第104話 十五歳
カタリナさんとの一件から約二ヵ月。
ボクは十三歳になった。
この二ヵ月の間に、エルムバーンに来た他国の要人は数組。
主にヴェルリア王国の南方にある小国群からの使者で用件はカタリナさんと同じ治癒魔法使いの育成と学校設立のノウハウの提供についてだ。
そして、何故か必ずどこも美人を連れていてボクにすり寄って来る。
カタリナさんにやらかした事が噂となって広まったのか、ボクに案内役をお願いする人ばかりで疲れてしまった。
中にはユウどころかアイを口説こうとする人物もいた。
ユウはまだ九歳。アイも十歳になったばかり。更に言えばアイはボクの婚約者という事になってる。
そんな子供を口説いてどうするつもりなのか。
お祖父ちゃん達との訓練も続いている。
流石に長く生きてる先代魔王。
知識も経験も技術も完成された強さだ。
この人に勝てるのはまだまだ先の事になるだろう。
魔法兵団、夏の地獄訓練にも参加した。
今年はボクの親衛隊との合同訓練で、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが教官として参加。
今年は今まで最高にきついと魔法兵達が言っていた。
でも、今年は夜が最高に楽しみだ、とも言ってた。
訓練に参加した女性達が毎晩ボクが泊ってる部屋、あるいはテントに忍び込もうとしたのだ。
それも毎晩違う女性達が班に分かれて。
訓練を兼ねて警備に当たってる親衛隊の眼を如何に逃れて忍び込むか、作戦会議まで行って。
時には親衛隊の女性も参加して警備網の情報を漏洩していたのだから性質が悪い。
「警備訓練に張り合いが出ていい」とか言ってお祖父ちゃんが承認したから止める者もいないし。
しかし、親衛隊隊長カイエンが本気の警備を実施。
一ヵ月を通して最終的にボクの部屋までたどり着いたのはクリステアのみだった。
クリステアは警備する側のはずなのに、おかしいなぁ。
訓練の合間に冒険者の仕事も続けている。
ドラゴンゾンビやロックバードの討伐が効いたのだろう、また全員ランクUPした。
セバストとノエラはAランク、リリーはBランク、ボクはCランクだ。
セバストとノエラはともかく、リリーがBランクになったのはかなりの早さで、ボクに至っては一年でCランクになったのは歴代最速だとか。
普通はCランクになるのは五年以上、十年かかる人だっている。
リリーも冒険者登録をして四年。
四年でBランクも歴代最速でないにしても、かなりの早さだそうだ。
結婚式も数回あって御祝してきた。
お見合いパーティーでカップルになった人達の結婚式だ。
ギルドマスターとモンジェラさんの結婚式も含まれる。
親衛隊でも数組のカップルがいて、イグナス君も結婚した。
ギンは今回はカップルになれなかった。
ギンの妹達曰く、「ギン兄は奥手だから、強引に押し倒すくらいの女性じゃないとダメかも」だそうだ。
居たと思うけどね、強引な女性。
ギンが女性を避けて動いてたせいだと思うけど。
イグナス君の御相手は清楚で家庭的な感じの女性だ。
女性としては平均的な体格だと思うのだが巨漢なイグナス君と並ぶと非常に小柄に見える。
イグナス君の結婚式は孤児院で行われた。
これからは奥さんは孤児院で働き夫婦で孤児院を支えるのだとか。
実にいい話だ。
孤児院の子供達に祝福され笑顔でいるイグナス君を見ていると羨ましく思えて来る。
前世では結局結婚しないままだったから。
口に出すと騒ぐ連中がいるので言わないが。
「あと五年待ってね。そしたらウチと結婚できるから」
「はいはい。なんか心読まれるの慣れてきたな」
ギルドマスターとモンジェラさんの結婚は冒険者ギルドで行われた。
エルムバーン魔王国では宗教に入ってない人が多く、教会もあるにはあるのだが信者しか結婚式等には利用できない。
その為、こうして自分の職場だとか国営の会場等を借りて式を挙げるのが、この国での結婚式のやり方だ。
「モンジェラさん、幸せそう。それに綺麗」
「本当に。初めて会った時とは別人としか…」
「ですよね。ギルドの皆はもう慣れましたけど」
衝撃のbefore・afterだもんね。
以前のモンジェラさんは服を着たメスゴリラで、今は可憐な人族の女性にしか見えない。
ダイエットでどうにかなるレベルじゃないし、誰かの体を乗っ取ったって言われたほうが納得できる。
口に出して言わないけど。
「私もそう思うよ、お兄ちゃん」
「うん。ナチュラルに心読みすぎ」
モンジェラさんがブーケを投げる。
この世界でもブーケを投げて、受け取った女性が次に結婚するっていうジンクスはあるようだ。
それは事前に確認しておいた。
「やったぁ!次に結婚するの私ー!」
「よかったね、ウーシュさん」
ウーシュさんがいくつなのか知らないけど、モテるらしいし結婚はできるだろう。
ちょっと性格に難があるような気がするけど。
「え?そんな他人事のように。ジュン様が私と結婚するんですよ?」
「ハハハ。面白いジョークだなー」
「ジョークじゃないですよー。ほら、私のおっぱい触ったじゃないですか」
「あれは腕相撲大会の優勝賞品でしょ?胸の谷間に指入れただけだし」
優勝したから入れたのに。
それで結婚とか、詐欺もいいとこだ。
「そうですけどー。あれはジュン様が優勝すると思ってたから実施したんですよぉ。それにジュン様、スケベな癖にヘタレなとこあるから、本当に指入れたりしないだろうって思ってたのにー」
「武闘会の時から思ってたけど、一度キッチリ話付けないとダメみたいですね、あんた」
ウーシュさんの神経の太さは何なんだ。
荒くれ者が多い冒険者の相手をするにはいいのかもしれないけど。
そんなこんなで、中々忙しい充実した二ヵ月だった。
そして、誕生日を迎えて数日後。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんから話があると呼び出される。
「それで、話って何です?」
「ああ。わしとミリアは二年後、お前の誕生日を祝ったら、また旅に出る事にした」
「貴方の成人の祝いには参加しないけど、ごめんなさいね」
この世界では十五歳で成人だ。
魔族と人族では寿命が違うが成人するまでの成長速度はほぼ同じなので、魔族も人族も十五歳で成人扱いとなる。
そして新年の祝いと一緒に成人の祝いをするのだ。
「そう、ですか。それは寂しくなりますね。また何十年も帰って来ないつもりなんですか?」
「わからん。まだ先の事だしな。だが細目に連絡は入れろと怒られたし、通信用の魔法道具は持って行く。心配はいらん」
「まだまだ行ってない国も街もあるしね。ジュンもいつか外の国に行く事があるならバッタリ会うかもしれないわね」
「そうですね。その時は一緒に旅をするのもいいかもしれませんね」
「おいおい、まだ二年後の事だ。少し気が早いぞ。それで本題だがな、いつか話した、お前の剣を作る時に使えるいい物をやるって話、覚えてるか?」
「あ、はい。もちろん」
結構気になってたからね。
「それな、二年後の誕生日にプレゼントしてやる。成人の祝いを兼ねてな」
「あ、今じゃないんですね?」
「バッカ、お前、アレはそう簡単にやれるもんじゃないし、今年の誕生日プレゼントはもうやっただろ」
うん。エルムバーン魔王家の紋章が入った指輪を沢山。
「婚約指輪に使え」なんて言うから、一部女性が騒いで大変だった。
「アレは本当に、簡単にあげれる物じゃないのよ。我慢してね」
「はい」
お祖母ちゃんまでそう言うなら、そうなんだろう。
大人しく我慢しよう。
「まぁまだ二年ある。それまでは今まで通り鍛えてやる。お前程の才能があれば二年後にはかなり強くなってる。今から楽しみだ」
「そうね。二年間頑張りましょ」
「はい。よろしくお願いします」
それから二年間。
お祖父ちゃん達に鍛えられ、魔王子の仕事と冒険者の仕事をこなしつつ。
忙しくも充実した日々を送り。
そして、あっと言う間に日々は過ぎ去り。
ボクは十五歳の誕生日を迎えた。




