なんだ。植物支配と選択の力は剣に宿ってるのではなく所持者に与えられるって事だ」


「つまり?」


「どちらの能力も剣を使わなくても、鞘に納めて腰に下げてるだけでいい。意識を向けるだけで植物を操作出来るし、ただのナイフでも斬る対象は選べる」


「うわっ、それやばいね。盗まれたら大変じゃない」


「盗難防止対策は完璧だよ。ですよね?ステファニアさん」


「ええ。召喚契約を結んだ魔石はちゃんと組み込んであるわ」


「召喚契約?魔石とも召喚契約出来るの?」


「魔石に意思なんてないから、厳密には契約とは言えないかもだけどね。でもこれで、いつでも手元に召喚出来るから。盗まれてもすぐ取り戻せる」


更に言えば、ひっそりと開発したオリジナル魔法。

(マーカー)という魔法がある。

この魔法をかけておけば、同じく開発したオリジナル魔法、(レーダー)と連動。

位置を特定出来る。

つまり発信器と受信機のような魔法を作ったのだ。

この魔法は人物にも有効で身近な人物には全員かけてある。

ただし当人には内緒で。

何時でも何処でも居場所が特定されるようになるなんて、承認されるかわからなかったし、この魔法の存在を知られると対策をとられる可能性もあった。

犯罪に使うつもりはないので見逃してほしい。


「流石ね。なら大丈夫かな」


「多分ね。ステファニアさん。最高の剣です。本当にありがとうございます」


「御礼を言うのはこっちよ。最高の仕事をさせてもらったわ。それで一つお願いがあるのだけど」


「何でしょう?」


「いつかその剣を持って一緒に故郷のドワンドへ行ってくれないかしら?故郷に帰るのは随分久しぶりだけど、故郷の皆に自慢したいのよ。その剣を打ったのは私だって。直ぐじゃなくていいわ」


故郷への凱旋というわけか。


「構いませんよ。ボクが一度ドワンドへ行ったら転移で行けるようになりますから、そしたら一緒に行きましょう」


「ええ、お願いするわ。それとオリハルコンが少し余ってるけど、それはどうする?」


「それで何か作れますか?」


「オリハルコンのみで作るのは無理ね。ただ他の金属に少しずつ混ぜて作る事は出来るわ。それだけでも随分違うから」


「それじゃあ、予算も大幅に浮いたし皆の武具を一新しよう。それからボクの防具も追加します」


「任せて。じゃあどんな武具を作るか、相談しましょ」


流石に全員分の武具をオリハルコンでは作れないが、ミスリルやアダマンタイトでなら作れる。

シルヴィさんにも来てもらい、相談をして皆の武具の構想も決まった。


最後にアイがこんな事を言ってた。


「ねぇ、ジュン。【アトロポス】の能力なら服だけ斬ってあのセリフが言えるんじゃない?」


「『またつまらぬ物を斬ってしまった』」


「そう、それ!一度やってみてね!」


「何の話ですか?ジュン様」


「気にしないでノエラ」


やってみたい気はするけど、女性相手にやると怒られそうだし。

それに某斬鉄剣の持ち主と違って自分の技術じゃなく剣の能力だしね。

まぁ一度はどこかでやろうかな…

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